上位に出てくる記事を、告示や規程の原文と1行ずつ突き合わせる。この作業をやるのは、これで3回目です。1回目はOBD検査の対象装置、2回目は窓ガラスに貼ってよいものの一覧でした。
2回目のとき、条文の中に一つだけ開かずに閉じた扉がありました。「9-4により審査したときに可視光線透過率が70%以上」という一文です。70%という数字はそこら中に書かれているのに、その70%をどうやって当てるのかを決めている「9-4」の中身を、当時は手に入れられませんでした。
今回それが取れたので、開きます。読んでみると、思っていたより短くて、思っていたより条件が付いていました。
前回は一覧を読んだ。今回はその中の1つだけを読む
窓ガラスに貼ってよいものは、保安基準第29条第4項が「次に掲げるもの以外のものが装着され、貼り付けられ、塗装され、又は刻印されていてはならない」という形で数え上げています。原則は全面禁止で、そこに並んだものだけが例外になる。この構造と、ドラレコがどの号で読まれるのかは前回の記事に書いたので、そちらに送ります。
今回扱うのは、その一覧の中の⑫番だけです。フィルムが入ってくるのはここで、独立行政法人自動車技術総合機構の審査事務規程 7-55-1(窓ガラス貼付物等)では、こう書かれています。
⑫ ①から⑪までに掲げるもののほか、装着(窓ガラスに一部又は全部が接触又は密着している状態を含む。)され、貼り付けられ、又は塗装された状態において、透明であるもの。
この場合において、運転者が交通状況を確認するために必要な視野の範囲に係る部分にあっては、9-4により審査したときに可視光線透過率が70%以上であることが確保できるものであること。独立行政法人自動車技術総合機構 審査事務規程 7-55-1(最終改正:第66次)
短い号ですが、読む順番を間違えると意味が変わります。
70%の前に、「透明であるもの」という関門がある
この⑫、条件が2つ重なっています。
1つ目は「装着された状態において、透明であるもの」。これが一覧に入るための入口です。2つ目が「この場合において、視野の範囲に係る部分は9-4で審査して70%以上」。
つまり70%は、透明だと判断されたものに対してあとから掛かる条件であって、70%を満たせば何でも貼っていいという話ではありません。7-55-1の見出しは「性能要件(視認等による審査)」です。透明かどうかは、まず人が見て判断される側にあります。
ここが、私が読んだ上位記事とのいちばん大きな差でした。上位はほぼ全社が「可視光線透過率70%以上ならOK」という書き方をしています。間違いではないのですが、濃いスモークが落ちるのは「70%を下回るから」というより先に、そもそも⑫の入口である『透明であるもの』に入っていないから、という順序になります。
測定は、いつでも行われるわけではなかった
では9-4の本体です。全文を引きます。これで全部で、長さは373字しかありません。
9-4 窓ガラスの透過率(可視光線透過率測定器)
(保安基準第29条第4項第6号、細目告示第39条第3項第7号、第117条第4項第7号、第195条第5項第7号関係)
(1)次表に掲げる自動車に備える前面ガラス及び側面ガラス(7-54-1(6)に規定する運転者席より後方の部分を除く。)のうち運転者が交通状況を確認するために必要な視野の範囲に係る部分に、フィルム類その他が装着(窓ガラスに一部又は全部が接触又は密着している状態を含む。)され、貼り付けられ、又は塗装されていることが確認されたときは、可視光線透過率測定器を用いて可視光線透過率を計測するものとする。
なお、可視光線透過率測定器は、計測する受検車両毎に校正を行うこと。
対象 ・自動車 除外 ・被牽引自動車独立行政法人自動車技術総合機構 審査事務規程 第9章 テスタ等による機能維持確認(最終改正:第72次)9-4
読んで最初に引っかかったのが、「確認されたときは」という部分です。
9-4は「全部の車のガラスを測る」とは書いていません。フィルム類その他が装着・貼り付け・塗装されていることが確認されたときに、測定器を出す。何も貼っていない車のガラスは、この規定の中では測定の対象になりません。
しかもこの条件は「濃そうに見えたら」ではありません。同じ第9章の中で、警音器(9-10)やサイレン(9-12)は「音の大きさが規定の範囲内にないおそれがあるときは」計測する、という書き方をしています。9-4だけが「装着されていることが確認されたとき」です。条文の作りとしては、濃さの疑いではなく、貼ってあるという事実のほうが引き金になっているということになります。
