テールランプの下やバンパーの端にある、光らない赤い板。法令の上では、これはテールランプとは別の装置で、別の条文で決められています。
そしてこの装置には「形」の規定があります。ヘッドライトにもウインカーにもブレーキランプにも、形の決まりはありません。反射器の側にだけあります。
乗ってきた2台はどちらも正規ディーラー経由の日本仕様です。ただ、この装置について自分で何か書いた記憶は無く、実際に公開している103本を検索しても「リフレクター」「反射板」はどちらも0件でした。なのでこれは体験談ではなく、条文を開いて数えた記録です。
条文は199文字しかなく、数字が一つも書かれていない
出発点は道路運送車両の保安基準(昭和26年運輸省令第67号)の第38条です。全文を空白を除いて数えると199文字でした。
第1項はこれだけです。
自動車の後面には、後部反射器を備えなければならない。
ここに個数が書かれていません。「両側」という語もありません。ためしに機械で数えると、第38条には「個」が0件、「両側」が0件、そして「ただし」書きも0件でした。
比較のために尾灯(テールランプ本体)の第37条を同じように数えると、全319文字で「両側」が1件、「個」が1件あります。条文のほうも「自動車の後面の両側には、尾灯を備えなければならない」と書き出しが違います。
つまり後部反射器は、条文のレベルでは「後面に備えろ」としか言われていない装置です。150mも10cm²も赤色も、第38条には一文字も出てきません。それらは全部、下の階層にある告示のほうに書かれています。
もう一つ、第38条には除外規定がありません。尾灯には「最高速度20km/h未満の軽自動車及び小型特殊自動車を除く」という括弧書きが付きますが、後部反射器にはそれが無い、という違いがあります。
「形状」という語がどこにあるのかを、全条文で数えてみた
第38条の第2項に、他の灯火の条には無い語が入っています。
反射光の色、明るさ、反射部の形状等に関し告示で定める基準に適合するものでなければならない。
尾灯やブレーキランプの条は「灯光の色、明るさ等に関し」で終わります。形状は出てきません。気になったので保安基準の全条をパースして、灯火・反射器の条だけを取り出し、「形状」の出現数を数えました。
| 「形状」がある条 | 「形状」が0件の条(抜粋) |
|---|---|
| 第35条(前部反射器)/第35条の2(側方灯及び側方反射器)/第38条(後部反射器)/第38条の2(大型後部反射器)/第38条の3(再帰反射材)/第43条の3(警告反射板)/第43条の4(停止表示器材)ほか | 第32条(前照灯等)/第33条(前部霧灯)/第34条(車幅灯)/第34条の3(昼間走行灯)/第36条(番号灯)/第37条(尾灯)/第39条(制動灯)/第39条の2(補助制動灯)/第40条(後退灯)/第41条(方向指示器)/第41条の3(非常点滅表示灯)ほか計33条 |
きれいに分かれました。自分で光る装置には形の決まりが無く、他人の光を返す装置にだけ形の決まりがある。
理由は条文には書かれていないので推測になりますが、光る側は「見えるかどうか」を明るさで測れるのに対して、反射器は形そのものが意味を持つ場面がある、ということなのだと思います。実際、その「意味を持つ形」が次に出てきます。
三角形は、けん引される側の専用の形
具体的な中身は道路運送車両の保安基準の細目を定める告示 第132条にあります。第1項の第1号と第2号がこうです。
- 後部反射器(被けん引自動車に備えるものを除く。)の反射部は、三角形以外の形状であること
- 被けん引自動車に備える後部反射器の反射部は、正立正三角形又は帯状部の幅が一辺の5分の1以上の中空の正立正三角形であって、一辺が150mm以上200mm以下のものであること
普通の車は三角形が禁止で、トレーラーは三角形が義務。後ろに三角形の反射板が見えたら、それはけん引されている側の車という読み方が、条文から成立します。
弱点も書いておくと、なぜ三角形をトレーラー専用にしたのかは告示には書かれていません。国際的な取り決めに揃えたものだと思われますが、根拠にできる原文(協定規則第3号)は今回どうしても取得できなかったので、ここは推測のままにしておきます。
