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「WATER RESISTANT」だけの時計は、JISの表では非防水だった|気圧の数字が届かない場所がある

ダイバーズウオッチの文字盤。日常生活用防水はJIS B7021、潜水用はJIS B7023で別の規格 Watch|時計
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18本を売り買いしてきて、うまくいった取引ばかりではありません。状態の見方を間違えると、その分だけ差が出ます。

その状態の一項目である防水を、今回は表示の側から調べました。5気圧、10気圧、20気圧と数字が並んでいて、大きいほど強い。そこまでは誰でも分かります。ではその数字は何を意味していて、どこまでなら濡らしていいのか。

日本時計協会の区分表を開いたら、想像していたのと形が違いました。数字を上げていっても、途中で越えられない線がある。

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5気圧と10気圧の間ではなく、線はもっと手前にあった

先に表を出します。協会の「時計の防水」ページにある区分表を、そのまま転記したものです。表示欄の * は、そこに数字が入るという意味です(協会の原文どおり)。

JIS上の種類 名称 仕様(例) 裏蓋・文字板の表示 洗顔や雨 水仕事・水泳・マリンスポーツ等 スキンダイビング スクーバダイビング 飽和潜水
2種潜水時計 飽和潜水用防水 1,000m/600m/300m diver’s watch ***m for saturation diving
1種潜水時計 潜水用防水 300m/200m/100m diver’s watch ***m ×
2種防水時計 日常生活用強化防水 20気圧/10気圧 WATER RESISTANT **BAR × ×
1種防水時計 日常生活用防水 5気圧 WATER RESISTANT 5 BAR × × ×
(該当なし) 非防水 2気圧以上 WATER RESISTANT × × × ×
(該当なし) 非防水 (表示なし) × × × × ×

下から2段目を見てください。「WATER RESISTANT」とだけ書いてあって数字が付いていない時計は、名称の欄が「非防水」です。 洗顔と雨は○ですが、水仕事と水泳の時点で×になります。

そして一番下、表示が何も無い時計は、洗顔や雨の欄まで×。手を洗うときの跳ね返り程度ならともかく、顔を洗うときに着けたままにする想定ではない、ということになります。

「WATER RESISTANT って書いてあるから水に強いんでしょう」と思っている人は、たぶん少なくない。ここが一番、認識と表の食い違うところでした。

20気圧まで上げても、スクーバには届かない

もう一つが、上のほうの線です。

2種防水時計、つまり 20気圧でも、スクーバダイビングの欄は× になっています。スキンダイビング(空気ボンベを使用しない潜水)までは○なのに、ボンベを背負った時点で表から落ちる。

数字を大きくしていけばいつか潜水に届く、という並びになっていないんですね。潜るには「気圧が大きい防水時計」ではなく「潜水時計」でないといけない。 表示も `WATER RESISTANT **BAR` ではなく `diver’s watch ***m` に変わります。

理由は、規格そのものが分かれているからでした。

日常生活用と潜水用は、別々のJISで決まっている

協会は規格の一覧も出していて、これが2025年8月21日現在の内容です。

  • JIS B 7021「一般用防水携帯時計の種類及び防水性能」(対応ISO: ISO 22810 防水ウオッチ)
  • JIS B 7023「潜水用携帯時計-種類及び性能」(対応ISO: ISO 6425 ダイバーズウオッチ)

同じ規格の中の等級差ではなく、別の番号が振られています。 だから「5気圧 → 10気圧 → 20気圧 → 100m潜水」と一直線に強くなっていくイメージは、規格の側から見ると正しくない。20気圧の上に100m潜水があるのではなく、途中で別の規格に乗り換えているわけです。

ついでに書いておくと、同じ一覧には JIS B 7024(耐磁携帯時計)も載っています。磁気のほうは以前に別記事で調べました。

規格の一覧を眺めていて少し驚いたのは、りゅうずと防水パッキンの設計・寸法にまで ISO 10552 という番号が振られていることでした。あの小さい部品ひとつに国際規格がある。

気圧の数字を、水深に読み替えないこと

ここは表を見れば自動的に分かることなのですが、念のため書いておきます。

10気圧防水を「水深100mまで大丈夫」と読むと、表と矛盾します。 10気圧はスクーバダイビングが×で、逆に1種潜水時計の欄には「100m」と書いてあって、そちらはスクーバが○。同じ「100」でも意味が違う。

協会は気圧と水深の換算式を出していません。出していないものを、こちらで計算して補わない。 表のとおり「何ができて何ができないか」で読むのが、いちばん間違えない読み方だと思います。

