前に腕時計の記事で、車の中で時計に傷が付く場所を並べたことがあります。ドアの内張り、センターコンソールの縁、ステアリングのスポーク。その中で一番厄介なのはバックルだと書きました。差し込むときに左手を右腰まで持っていくので、金属同士がちょうど当たるんです。
今回、シートベルトの警告灯が車検でどう扱われるのかを調べていて、条文の側も同じところを見ていると気づきました。規程が「シートベルトをしていない」と判定する基準は、バックルが結合されているかどうかです。時計の心配をしていた場所が、そのまま検査の判定点でした。
ついでに調べるつもりが、思っていたより面白いことになりました。保安基準には警告灯の数字が一つも書かれていません。 そして車検の条文は、第7章と第8章で1か所だけ食い違っています。
保安基準を開くと、警告灯の話に数字が一つも出てこない
シートベルトの警報装置を定めているのは、道路運送車両の保安基準 第22条の3(座席ベルト等)の第5項です。
原文を読むと、こう書いてあります。
次の表の上欄に掲げる自動車(二輪自動車、側車付二輪自動車及び最高速度20キロメートル毎時未満の自動車を除く。)には、同表の下欄に掲げるその自動車の座席の座席ベルト(告示で定めるものを除く。)が装着されていない場合に、その旨を運転者席の運転者に警報するものとして、警報性能等に関し告示で定める基準に適合する装置を備えなければならない。出典: 国土交通省「道路運送車両の保安基準【2025.6.17】第22条の3(座席ベルト等)」
そして表がこうなっています。
| 自動車の種別 | 座席の種別 |
|---|---|
| 専ら乗用の用に供する自動車であつて乗車定員10人未満のもの及び貨物の運送の用に供する自動車であつて車両総重量が3.5トン以下のもの | 運転者席その他の座席 |
| 専ら乗用の用に供する自動車であつて乗車定員10人以上のもの及び貨物の運送の用に供する自動車であつて車両総重量が3.5トンを超えるもの | 運転者席及びこれと並列の座席 |
普通の乗用車は上の行です。「運転者席その他の座席」=全席。ここまでは、よく言われているとおりでした。
問題はここからで、この条は全部で 2,128字 あります(リンク先PDFのヘッダーとページ番号を除いて、空白を詰めて数えた文字数です)。その2,128字の中に、次の語が一度も出てきません。
- 「秒」0件 — 何秒鳴らすのか書いていない
- 「音」0件 — 音を出せとも書いていない
- 「表示」0件・「ランプ」0件・「ブザー」0件 — 警告灯という発想自体が条文に無い
- 「バックル」0件
- 「10cm」0件
出てくるのは「警報するもの」という言い方が2回だけ。具体的なことは全部「告示で定める基準」に投げています。つまり、保安基準だけを読んでも何も分かりません。
これは前にオートライトを調べたときとまったく同じ構造でした。保安基準の側は枠だけ作って、中身は告示に降ろす。そういう作りになっています。
ちなみに条文は「後部座席」という語を使いません。使うのは「その他の座席」です。警報装置の節(7-45・8-45)を全文検索しても「後部座席」は0件でした。検索するときに引っかからないのは、たぶんこのせいです。
「シートベルトをしていない」の定義が、たぶん思っているのと違う
では中身はどこにあるのか。独立行政法人 自動車技術総合機構の審査事務規程です。車検の現場が実際に使う文書で、装置ごとに節が分かれています。シートベルトの警報装置は 7-45/8-45 座席ベルト非装着時警報装置(最終改正:第74次)。5ページの短いPDFです。
ここに、探していた定義がありました。
座席ベルトが装着されていない場合(座席ベルトのバックルが結合されていない状態又は座席ベルト巻取装置から引き出された座席ベルトの長さが10cm以下の状態をいう。)にその旨を運転者席の運転者に警報するものでなければならない。出典: 審査事務規程 7-45、8-45 座席ベルト非装着時警報装置(最終改正:第74次)
「装着されていない」は2通りあります。バックルが結合されていないか、巻取装置から引き出した長さが10cm以下か。後者は、要するにベルトが巻き取られたままの状態です。
この10cmという数字がどこから来ているのかが気になって、上流の文書を全部当たりました。結果はこうです。
| 文書 | 本文の量 | 「バックル」 | 「10cm」 |
