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車検の規程には、クラクションのことが一文しか書かれていなかった

Mercedes-Benz G400d のステアリング中央(オーナー撮影)。クラクションの車検基準 Car|車
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クラクションの車検基準を調べると、どこを見ても同じ答えが返ってきます。「前方7mの位置で87dB以上112dB以下」。上位に出てくる5本を実際に落として数えてみたら、全部この数字で止まっていました。

数字自体は正しくて、細目告示にちゃんと書いてあります。ただ、その先を追いかけたら妙なことになりました。検査を実際にやる側の手順書――審査事務規程の警音器の節には、この87も112も出てきません。2ページしかないうえ、車検で当たる第8章にいたっては、警音器について書かれているのが一文だけでした。

ついでにもうひとつ。取付要件は「欠番」です。どこに何個付けるかの規定が、そもそも存在していません。

G400dに乗っていて車検の条文を追う記事を17本書いてきましたが、公開している94本を数えたら「クラクション」も「ホーン」も0件でした。順番に見ていきます。

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保安基準第43条は、二段構えで告示に投げている

まず保安基準 第43条(警音器)から。dBを探しても0件です。ここまでは他の装置と同じなのですが、投げ方が少し変わっていました。

2 警音器の警報音発生装置は、次項に定める警音器の性能を確保できるものとして、音色、音量等に関し告示で定める基準に適合するものでなければならない。
3 自動車の警音器は、警報音を発生することにより他の交通に警告することができ、かつ、その警報音が他の交通を妨げないものとして、音色、音量等に関し告示で定める基準に適合するものでなければならない。

道路運送車両の保安基準 第43条第2項・第3項

第2項が「警報音発生装置」、第3項が「警音器」。装置そのものと、それが車に付いた状態とを分けています。この分け方が、あとで効いてきます。

そして第4項が、意外と守備範囲の広い条文でした。

4 自動車(緊急自動車を除く。)には、車外に音を発する装置であつて警音器と紛らわしいものを備えてはならない。ただし、歩行者の通行その他の交通の危険を防止するため自動車が右左折、進路の変更若しくは後退するときにその旨を歩行者等に警報するブザその他の装置又は盗難、車内における事故その他の緊急事態が発生した旨を通報するブザその他の装置については、この限りでない。

道路運送車両の保安基準 第43条第4項

バックするときのピーピー音と、セキュリティのアラーム。この2つが名指しで除外されているから、付いていても問題にならないということです。逆に言えば、ここに当てはまらない「車外に音を発する装置」で警音器と紛らわしいものは、付けられません。

87〜112dBは、告示の「第2項」のほうにある

告示は3本あります。方向指示器のときと同じ構造で、場面ごとに条が分かれていました。

どの場面か 中身
第63条 型式の指定等(新型車) 【2021.6.9】 協定規則第28号の規則6.と規則14.に丸投げ(大型特殊・小型特殊のみ別添74・75)。dBは0件
第141条 新規検査・予備検査等 【2016.1.20】 下記のとおり第1項〜第4項
第219条 使用の過程にある自動車 【2016.1.20】 第141条とほぼ同文

第141条と第219条は、中身が2つに割れています。ここが記事の分かれ目なので、原文のまま引きます。

第219条 警音器の警報音発生装置の音色、音量等に関し、保安基準第43条第2項の告示で定める基準は、警音器の警報音発生装置の音が、連続するものであり、かつ、音の大きさ及び音色が一定なものであることとする。この場合において、次に掲げる警音器の警報音発生装置は、この基準に適合しないものとする。
 一 音が自動的に断続するもの
 二 音の大きさ又は音色が自動的に変化するもの
 三 運転者が運転者席において、音の大きさ又は音色を容易に変化させることができるもの

細目告示 第219条第1項(第141条第1項も同文)

