私は会社員で、副業として時計の売買(古物商許可を持っています)と、このブログをやっています。車はAMG C43からG400dに乗り替えて今に至ります。
この2つが交わるところに、家事関連費という考え方があります。仕事にも私生活にも使う支出をどう扱うか、という話です。車はその代表格で、金額が大きい分効き方も大きい。
ところが調べていくと、一番知りたい「何割まで落とせるのか」が、国税庁のどこにも書かれていません。比較サイトを何本読んでも出てきません。書かれていないのには理由があって、そこが分かると自分で線を引けるようになります。
通達の条文まで戻って線引きの原則を確認したうえで、燃料費だけは払い方の段階で分けられるという実務的な話まで書きます。
「経費になる/ならない」の二択ではない
まず前提から。所得税の世界では、支出は3つに分かれます。
- 家事費 — 完全に私生活のための支出。経費にならない
- 必要経費 — 完全に業務のための支出。経費になる
- 家事関連費 — 両方にまたがる支出。条件付きで、区分できた部分だけが経費になる
車はほぼ確実に3番目に入ります。通勤にも買い物にも使い、たまに仕事でも使う。この「たまに」をどう扱うかが論点です。
国税庁のタックスアンサー No.2210「必要経費の知識」には、こう書かれています。家事関連費のうち必要経費になるのは、取引の記録などに基づいて、業務遂行上直接必要であったことが明らかに区分できる場合の、その区分できる金額に限られる、と。
つまり「使っているから何割か落ちる」ではありません。区分できた分だけです。
条文はもっとそっけない
もう一段戻って、所得税基本通達45-1・45-2(家事関連費)を見ると、書いてあるのはこれだけです。
- 45-1 — 業務の遂行上必要な費用と家事費を明らかに区分することができる場合に、その必要な費用の額を控除する
- 45-2 — 業務遂行上必要かどうかは、業務に支出された金額であるかによって判定する
「50%まで」も「走行距離で按分せよ」も書かれていません。方法は指定されておらず、区分できたという事実だけが要求されている、という構造です。
国税庁が「何割」と書かない理由
書けないからです。同じ車でも、週5日で客先を回る人と、月に1度だけ仕入れに行く人とでは、業務利用の実態がまったく違います。一律の割合を法令で決めると、どちらかが必ず不合理になる。
だから法令は割合を決めず、「区分できるか」という手続き要件だけを置いたわけです。
裏を返すと、こうなります。
割合そのものより、その割合をどう出したかを説明できるかが問われる。
実務で使われている根拠は、だいたい次のどれかです。
| 按分の基準 | 向いている使い方 | 用意しておくもの |
|---|---|---|
| 走行距離 | 移動そのものが業務(仕入れ・納品・現場) | 走行記録。日付・行き先・距離・目的 |
| 使用日数 | 業務で使う日がはっきり分かれている | カレンダー、業務日誌 |
| 時間 | 1日の中で業務と私用が混ざる | 稼働時間の記録 |
車の場合は走行距離が一番説明しやすいとされています。メーターという第三者から見て動かない数字があり、行き先とセットで残せば、後から検証できるからです。
逆に何も記録がないと、割合を何%にしたところで根拠がありません。ここが実際の分かれ目です。
実額に当てはめるとどうなるか
抽象的なままだと使いにくいので、公開している自分の実額を材料に計算してみます。あくまで「仮に按分するとしたら」の計算例で、私がこの通りに申告しているという話ではありません。
うちの車で実際にかかった費用のうち、記事にしてある大きいものはこのあたりです。
初回車検が127,666円。うち法定費用が52,550円でした。
タイヤはディーラー見積り16万円が、持ち込み交換で6万円になりました。差額10万円です。
どちらも十数万円の単位で動く支出です。仮に走行距離のうち20%が業務だったとして、按分できるのはその20%だけ。127,666円なら25,533円です。
