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車検シールの「運転者席側上部」は、省令に書かれていなかった|変わったのは昭和36年の通達のほうです

G400dの運転席から見たフロントガラス。車検シールの貼付位置を定めているのは省令ではなく昭和36年の通達 Car|車
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車検シールの貼り付け位置が変わったのは、2023年7月3日です。

私がC43からG400dに乗り換えたのが2023年8月なので、施行のひと月後ということになります。ただ、いま乗っている車のシールがフロントガラスのどこにあるのかを、私はこのサイトのどこにも書いていません。

で、その「変わった」の中身を確かめようと道路運送車両法施行規則を開いたら、該当する条文が1文字も変わっていませんでした。

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3行でいうと

先に結論

施行規則 第37条の3は「前面ガラスの内側に前方から見易いように」のままで、2023年7月3日をまたいで変わっていない。「運転者席」という語は施行規則の全文に1回も出てこない

② 変わったのは昭和36年の「自動車検査業務等実施要領について(依命通達)」。条文は「自動車の使用者を指導するものとする」という書き方

③ 国交省のQ&Aは「貼付位置が違うことにより継続検査の受検ができなくなる等の措置は考えていない」と明記している

省令のほうを、4つの時点で並べてみた

先に条文です。検査標章をどこに表示するかを定めているのは、道路運送車両法施行規則の第37条の3です。

検査標章は、自動車の前面ガラスの内側に前方から見易いように貼り付けることによつて表示するものとする。ただし、運転者室又は前面ガラスのない自動車にあつては、自動車の後面に取りつけられた自動車登録番号標又は車両番号標の左上部に見易いように貼り付けることによつて表示するものとする。

e-Gov法令検索 道路運送車両法施行規則より)

「前面ガラスの内側に前方から見易いように」。それだけです。運転者席側とも、上部とも、車両中心から遠いとも書かれていません。

現行版だけ見て判断すると危ないので、e-GovのAPIで時点を指定して4つ取りました。

時点 取得サイズ 第37条の3の本文
2022年1月1日 919,003バイト 「前面ガラスの内側に前方から見易いように」
2023年6月30日(施行の3日前) 986,689バイト 同一
2023年7月3日(施行当日) 986,689バイト 同一
現行(2026年8月27日取得) 998,760バイト 同一

4つとも完全に同じでした。ついでに施行規則の全文124,345字を検索すると、「運転者席」という語は0件。「上部」は1件だけで、それは上に引いたただし書きの「ナンバープレートの左上部」のことです。

念のため書いておくと、取ってきたXMLが古かったわけではありません。同じファイルの第44条を見ると、2025年4月に改正された「二月前」の文言がちゃんと入っています。この44条については別記事で条文を追いかけました。

では、何が変わったのか

答えは通達でした。しかも、かなり古い通達です。

今般、「自動車検査業務等実施要領について(依命通達)」(昭和36年11月25日付、自車第880号)を改正しましたので、貴会傘下会員に対し周知方お願いするとともに…

令和5年2月22日付で自動車局の自動車情報課長・整備課長から出された文書(国自情第313号の3/国自整第246号の3)の書き出しです。改正した通達そのものは令和5年2月22日付 国自整第245号・国自情第312号。公布が2023年2月22日で、施行が2023年7月3日。

出どころが省令ではなく通達だと分かると、条文の書き方も腑に落ちます。改正後の 3-9-1 はこうです。

3-9-1 前面ガラスにはり付けて表示する検査標章の表示箇所は、以下によるよう自動車の使用者を指導するものとする。
(前方かつ運転者席から見易い位置)
運転者席側上部で、車両中心から可能な限り遠い位置
※例外 ただし、上記位置で運転者の視野を妨げる場合は、運転者の視野を妨げない、前方かつ運転者席から見易い位置

「指導するものとする」。 主語は運輸支局などの側で、使用者に対して直接「こうしなければならない」と命じている文ではありません。

依命通達というのは、大臣の命を受けて局長名などで下部組織に出す内部文書です。法令ではないので、そこに書かれた位置に貼らなかったこと自体を取り締まる根拠にはならない。上位に出てくる解説を何本か読みましたが、根拠がどの文書なのかを特定して書いているものは見つけられませんでした。

そう書くとルールを軽く見ているように読めるかもしれませんが、逆です。根拠が何なのかを知っておかないと、次に「罰則はあるのか」を調べたときに答えが出せません。 その話は後でします。