2 警音器の音色、音量等に関し、保安基準第43条第3項の告示で定める基準は、次の各号に掲げる基準とする。
 一 警音器の音の大きさ(2以上の警音器が連動して音を発する場合は、その和)は、自動車の前方7mの位置において112dB以下87dB以上(動力が7kW以下の二輪自動車に備える警音器にあっては、112dB以下83dB以上)であること。
 二 警音器は、サイレン又は鐘でないこと。

細目告示 第219条第2項

第1項が「鳴り方」、第2項が「音量とサイレン」。別々の項に置かれています。

社外品に替えたときに引っかかるのは、実はほとんどが第1項のほうです。音が自動的に断続するもの、音色が自動的に変わるもの、運転席で切り替えられるもの。メロディが鳴るタイプや、スイッチで音を変えられるタイプは、音量がいくら基準内でも第1項で落ちます。

「2以上の警音器が連動して音を発する場合は、その和」というのも、地味に効く一文です。2個付けて高低で鳴らすタイプは、足し算で112dBを超えないかという話になります。

規程の側に、その87も112も無い

ここからが本題です。実際に検査をするのは独立行政法人自動車技術総合機構(NALTEC)で、その手順書が審査事務規程です。警音器の節は7-97、8-97で、全部で2ページしかありません(方向指示器は32ページありました)。

その2ページを x 座標で左右に分けて、第7章側と第8章側を1行ずつ確定させました。

第7章(新規検査・継続検査ほか) 第8章(改造等による変更のない使用過程車=車検)
-1 装備要件 (1)警音器を備えなければならない
(2)警音器と紛らわしいものを備えてはならない
同文
-2 性能要件 (1)連続・一定であること + 不適合の例示①②③
(2)サイレン又は鐘でないこと
「警音器の警報音発生装置の音は、連続するものであり、かつ、音の大きさ及び音色が一定なものでなければならない。」——これだけ
-3 取付要件 欠番 欠番
-4 適用関係の整理 (1)昭和35年3月31日以前 →7-97-5
(2)平成15年12月31日以前 →7-97-6
「7-97-4の規定を適用する。」

読み取れることが3つあります。

1つめ。7-97にも8-97にも、dBが1件もありません。 第7章の7-97-2(2)は「(保安基準第43条第3項、細目告示第141条第2項関係)」と第2項を引いているのに、そこから書き写しているのは二号(サイレン又は鐘でないこと)だけで、一号の「前方7mで112dB以下87dB以上」を書いていません。

2つめ。第8章は一文だけです。 ①②③の例示も、サイレン・鐘の話も、条文の引用すらありません。第7章にある「(保安基準第43条第2項関係、細目告示第63条第1項関係、細目告示第141条第1項関係)」という括弧書きが、第8章側には無い。

3つめ。取付要件が「欠番」です。 灯火だと「地上何mm以下」「最外側から何mm以内」が延々と並ぶところですが、警音器にはそれが無い。どこに付けても、何個付けてもよいということになります。言われてみればホーンの位置を気にしたことがないのですが、条文の側でも気にしていませんでした。

念のため書いておくと、列挙に無いことと、根拠が無いことは別です。告示の第219条は生きているので、87〜112dBという基準そのものが消えたわけではありません。ここは断定しません。ただ、審査をする側の手順書には書かれていないという事実だけははっきりしています。

音量計が出てくるのは「おそれがあるとき」だけ

では87〜112dBは、いつ測られるのか。第219条の第3項が、そこを決めていました。

3 音の大きさが前項第1号に規定する範囲内にないおそれがあるときは、音量計を用いて次の各号により計測するものとする。

細目告示 第219条第3項

無条件では測りません。「おそれがあるとき」に限って音量計が出てきます。この引き金の話は、窓ガラスの透過率を調べたときに第9章の各節を並べて確認していて、そちらの記事が持っています(警音器は9-10、サイレンは9-12。透過率の9-4だけが別の書き方をしていました)。マイクロホンをどこに置くかも、そちらに書いてあります。