競合の記事では換算の話がよく出てきますが、辿っても一次情報に行き着きませんでした。うちのサイトでは、こういうものは書かないことにしています。

「新品のときの性能」であって、そのまま続くわけではない

ここが個人的にいちばん実務に効く部分でした。協会のQ&Aに、こう書いてあります。

時計の防水性能は、経時的に劣化しますので、防水性能を維持するためにもパッキン類の交換が必要です。

日本時計協会「腕時計は、定期的な点検が必要ですか?」

同じページに、点検の頻度も数字で出ています。

2~3年に一度 点検(有償)を行なってください。

光発電式、自動巻き発電式、電波修正式、機械式、等どのような時計でも定期的な点検が必要です。

同上

2〜3年に一度。 よく言われる「オーバーホールは3〜5年」という数字とは別物で、協会が書いているのはあくまで点検の周期です。3〜5年のほうは出どころを辿れなかったので、ここでは扱いません。

パッキンについては、別のQ&Aがもう少し具体的でした。汗や水分の影響で弾力性が低下したり、脆くなって切れやすくなる。交換は電池交換時か定期点検時に依頼するのがよい、という書き方になっています。ただし「何年で交換」という年数は、協会のどこにも書かれていませんでした。

私は売る予定のある個体には自分で手を入れないので、この手のものは窓口に出すほうを勧めます。

防水を壊す操作が、Q&Aに名指しで書いてある

読んでいて手が止まったのが、この一文でした。

水分のついたまま、りゅうずやボタンの操作をすると、時計内部に水分が浸入し、防水不良の原因になる場合があります

日本時計協会「防水時計の手入れと点検について教えて」

区分表のページにも、同じ注意が1行だけ添えられています。表の下にわざわざ書いてあるということは、それだけ多いということでしょう。

海で使ったあとの扱いも具体的です。

海で泳いだ後には時計を真水で良く洗い、洗った後に良く拭いて、さびが発生しないようにして下さい

同上

そして浸水してしまった場合は、そのまま使わずにただちに修理、と書かれています。動いているから大丈夫、ではない。

拭き取りに使うものは、バンドのQ&Aのほうで「柔らかい吸湿性の良い布」と指定されています。ティッシュや服の裾で拭くのとは、たぶん想定が違います。

時計用マイクロファイバークロス(吸湿性のよい柔らかい布)

ガラスが曇ったら、どこで線を引くか

これも協会が答えを出していました。一時的な曇りと、そうでない曇りは扱いが違う。

急に冷やされたときなどにガラスの内側が曇ることがあるが、一時的なくもりは時計機能に問題を起こすことはない。ただし長時間くもりが消えない場合は、内部に水分が浸入していることも想定されるので、ただちに使用をやめて販売店か修理窓口に相談すること。

「曇り=即故障」でもないし、「そのうち消えるから放っておけばいい」でもない。消えるかどうかで判断する、という切り分けでした。

中古で買うときにも使える見方だと思います。曇っている個体をその場で見たら、少なくとも一度は聞いたほうがいい。

バンドは、素材ごとに手入れの指定が違う

防水そのものからは少し外れますが、水まわりで効いてくるので触れておきます。協会のバンドのQ&Aは、素材別に書き分けられていました。

  • 金属バンド … 汗をかいたり水に濡らしたら、柔らかい吸湿性の良い布で良く拭き取り、通気性の良い場所に保管。時々、柔らかい歯ブラシなどで中性洗剤を水で薄めた液や石鹸水で洗う
  • 革バンド … 汗をかいたら同様に拭き取って乾燥。使用しなくても徐々に劣化する性質がある
  • ウレタン・ゴム・プラスチックバンド … 洗い方は金属と同じ。弾力性がなくなったら取り換える(そのまま使うとひび割れて切れやすくなる)