ここで一点、注意があります。上位に出てくる記事のいくつかが「文字及び三角形以外の形」と書いていました。私が確認した範囲では、現行の細目告示第132条にも第210条にも、審査事務規程7-85・8-85にも「文字」という語は0件です。昔の条文にあった表現が残っているのかもしれませんが、いま参照すべき条文には見当たりませんでした。
150mという距離は、他人のハイビームを前提にしている
明るさにあたる基準は第132条第1項第3号です。読んでいて、灯火の条とは前提がまるで違うことに気づきました。
後部反射器は、夜間にその後方150mの距離から走行用前照灯(その全てを照射したときに、夜間にその前方100mの距離にある交通上の障害物を確認できる性能を有する走行用前照灯に限る。)で照射した場合にその反射光を照射位置から確認できるものであること。
150mという数字だけを見ると、ポジションランプの300mやブレーキランプの数字と同じ種類の基準に見えます。でも中身は違って、反射器は自分では何もしません。後ろの車のハイビームで照らして、その反射が返ってくるかを見る。しかも照らす側のハイビームにも「前方100mを確認できる性能」という条件が付いています。
条件が二段になっているわけです。ここを実測で再現するのは無理なので、告示は同じ号でみなし規定を置いています。
この場合において、後部反射器の反射部の大きさが10cm²以上であるものは、この基準に適合するものとする。
面積で代替できる。サジェストに「後部反射器 保安基準 面積」が出てくるのは、実務上はここしか手掛かりが無いからだと思います。なお面積の測り方は「車両中心線に直角な鉛直面への投影面積」と定義されていて、不透明なモールで仕切られた部分は除く、とあります。真横から見た面積ではなく、後ろから見た投影面積です。
テールランプより600mm低い天井が引かれている
取り付けの決まりは第132条第3項と、審査事務規程 7-85にあります。並べてみると、差がはっきりします。
| 項目 | 後部反射器(7-85-3) | 尾灯(7-81-3) |
|---|---|---|
| 照明部・反射部の上縁 | 地上1,500mm以下 | 地上2,100mm以下 |
| 下縁 | 地上250mm以上 | 地上350mm以上 |
| 最外縁 | 自動車の最外側から400mm以内 | 同左 |
| 見通せる範囲 | 上下10°・内外それぞれ30° | 上下15°・内側45°・外側80° |
同じ後面にありながら、天井が600mm違います。尾灯は地上2,100mmまで上げられるのに、反射器は1,500mmまでしか上げられない。
これが効いてくるのが車高の高い車です。私のG400dは全高1,975mmで、乗用車としてはかなり背が高い部類に入ります。テールランプの位置を高く取ると、反射器はそこには入れられず、下に別に置くしかなくなる。バンパーの下のほうに小さな赤い反射板が独立して付いている車がありますが、二つの条文を並べると、その配置になる理由のほうが先にあることになります。
ただし全高と反射部の高さは別物です。自分の車の反射部が地上何mmの位置にあるかは測っていないので、「だからうちの車ではバンパー側に付いている」という書き方はできません。数字を並べるとそう読める、というところまでです。
見通せる範囲の差も大きくて、尾灯が外側80°まで求められるのに対し、反射器は内外30°ずつしかありません。真後ろに近い角度から見えればよい、という設計になっています。
車検で実際に見るのは、15項目のうち5項目だった
ここまでは全部「新規検査」、つまり新車として登録するときや改造したときの話です。改造していない使用過程車の継続検査、いわゆる普通の車検は、同じPDFの右側の欄(第8章)を見ます。
数えてみたら、思っていたよりずっと少なくなっていました。
| 区分 | 新規検査(第7章) | 継続検査(第8章) |
|---|---|---|
| 性能要件 | 7-85-2 は5項目(三角形以外の形状/被けん引の正三角形/150m・10cm²/赤色/損傷・汚損) | 8-85-2 は2項目(赤色/損傷・汚損) |
| 取付要件 | 7-85-3 は10項目 | 8-85-3 は3項目(下縁250mm以上/左右対称/緩み・がた) |
| 本文の分量 | 3,617字 | 1,142字 |
第8章の側で消える語を機械で数えると、こうなりました。
| 語 | 7-85 | 8-85 |
|---|---|---|
| 三角形 | 3件 | 0件 |
| 150m | 2件 | 0件 |