ここでは、そちらに書いていない部分――測ったあとの数字の扱いを拾います。これがかなり細かい。

ルール 原文の中身
回数と丸め 計測は2回行い、1dB未満は切り捨てる
ばらつき 2回の計測値の差が2dBを超える場合には、計測値を無効とする(ただし、いずれの計測値も範囲内にない場合には有効)
採用する値 2回の平均(補正した場合は補正後の値の平均)
暗騒音との差 3dB未満なら計測値を無効。3dB以上10dB未満なら補正値を控除する
補正値 差が3 → 3を引く4〜5 → 2を引く6〜9 → 1を引く
聴感補正 A特性
電源 原動機を止めて車載バッテリから/暖機してアイドリング中に車載バッテリから/別添74の規定による外部電源から、の3通り

補正表の読み方はPDFのセルの位置から取りました。見出しの3・4・5・6・7・8・9に対して補正値が3つしか置かれていないので、どの数字がどこに掛かるのかは並びだけでは決まりません。文字のx座標を測ったところ、補正値「3」は差3の真下、「2」は差4と5の中央、「1」は差6から9の中央にありました。つまり3→3、4〜5→2、6〜9→1です。

「2回の差が2dBを超えたら無効」というのは、けっこう厳しい条件だなと思いました。ただしそのあとに「いずれの計測値も範囲内にない場合には有効」と続くので、2回ともアウトなら、ばらついていてもアウトのままです。逃げ道は塞いであります。

平成15年以前の車は、測り方そのものが違う

第4項に、古い車向けの別ルートがありました。

現行(第3項) 平成15年12月31日以前に製作された自動車(第4項)
マイクロホンの位置 前端から7m、地上0.5〜1.5mで音が最大になる高さ 前端から2m、地上1m
聴感補正回路 A特性 C特性
原動機 停止・アイドリング・外部電源の3通り 停止した状態

A特性は人の耳の感度に合わせて低音を落とす補正、C特性はほぼ落とさない補正です。同じホーンでも、C特性で測るほうが数字は大きく出ます。距離も2mと7mで違うので、そもそも別の測定だと考えたほうが早い。

規程側の従前規定も見てみたら、数字がまた違いました。

どこ 音量の基準
細目告示 第219条第2項第1号(現行) 前方7mで 112dB以下 87dB以上
審査事務規程 7-97-5-2/7-97-6-2(従前規定①②) 前方2mで 115dB以下 90dB以上、または前方7mで 112dB以下 93dB以上

下限が違います。従前規定は93dB、いまの告示は87dB。上限の112dBは同じです。いつ87に下がったのかは、改正告示を特定できませんでした。ここは「違う」という事実までにとどめます。

なお従前規定①(昭和35年3月31日以前)と②(平成15年12月31日以前)は、数値がまったく同じで、括弧書きの対象だけが違いました。①が「軽自動車及び最高速度20km/h未満の自動車」、②が「動力が7kW以下の二輪自動車」。同じ数字の表が、対象を入れ替えて2回置いてあるという状態です。

型式指定のほうは、協定規則に丸ごと預けている

新車が型式の指定を受けるときの条は、まったく別の顔をしていました。

第63条 警報音発生装置の音色、音量等に関し、保安基準第43条第2項の告示で定める基準は、大型特殊自動車及び小型特殊自動車以外の自動車にあっては協定規則第28号の規則6.に定める基準とし、大型特殊自動車及び小型特殊自動車にあっては別添74「警音器の警報音発生装置の技術基準」に定める基準とする。

細目告示 第63条第1項

第2項も同じ形で、こちらは協定規則第28号の規則14.。日本語の数字は1つも書かれていません(大型特殊と小型特殊だけが別添74・75に飛びます)。方向指示器の第59条とまったく同じ構造でした。

協定規則第28号の原文は取得できませんでした。unece.orgはフォグランプやリアフォグを調べたときと同じで、こちら側からは開けません。なので規則番号までにとどめます。新車の型式指定で実際に何dBを求められているのかは、書けません。

