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サイドスリップの5mmには、輸入元が決めた数字に置き換えてよいというただし書きが付いていた

夜の都心でステアリングを握る運転席からの視界。車検のサイドスリップ検査の基準を示すアイキャッチ Car|車
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サイドスリップの基準は「±5mm以内」。検索するとどのページにもそう書いてあります。

条文を開いたら、その5mmには続きが付いていました。「ただし」で始まる一文があって、そこにはメーカー、または日本にその車を輸出している事業者が指定した範囲内ならこの限りでないと書いてあります。

私は2019年から輸入車に乗っていて、車検も輸入車で受けています。その立場で読むと、このただし書きは他人事の条文ではありません。

先に断っておくと、自分の車にその指定値が設定されているかどうかは確認していません。公開している105本を検索しても「サイドスリップ」は第9章の節を並べた表に名前が出る1件だけで、私はこの検査について何も書いてきていません。条文を開いて並べた記録であって、うちの車が特例で通ったという話ではありません。

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5mmという数字は、法律ではなく3階下から出てくる

かじ取装置について定めているのは道路運送車両の保安基準の第11条です。その第1項は、一文で終わります。

自動車のかじ取装置は、堅ろうで、安全な運行を確保できるものとして、強度、操作性能等に関し告示で定める基準に適合するものでなければならない。

ここに数字はありません。「堅ろうで、安全な運行を確保できる」という言い方だけで、あとは告示に投げられています。

投げられた先が細目告示で、そこで初めて5mmが出てきます。その5mmを実際にどう当てるかは、さらに下の審査事務規程にある。保安基準 → 細目告示 → 審査事務規程という3段の並びで、段が下りるごとに書き方が具体的になっていきます。これから読むのは下の2段です。

5mmは「走行1mについて」の数字だった

まず主文から。道路運送車両の保安基準の細目を定める告示 第169条の第1項第1号ルが、車検(使用の過程にある自動車)に当たる条文です。

四輪以上の自動車のかじ取車輪をサイドスリップ・テスタを用いて計測した場合の横すべり量が、走行1mについて5mmを超えるもの

これに該当すると、基準に適合しないものとされます。

「走行1mについて5mm」です。1mあたりの横へのずれ量で、テスタを1回通したときの合計値ではありません。よく見る「±5mm」という書き方は、条文の「5mmを超えるもの」を左右どちらの方向にも当てはめて言い換えたものです。条文自体に「±」の記号は出てきません。

対象は四輪以上の自動車審査事務規程の9-2のほうには「対象/除外」の欄があって、除外は「-」、つまり四輪以上なら全部です。

同じ数字でも、告示と規程では言い方が裏返っています。告示は「5mmを超えるもの」=適合しない例の列挙という形で書き、規程の9-2は「横滑り量が、走行1mについて5mmを超えてはならない」と正面から禁止する形で書いています。

告示は「こういうのはダメ」のリスト、規程は「こうしろ」の指示。結果として要求される中身は同じですが、条文を探すときにどちらの言い回しで検索するかで、引っかかるものが変わります。

同じ号が3つの条文にあり、ただし書きの長さだけが違う

同じ内容が、細目告示の中に3か所あります。第13条第91条が新規検査などの側、第169条が使用の過程の側です。

主文はほぼ同じです。違うのは、そのあとに続くただし書きでした。

場面 ただし書きの書き方
第13条 第3項第1号リ 新規検査等 「…自動車製作者等が指定する横滑り量の範囲内にある場合にあっては、この限りでない」
第91条 第3項第1号ル 新規検査等(細目) 「…指定自動車等の自動車製作者等(定義の括弧書きあり)かじ取装置について安全な運行を確保できるものとして指定する横滑り量の範囲内にある場合にあっては、この限りでない」
第169条 第1項第1号ル 使用の過程(車検) 第91条と同じ長いほう

第13条だけ短いのです。「自動車製作者等が指定する」で終わっていて、その「自動車製作者等」が誰なのかの定義がありません。第91条と第169条には定義の括弧書きが入り、さらに「かじ取装置について安全な運行を確保できるものとして」という条件が足されます。

同じ装置の同じ数値の話が、3か所で長さを変えて書かれている。読み比べないと気づかないところですが、車検で効くのは第169条=長いほうです。

細かい話をもう一つ。この号、主文では「横すべり量」、ただし書きでは「横滑り量」と表記が割れています。3本とも同じ割れ方をしているので、写し間違いではなく元からそうなっているようです。実務上は何も変わりませんが、条文を検索するときに片方だけで探すと取りこぼします。

「自動車製作者等」の括弧書きに、輸入元が名指しで入っている

第169条の括弧書きを、そのまま引きます。

ただし、その輪数が四輪以上の自動車のかじ取車輪をサイドスリップ・テスタを用いて計測した場合に、その横滑り量が、指定自動車等の自動車製作者等(自動車を製作することを業とする者又はその者から当該自動車を購入する契約を締結している者であって当該自動車を本邦に輸出することを業とするものをいう。)がかじ取装置について安全な運行を確保できるものとして指定する横滑り量の範囲内にある場合にあっては、この限りでない。