| 10cm² | 1件 | 0件 |
| 1,500mm(上縁) | 2件 | 0件 |
| 400mm(最外縁) | 1件 | 0件 |
| 10°/30°(見通し) | 3件/6件 | 0件/0件 |
| 250mm(下縁) | 1件 | 1件 |
| 赤色 | 1件 | 1件 |
この記事を書き始めた入口だった「形」の規定が、車検の章では丸ごと消えます。150mも消えます。残っているのは、赤いこと・壊れていないこと・下縁が250mm以上あること・左右対称であること、それだけでした。
上位記事を5本読んで機械で数えたのですが、「審査事務規程」という語は5本とも0件、「継続検査」も5本とも0件でした。車検に通るかどうかを説明しながら、検査する側が使う基準書を誰も開いていない、という状態です。
念のため書いておくと、これは「車検では何をやってもいい」という話ではありません。装備要件(8-85-1)は第7章と同じ文言のまま残っていますし、最終的に合否を判断するのは検査を担当する人です。判断に迷う改造をしたなら、事前に整備工場や運輸支局に確認するのが確実です。
年式で中身が変わる。1,500mmの意味も昔は違った
同じPDFの後半に「従前規定」という節があり、古い車には古い基準が適用されると書かれています。ここも読んでみました。
| 製作時期 | 確認する距離 | 三角形(被けん引) | 高さ |
|---|---|---|---|
| 昭和48年11月30日以前 | 後方100m | 一辺50mm以上/中空は帯状部25mm以上 | 反射部の中心が1,500mm以下 |
| 平成17年12月31日以前 | 後方150m | 一辺150mm以上(上限なし)/中空は帯状部30mm以上 | 反射部の中心が1,500mm以下 |
| 平成18年1月1日以降 | 後方150m | 一辺150mm以上200mm以下/中空は帯状部が一辺の1/5以上 | 上縁1,500mm以下+下縁250mm以上 |
三角形が50mmから150mmへ大きくなり、最後に上限が付いた、という流れが見えます。
そして高さの読み方が途中で変わっているのが面白いところで、平成17年までは「中心が1,500mm以下」だったものが、平成18年から「上縁が1,500mm以下」に変わりました。同じ1,500mmでも、中心で見るか上端で見るかで、通る位置がかなり変わります。下縁250mm以上という決まりも、平成18年からのものです。
車検で残る3項目のうち唯一の寸法が、2006年より前の車には別の形で適用される、ということになります。
大型後部反射器と再帰反射材は、まったく別の装置
「後部反射器」で検索すると「大型後部反射器 違い」という語が並んで出てきます。これは第38条の2に別建てで書かれた、別の装置でした。
貨物の運送の用に供する普通自動車であつて車両総重量が七トン以上のものの後面には、前条の基準に適合する後部反射器を備えるほか、大型後部反射器を備えなければならない。
「ほか」なので、7トン以上の貨物車は普通の後部反射器と大型後部反射器の両方が要ります。どちらか一方ではありません。乗用車には関係のない条文です。
もう一つ、第38条の3の再帰反射材。これは車体側面などに貼る反射テープの類ですが、条文の第1項第1号が「専ら乗用の用に供する自動車であつて乗車定員十人未満のもの」を明文で除外しています。普通の乗用車は、この条文で反射材を付けられる対象に入っていません。反射テープを勧める記事をときどき見ますが、少なくともこの条を根拠にはできない、ということになります。
なお、反射器そのものが基準を満たしていても、荷物で隠してしまうと道路交通法の側で引っかかります。ルーフボックスや積載の話でその条文を扱ったので、そちらに置いておきます。
自分で確かめられるのは、たぶん下縁の250mmくらい
ここまで数字をたくさん並べましたが、車検の章に残る寸法は下縁250mm以上のひとつだけです。裏を返すと、自宅でメジャー一本あれば確かめられる項目が、ちょうどそれだということでもあります。
地面から反射部の下の端までが250mm。ローダウンした車や、社外バンパーに替えた車で気になるならそこを測っておく、というくらいの使い方です。角度や面積は道具が無いと測れませんし、そもそも車検の章には出てきません。
コンベックス(メジャー)
