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灯火の色を機械で測る規定は、橙色と赤色にしかなかった

点灯した赤色のテールランプの接写。灯光の色の車検基準を扱う記事のアイキャッチ Car|車
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ウインカーのレンズをオレンジに塗ったら車検に通るのか。調べると、どのページも「橙色であること」と書いて終わっています。上位6本を落として本文を数えてみたら、「色度座標」という語は6本とも0件でした。「審査事務規程」も0件。橙色かどうかを誰がどうやって決めているのかは、6本とも書いていません。

それで、検査を実際にやる側の規程を開きました。色を機械で測る規定は、空白を除いて272文字しかありません。対象は2色だけです。

先に立場を。所有してきたのは AMG C43(2019年3月〜2023年8月)と、いまの G400d の2台です。保安基準の原文を一装置ずつ開く記事は、本記事で25本目にあたります。ただし色そのものを扱ったことは一度もなくて、公開中の106本を検索すると、色度座標に触れているのは2本、9-9 を挙げているのは1本でした。その3本もヘッドライトとポジションランプの明るさが主題で、色の判定手続きには踏み込んでいません。というわけでこれは体験談ではなく、原文を開いて数えた記録です。

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272文字。測定を定めた節の中でいちばん短い

自動車技術総合機構の審査事務規程には、第9章「テスタ等による機能維持確認」という章があります。サイドスリップ・テスタ、ブレーキ・テスタ、前照灯試験機といった、検査場に置いてある機械を使う審査をまとめた章です。全部で32ページ、39,769文字あります。

その中に「色度座標測定機器」を使う節がひとつだけ入っています。9-9 です。全文がこれです(以下、文字数はすべて空白を除いて数えています)。

9-9 灯火器の灯光の色(色度座標測定機器)
(1)橙色の灯光の色について、視認により橙色でないおそれがあると認められるときは、別添13「灯火等の照明部、個数、取付位置等の測定方法」3.5.に規定する方法に基づき測定した色度座標の値が、橙色として定められた範囲内にあるものは、橙色の灯光の色の規定に適合するものとする。
(2)赤色の灯光の色について、視認により赤色でないおそれがあると認められるときは、別添13「灯火等の照明部、個数、取付位置等の測定方法」3.5.に規定する方法に基づき測定した色度座標の値が、赤色として定められた範囲内にあるものは、赤色の灯光の色の規定に適合するものとする。

独立行政法人自動車技術総合機構 審査事務規程 第9章 9-9

以上です。これで全部。橙色と赤色だけで、白色は1文字も出てきません。

13の節を並べたら、9-9 だけ書式が違っていた

第9章で測定を定めているのは 9-2 から 9-14 までの13の節です(9-1 は適用範囲)。字数と、書式のふたつを機械で数えて並べました。

字数(見出しを除く) 冒頭に「(保安基準◯条…関係)」 「対象」「除外」の表
9-2 かじ取車輪(サイドスリップ) 440 あり あり
9-3 制動装置 3,012 あり あり
9-4 窓ガラスの透過率 302 あり あり
9-5 騒音 4,326 あり あり
9-6 CO・HC 3,166 あり あり
9-7 光吸収係数・黒煙 9,718 あり あり
9-8 前照灯 7,375 あり あり
9-9 灯光の色 272 無し 無し
9-10 警音器 2,023 あり あり
9-11 速度計 797 あり あり
9-12 サイレン 710 あり あり
9-13 車載式故障診断装置 5,855 あり あり
9-14 車両後退通報装置 1,254 あり あり

13のうち12は、節の先頭に「(保安基準第43条第3項、細目告示第141条第2項…関係)」のような一行が入っていて、どの条文を受けた審査なのかが分かるようになっています。9-9 にだけ、その行がありません。

「対象」「除外」の欄も同じです。他の節は「対象 ・四輪以上の自動車」「除外 -」という表を持っていて、どの車に適用されるのかが書いてあります。9-9 はこれも持っていません。

字数でいうと、隣の 9-8(前照灯)が7,375文字で、9-9 はその27分の1です。前照灯は明るさと主光軸の向きの両方を機械で測るので長くなるのは分かるのですが、それにしても差があります。

正直なところ、なぜ 9-9 だけ書式が違うのかは条文からは読み取れません。色は装置をまたいで共通だから個別の条文を挙げようがなかった、という説明は思いつきますが、そう書いてあるわけではないので推測の域を出ません。ここは分からないまま残ります。

2つの項は、色名を伏せると1文字も違わなかった

上の9-9をもう一度見ると、(1)と(2)がやけに似ています。実際に数えました。

(1)橙色の項が133文字、(2)赤色の項も133文字。そのうえで「橙色」と「赤色」を同じ記号に置き換えて文字列として比較すると、完全に一致します。

つまりこの規定は、色ごとに中身を書き分けているのではありません。ひとつの手続きがあって、それを橙と赤に当てはめているだけです。色が違えば測り方も違うのだろうと思っていると、そうではない。

