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時計は火災保険の「明記物件」なのか。3社の公式FAQを読んだら、線が30万円・100万円・1,000万円に割れていた

運転席でロレックス デイトナを着けた手元(オーナー撮影)。火災保険の家財で時計がどう扱われるかを解説する記事のアイキャッチ Watch|時計
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時計の記事をこのサイトで10本書いてきて、全部の本文を検索してみたら「火災保険」という言葉が1回も出てきませんでした

磁気と湿度の話は書きました。防水の表示の読み方も、売ったあとの税金も書きました。ブランドが用意している盗難のカバーについても1本あります。なのに、損害保険の側から見たらどうなるのかという話だけ、10本のどこにもありませんでした。

2023年以降で19本の売買をして、時計・宝飾品の古物商許可も持っているのに、この抜け方はちょっと間抜けだなと思いました。

そこで、東京海上日動・損保ジャパン・三井住友海上・あいおいニッセイ同和・SOMPOダイレクトの公式ページを実際に開いて、原文を読みました。2026年9月20日時点の記載です。

結論から書くと、「30万円を超える時計は申告しないと補償されない」という、よく見る説明は、そのままでは当てはまりませんでした。

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「明記物件」の定義に、時計という言葉が出てこない

まず、いちばん引っかかったところから。

損保ジャパンの『THE 家財の保険』の説明はこうなっています。

貴金属・稿本等(2020年12月31日以前始期契約では明記物件という)とは、貴金属、宝玉および宝石ならびに書画、骨董(こっとう)、彫刻物その他の美術品で、1個または1組の価額が30万円を超えるものや、稿本や設計書などのことをいいます。

出典: 損保ジャパン「貴金属・稿本等(明記物件)とは具体的にどのようなものですか?」(2026年9月20日確認)

貴金属、宝玉、宝石、書画、骨董、彫刻物、その他の美術品、稿本、設計書。この列挙のどこにも「時計」がありません。

三井住友海上の『GKすまいの保険』も同じで、家財明記物件は「貴金属、宝石および美術品」の3つだけです。東京海上日動の「高額貴金属等」は「貴金属・宝石・書画・骨董・彫刻物・その他の美術品」で、こちらにも時計はありません。

3社の定義文を機械で数えましたが、「時計」も「腕時計」も0件でした。

つまり、ステンレスのスポーツモデルのように、時計そのものの価値で高くなっているものは、文言の上では明記物件の列挙に入っていないことになります。逆に、ケースやブレスが金で、ベゼルに宝石が入っているものは「貴金属」「宝石」側に寄る余地があります。

ここで正直に書いておくと、どの会社も「腕時計はこう扱います」とは書いていません。 明記物件に当たるかどうかを公式に言い切っているページは、5社分を見た範囲では見つかりませんでした。

「ロレックスは家財に含めると判断している保険会社が多いようです」と書いている記事はあります。ただ、その根拠になる公式ページが示されていない。だから私もここは断定しません。列挙に時計が無い、という事実までが確認できる範囲です。

線は30万円じゃなかった。3社でバラバラだし、いつ契約したかでも変わる

ここが今回いちばん驚いたところです。

「30万円」という数字は確かに出てきます。ただしその30万円が何の線なのかが、会社によって違いました。

保険会社・商品 呼び方 定義の金額 申告・明記が必要になる金額 いつの契約か
損保ジャパン『THE 家財の保険』 貴金属・稿本等 1個または1組 30万円超 1,000万円超 2021年1月1日以降始期
損保ジャパン『THE 家財の保険』 明記物件 1個または1組 30万円超 30万円超 2020年12月31日以前始期
三井住友海上『GKすまいの保険』『同 グランド』 家財明記物件 再調達価額(新価)100万円超 100万円超(家財明記物件特約のセットが必要) 現行
三井住友海上『リビングFIT』ほか 家財明記物件 再調達価額 30万円超 30万円超 2015年9月30日以前始期ほか
東京海上日動『トータルアシスト住まいの保険』 高額貴金属等 再取得価額 30万円超 申告ではなく支払限度額で調整(下の節) 2026年10月1日改定を反映

出典: 損保ジャパン三井住友海上「家財明記物件特約とは何ですか?」東京海上日動「高額な貴金属等は、保険の対象になりますか?」(いずれも2026年9月20日確認)