地上から反射部の下縁までを測るだけなので、5m級のごく普通のもので足ります。特定の製品を勧めたいわけではなく、車検の章に残った唯一の寸法が、道具ひとつで確かめられる種類のものだ、という話です。
※ 測って基準内であることは、車検に通ることを保証するものではありません。合否の判断は検査を行う側にあります(2026年9月時点)。
よくある質問
後部反射器は何個必要ですか
保安基準第38条には個数が書かれていません。「後面には、後部反射器を備えなければならない」とあるだけです。審査事務規程の側に「後面の両側に備える後部反射器は、車両中心面に対して対称の位置に」という項目があるので、両側に付けるなら対称であることが求められる、という構造になっています。尾灯の第37条が最初から「後面の両側には」と書いているのとは、条文の作りが違います。
テールランプを社外品に替えたら、反射器はどうなりますか
条文の上では、後部反射器は尾灯とは別の装置です(第37条と第38条)。テールランプのユニットの中に反射部が組み込まれている車も、バンパー側に独立して付いている車もありますが、いずれにせよ第38条の要件は満たしている必要があります。ユニットごと替えた場合に反射部がどう扱われるかは、その製品と取り付け方によるので、ここでは断定できません。
反射器にスモークを貼っても車検に通りますか
条文からは判断できませんでした。継続検査の8-85-2に残っているのは「反射光の色は赤色であること」と「反射器が損傷し、又は反射面が著しく汚損しているものでないこと」の2つで、透過率や反射率の数値がありません。数値の基準が条文側に無い以上、通る・通らないのどちらも私からは断定できません。
三角形の反射板を付けている車を見かけるのはなぜですか
けん引される側の車だからです。細目告示第132条第1項第2号が、被けん引自動車の反射部を正立正三角形(一辺150mm以上200mm以下)と定めています。逆に、けん引されない普通の車は同項第1号で三角形以外の形状と決められているので、この形が付いていること自体がトレーラーの目印になります。
150mというのは自分で確認できますか
実質的に無理だと思います。基準の条件が「前方100mの障害物を確認できる性能を持つ走行用前照灯で、後方150mから照射したときに反射光を確認できること」なので、照らす側の車のハイビームの性能まで条件に入っています。同じ号にある「反射部の大きさが10cm²以上ならこの基準に適合するものとする」というみなし規定のほうが、実務上の手掛かりです。
まとめ
- 後部反射器は保安基準第38条の装置で、テールランプ(第37条)とは別建て。条文は199文字しかなく、個数も数字も書かれていない
- 灯火のなかで「形状」の規定があるのは反射器の側だけ。光る灯火33条は全部0件だった
- 普通の車は三角形が禁止、けん引される側は正立正三角形(一辺150〜200mm)が義務
- 明るさの基準は後方150mだが、照らすのは他人のハイビーム。実務では反射部10cm²以上のみなし規定で判断される
- 取り付けの天井は上縁1,500mm以下で、尾灯の2,100mmより600mm低い
- 継続検査(普通の車検)で見るのは、新規検査の15項目のうち5項目。形も150mも角度も、第8章には出てこない
条文を読み終えて残ったのは、この装置だけが「電気が切れても働く」側にある、という感覚でした。バッテリーが上がっても、ヒューズが飛んでも、後ろから照らされれば赤く返る。明るさではなく形と面積で規定されているのはそのためではないか、と思いますが、これは条文に書かれていることではなく私の受け取り方です。
本記事は2026年9月時点で公開されている法令・告示・審査事務規程の原文をもとに構成しています。基準は改正されることがあり、また実際の合否の判断は検査を行う側にあります。改造を伴う場合は、事前に整備工場や運輸支局に確認してください。
この記事で参照した原文
- 道路運送車両の保安基準(e-Gov法令検索) … 第37条・第38条・第38条の2・第38条の3
- 保安基準の細目を定める告示 第132条(後部反射器) … 新規検査等
- 同 第210条(後部反射器) … 使用の過程にある自動車
- 審査事務規程 7-85, 8-85 後部反射器
- 審査事務規程 7-81, 8-81 尾灯 … 2,100mmの比較用
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