金額を見て「思ったより小さい」と感じるかもしれません。そこが大事なところで、車を経費にする話は、節税額そのものより「記録を残す手間」との釣り合いで考えるものです。年2万円台のために毎日の走行記録をつけるかどうかは、人によって答えが変わります。
判断を分ける質問はこれ
- その移動は業務が無ければ発生しなかったか
- 距離と行き先を後から示せるか
- 私用と混ざった日を分けて書けるか
3つとも「はい」と言えないなら、無理に按分しないほうが結果的に安全です。
燃料費だけは、払い方の段階で分けられる
ここまでは記録の話でした。ただガソリン代(軽油代)には、記録に頼らず先に分ける方法があります。支払い口座そのものを分けてしまうやり方です。
普段使いのクレジットカードで給油していると、明細の中で私用の給油と業務の給油が混ざります。あとから1件ずつ「これは仕入れに行った日」と仕分ける作業が発生する。混ぜてから分けるのは、一番手間がかかる順番です。
一方、業務用の給油だけを別のカードに寄せておけば、明細がそのまま集計表になります。この用途に使われているのが、法人・個人事業主向けの給油専用カードです。
なお燃料の単価そのものがどう動いているかは、別記事で資源エネルギー庁の週次データを追っています。
「審査なし」のガソリンカードは何が違うのか
給油専用カードを調べると「クレジット審査なし」という表記が並びます。怪しく見えますが、仕組みを見ると理由があります。
クレジットカードではないからです。 カード会社が与信を与えて立て替える商品ではなく、協同組合の組合員として給油し、利用額を翌月に口座振替で払う。カード会社の与信審査が発生する余地がそもそもありません。
ただし「審査が一切ない」わけではありません。ETC協同組合は公式サイトに「組合加入には審査がございます。ご要望にお応えできない場合があります」と明記しています。無くなるのはクレジット審査であって、組合に入れるかどうかの審査は残ります。比較サイトの「審査なし」という見出しだけを見て申し込むと、ここで面食らいます。
代わりに、組合に入るという前提が付きます。この分野で個人事業主でも申し込める代表格は次の2つです(いずれも2026年8月時点の公式サイト記載)。
| 項目 | ETC協同組合(TRUST&FLEXカード) | 高速情報協同組合 |
|---|---|---|
| 対象 | 法人・個人事業者 | 法人・個人事業主 |
| 年会費・手数料 | 手数料/年会費/事務手数料とも無料 | 年間手数料・カード手数料とも無料 |
| 審査 | 組合加入の審査あり(クレジット審査ではない) | クレジット審査なし |
| 出資金 | 1万円。退会時に返金 | 10,000円/1社。脱退時に返金 |
| 使える店舗 | 公式サイトに記載なし(申込時に確認) | 全国約6,400店舗のアポロステーション・出光&昭和シェルSS |
| 給油価格 | 毎月末に算出する組合価格(後決め方式)。高速道路の給油は金額が異なる | 全国平均から算出する組合価格。全国どこでも同じ単価 |
| 支払い | 月末締め・翌月末日に口座振替 | 翌月末に口座振替(後払い) |
構造はほぼ同じです。どちらも出資金1万円が入口にあり、どちらも後払いで、どちらも価格は組合が後から決める。 違うのは細部で、高速情報協同組合は使える店舗を公式に出している一方、ETC協同組合は高速道路上のSSでは価格が変わる点を明記しています。
比較サイトでは「年会費無料・審査なし」だけが強調されがちですが、入口に出資金1万円があることは先に知っておいたほうがいい。返ってくるとはいえ、預けるお金であることに変わりはありません。
全国一律価格は、得なときと損なときがある
もう1つ、見落とされやすい点があります。組合価格は全国平均から算出されるので、地域差がなくなります。
- ガソリンが高い地域を走ることが多い人 — 平均が効くので有利になりやすい
- 安い地域に住んでいて、いつもの安いスタンドがある人 — 平均のほうが高くつくこともある
「必ず安くなる」ではありません。自分がいつも入れている単価と、組合価格を比べてから決める話です。
ETC協同組合 TRUST&FLEXカード(法人ガソリンカード)