機械が出てくるのは「目で見て疑わしいとき」だけだった

ここがこの記事でいちばん書きたかったところです。条文の順序が、たぶん多くの人が想像しているのと逆になっています。

視認により橙色でないおそれがあると認められるときは、…色度座標の値が、橙色として定められた範囲内にあるものは、適合するものとする」

読み方はこうです。まず検査官が目で見る。そこで「これは橙色ではないのではないか」と思われたときに限って、初めて機械が出てくる。そして機械で測った値が範囲内なら、目で見て疑われたにもかかわらず適合になる、という構造です。

色度座標という数値の線は、全部の車を通すための物差しではなく、目視で引っかかった車を救うための物差しとして置かれています。だから普通に検査を受けているぶんには、この機械は出てきません。

一方で、これは裏を返すと厳しい話でもあります。最初の関門は人の目なので、どのくらいの濃さで「おそれがある」と判断されるのかは条文には書いてありません。「視認により」としか書かれていない以上、そこは検査を行う側の判断です。数値で線が引かれているように見えて、入口は数値ではない。

橙色の範囲は、4本の線で囲まれている

では機械が出てきたとき、何と比べられるのか。9-9 が飛ばしている先が別添13の 3.5.「測定機器による灯光の色の測定方法」です。ここに実際の範囲が書いてあります。

まず機械の側の条件から。

  • 色度座標の値が小数第3位まで求められる性能を持つこと
  • JIS C 1609-1「照度計」4.1 に規定される一般型AA級照度計と同等以上の性能を持つこと

測定の条件も決まっています。自動車は停止状態で、測る灯火の色が安定した状態にすること。色に影響を与える灯火は消灯すること。受光面に他の光が入らないよう、カバー等で遮蔽すること。

測り方は、灯火ごとに照明部の光源の中心と受光面の中心を合わせて測ります。光源の中心が判断できないものや、複数の光源を持つ灯火の場合は「灯光が最も明るく見える位置」に合わせる。そして色にはっきりしたむらがある場合は、その位置も測ることになっています。この「むら」の一文があるので、一番きれいなところだけ測って終わり、とはならない作りです。

そのうえで、範囲がこう定められています。

橙色(4本の境界線)
A12 緑との境界 y=x-0.100
A23 スペクトル軌跡
A34 赤との境界 y=0.380
A41 白との境界 y=0.778-0.670x

交点は A1(0.526, 0.426)、A2(0.550, 0.450)、A3(0.619, 0.380)、A4(0.594, 0.380)。

赤色のほうも同じ形で書かれています。

赤色(4本の境界線)
R12 黄との境界 y=0.345
R23 スペクトル軌跡
R34 紫の直線(スペクトル軌跡の赤と青の両端の間の紫色の範囲を横切る直線)
R41 紫との境界 y=0.948-x

交点は R1(0.603, 0.345)、R2(0.655, 0.345)、R3(0.735, 0.265)、R4(0.699, 0.249)。

数式が並んでいますが、やっていることは単純で、色をxy平面の座標に置き換えて、4本の線で囲んだ内側かどうかを見るだけです。ウインカーの「濃いオレンジ」がどこまで許されるかというと、条文の側の答えは「A34(y=0.380)とA41(白との境界)の間」ということになります。ただし前の節に書いたとおり、そこまで行くのは目視で引っかかった場合だけです。

「白」は、橙色の端としてしか出てこない

別添13は全部で7,049文字あります。その中で「白」という字が出てくるのは、1箇所だけです。

さっきの表の A41 白との境界 がそれです。橙色の範囲の端として、白の側に線が引かれている。それだけで、白色そのものの範囲はどこにも定義されていません。「白色」という語に至っては、別添13にも第9章にも0件でした。

これは以前ヘッドライトとポジションランプを調べたときに引っかかっていた点と、ちょうど裏表になっています。あのときは「白色であること」としか書かれておらず、何ケルビンなら白なのかが条文から出せませんでした。理由は今回はっきりして、そもそも白色を機械で測る規定が用意されていないからです。「色温度」も「ケルビン」も、第9章39,769文字を通して0件です。

念のため範囲を区切っておきます。ここで確認できたのは「今回開いた第9章と別添13には白色の範囲が無い」ということまでです。他の別添や国際的な規則まで走査したわけではないので、世の中のどこにも存在しないとは書きません。

同じ表題の別添が告示の側にもある。ただし色の節は無い

もうひとつ、並べてみて分かったことがあります。

審査事務規程の別添13は「灯火等の照明部、個数、取付位置等の測定方法」という表題です。ところが保安基準の細目を定める告示の側にも、まったく同じ表題の別添94があります。紛らわしいのですが、別物です。

審査事務規程 別添13 細目告示 別添94
文字数 7,049 3,574
構成 1.適用範囲/2.用語の定義/3.測定方法(3.1〜3.5. 1.適用範囲/2.測定方法(2.1〜2.3)
灯光の色の節 あり(3.5.) 無し
「色度座標」 7件 0件
「測定機器」 5件 0件
「スペクトル軌跡」 3件 0件