だから「透明なUVカットだから測られないだろう」という読み方は、条文の順序とは合いません。透明かどうかを決めるのは測ったあとで、測定を呼び出すのは「貼ってある」という事実のほうです。
「貼っていない」つもりでも、装着に当たることがある
もう一箇所、⑫にも9-4にも同じ括弧書きが入っています。
装着(窓ガラスに一部又は全部が接触又は密着している状態を含む。)
これが地味に広い。糊で貼り付けたものだけでなく、ガラスに接触・密着しているだけのものまで「装着」に含めると書いてあります。静電気で貼るタイプのフィルム、吸盤で付けるもの、ガラスにぴたりと当てて使う日よけ。糊を使っていないから貼っていない、という理屈は条文の文言からは出てきません。
夏場、前席の側面ガラスに吸盤式のシェードを付けたまま検査に持ち込むと、ここに当たる可能性があります。運転者席より後方なら対象から外れますが、前席の側面は外れません。使うなら、ガラスに密着させない置き方のもの(フロントガラス用の折りたたみ式を車内に立てるタイプなど)にしておくほうが、話がややこしくなりません。
念のため書いておくと、走行中の話ではなく検査に持ち込むときの話です。日常でどう使うかは別問題として、外して行けば済みます。
車1台ごとに校正する機器は、第9章でこれだけだった
9-4の最後の一文が、地味なのに一番効きます。
「なお、可視光線透過率測定器は、計測する受検車両毎に校正を行うこと。」
第9章は、テスタや測定器を使う審査を全部集めた章です。9-1から9-14まであって、サイドスリップ・テスタ、ブレーキ・テスタ、騒音計、前照灯試験機、速度計試験機などが並んでいます。この章の中で「校正」に触れているのは4箇所しかなく、頻度を並べるとこうなります。
| 機器 | 校正のタイミング(原文) |
|---|---|
| 可視光線透過率測定器(9-4) | 計測する受検車両毎に校正を行うこと |
| 一酸化炭素・炭化水素測定器(9-6) | 使用開始前に十分暖機し、1日1回校正を行ったうえで使用すること |
| 騒音計等(9-10・9-12・9-14) | 使用開始前に十分暖機し、暖機後に校正を行う |
排出ガスの測定器が1日1回、騒音計が使用開始前。そのなかで透過率測定器だけが「受検車両ごと」です。1台測るたびに校正し直す、という要求は第9章の中でここにしかありません。
素直に読むと、この測定は機器の状態や当て方でぶれやすいと考えられている、ということになります。ただしなぜ受検車両ごとなのかという理由は規程に書かれていません。ここは私の読みなので、そのつもりで受け取ってください。
ガラスのどこを測るのかは、決まっていない
9-4を読み終えて、ないものに気づきました。測る場所が書かれていません。
念のため機械で数えました。9-4のセクション本文373字の中で、「位置」0件、「中央」0件、「箇所」0件、「判定」0件、「許容」0件、「誤差」0件。ついでに「70」も0件です。
| 9-4の本文にある語 | 件数 |
|---|---|
| 位置 / 中央 / 箇所 | いずれも 0 |
| 判定 / 許容 / 誤差 | いずれも 0 |
| 70 | 0(70%は7-55-1の⑫の側にある) |
同じ第9章の他の節と比べると、この薄さがはっきりします。たとえば警音器の9-10は「マイクロホンは、車両中心線上の自動車の前端から7mの位置の地上0.5mから1.5mの高さにおける音の大きさが最大となる高さにおいて」と、置く場所をミリ単位に近い細かさで指定しています。透過率のほうは、当てる場所についての記述が一言もありません。
なので、よその記事で見かける「ガラスの中央で測る」「上端で測る」といった説明の根拠は、少なくとも審査事務規程9-4ではありません。私はその根拠になる一次資料を見つけられなかったので、測る場所については書きません。
同じ理由で、検査場で使われる測定器の機種名も書きません。上位記事のいくつかは具体的な製品名を挙げていますが、審査事務規程にも告示にも機種の指定は無く、標準機だという裏を一次ソースで取れませんでした。
後ろ側のガラスは、どこから自由になるのか
9-4も⑫も、対象を「前面ガラス及び側面ガラス(運転者席より後方の部分を除く)」と書いています。よく「前席3面」と説明される部分です。
ではその境目はどこか。9-4はここで「7-54-1(6)に規定する」と飛ばしていて、飛び先にはこう書かれています。