|---|---|---|---|
| 保安基準 第22条の3 | 2,128字 | 0件 | 0件 |
| 細目告示 第30条(新型車) | 3,441字 | 0件 | 0件 |
| 細目告示 第108条(新規検査等) | 4,478字 | 0件 | 0件 |
| 細目告示 第186条(使用過程車) | 3,012字 | 0件 | 0件 |
| 審査事務規程 7-45/8-45 | — | あり | あり |
法令の側には、この定義がどこにも無い。審査事務規程だけが持っています。
発炎筒の有効期限4年を調べたときも同じ形でした。あのときは「4年」がJISの中にしかなくて、保安基準にも細目告示にも書かれていませんでした。数字が法令の本文に無いのは、この分野では珍しいことではないようです。
細目告示は3本あって、中身が3本とも違う
ついでに分かったことを書いておきます。警報装置の基準を定めた細目告示は3本あるのですが、同じことを書いているわけではありませんでした。
| 告示 | 誰向けか | 警報性能等の基準として何を書いているか |
|---|---|---|
| 第30条第10項 | 新型車(型式指定を受ける新車) | 「協定規則第174号の規則5.(5.1.3を除く。)に定める基準とする」の一文だけ。国連の規則に丸ごと投げている |
| 第108条第12項 | 新規検査等 | 自前で3号を書き下ろしている |
| 第186条第12項 | 使用過程車 | 同じ3号 |
新車を作るメーカーが見るのは国連の協定規則で、車検で使われるのは日本語で書き下ろした3号のほう、という分かれ方です。5.1.3だけが除かれている理由は、協定規則の本文を取れなかったので分かりませんでした。ここは書けません。
第108条と第186条は、ほぼ同じ文章ですが完全には一致しません。第108条が「装着されたときに警報が停止しない装置」、第186条が「装着されたときに、警報が停止しない装置」。読点が1つあるかないかです。ヘッダーの日付も第108条が2025.6.17、第186条が2022.10.7で違います。意味は変わらないので、更新のタイミングがずれているだけだと思います。
全席が対象になったのは2020年9月1日から
「シートベルトの警告灯は運転席だけ」という説明を、いまでもよく見ます。それは間違っていた説明ではなく、古くなった説明でした。
国土交通省の報道発表に、改正前の状態がはっきり書かれています。
現行の規定では乗車定員10人未満の乗用自動車及び小型又は軽の貨物自動車の運転者席のみ対象出典: 国土交通省「道路運送車両の保安基準等の一部を改正する省令等について(概要)」(平成29年6月22日・別紙)
改正後はこうなりました。
- 運転者席・助手席とこれらと並列の座席 … イグニッションON時に非着用なら表示で警報、走行時に非着用なら表示及び音で警報
- 乗用10人未満・貨物3.5t以下の後部座席 … イグニッションON時に非着用なら表示で警報、走行時に外すと表示及び音で警報
後席は「外したら鳴る」という書き方で、前席とは条件が違います。キャンピングカーと霊柩車の後部座席、車いす移動車の座席などは対象外です。
そして適用時期が「新型車:平成32年9月1日」。平成32年は令和2年、つまり2020年9月1日です。さらに注記があって、取外し可能な座席等を備えた自動車については、その座席部分は平成34年9月1日(=2022年9月1日)以降の新型車からとなっています。
これは日本が国連で言い出した話だった
調べていて意外だったのがここです。全席化は海外からの輸入ルールではなく、日本発でした。
今週、国連欧州本部(ジュネーブ)にて開催されたWP29第170回会合において、日本が主導してきたシートベルトリマインダーに関する国際基準の改正案が採択され、成立しました。(中略)この改正への取り組みは、日本が主導し、EUや韓国と連携して進めてきたものです。出典: 国土交通省 報道発表「シートベルトリマインダーの警報対象座席を拡大するための国際基準の改正案が国連において採択」(平成28年11月18日)
理由も公表されています。シートベルト非着用時の致死率は、着用時と比べて約14.5倍(警察庁調べ)。そのうえで平成28年のシートベルト着用状況全国調査(警察庁・JAF調べ)では、運転席と助手席の着用率が一般道・高速道路とも94%超だったのに対し、後部座席の一般道は36%でした。