長いので、括弧の中だけ取り出します。

  • 自動車を製作することを業とする者
  • その者から当該自動車を購入する契約を締結している者であって、当該自動車を本邦に輸出することを業とするもの

前者は要するにメーカーです。問題は後者で、「本邦に輸出することを業とするもの」と書いてあります。メーカーから車を買って日本へ輸出する事業者、つまり輸入元がここに入っている。

輸入車を想定していなければ、こんな括弧書きは要りません。この一文は、外から入ってくる車のために置かれているものだと読めます。

ただ、ここから先は条文には書かれていません。どの車種に指定値があるのか、その値がいくつなのかは、告示にも規程にも一覧がない。検索すると具体的な数値を挙げているページも見つかりますが、出どころが示されているものは見当たりませんでした。なので「輸入車は基準が緩い」とは書けません。条文が言っているのは「指定があればその範囲による」までで、指定が無ければ5mmです。

自分の車に指定があるかを知りたい場合、条文の側から辿る道は用意されていません。ディーラーか、車検を通す整備事業者に聞くことになります。

規程の側には、告示に無い抜け道がもう1つある

ここまでは告示の話です。審査事務規程の9-2を開くと、告示には無い文が1つ足されていました。

この場合において、8-13の適用を受ける自動車以外の自動車であって、諸元表等により審査した際に、UN R79-01以降の5.及び6.(UN R79-01にあっては5.1.6.1.を除く。)に適合することが明らかなものは、この基準に適合するものとして取扱うことができる。

UN R79は、かじ取装置についての国連の協定規則です。その5.と6.に適合していることが諸元表などで分かれば、サイドスリップの基準に適合するものとして扱ってよいと書いてあります。

つまり抜け道が2つある。メーカーか輸入元が指定した範囲に収まっている場合と、協定規則のほうで見る場合です。後者は告示には書かれておらず、規程にしかありません。

弱点も書いておきます。UN R79の原文は取りに行きましたが、国連側のサイトから取得できませんでした。ヘッドライトや霧灯を調べたときと同じで、この協定規則についても番号までしか書けません。5.と6.に何が書いてあるのかは、私は読めていません。

なお「かじ取装置」を正面から扱っている7-13・8-13のほうも開きました。全部で38,018字ありますが、「サイドスリップ」も「横滑り」も0件です。

R79という語は23件出てきます。ただしそちらは 7-13-1-2「書面等による審査」で、UN R79-04-S9 の 5. と 6. に適合していることを求める文脈でした。新車の側は協定規則に適合しているかを書面で見て、車検の側はテスタに乗せて5mmで見る。同じ装置を、場面によって別のやり方で確かめています。

9-2 のただし書きは、その2つを橋渡ししているように読めます。テスタの数字が5mmを超えていても、諸元表などで協定規則に適合していることが分かれば適合として扱ってよい、という作りだからです。ただし対象から「8-13の適用を受ける自動車」が外されているので、誰にでも効く道ではありません。ここは条文の書き方が入り組んでいて、自分の車が該当するかを読者側で判定するのは難しいと思います。

測るのは「かじ取車輪」。後輪のことは書かれていない

条文が対象にしているのは、一貫してかじ取車輪です。後輪という語も、リアという語も出てきません。

一般的な乗用車ならかじ取車輪は前輪なので、サイドスリップ・テスタで測られるのは前輪だけということになります。後ろのアライメントが狂っていても、この号では拾えません。

もっとも、後輪の狂いは前輪の測定値にも影響します。まっすぐ走らない車がテスタの上をまっすぐ通れるはずもないので、「後輪は関係ない」という意味ではありません。条文が測ると決めているのが前輪だけ、という話です。

タイヤの減り方から足回りの狂いを疑う話は、ローテーションを調べたときに書いたので、そちらへ送ります。

サイドスリップは、かじ取装置の不適合リストの中の1項目でしかない

第169条第1項第1号を頭から読むと、まず柱書きがあります。

自動車のかじ取装置は、堅ろうで安全な運行を確保できるものであること。この場合において、次に掲げるものはこの基準に適合しないものとする。

保安基準第11条の「堅ろうで、安全な運行を確保できる」がそのまま降りてきて、そのあとに具体例が並びます。イからカまで、全部で14項目。サイドスリップはそのうちの、11番目です。