損保ジャパンは、2021年1月1日を境に呼び方まで変えています。「明記物件」という言葉自体が、現行の契約では使われていません。そして申告が要る金額が30万円超から1,000万円超に動いている。33倍です。

三井住友海上は100万円超。ただし「家財明記物件特約」をセットしていて、かつ家財を保険の対象にしている契約に限る、という条件が付きます。特約を付けていなければ、その枠自体が存在しません。

この記事のために上位に出てくる解説記事を5本取得して数えてみたんですが、「1,000万円」という数字が出てくる記事は0本でした。「始期」という言葉も0本。いつ契約したかで線が変わるという、いちばん効く部分がまるごと落ちています。

自分の証券を見て「明記物件」という言葉が載っていたら、それは2020年までの契約かもしれない、という読み方ができます。

東京海上日動は「申告しないと0円」ではなく「100万円まで」だった

東京海上日動だけ、設計そのものが違いました。

高額貴金属等*の損害は、ご加入の補償タイプにて補償対象となる事故が発生した場合、1事故合計で100万円を限度に保険金をお支払いします。またお支払いの限度額を500万円または1000万円に増額することもできます。

出典: 東京海上日動 よくあるご質問 No.1914(公開日時 2026年7月14日。同ページに「本記載は2026年10月1日改定を反映しています」と明記)

申告しないと補償の対象外になる、という書き方ではありません。家財を契約していれば対象にはなる。ただし1事故で合計100万円が上限で、それを500万円か1,000万円に上げられる、という形です。

この差は大きいです。

申告制なら「申告し忘れた=0円」ですが、限度額制なら「何もしなくても100万円までは出る。足りないなら上げておく」になります。同じ「30万円超」という数字を使いながら、その先の意味が逆方向なんですね。

少し気になったのは、「1事故合計で」という書き方です。1本ごとに100万円ではなく、その事故でやられた高額貴金属等の合計に対して100万円、と読めます。何本かまとめて保管している人ほど、この1行が効いてきます。

ここは読み方が分かれるところなので、自分の証券と代理店で確認してください。私も原文を読んだだけで、査定の実務を見たわけではありません。

そもそも盗難が補償されないタイプがある

もうひとつ、前提が1段ずれるところ。

火災保険で家財を付けていれば盗難も当然ついてくる、と読めてしまいそうになりますが、東京海上日動の説明には条件が付いていました。

「住まいの保険」で、家財の補償にご契約されているお客様が、「盗難・水濡(ぬ)れ等」を補償するタイプにご契約の場合、自宅の中に保管していた物の盗難による損害は補償されます。

出典: 東京海上日動「自宅の中に保管していた物が盗難された場合、補償されますか?」(2026年9月20日確認)

条件が2つ重なっています。家財を契約していることと、「盗難・水濡れ等」を補償するタイプであること

火災と風災だけの安いプランにしていると、時計が何本あろうと盗難では出ません。明記物件の話を延々と調べる前に、自分の契約に盗難が入っているかを先に見たほうが早いです。

順番としてはこうなります。盗難が入っているか。家財が対象か。そのうえで高額品の扱いがどうなっているか。この3段を飛ばして3段目だけ調べても意味がありません。

家の中にある間しか出ない、という前提

ここからが、自分にとっていちばん刺さった部分です。

SOMPOダイレクトの『じぶんでえらべる火災保険』は、「外出時に持ち出した家財の盗難は補償されますか?」という質問に、こう答えています。

いいえ、補償されません。「じぶんでえらべる火災保険」では、家財はご契約時に設定した建物に保管している場合に補償されます。ご契約時に設定した建物以外に保管中の場合や屋外に持ち出されている場合は、補償されません。

出典: SOMPOダイレクト「外出時に持ち出した家財の盗難は補償されますか?」(2026年9月20日確認)

「いいえ、補償されません」と最初に書いてあります。ここまではっきり書いているのは、5社を見た中でここだけでした。

家財というのは住所に紐づいた概念なんですね。建物の中にある間だけ家財で、玄関を出たらその枠から外れる。

私がいま身につけているのは、ロレックスのデイトナ(Ref.126500LN)とオメガのコンステレーション、それにクロノスイスの3本です。身につけている時間のほうが、家に置いてある時間より長い日も普通にあります。 家財の議論をどれだけ詰めても、その時間帯は守備範囲の外だった、ということになります。