法人・個人事業者向けの給油専用カード。クレジット機能が無いためカード会社の与信審査はありません(組合加入の審査はあります)。手数料・年会費・事務手数料は無料で、出資金1万円は退会時に返金されます。業務の給油を1枚に寄せると、明細がそのまま集計表になります。
使えるスタンドのブランドを先に確認したい場合は、店舗を公開している高速情報協同組合の法人ガソリンカード(アポロステーション・出光&昭和シェルSS 全国約6,400店舗)も並べて見ておくと判断が早いです。
※ 条件は2026年8月時点で公式サイトに記載されている内容です。申込前に最新の条件をご確認ください。
会社員の副業でも作れるのか
ここが自分でも引っかかったところです。
給油専用カードは「法人・個人事業主」向けと書かれています。会社に勤めながら副業をしている人がそのまま当てはまるかは、事業として届け出ているかどうかで変わります。開業届を出して事業所得として申告している人は個人事業主ですが、雑所得の範囲でやっている人はそうではありません。
判断が微妙なときは、申込先に条件を確認するのが早いです。「作れるはず」で進めて後から差し戻されるより、先に聞いたほうが手戻りがありません。
そもそも副業の所得区分の話は、車より先に整理しておいたほうがいい論点です。私の場合は時計の売買がそこに当たるので、別記事で条文まで戻って確認しています。
支払い方を変えるだけで効く部分もある
経費にするかどうかとは別に、同じ支出をどこに通すかで数百円から数万円が動く話もあります。自動車税をカードで払ったときの実額は別記事にまとめました。手数料を引いた差引がいくら残ったか、という数字です。
車にかかる費用の全体像は、こちらで年単位で出しています。
よくある質問
按分の割合は何%なら安全ですか
法令にも通達にも「安全な割合」は書かれていません。 割合そのものではなく、その割合を出した根拠(走行距離や使用日数の記録)を示せるかが問われます。「一般的に◯%」という数字を根拠なく使うのは、一番危ういやり方です。
車の購入代金も経費にできますか
車両は減価償却の対象になり、業務利用分を耐用年数にわたって費用にしていく形になります。ただし新車・中古車、普通車・軽、リースか購入かで扱いが変わります。金額が大きく間違えたときの影響も大きいので、ここは税理士に相談する前提で考えたほうがいい部分です。
給油専用カードは何枚まで作れますか
高速情報協同組合の場合、出資金は1社あたり10,000円で、カードの発行枚数は公式サイトの案内に沿って複数枚に対応しています。従業員に持たせる想定の商品なので、車ごとに分ける使い方もできます。詳しい上限は申込時に確認してください。
リースなら経費の扱いは簡単になりますか
リース料は月額で費用化されるため、減価償却の計算は不要になります。ただし業務利用分の按分という論点はリースでも残ります。「リースにすれば全額落ちる」ではない点に注意してください。外車でリースが使えるかどうかは別記事で調べています。
まとめ
- 車の費用は「経費になる/ならない」ではなく、家事関連費として区分できた分だけが経費になる
- 国税庁は割合を示していない。示せないから示していない。代わりに「明らかに区分できること」を要求している
- したがって決め手は割合ではなく、走行距離などの記録を残せるかどうか
- 燃料費だけは、支払いを分けることで記録の手間を先に減らせる
- 給油専用カードの「審査なし」はクレジットカードではないことに由来する。ただし出資金10,000円という入口がある
記録を残す気がないなら、按分は無理にやらないほうがいい。逆に記録を残す前提で組むなら、一番最初に分けるべきは燃料費です。毎月発生して、件数が多くて、後から仕分けるのが一番面倒だからです。
※ 本記事は情報提供を目的としており、特定の商品の勧誘や、税務上の助言を目的とするものではありません。掲載している制度の内容は2026年8月時点で公開されている国税庁の資料および各社公式サイトに基づいています。実際の申告や経費処理の判断については、税理士など専門家にご相談ください。