昔は「真ん中」が原則だった、と条文に書いてある

「車検シール 貼る位置」で検索すると、サジェストに「真ん中」が出てきます。これ、記憶違いではありません。

新旧対照表の旧のほうを読むと、はっきり書いてあります。

3-9-1 …次の各号によるよう自動車の使用者を指導するものとする。
(1) 車室内後写鏡を有する自動車にあっては、車室内後写鏡の前方の前面ガラスの上部。この場合において、検査標章の文字の識別が困難となるときは、車室内後写鏡に隠れる範囲内において文字の識別が可能となる位置まで下方にずらした位置
(2) (1)に掲げる自動車以外の自動車にあっては、前面ガラスの上部であって運転者席から最も遠い位置。この場合において、検査標章の文字の識別が困難となるときは、文字の識別が可能となる位置まで下方にずらした位置
(3) (1)若しくは(2)による表示が困難な場合又は運転者や車載カメラが交通状況を確認するために必要な視野又は機能を妨げるおそれのある場合は、運転者等が交通状況を確認するために必要な視野等を妨げるおそれの少ない位置であって検査標章の文字の識別が可能となる位置

ルームミラーがある車、つまりほぼ全部の乗用車は(1)。ルームミラーの前方のガラス上部——これが「真ん中」の正体です。

面白いのは(2)のほうで、ルームミラーが無い車は「運転者席から最も遠い位置」とされていました。新しいルールが「運転者席側」なので、向きがちょうど逆になっています。

旧の3号立てが新では1本の文と例外1つに整理されたので、条文としてはずいぶん短くなりました。読みやすくはなったものの、旧の(1)にあった「後写鏡に隠れる範囲内において」のような具体的な逃げ道が消えているのは、少し気になるところではあります。

2023年7月2日まで 2023年7月3日から
基本の位置 ルームミラーの前方の前面ガラス上部(=おおむね中央) 運転者席側上部で、車両中心から可能な限り遠い位置
ミラーが無い車 前面ガラス上部で運転者席から最も遠い位置 (区別なし)
例外 文字が識別できないとき/視野・車載カメラを妨げるおそれがあるとき 運転者の視野を妨げるとき
条文の構造 3号立て 1文+例外1つ

位置がずれていたら、罰金を取られるのか

国交省のQ&Aに、そのままの質問があります。

Q3.貼付位置を指定された位置に貼らなかった場合の罰則はあるのか。
A3.道路運送車両法第66条において、自動車には検査標章を表示しなければ運行の用に供してはならないとされており、省令により前面ガラスの内側に貼付等するよう規定している。
 また、検査標章の具体的な貼付位置については、今般改正される自動車検査業務等実施要領により自動車の使用者を指導させていただいているため、ご協力をお願いしたい。
 なお、同法第66条に違反した場合、同法第109条の罰則が適用される場合がある。

読み方に注意が要ります。3つの層が別々に書かれています。

中身 性質
法 第66条第1項 検査標章を表示しなければ運行の用に供してはならない 法律上の義務
施行規則 第37条の3 前面ガラスの内側に、前方から見易いように貼り付ける 省令上の義務
実施要領 3-9-1 運転者席側上部で、車両中心から可能な限り遠い位置 通達による指導

罰則が付いているのは一番上です。第109条第9号を開くと、こう書かれています。

第六十六条第一項…の規定に違反して、自動車検査証若しくは限定自動車検査証を備え付けず、又は検査標章を表示しないで自動車を運行の用に供した者

これが五十万円以下の罰金。つまり罰則の対象は「表示しないで運行した」ことであって、「表示したが位置が違う」ことではありません。

とはいえ真ん中に貼ってあっても法令の要求(前面ガラスの内側・前方から見易い)は満たしています。そこを外れる貼り方——たとえばダッシュボードに置いておくとか、剥がして車検証入れに入れておくとか——になると話は変わります。通達の位置と、省令の位置を、同じ強さのものとして扱わないことです。

車検のときに、位置を理由に落とされるか

これもQ&Aにあります。私が読んでいていちばん実務的だと思った1問です。

Q6.検査標章の貼付位置が違うことにより車検を受検できない等といったことは考えられるのか。
A6.継続検査の受検ができなくなる等の措置は考えていない。

言い切っています。位置が原則どおりでないことを理由に受検を拒む運用はしない、ということです。

車検の当日に何を見られるのかは装置ごとに規程が決まっていて、そちらは自動車技術総合機構(NALTEC)の審査事務規程に書かれています。検査標章の位置はその審査項目ではなく、あくまで窓口での指導事項という整理です。