家の中にある間の話としては、置き場所を一段固くするという選択肢はあります。使っていないので「これがいい」とは言えませんが、こういうものがあります。

家庭用の小型耐火金庫(テンキー式・床置きタイプ)

※ 耐火性能と防盗性能は別物です。書類を火から守る目的の製品は、持ち去りに対しては強くありません。床や壁に固定できるかを先に見たほうがいいです。2026年9月時点。

湿度と磁気の側の話は、別の記事で書いています。

持ち出し用の特約を付けても、紛失と置き忘れは外れる

では持ち出し中はどうするのか。特約があります。

損保ジャパンの『THE すまいの保険』には携行品損害特約があり、居住建物の外で携行している身の回り品の、不測かつ突発的な事故による損害を補償します(損保ジャパン「携行品損害特約とはなんですか?」・2026年9月20日確認)。自己負担額は1万円。家財が保険の対象に含まれる契約に限られます。2022年10月1日以降始期の契約は国内外を問わず補償、とも書かれています。

あいおいニッセイ同和損保には自宅外家財特約があり、国内外で携行中の家財の破損や盗難を補償します。保険の対象である家財と補償内容は同一、という書き方です。

ただ、そのページの注釈にこう書いてありました。

紛失や置き忘れによって生じた損害や、通常の使用において発生するすり傷等の外観上の損傷または汚損であってその機能に支障をきたさない損害については、お支払対象とはなりません。

出典: あいおいニッセイ同和損保「自宅外家財特約はどのような特約ですか?」(2026年9月20日確認)

紛失と置き忘れは外れる。

これを読んだとき、自分が別の記事に書いたことを思い出しました。車で出かけて時計を外す場面の話で、私はこう書いています。

このとき車内に残していくのが一番楽なのですが、私はやりません。理由は盗難というより、単純に温度と、置いた場所を忘れるからです。

出典: 当サイト「運転中に腕時計を傷つけないために」より

自分がいちばん現実的に起こりそうだと思っていたリスクが、そのまま特約の対象外欄に書いてあるわけです。これは効きました。盗まれるより先に、置いてきた場所を忘れる。そっちのほうがよほど自分の実感に近いのに、保険で受けられるのは盗まれたほうだけ、と。

対象外なら、保険の外で潰すしかありません。置いたものを探せるようにしておく、という方向です。

紛失防止タグ(ケースやポーチに入れておくタイプ)

※ 時計本体に付けるものではなく、外したときに入れるケースやポーチ側に入れておく使い方を想定しています。追跡機能の精度や電池寿命は製品によって差があります。2026年9月時点。

もうひとつ、あいおいの同じページには自宅外家財に含まれないものが列挙されていました。有価証券、預貯金証書、クレジットカード、プリペイドカード、自動車・自転車およびその付属品、サーフボード、携帯電話などの携帯式通信機器、パソコンなどの携帯式電子事務機器、眼鏡・コンタクトレンズなどの身体補助器具、動物・植物など。

ここにも時計は出てきません。 除外リストに無いということは、少なくとも名指しで外されてはいない、ということになります。ただ、これも「だから出る」という意味ではないので、契約ごとに確かめる必要があります。

メーカー側の仕組みは、保険とは別のところにある

保険の話とは別に、ブランド自身が盗難をカバーする仕組みを持っていることがあります。

オーデマ ピゲの AP Coverage Service がそれで、公式のFAQには「保険ではありません」とはっきり書かれています。無償で、そのかわり自分で1本ずつ有効化しないと効かないという設計です。条件がなかなか細かいので、中身は別記事にまとめました。

損害保険とは別系統の話なので、ここでは重ねません。両方ある人は、どちらが先に動くのかを確認しておいたほうがいいと思います。

自分の契約で確かめる順番

5社ぶん読んで分かったのは、一般論では決まらないということでした。会社と商品と始期の3つが揃わないと、自分の答えが出ません。

順番はこうなると思います。

  • 保険証券で、盗難が補償される契約かを見る。ここが入っていなければ、この先は全部関係ありません
  • 家財が保険の対象になっているかを見る。建物だけの契約だと、時計はそもそも対象外です
  • 証券に「明記物件」「貴金属・稿本等」「家財明記物件」のどの言葉が載っているかを見る。言葉が違えば、金額の線も違います
  • 始期日を見る。損保ジャパンなら2021年1月1日、三井住友海上なら2015年10月1日が境です
  • 持ち出し中をどうするかを決める。携行品損害特約や自宅外家財特約が付けられるか、付いているかを代理店に聞く
  • 価額を示せる書類が手元にあるかを確認する。購入時の明細や保証書が無いと、いくらのものだったかを説明する材料がありません