94%と36%。この差を装置で埋めにいった、という話です。数字を見ると、後席を対象に加えた理由がそのまま読めます。
年式は5段階に分かれている
審査事務規程の 7-45-4「適用関係の整理」に、従前規定が5つ並んでいます。ここが実務では一番効く部分です。
| 従前規定 | 対象となる自動車 | 求められるもの |
|---|---|---|
| ① | 平成6年3月31日(輸入自動車は平成7年3月31日)以前に製作された自動車 | 装備要件「なし」/性能要件「なし」 |
| ② | 平成26年2月2日以前に製作された自動車 | 乗車定員10人未満の普通・小型・軽のみ。運転者席だけ。「電源投入後8秒以内に停止するもの」は不適合から除く |
| ③ | 令和2年8月31日以前に製作された自動車ほか | 同じく運転者席だけ。8秒の除外は小型・軽の貨物などに限定される |
| ④ | 令和8年8月31日以前に製作された自動車ほか | ほぼ現行。ただし除外座席が①〜⑩あり(⑩は点検時に取外しが必要な座席等) |
| ⑤ | 令和9年8月31日以前に製作された自動車ほか | ほぼ現行。参照している協定規則の版が違う |
読み取れることが3つあります。
1つめ。① だけ、輸入自動車の区切りが1年遅い。 国産は平成6年3月31日まで、輸入車は平成7年3月31日まで。ここに当たる車は、警報装置そのものが要りません。②〜⑤には輸入自動車の別扱いはありませんでした。外車に乗っていると年式で別扱いになる話はときどき出てきますが、この装置については1994年3月(輸入車は1995年3月)より前に作られた車に限った話です。いまの中古車市場で当たることは、まずありません。
2つめ。「8秒」が出てくるのは ② と ③ だけ。 節全体を機械で数えても、第7章側に2件あるだけで、現行の規定にも第8章側にも0件でした。昔の車で警告音がすぐ止まるのはこの除外規定のおかげですが、現行の条文にこの逃げ道はありません。
3つめ。④ の区切りは令和8年8月31日、つまり2026年8月31日です。 この記事を書いている時点で、2週間前に1段階動いたばかりということになります。動いたのは除外座席の⑩(点検時に取外しが必要な座席、など)の扱いなので、普通の乗用車に乗っている人に影響が出る変更ではありません。ただ、条文としては現在進行形で動いています。
第7章と第8章は、同じ条文を左右に並べてある
ここから本題です。
審査事務規程のPDFは、1枚の紙に第7章と第8章を左右2段で並べるという作りになっています。第7章が「新規検査、予備検査、継続検査又は構造等変更検査」、第8章が同じものの「改造等による変更のない使用過程車」向けです。
どちらが当たるかは 7-1(2) が決めています。継続検査などのうち、
①自動車又はその部品の改造、装置の取付け又は取外しその他これらに類する行為により、構造、装置又は性能に係る変更が行われていない部分 ②構造又は取付に関する定量要件に影響を及ぼす損傷等が生じていない部分 ③用途、車体の形状又は使用方法等の変更があった自動車においては、その前後で適用される基準に相違がない部分出典: 審査事務規程 7-1、8-1 適用
この全てを満たす部分は、第8章を適用する。普通に乗っていて何も触っていない車のシートベルトまわりは、ここに入ります。つまり、多くの人の車検で実際に当たるのは第8章のほうです。
この2段組は、素直にPDFからテキストを抜くと左右の行が混ざります。この連載でいつもやっているとおり、文字のx座標を見て左右に振り分けてから、列ごとに行を組み直しました。分けた結果がこれです。
| 第7章(7-45) | 第8章(8-45) | |
|---|---|---|
| 節の全体 | 7,584字 | 1,748字 |
| 現行部分(-1と-2だけ) | 1,920字 | 1,578字 |
| 「運転者席」 | 9件 | 10件 |
| 「UNR16」 | 4件 | 1件 |
| 「書面」 | 2件 | 0件 |
節全体で差が大きいのは、第7章側に従前規定①〜⑤がぶら下がっているからです。比べるべきは現行部分で、1,920字と1,578字。差は342字しかありません。
実際、読み比べても大半は同じでした。
- 装備要件(-1)は同じ。 対象車の表も、警報の対象から外れる座席①〜⑨も一致します