② 側面ガラスのうち、運転者席に備えられている頭部後傾抑止装置の前縁(運転者席に頭部後傾抑止装置が備えられていない自動車にあっては、運転者席に備えられている背あて上部の前縁、運転者席に頭部後傾抑止装置及び背あてが備えられていない自動車にあっては、通常の運転姿勢にある運転者の頭部の後端)を含み、かつ、車両中心線に直交する鉛直面より後方の部分。
この場合において、スライド機構等を有する運転者席にあっては、運転者席を最後端の位置に調整した状態とし、リクライニング機構を有する運転者席の背もたれにあっては、背もたれを鉛直線から後方に25°の角度にできるだけ近くなるような角度の位置に調整し(略)審査事務規程 7-54-1(6)
頭部後傾抑止装置というのはヘッドレストのことです。整理すると、境目はBピラーではなく、運転席ヘッドレストの前縁を通る垂直面ということになります。
しかも判定するときの姿勢まで指定されていて、シートは最後端までスライドさせ、背もたれは鉛直から後ろに25°に近い角度に倒した状態で見る。シートを目一杯下げた状態が基準なので、普段の運転姿勢で見るより境目は後ろに動きます。「運転席のドアガラスの後ろ半分なら大丈夫」といった感覚的な線引きは、この条文の作りとは合いません。
「古い車だから関係ない」は、ここでは成り立たない
この連載で保安基準を追いかけていると、年式で基準が変わる場面によく出くわします。フォグランプの明るさも、ヘッドライトの色も、古い車には別の(たいてい緩い)規定が用意されていました。
窓ガラスの貼付物にも、同じように従前規定が2本用意されています。7-55-5(従前規定①・平成29年6月30日以前に製作された自動車ほか)と、7-55-6(従前規定②・令和6年6月30日以前に製作された自動車ほか)です。
期待して開いたのですが、どちらにも同じ⑫が入っていました。機械で数えると、7-55-5-1と7-55-6-1のそれぞれに「9-4」が1件、「70%」が1件、「透明」が1件。文言も現行と同じです。
つまり透明であること・視野の範囲は9-4で70%以上、という要求については、年式による逃げ道がありません。フォグランプのときとは逆の結果でした。
第8章でも項目は減っていなかった(ただし一字違う箇所がある)
もう一つ、この連載で毎回確認していることがあります。審査事務規程は第7章(新規検査など)と第8章(改造等による変更のない使用過程車)が2段組で並んでいて、継続検査で実際に当たるのは第8章のほうです。そして章によっては、第8章で項目がごっそり落ちていることがあります。発炎筒やフォグランプがそうでした。
今回もPDFの2段組をx座標で左右に分けて数えました。結果は、左(7-55-1)も右(8-55-1)も①から⑯まで揃っていて、減っていません。⑫も両方に同じ文言で入っています。第8章で緩くなる、という話にはなりませんでした。
ただ、読み比べていて一箇所だけ気になったところがあります。7-54-1が「側面ガラス(運転者席より後方の部分を除く)」と書いているのに対し、8-54-1(1)だけが「側面ガラス(運転者より後方の部分を除く)」になっています。PDF全文から空白を除いて数えたところ、「運転者より後方の部分」はこの1件だけで、他の11件はすべて「運転者席より後方の部分」でした。
一字の違いなので誤記の可能性が高いと思いますし、これで扱いが変わるという根拠は何も見つけていません。9-4が参照しているのも7-54-1(6)のほうです。見つけたので書いておく、という程度の話です。
私の車検の請求書には、何も書かれていなかった
C43に乗っていたころ、初回車検をヤナセに出しました。支払ったのは127,666円です。
このとき届いた請求書は、「MB2年点検A 47,916円」と「車検費用 79,750円」の2行だけでした。いずれも2019年3月に新車で購入した個体の、初回車検時点の実額です(法定費用はその後動いているので、2026年8月時点の金額とは違います)。検査のラインで何を測ったのか、どの項目に何秒かけたのかは、当然ですがどこにも出てきません。
今回9-4を読んでみて、あの2行の裏側では「フィルム類が装着されているか」という確認が先にあって、そこで何も見つからなければ測定器は出てこないという分岐が回っていたことになります。私は自分の車のガラスに何かを貼ったことを記事のどこにも書いていないので、たぶん測定器は出ていません。ただしそれを確かめたわけではありません。請求書からは分からない、というのが正確なところです。