いま真ん中に貼ってある人は、剥がして貼り直すのか

しなくていい、と書かれています。

Q2.既に貼付している検査標章の貼付位置を変更する必要はない。
 本取扱いについては、施行日(令和5年7月3日)以降、新たに検査標章を貼付する際の取扱いとなる。

次の車検で新しいシールを受け取ったときから、新しい位置に貼る。それだけです。

この「既にあるものはそのまま、次からは新しい方式で」という切り方は、ナンバープレートの角度やフレームの寸法基準でも同じ形が使われていました。あちらは初度登録年月で線を引いていて、判定の仕方がまた違います。

なお、旧いシールを剥がすときの話をしておくと、古いシールが残ったまま新しいものを貼るわけにはいきません。前面ガラスの内側に貼る以上、剥がし残しがあると新しいシールが浮きます。ここは道具の問題で、スクレーパーとシールはがし剤があれば大抵どうにかなります。

シールはがし剤・スクレーパー

古い検査標章の跡が残っていると、新しいシールが密着しません。ガラス面に使えるものかどうかは必ず表示を確認してください。

貼る前にガラスの内側を脱脂しておくと気泡が入りにくくなります。サジェストに「車検シール 台紙から 剥がれ ない」「貼り方 コツ」が並ぶくらいなので、ここで苦労している人は多いようです。

ガラス用クリーナー・マイクロファイバークロス

貼る面の油分を落としてから貼ると密着します。内側は手の脂が付きやすい面なので、拭いてから作業したほうが確実です。

ぼかしガラスとドラレコで、貼る場所が無いとき

ここが実際にいちばん困るところだと思います。フロントガラスの上端は、たいてい先客だらけです。

ぼかし(着色)が入っている場合はQ4。

原則として、運転者席側上部で車両中心から可能な限り遠い位置に貼付していただくこととなる。このとき、車外前方から検査標章の文字が識別できない場合にあっては、文字が認識できる位置まで下方にずらした位置に貼付願いたい。

ドラレコやETCのアンテナで物理的に貼れない場合はQ5です。

…物理的に貼付できない場合や運転者の視野を妨げる場合は、例外として、運転者の視野を妨げない、前方かつ運転者席から見易い位置でも貼付が可能とする。このとき、運転者席から見て後写鏡に隠れない位置に貼付願いたい

読み比べると条件が違います。ぼかしのときは「下にずらす」で、ドラレコのときは「後写鏡に隠れない位置」。 どちらも例外ですが、外していい方向が指定されています。

そもそもフロントガラスに何を貼っていいのかは保安基準の第29条4項に列挙されていて、検査標章はその第2号として名前が挙がっています。ドラレコがどこまで許されるかを条文で追った記事があるので、場所の取り合いの話はそちらへ。

ひとつ書いておくと、Q5は「例外として認める」と言っているだけで、どこに逃がすのが正解かまでは決めていません。ここは結局、貼る人の判断になります。

サンバイザーで隠れるのは、いいのか

Q7がそれです。

従前、検査標章は前面ガラスへの貼付を定めておりますが、一時的にサンバイザーで隠れることについては、これまでと扱いは変わらず問題ない。

運転者席側の上部という新しい位置は、右ハンドル車なら右上。サンバイザーを下ろす位置とかなり近い。そこを想定した問答が用意されているわけです。

「一時的に」という限定が付いているので、常時隠れる貼り方は想定されていないと読むべきでしょう。

なぜ運転者から見える位置に移したのか

理由は改正の概要に書かれています。

無車検運行防止対策の一環として、これまで前方から見易い位置に表示することを目的としていた検査標章の表示位置を、前方から見易い位置であるとともに運転者が検査標章に表示している自動車検査証の有効期間を容易に確認できる位置に表示するよう…

Q1ではもう少し踏み込んで「車検の受け忘れ等を未然に防止することを目的とし」と書かれています。

つまり、この改正は「見られる側」から「見る側」への転換です。もともとシールは、外から取り締まる人が見るためのものでした。それを、運転している本人が毎日見るものに変えた。

背景には、車検証が電子化されて券面から有効期間の記載が消えたことがあります。この話は別記事で扱ったので繰り返しませんが、車検証を見ても有効期間が分からなくなった以上、フロントガラスのシールが運転者にとって唯一の日常的な手がかりになったわけです。

軽自動車はどうなのか

サジェストに「車検シール 貼る位置 軽自動車」があるので触れますが、ここは確認できたところまでしか書けません。

確実に言えるのは、施行規則 第37条の3は軽自動車にも同じように効くということです。法第66条第1項が「自動車は」と書いていて、そこから省令に委任されている構造なので、車種で分かれていません。前面ガラスの内側に、前方から見易いように貼る。ここは共通です。