- 不適合となる3号(-2の(2))も同じ。 引いている告示だけが違います(第7章は細目告示第30条第10項・第108条第12項、第8章は第186条第12項)
唯一、装備要件で違うのは②の1文字でした。第7章が「UNR16-10-S2」の2.1.4.、第8章が「UNR16-10-S1」の2.1.4.。PDF全文を数えてもS2が1回、S1が1回で、抽出のブレではありません。ただしどちらが新しい版なのかを一次ソースで確認できなかったので、ここは「違う」以上のことは書けません。
違っていたのは、最後の1か所だけだった
差の342字は、ほぼ全部が (3) に集まっていました。ここは「(2)の規定にかかわらず、こういう審査方法にしてもよい」という代替ルートです。
| 第7章 7-45-2(3) | 第8章 8-45-2(3) | |
|---|---|---|
| 書き出し | 「次のいずれかに掲げる審査方法とすることができる」(2通り) | 「次の審査方法とすることができる」(1通り) |
| ① | 書面でUNR16-06以降への適合を確認する。ア COCペーパー/イ WVTAラベル/ウ UNR16に基づく認定証/エ 車両データプレート内又はその近くのⒺマーク/オ 製作者が発行した適合証明書 | 「次に掲げる構造に該当するものであればよい」 |
| ② | 書面で構造が明らかなもの。ア 電源投入で警報 + イ又はウ(運転者席とこれと並列の座席を除く座席の着脱を検知)。ただし乗用10人以上・貨物3.5t超はアだけでよい | — |
| ①の中身 | — | ア 運転者席の座席ベルトが装着されていない状態で電源を投入したときに警報を発する/イ 運転者席の座席ベルトが装着されたときに警報を停止する/ウ 発する警報が運転者席において容易に判別できる |
第8章の代替審査を、もう一度見てください。ア・イ・ウの3つとも、主語が「運転者席」です。 助手席も後席も出てきません。
第7章のほうは、後席まで見るルートがきちんと用意されています。②のイとウは「運転者席及びこれと並列の座席を除くいずれかの座席」の着脱を検知するか、という条件で、明確に後席の話をしています。それが第8章には無い。ついでに、第7章にあった「書面(COCペーパー、WVTAラベル、Ⓔマーク)で確認する」というルートも第8章にはありません(「書面」0件)。
整理すると、条文はこうなっています。
1. 保安基準 第22条の3第5項は、乗用10人未満に全席の警報を求めている
2. 審査事務規程 8-45-1 も、まったく同じ表を持っている
3. ところが 8-45-2(3) を使うと、運転者席の3点だけを見て済ませられる
これを「後席が点かなくても車検は通る」と言い切るつもりはありません。(3) は「することができる」という書き方で、使うかどうかは検査の側の判断です。それでも、使用過程車の側にだけ運転者席で完結するルートが用意されているのは事実で、第7章と第8章を並べて読まないとこの差は見えません。
読んでいて、国連の話とのギャップが引っかかりました。改正の別紙は走行時に「表示及び音」で警報しろと書いています。一方で審査事務規程 7-45-2(1)・8-45-2(1) には、こう添えてあります。
なお、警報は表示又は音によるものとし、各々の座席で表示や音色を区分しなくてもよい。
「表示及び音」が「表示又は音」になり、座席ごとの区別も要らない。 検査は「視認等による審査」なので、そこまで細かく見られないという前提なのだと思いますが、装置に求めている水準と、検査で確かめる水準は、同じではないということです。
上位記事が引いていたのは、古い版の条文だった
検索結果の上位に出てくる記事を6本取ってきて、何を引用しているかを機械で数えました。こういうことをするのは4回目です(1回目はOBDの対象装置、2回目は窓ガラスの貼付物、3回目は可視光線透過率)。
結果を並べます。
| 数えた語 | 6本のうち何本が触れているか |
|---|---|
| 「7-45」または「8-45」 | 0本 |
| 「第8章」 | 0本 |
| 「第22条の3」 | 0本 |
| 「協定規則」 | 0本 |
| 「適用関係告示」 | 0本 |
| 「従前規定」 | 0本 |
| 「10cm」 | 0本 |
| 「審査事務規程」 | 2本 |