革だけ「使わなくても劣化する」と明記されているのが目を引きました。しまっておけば減らない、ではない。

水に入る予定があるなら、洗える素材に替えてしまうのが素直です。

ラバー/ナイロン(NATO)ストラップ

洗うときのブラシも、協会の書き方が「柔らかい歯ブラシなど」と具体的でした。硬いものでこすると、仕上げのほうが先に負けます。

時計・バンド用のやわらかいブラシ

ダイバーズウオッチだけ、扱いが別枠になっている

協会のQ&Aで、ダイバーズだけ書き方が変わる箇所があります。修理は各メーカー指定の窓口で、事前事後のチェックと、充分な予備知識および安全教育が必要とされている。

普通の腕時計の点検と同列に置かれていません。命に関わる道具として扱われているわけで、街の時計店にふらっと持ち込んで済ませる話ではない、ということでしょう。

このあたりは、中古で潜水時計を買うときの注意にもそのまま繋がります。前のオーナーがどこで何を触ったか分からない個体を、そのまま海に持って行かないほうがいい。

結局、裏蓋の何を見ればいいのか

  • 数字の無い `WATER RESISTANT` … 協会の表では非防水。洗顔と雨まで
  • `WATER RESISTANT 5 BAR` … 1種防水時計(日常生活用防水)。水仕事・水泳まで、スキンダイビングは×
  • `WATER RESISTANT 10BAR` / `20BAR` … 2種防水時計(日常生活用強化防水)。スキンダイビングまで、スクーバは×
  • `diver’s watch ***m` … 1種潜水時計。スクーバまで
  • `diver’s watch ***m for saturation diving` … 2種潜水時計。飽和潜水まで
  • 表示が何も無い … 洗顔・雨も×

そして全部に共通して、この性能は経時的に劣化する。点検は2〜3年に一度、パッキンは電池交換時か点検時に。

数字の大小より、「何と書いてあるか」で段が決まる。表を一度見てしまえば、そんなに難しい話ではありませんでした。

なお個別の機種が実際に何に対応しているかは、メーカーの取扱説明書と保証の条件が優先です。ここに書いたのは規格と協会の一般論なので、手元の1本については購入店かメーカーの窓口で確認してください。

よくある質問

Q. 10気圧防水なら、水深100メートルまで潜れますか?

協会の区分表では、10気圧(2種防水時計・日常生活用強化防水)はスキンダイビングまでが○で、スクーバダイビングは×です。「100m」という表記が出てくるのは1種潜水時計の欄で、そちらは別のJIS(B 7023)になります。協会は気圧と水深の換算式を示していないので、数字を水深に読み替えず、区分表の○×で判断してください。

Q. 「WATER RESISTANT」とだけ書いてあります。手を洗うくらいは大丈夫ですか?

区分表では、数字の付かない `WATER RESISTANT`(2気圧以上)は非防水の欄に入っていて、洗顔や雨は○、水仕事・水泳は×です。手を洗う程度をどちらに数えるかは表からは読み取れないので、濡れたら拭く、という前提で扱うのが無難だと思います。

Q. 防水時計なら、お風呂やサウナで使えますか?

区分表は洗顔・水仕事・水泳・潜水という並びで、入浴やサウナの欄はありません。 つまり協会の表からは可否を読み取れない、というのが正確なところです。温度差でガラス内側が曇る話は別のQ&Aにあり、長時間消えない曇りは内部への浸水も想定されるとされています。判断は取扱説明書とメーカー窓口へ。

Q. 防水性能は買ったときのまま続きますか?

続きません。協会は「時計の防水性能は、経時的に劣化しますので、防水性能を維持するためにもパッキン類の交換が必要です」と明記しています。点検は2〜3年に一度(有償)、パッキン交換は電池交換時または定期点検時に依頼するのがよい、という書き方です。何年でパッキンを替えるべきかという年数は、協会には書かれていません。

Q. 水に濡れた状態でりゅうずを回してしまいました。

協会のQ&Aは「水分のついたまま、りゅうずやボタンの操作をすると、時計内部に水分が浸入し、防水不良の原因になる場合があります」としています。区分表のページにも同じ注意が添えられています。ガラス内側の曇りが長く消えないなど浸水が疑われる場合は、そのまま使わずに販売店または修理窓口へ

Q. 海で使ったあと、何をすればいいですか?

「海で泳いだ後には時計を真水で良く洗い、洗った後に良く拭いて、さびが発生しないようにして下さい」と書かれています。拭き取りには、バンドのQ&Aで指定されている「柔らかい吸湿性の良い布」を使い、通気性の良い場所で乾かします。

Q. ダイバーズウオッチの点検は普通の時計と同じですか?

違う扱いです。協会は各メーカー指定の修理窓口での対応とし、事前事後のチェックおよび充分な予備知識と安全教育が必要としています。潜水に使う前提なら、一般の腕時計と同じ感覚で扱わないほうがよい、ということになります。

本記事は2026年8月20日時点の日本時計協会の公開情報およびJIS規格名に基づく情報提供を目的としたもので、特定の製品の性能を保証するものではありません。手元の1本の防水性能と使用可能範囲は、取扱説明書および購入店・メーカーの窓口でご確認ください。