告示の別添94は照明部の測り方と個数の数え方で終わっていて、色をどう測るかは入っていません。色の座標が書かれているのは、審査事務規程の別添13だけです。

このサイトで保安基準を追いかけてきて、同じ形の構図に何度も当たっています。法令と告示には要求だけがあって、実際にどう測るかは検査をやる側の規程にしか無い。ウインカーの点滅の数え方も、制動灯の後方100mも同じでした。色もその仲間でした。

オレンジの塗装やフィルムは通るのか、条文の側から言えること

サジェストに素直に出てくる問いなので、正面から書きます。「ウインカー オレンジ 塗装 車検」「ウインカー オレンジ フィルム 車検」「ウインカー 濃い オレンジ 車検」。

条文の側から言えるのはここまでです。

  • 求められているのは灯光の色が橙色であること。レンズの材質や、色をどうやって付けたかについては、9-9 にも別添13にも書かれていない
  • 判定はまず視認。疑われたときだけ色度座標を測り、A12〜A41 の4本の線の内側なら適合
  • 塗装やフィルムそのものの可否を書いた規定は、今回開いた範囲には無い

なので「この商品なら通ります」とは書けません。書けるとしたら、色を足す加工は濃くなる方向に動くので、A34(y=0.380/赤との境界)の側に寄っていく、という程度です。それも実測しないと分かりません。

ついでに言うと、色の話とは別に「灯器が損傷し、又はレンズ面が著しく汚損しているものでないこと」という要件が、装置ごとの条文にほぼ共通で入っています。塗る・貼る以前に、曇りや傷で色が変わっているほうが現実的な引っかかりどころかもしれません。

実際に手を入れるつもりなら、事前に整備工場か運輸支局に確認したほうが早いです。ここで数値を並べておいてなんですが、合否を決めるのは検査を行う側で、条文を読んだこちら側ではありません。

車検そのものにいくらかかるかという話は、輸入車の実額をまとめた記事のほうに置いてあります。

よくある質問

ウインカーの色は何色まで許されますか

条文が定めているのは「橙色であること」です。数値としての範囲は審査事務規程の別添13 3.5.4. にあり、緑との境界 y=x-0.100、赤との境界 y=0.380、白との境界 y=0.778-0.670x、そしてスペクトル軌跡の4本で囲まれた内側とされています。ただしこの数値が使われるのは、視認により橙色でないおそれがあると認められたときに限られます。

テールランプの色は何で判定されますか

赤色についても手続きは橙色とまったく同じで、9-9(2)の条文は色名を除くと(1)と1文字も違いません。範囲は黄との境界 y=0.345、紫との境界 y=0.948-x、紫の直線、スペクトル軌跡の4本で囲まれた内側です。こちらも入口は視認です。

ヘッドライトは何ケルビンまで白色として扱われますか

条文の側からは答えが出せません。今回確認した審査事務規程 第9章(39,769文字)と別添13(7,049文字)に、「色温度」も「ケルビン」も0件でした。色度座標を測る規定が用意されているのは橙色と赤色の2色だけで、白色には測定の規定そのものがありません。したがって白かどうかは視認による判断ということになります。

色を測る機械はどんなものですか

別添13 3.5.1. によると、色度座標の値を小数第3位まで求められる性能と、JIS C 1609-1「照度計」4.1 に規定される一般型AA級照度計と同等以上の性能を持つものとされています。測定時は自動車を停止させ、色に影響を与える灯火を消灯し、受光面に他の光が入らないようカバー等で遮蔽することになっています。

まとめ

  • 灯火の色を機械で測る規定は審査事務規程 9-9 の272文字だけで、対象は橙色と赤色の2色
  • 9-9 は測定を定めた13の節のうち、唯一どの条文の関係かも対象車も書いていない
  • (1)と(2)は色名を伏せると完全一致。色ごとの書き分けではなく、同じ手続きの色違い
  • 機械が出てくるのは「視認により橙色でないおそれがあると認められるとき」だけ。入口は人の目
  • 範囲は別添13 3.5.4. の4本の境界線。橙色には「白との境界」があるのに、白色そのものの範囲は無い
  • 同じ表題の細目告示 別添94 には、色の測定の節が丸ごと入っていない

色の基準は数値で線が引かれている、という前提で読み始めると、順序が逆に見えます。原文では、数値はむしろ最後に出てくる道具でした。ふだんの検査を通しているのは、検査官が横に立って見ている、それだけです。272文字という短さは、手を抜いたというより、目で分かることは目に任せた結果なのかもしれません。もっともこれは条文が述べていることではなく、私がそう読んだというだけの話です。

なお、ここで引用した告示・審査事務規程はいずれも2026年9月時点で公開されている版です。この種の基準は改正が入りますし、合否を決めるのは検査を行う側であって、条文の文面ではありません。手を入れる予定があるなら、着手前に整備工場か運輸支局に当たってみてください。

この記事で参照した原文

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