そして、審査事務規程に触れていた2本のうち詳しいほうは、「5-37 座席ベルト非装着時警報装置」「5-36-1」「細目告示第186条第8項関係」と引用していました。現行は 7-45/8-45、7-44、第186条第12項です。章番号も項番号も、いまの規程と一致しません。内容も全部「運転者席」で書かれていて、全席化より前の版だと読めます。
もう1本は逆でした。現行の3号(「当該座席に乗車人員が着座しているかどうかにかかわらず」という、いまの条文にしかない言い回し)を正確に引用しているのに、結論のところで「シートベルトの警告灯の義務化は運転席だけに限られています」と書いている。引用は新しく、結論は古いままという状態でした。
責める話ではないと思っています。規程は版が上がるたびに章番号ごと動くので、一度書いた記事を追いかけ続けるのは現実的に難しい。ただ、読む側としては引用に章番号が入っているかどうかを見ておくと、その記事がいつの条文を見ているかの目安にはなります。
私が乗ってきた2台では、当たる条文が違う
自分の車に当てはめてみます。
2019年3月にAMG C43を買って、2023年8月にG400dに乗り換えました。C43には4年5か月乗ったことになります。
| AMG C43 | G400d | |
|---|---|---|
| 手元にあった期間 | 2019年3月〜2023年8月 | 2023年8月〜現在 |
| 製作年月日について言えること | 2019年3月より前であることは確実 | 2021年5月発売のモデルなので、令和2年8月31日より前ということはない |
| 当たる規定 | 従前規定③(令和2年8月31日以前に製作された自動車) | 従前規定④(求められる範囲は現行と同じ) |
| 求められる警報の範囲 | 運転者席だけ | 運転者席その他の座席(全席) |
同じように外車を乗り継いだだけなのに、条文上の扱いは切り替わっていました。前に排ガスの基準を調べたときも、C43がガソリンでG400dが軽油なので測る項目がそもそも違う、という話になりました。製作年月日が2020年9月1日をまたぐ買い替えをした人は、この装置でも同じことが起きています。
正確なところは車検証の製作年月日を見ないと決まりません。私は自分の車検証を確認していないので、ここは「そこまでは確実に言える」という書き方に留めています。気になる人は車検証を見てください。 これは自分で確かめられる数少ない項目です。
なお、C43の初回車検はヤナセで127,666円でした。請求書は「MB2年点検A 47,916円」と「車検費用 79,750円」の2行だけで、警報装置に関する項目は一行も立っていません。 検査に落ちなければ請求書には出てこない、ということだと思います。
「警告灯が点かない」が指しているもの
条文の側は、点かないことをどう扱っているのか。7-45-2(2)・8-45-2(2) は、次のいずれかに当たる装置を不適合としています。
1. 対象座席のベルトが装着されていない状態で電源を投入したときに、その座席に人が座っているかどうかにかかわらず警報を発しない装置
2. ベルトが装着されたときに、警報が停止しない装置(他の座席と兼用している警報装置の場合は、兼用している全ての座席のベルトが装着されたときに停止しない装置)
3. 発する警報を運転者席において容易に判別できない装置
1番目の「座っているかどうかにかかわらず」は、けっこう強い書き方です。着座センサーで人がいないと判定している座席でも、電源投入時には警報を出せ、と読めます。
2番目には、逆のパターンも入っています。鳴りっぱなしで止まらないのも不適合です。「消えない」で検索している人は、点かないのと同じ側の問題を抱えていることになります。
3番目は明るさや音量の話に見えますが、規程に数値はありません。「容易に判別できない」だけです。どの程度からそう判断されるかは書かれていませんでした。ここは検査官の視認に委ねられているとしか言えません。
もう一つ、検査を受ける側の準備として第4章にこういう規定があります。
受検車両については次に掲げる状態とすること。(中略)オ 座席、座席ベルト、非常信号用具及び消火器等が確認できる状態出典: 審査事務規程 第4章 4-1(2)①
座席ベルトは、荷物で隠れていたら見てもらえません。3列目に物を積んだまま持ち込む人は、ここで引っかかる可能性があります。