全部書き出します。

内容
ナックル・アーム、タイロッド、ドラッグ・リンク又はセクタ・アーム等のかじ取リンクに損傷があるもの
イに掲げる各部の取付部に、著しいがた又は割ピンの脱落があるもの
かじ取ハンドルに著しいがたがあるもの又は取付部に緩みがあるもの
給油を必要とする箇所に所要の給油がなされていないもの
かじ取フォークに損傷があるもの
ギヤ・ボックスに著しい油漏れがあるもの又は取付部に緩みがあるもの
かじ取り装置のダスト・ブーツに損傷があるもの
パワ・ステアリング装置に著しい油漏れがあるもの又は取付部に緩みがあるもの
パワ・ステアリング装置のベルトに著しい緩み又は損傷があるもの
溶接、肉盛又は加熱加工等の修理を行った部品を使用しているもの
4輪以上の自動車のかじ取車輪をサイドスリップ・テスタを用いて計測した場合の横すべり量が、走行1mについて5mmを超えるもの(+ただし書き)
運行補助機能のうち横方向及び縦方向の動きを持続的に制御するものを有するかじ取装置を備える自動車にあっては、当該機能を損なうおそれのある損傷等のあるもの
緊急車線維持装置の機能を損なうおそれのある損傷等のあるもの
運行補助機能を有するかじ取装置及び緊急車線維持装置であって、別添124「継続検査等に用いる車載式故障診断装置の技術基準」に定める基準に適合しないもの

14項目のうち、数値が入っているのはルだけです。あとは「著しいがた」「著しい油漏れ」「損傷があるもの」といった定性的な書き方で並んでいます。目立つのは数字が付いているからであって、リストの中での重さは、ダストブーツの破れやパワステの油漏れと横並びです。

並びの後ろ3つ(ヲ・ワ・カ)だけ毛色が違うのも分かります。運行補助機能、緊急車線維持装置、車載式故障診断装置。レーンキープの類が壊れていないか、という項目が同じリストに追加されているわけで、かじ取装置という括りが機械部品だけの話ではなくなっているのが読み取れます。

ついでに同じ第3項の第2号に、こういう一文もありました。パワーステアリングを装着していない車で、かじ取車輪の輪荷重の総和が4,700kg以上のものは基準に適合しない。重い車で手動ステアリングは認めない、という趣旨だと思われます。乗用車には縁のない数字ですが、条文には残っています。

テスタが使えないときは走らせて見てよい

9-2にはもう1項あって、こう書かれています。

サイドスリップ・テスタを用いて審査することが困難であるときに限り、走行その他の適切な方法により審査し、(1)に掲げる基準への適合性を判断することができるものとする。

これは、検査で使う器具の一覧のほうにも同じ形で書かれている逃げ道です。同じ表の中で、排出ガスのCOと炭化水素にはこの逃げ道が付いていません。装置ごとに扱いが分かれています。

その器具の一覧は、同じ日に書いた排出ガスの記事のほうが持っているので、そちらへ送ります。

今回開かなかったもの

  • UN R79の5.と6.の中身。国連側のサイトから原文を取得できませんでした。規則番号までにとどめています
  • 別添124(継続検査等に用いる車載式故障診断装置の技術基準)。第169条第1項第1号カが引いていますが、開いていません
  • 車種ごとのメーカー指定値。告示にも規程にも一覧がなく、出典を示している情報源も見つかりませんでした
  • 調整の方法と費用。条文の外の話です
  • 4WS車の特例。上位に「2025年施行の改正基準で4WS車の特例が細分化された」と書いているページがありましたが、今回開いた第13条・第91条・第169条・9-2のどこにも4WSは出てきません。出典も示されていなかったので、今回は扱っていません

よくある質問

車検のサイドスリップの基準値はいくつですか

かじ取車輪の横すべり量が、走行1mについて5mmを超えると基準に適合しません(細目告示 第169条第1項第1号ル)。ただし、メーカーまたは日本への輸入元が指定する範囲内にある場合は、この限りではないというただし書きが付いています。

外車だとサイドスリップの基準が違うというのは本当ですか

条文にあるのは「自動車製作者等が指定する横滑り量の範囲内ならこの限りでない」というただし書きで、その「自動車製作者等」の定義に「当該自動車を本邦に輸出することを業とするもの」が明文で入っています。ただし指定が無ければ5mmのままで、車種ごとの指定値の一覧は告示にも規程にもありません。

後輪(リア)のサイドスリップも測られますか

条文が対象にしているのはかじ取車輪で、後輪という語は出てきません。ただし後輪側の狂いは前輪の測定値にも影響します。

サイドスリップは必ずテスタで測るのですか

原則はサイドスリップ・テスタです。ただし審査事務規程9-2(2)に「テスタを用いて審査することが困難であるときに限り、走行その他の適切な方法により審査」できると書かれています。

5mmを超えると何が起きますか

その項目が基準に適合しないと判定されます。サイドスリップは、かじ取装置の不適合例イ〜カのうちの1項目で、ダスト・ブーツの損傷やパワ・ステアリングの油漏れなども同じリストに並んでいます。

本記事は道路運送車両の保安基準の細目を定める告示 第13条【2026.1.9】、同 第91条同 第169条独立行政法人自動車技術総合機構 審査事務規程(第9章=最終改正 第72次、7-13/8-13=同 第74次)、道路運送車両の保安基準を2026年9月9日に取得して書いています。告示・規程は改正されます。実際に受けるときは最新版と、通す予定の検査場・整備事業者の判断をあわせてご確認ください。

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