もし何かを貼っていて、それが⑫に当たらないと分かった場合は、検査より前に剥がしておくことになります。糊が残ると視界のほうが悪くなるので、剥離剤とスクレーパーはセットで用意しておくほうが結局は早いです。
条文を読んで分かったことと、分からなかったこと
分かったほうから並べます。
- 70%は9-4ではなく、7-55-1の⑫に書かれている。⑫は「透明であるもの」が入口で、70%はその先の条件
- 9-4の測定は「装着されていることが確認されたとき」に動く。濃さの疑いではなく、貼ってあるという事実が引き金
- 「装着」には接触・密着している状態が含まれる
- 可視光線透過率測定器は受検車両ごとに校正。第9章の他の機器(1日1回、使用開始前)より頻度が高い
- 対象は自動車全般で、除外は被牽引自動車だけ
- 従前規定①②にも同じ⑫があり、年式による逃げ道は無い
- 7-55-1と8-55-1はどちらも①〜⑯で、第8章での削減は無い
分からなかったほうも同じだけ書いておきます。
- ガラスのどこに測定器を当てるのか(9-4に規定が無い)
- 許容差や再測定の扱い(同じく規定が見つからない)
- 検査場で使われる測定器の機種(規程にも告示にも指定が無い)
- 不適合だった場合に、その場で剥がせばどうなるのかという実務
- 細目告示 第39条第3項第7号・第117条第4項第7号の原文(今回取れたのは審査事務規程側だけ。第195条第5項第7号の文言は前回の記事で引いています)
最後に一つ。ここに書いたのは条文に何が書かれているかであって、実際の検査でどう運用されるかではありません。現場の判断は検査場や指定工場に委ねられている部分があり、規程に書かれていない領域はまさにそこです。貼るかどうかを決める前に、通す予定の工場に聞くのがいちばん確実だと思います。
よくある質問
透明なUVカットフィルムでも測定されますか
条文の順序では、測定を呼び出すのは「フィルム類その他が装着されていることが確認されたとき」です。透明かどうかは測定より前ではなく、⑫の入口として別に判断されます。したがって透明だから測定の対象外になる、という書き方は9-4からは出てきません。ただし実際に測定器を出すかどうかの運用までは規程に書かれていないので、断定はできません。
リアガラスや後席のドアガラスにフィルムを貼っても大丈夫ですか
9-4と⑫が対象にしているのは前面ガラスと側面ガラスで、側面ガラスからは「運転者席より後方の部分」が除かれています。その境目は7-54-1(6)で定義されていて、運転席ヘッドレストの前縁を通る垂直面です。判定時はシートを最後端まで下げ、背もたれを鉛直から後方25°に近い角度にした状態で見ます。なお本記事は第29条の話に限っており、後方の視界については別の条が関わります。
市販の透過率計で測っておけば安心ですか
9-4が定めているのは「計測する受検車両毎に校正を行った可視光線透過率測定器」で測ることです。市販の簡易計の値が検査の結果と一致する保証は条文からは読み取れません。目安として使う分にはともかく、その数字をもって合否を判断できるものではありません。
古い年式の車なら、70%の基準は適用されませんか
適用されます。7-55-4(適用関係の整理)が指す従前規定①(平成29年6月30日以前に製作された自動車ほか)と従前規定②(令和6年6月30日以前に製作された自動車ほか)を両方確認しましたが、どちらにも同じ⑫が入っており、9-4で70%以上という要求も同じ形で残っています。
「装着」に当たらない日よけの使い方はありますか
⑫と9-4の括弧書きは「窓ガラスに一部又は全部が接触又は密着している状態を含む」です。裏を返すと、ガラスに接触も密着もしていない状態であれば、この括弧書きには当たらないことになります。検査に持ち込むときに外しておけば済む話でもあります。ここは条文の文言からの読みなので、心配なら工場に確認してください。
同じ連載の記事
検査の現場で「何を、どうやって測るのか」を条文から追いかけたものを並べておきます。
※ 本記事は2026年8月31日時点で取得した審査事務規程(第9章は最終改正 第72次、7-54/7-55は同 第66次)および e-Gov の保安基準の原文に基づいています。規程は改正されるため、実際に検査を受ける際は最新版と、通す予定の検査場・整備事業者の判断をご確認ください。
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