なお、バックルに差し込んで警報を止める部品や、ベルトの延長アダプタには触れないでおきます。警報装置の適合そのものを無効にする方向の部品だからです。カーグッズの紹介はふだんわりと気軽にやっているのですが、ここだけは線を引いておきます。
ベルト本体のほうも、同じPDFの隣の節(7-44/8-44)で確かめました。「巻取」という語が現行の条文に1件も無く、その語を44件持っていた技術基準は2006年に削除されていました。
よくある質問
シートベルトの警告灯は、何年式の車から必要になりますか
警報装置そのものが不要なのは、国産車は平成6年3月31日以前、輸入自動車は平成7年3月31日以前に製作された自動車です(審査事務規程 7-45-5 従前規定の適用①。装備要件・性能要件とも「なし」)。それより後に作られた車には、何らかの形で必要になります。ただし求められる範囲は年式で変わり、令和2年8月31日以前に製作された自動車は運転者席だけ、それ以降は乗用10人未満なら全席が対象です。
後部座席の警告灯が点かないと、車検に通りませんか
条文の上では、対象座席は「運転者席その他の座席」=全席です。ただし第8章(改造等による変更のない使用過程車)の代替審査 8-45-2(3) は、ア・イ・ウの3項目とも運転者席で書かれています。この方法を使うかどうかは検査の側の判断なので、「必ず通る」とも「必ず落ちる」とも言えません。実際にどう扱われるかは、受ける指定工場や運輸支局に確認してください。
警告音がずっと鳴り止まないのは問題になりますか
なります。7-45-2(2)②・8-45-2(2)② が「ベルトが装着されたときに警報が停止しない装置」を不適合として挙げています。点かないのと同じ項目の中に並んでいる、という扱いです。なお「電源投入後8秒以内に停止するもの」を除く、という緩和は従前規定②と③にしかなく、現行の条文にはありません。
キャンピングカーの後席も対象ですか
対象外です。7-45-1・8-45-1 の除外③に「キャンピング車及び霊柩車に備える座席であって運転者席及びこれと並列の座席以外の座席に備える座席ベルト」が挙がっています。平成29年6月22日の報道発表の別紙にも、キャンピングカーと霊柩車の後部座席は対象外と明記されています。
4点式シートベルトに替えた場合はどうなりますか
シートベルト本体を替えると、7-1(2)①の「装置の取付け又は取外しその他これらに類する行為により、構造、装置又は性能に係る変更が行われていない部分」から外れるので、第8章ではなく第7章で見られる部分が出てきます。警報装置の側については、ベルトを替えたときに何が起きるかを規程が個別に書いてはいませんでした。ここは条文からは答えが出ないので、施工前に工場へ確認するのが確実です。
調べて残ったもの
分からなかったことも書いておきます。
- 協定規則第174号の本文。細目告示第30条第10項が「規則5.(5.1.3を除く。)」と名指ししているのに、5.1.3に何が書いてあるかは確認できませんでした。新型車の基準が国連の規則に丸投げされている、という構造までしか書けていません
- UNR16-10のS1とS2の差。第7章と第8章で参照している版が1文字違うのは事実として確認しましたが、なぜ違うのかは分かりません
- 検査場で実際にどこまで見られるか。規程は「視認等その他適切な方法により審査」としか書いておらず、運用は一次ソースで取れませんでした。この記事は条文がどう書かれているかに限った話です
最後に一つ。条文の話をさんざんしておいて言うのも変ですが、後席の着用率が一般道で36%というあの数字を見てしまうと、通る通らないの話はどうでもよくなります。致死率14.5倍のほうが、よほど重い数字でした。
この記事について
本記事は2026年9月時点の審査事務規程(最終改正:第74次)、道路運送車両の保安基準【2025.6.17】、細目告示および国土交通省の公表資料をもとに、条文の記述を確認してまとめたものです。情報提供を目的としており、特定の商品やサービスの勧誘を目的とするものではありません。実際の検査の可否は車両の状態と検査の判断によります。個別の判断については、指定自動車整備事業者または運輸支局にご相談ください。
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