社外ホーンに替えるとき、条文が見ているところ

ここまでを、替える側の視点で並べ直します。

音量より先に「鳴り方」で落ちる。自動的に断続する/音色が自動的に変わる/運転席で変えられる、の3つ(第219条第1項一〜三号)

サイレンと鐘は不可(同第2項二号)。ただし第8章の列挙には書かれていない

・音量は前方7mで87dB以上112dB以下2個以上を連動させるなら、その和

・音量計が出るのは「範囲内にないおそれがあるとき」。無条件では測らない

取付位置と個数の規定は無い(7-97-3・8-97-3とも欠番)

・バックブザーとセキュリティアラームは、保安基準第43条第4項でただし書きに入っている

サジェストを引くと、ヤンキーホーン・アリーナホーン・ドルチェホーン・エアーホーン・電子ホーンと、製品名が並んで出てきます。そのどれが通るかは、ここでは書きません。条文は製品名ではなく鳴り方と音量で書かれていて、しかも同じ製品でも取り付け方で音は変わります。私が条文から言えるのは、「車検対応」と書いてあるかどうかではなく、①②③に当たらないかを先に見たほうが早いということまでです。

よくある質問

社外ホーンに交換したら車検に通りませんか

交換そのものを禁じる条文はありません。落ちるとしたら、細目告示第219条第1項の一号〜三号(音が自動的に断続する/音の大きさか音色が自動的に変化する/運転席で容易に変えられる)に当たるか、第2項第1号の音量の範囲を外れるか、第2項第2号のサイレン・鐘に当たるかです。取付位置と個数については、審査事務規程の取付要件が「欠番」で、規定そのものがありません。

ミュージックホーンはなぜ駄目なのですか

音量ではなく鳴り方の側で外れます。第219条第1項の二号が「音の大きさ又は音色が自動的に変化するもの」を適合しないものとして挙げていて、メロディは定義上ここに当たります。一号の「音が自動的に断続するもの」に当たる製品もあります。

車検では必ず音量を測るのですか

条文の書き方はそうなっていません。第219条第3項が「音の大きさが前項第1号に規定する範囲内にないおそれがあるときは、音量計を用いて」としています。無条件の計測ではありません。ただし実際に検査場で音量計が出るかどうかは、その場の判断なので、ここでは条文の書き方までです。

ホーンを2個付けても大丈夫ですか

個数の制限は見当たりませんでした。取付要件が欠番で、告示の側にも個数の号がありません。ただし第219条第2項第1号に「2以上の警音器が連動して音を発する場合は、その和」とあるので、音量は合計で判定されることになります。112dBの上限は和で見られます。

バックするときのピー音は「警音器と紛らわしいもの」になりませんか

保安基準第43条第4項のただし書きで除かれています。「右左折、進路の変更若しくは後退するときにその旨を歩行者等に警報するブザその他の装置」と「盗難、車内における事故その他の緊急事態が発生した旨を通報するブザその他の装置」の2つが名指しされています。

古い車だと基準が違いますか

測り方が違います。平成15年12月31日以前に製作された自動車は、第219条第4項により前方2m・地上1m・C特性・原動機停止でも計測できます。現行は前方7m・A特性です。また審査事務規程の従前規定では音量の下限が93dB(前方7m)で、現行の告示の87dBと違っています。

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保安基準・細目告示・審査事務規程の原文を突き合わせて、「検査で実際に何を見ているのか」を追いかけているシリーズです。

※ 本記事は2026年9月2日時点で取得した資料に基づいています。保安基準は e-Gov の原文(第43条)、細目告示は第63条【2021.6.9】・第141条【2016.1.20】・第219条【2016.1.20】、審査事務規程は 7-97、8-97(警音器)の最終改正 第51次です。規程・告示は改正されるため、実際に検査を受ける際は最新版と、依頼する検査場・整備事業者の判断をご確認ください。協定規則第28号および別添74・別添75の原文は取得できなかったため、本記事では番号までの記載にとどめています。

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