最後の1つは、売るときにも同じものが要ります。取得費の記録という意味では、税金の話と地続きです。

そして、いくらのものなのかという話になると、結局は市場がいくらで買うかに戻ります。業者によって査定が変わる理由は、別の記事で書きました。

書き終えてから自分の記事の一覧を見直したんですが、時計をどこに置くか、どう運ぶか、どう売るかは全部記事にしてあるのに、その間に何かが起きたときの受け皿だけ1本も無いんですよね。19本売り買いしてきて、ここが空いていたのはさすがに抜けすぎでした。

よくある質問

Q. 30万円を超える時計は、申告しないと補償されないのですか?

会社と契約の始期によって違います。損保ジャパンの『THE 家財の保険』は2021年1月1日以降始期の契約で、申告・明記が必要なのは1,000万円を超えるものとされています。2020年12月31日以前始期の契約では30万円超が対象です。三井住友海上の『GKすまいの保険』は100万円超(2015年9月30日以前始期や『リビングFIT』は30万円超)。東京海上日動は申告制ではなく、1事故合計100万円という支払限度額で調整する形です。ご自身の保険証券と、取扱代理店への確認が必要です。

Q. そもそも腕時計は「明記物件」に当たるのですか?

今回確認した範囲では、どの会社も明言していません。3社の定義文に並んでいるのは貴金属・宝玉・宝石・書画・骨董・彫刻物・美術品・稿本・設計書で、「時計」という語は0件でした。ケースやブレスが貴金属、あるいは宝石が使われている個体は貴金属・宝石側に寄る可能性がありますが、判断するのは保険会社です。加入先に個体を伝えて確認してください。

Q. 外出先で盗まれた場合も火災保険で補償されますか?

原則として補償されません。SOMPOダイレクトの『じぶんでえらべる火災保険』は「いいえ、補償されません」と明記しており、家財は契約時に設定した建物に保管している場合に補償される、としています。持ち出し中を対象にするには、携行品損害特約や自宅外家財特約といった別の枠が必要です。

Q. 置き忘れて無くした場合はどうなりますか?

あいおいニッセイ同和損保の自宅外家財特約では、紛失や置き忘れによって生じた損害は支払対象外と注記されています。特約を付けていても、この類型は外れる設計になっていることがあります。

Q. どの資料を見れば自分の条件が分かりますか?

保険証券と、契約時に渡される「ご契約のしおり(普通保険約款および特約)」です。今回は各社のパンフレットPDFも取得しましたが、PDF内のフォントの都合で本文を機械的に検索できませんでした。そのため本記事は、原文が読める公式FAQの記載だけを根拠にしています。約款本文の確認は、手元の冊子か代理店経由でお願いします。

まとめ

  • 3社の定義文に「時計」という語は0件。列挙されているのは貴金属・宝玉・宝石・書画・骨董・彫刻物・美術品など
  • 申告が要る金額の線は30万円ではない。損保ジャパン1,000万円超(2021年1月1日以降始期)、三井住友海上100万円超、東京海上日動は申告ではなく1事故100万円の限度額
  • 盗難が入っていないタイプがある。高額品の扱いを調べる前に、まずそこを見る
  • 家財は住所に紐づく。持ち出している間は別の特約の話になり、その特約でも紛失・置き忘れは外れる

数字と呼び方が会社ごとに違うので、他人の証券の話は自分の証券の話になりません。ここだけは、手元の書類を開く以外に近道が無さそうです。

本記事は情報提供を目的としたもので、特定の保険商品の勧誘を目的とするものではありません。記載内容は2026年9月20日時点で各社の公式ページに掲載されていたものです。商品改定により変更される場合があり、実際の補償の可否・支払限度額・特約の付帯可否を決めるのは保険会社です。ご自身の契約については保険証券とご契約のしおり(普通保険約款および特約)をご確認のうえ、取扱代理店または保険会社にお問い合わせください。税務が絡む判断については、税理士等の専門家にご相談ください。