分からないのは通達のほうです。今回改正された「自動車検査業務等実施要領」は地方運輸局あての依命通達で、軽自動車の検査を担当する軽自動車検査協会の実務を直接定めるものではありません。協会のサイトも見ましたが、検査標章については再交付の手続きページしか見つからず、貼付位置の案内には行き着けませんでした。

なので、軽についても運転者席側上部が指導されているかどうかは、ここでは断定しません。 実際に受け取ったシールをどこに貼るかは、交付を受けた窓口か、車検を頼んだ整備工場に聞くのが確実です。

私の車のシールが、どこにあるかは書いていない

最初に戻ります。

2023年7月3日という施行日は、私にとっては車を替えた時期のすぐ手前です。C43に2019年3月から乗って、G400dへ替えたのが2023年8月。ちょうど施行のひと月後にあたります。

ただ、いま乗っている車のシールがフロントガラスのどこにあるのかは、このサイトのどこにも書いていません。公開している記事を全部検索しても「車検シール」は0件でした。C43のほうの初回車検——ヤナセで127,666円を払ったあれ——は新車から3年目なので、施行より前の話になります。

書いていない、というのがそのまま答えのような気もします。維持費の実額は1円単位で記録してきたのに、フロントガラスの右上に何が貼ってあるかは一度も話題にしていない。見えるところへ移した理由は、Q1がそのまま書いています。車検の受け忘れを防ぐため。

条文を読んで残ったのは、位置そのものより「根拠がどこにあるか」のほうでした。法律・省令・通達の3層があって、罰則が付いているのは一番上だけ。この構造さえ分かっていれば、次に何か「変わった」と言われたときも、どこを見に行けばいいかが分かります。

よくある質問

Q. 真ん中に貼ってあると違反になりますか

前面ガラスの内側で前方から見易い位置であれば、施行規則第37条の3が求めている条件は満たしています。運転者席側上部という位置は通達(自動車検査業務等実施要領 3-9-1)による指導事項で、条文は「自動車の使用者を指導するものとする」という書き方です。なお国交省のQ&Aは、既に貼付しているものについて「貼付位置を変更する必要はない」としています。

Q. 位置が違うと車検に落ちますか

国交省のQ&A(Q6)に「貼付位置が違うことにより車検を受検できない等といったことは考えられるのか」という質問があり、回答は「継続検査の受検ができなくなる等の措置は考えていない」です。

Q. 罰則はいくらですか

道路運送車両法第109条第9号は、第66条第1項に違反して「検査標章を表示しないで自動車を運行の用に供した者」を五十万円以下の罰金としています。表示していないことに対する罰則で、表示したうえで位置が通達どおりでないことを直接対象にした条文は見当たりませんでした。

Q. フロントガラスの上が着色されていて文字が見えません

Q4に対応があり、「車外前方から検査標章の文字が識別できない場合にあっては、文字が認識できる位置まで下方にずらした位置に貼付願いたい」とされています。原則の位置より下げてよい、ということです。

Q. ドライブレコーダーが邪魔で運転者席側に貼れません

Q5が例外を認めています。「物理的に貼付できない場合や運転者の視野を妨げる場合は、例外として、運転者の視野を妨げない、前方かつ運転者席から見易い位置でも貼付が可能」。そのうえで「運転者席から見て後写鏡に隠れない位置に」と付け加えられています。

Q. 軽自動車も同じですか

施行規則第37条の3は車種で分かれていないので、前面ガラスの内側に前方から見易いように貼るという点は同じです。ただし今回改正された通達は地方運輸局あての依命通達で、軽自動車検査協会の実務にどう及ぶかは一次情報で確認できなかったため、断定は避けます。

この記事で確認した文書

いずれも2026年8月27日に取得して本文を確認しています。※国土交通省の自動車検査登録総合ポータルサイトは、取得を試みた環境から接続できませんでした。通達の本体は上記2団体が掲載しているPDF(バイト数まで一致する同一ファイル)から確認しています。

本記事は2026年8月時点の法令・通達に基づく情報提供を目的としており、個別の車両の表示が適法かどうかを判定するものではありません。通達は改正されることがあり、実際の取扱いは運輸支局・軽自動車検査協会・依頼先の整備事業者によります。判断に迷う場合はこれらの窓口にご確認ください。127,666円は筆者のMercedes-AMG C43(2019年式・W205型)の初回車検における実際の支払額で、当時のものです。

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