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車検の条文に「AdBlue」という言葉は一度も出てこない。書いてあったのは「還元剤等の補給」だった

G400dの運転席まわり。車検の条文にAdBlueという語は0件で、書かれていたのは還元剤等の補給だった Car|車
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私は2023年8月にG400dへ乗り換えていて、今は軽油を入れています。その前はMercedes-AMG C43で、燃料の種類が変わったことで、それまで縁がなかった言葉がひとつ増えました。AdBlueです。

ネットで調べると、だいたい同じことが書いてあります。ディーゼルの排気に吹く尿素水で、切らすとエンジンが再始動できなくなる、と。それ自体は方々に書かれているので、ここでは繰り返しません。

私が知りたかったのはその先でした。では車検では、これはどう扱われるのか。警告灯が点いたまま持ち込んだら落ちるのか。純正じゃないと駄目なのか。そのあたりが、読んでも読んでも出てこない。

それで条文のほうを開きました。結論から書くと、車検に関係する4つの文書を全部あたっても、「AdBlue」という語は1件も出てきませんでした。

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「AdBlue」も「尿素水」も、条文には書かれていない

見たのは次の4つです。すべて2026年9月18日に取得して、空白を除いた文字数と語の出現回数を機械で数えました。

文書 字数 AdBlue アドブルー 尿素水 還元剤
細目告示 第41条(新型車) 22,607 0 0 0 2
細目告示 第197条(使用過程車) 4,114 0 0 0 1
審査事務規程 7-59/8-59 26,529 0 0 0 5
審査事務規程 7-57/8-57 700 0 0 0 0

AdBlueというのはドイツ自動車工業会が持っている商標なので、法令の条文に商品名が載らないのは考えてみれば当たり前です。ただ「尿素水」も0件だったのは意外でした。

条文が使っている言葉は「還元剤」「尿素選択還元型触媒システム」の2つです。前者が液体のほう、後者が装置のほうを指しています。

このズレが地味に効きます。「アドブルー 車検」で条文を検索しても、永遠に何も出てきません。私も最初、条文のほうが古いのかと思って改正履歴まで見に行きました。そうではなくて、単に呼び名が違っただけでした。

ちなみに競合になりそうな解説記事を5本、本文を取得して同じ語で数えてみました。合計36,899字です。

解説記事5本の合計
還元剤 0
細目告示 0
審査事務規程 0
保安基準 0

全部0件でした。つまり世の中の「AdBlueと車検」の説明は、条文を見ないまま書かれている、ということになります。責める話ではなくて、私も条文を開くまでは同じことしか知りませんでした。

検査で見られているのは、たった1行

では条文には何が書いてあるのか。使用過程の車、つまり毎回の継続検査に当たるのは、審査事務規程の第8章です。そこの8-59-1に、こう書かれています。

イ 還元剤等の補給を必要とする触媒等に所要の補給がなされていないもの

(独立行政法人自動車技術総合機構 審査事務規程 8-59-1(1)①イ)

これに当たると、基準に適合しないものとして扱われます。根拠は保安基準第31条第3項と、細目告示第197条第2項です。

読み下すと単純で、入れるべきものが入っていなければ駄目、それだけです。量がいくつとも、何キロごととも書いていません。

保安基準第31条のほうも見ておくと、第3項はこうなっています。

前項の規定に適合させるために自動車に備えるばい煙、悪臭のあるガス、有害なガス等の発散防止装置は、当該装置及び他の装置の機能を損なわないものとして、構造、機能、性能等に関し告示で定める基準に適合するものでなければならない。

(道路運送車両の保安基準 第31条第3項・e-Gov法令検索)

装置の「機能を損なわない」状態を保て、という趣旨です。尿素水を入れていない尿素SCRは、装置としては載っているけれど機能していない。だから引っかかる、という筋道になります。

ここで気づいたことがひとつあります。これは「車検で落ちる」より前の話だということです。保安基準は車検のときだけ守ればいいものではなく、運行中ずっと当たっています。補給されていない状態は、検査場に行く前の時点ですでに基準に適合していません。

とはいえ、路上で残量を測られることは現実にはまずないでしょうから、実務上は車検が唯一の関門になります。そこは正直に書いておきます。

新規検査では5項目、使うほうの検査では2項目

審査事務規程の節PDFは、左に第7章(新規検査・予備検査など)、右に第8章(改造等による変更のない使用過程車)を並べた2段組で作られています。素のまま文字を抜くと左右の行が混ざるので、語ごとにx座標で振り分けて組み直しました。

結果、7-59が23,525字、8-59が2,025字でした。右が左の8.6%しかありません。

中身を並べると、落ちているものがはっきりします。まず7-59-1-1(2)、新規検査のほうで「適合しないもの」として挙がっているのは5つです。

  • 触媒等の取付けが確実でないもの又は触媒等に損傷があるもの
  • 還元剤等の補給を必要とする触媒等に所要の補給がなされていないもの
  • 触媒等が取外されているもの
  • 電子制御式燃料供給装置が機械式燃料供給装置に変更されているもの
  • 電子式速度抑制装置を装着する際に燃料噴射装置のコントロールユニットを改変したもの

対して8-59-1(1)①は2つだけです。

  • 触媒等の取付けが確実でないもの又は触媒等に損傷があるもの
  • 還元剤等の補給を必要とする触媒等に所要の補給がなされていないもの

消えた3つを見ると、全部「改造」の話でした。触媒を外した、燃料供給装置を替えた、速度抑制装置まわりのコントロールユニットをいじった。第8章はそもそも「改造等による変更のない使用過程車」の章なので、改造の項目が要らないのは筋が通っています。

面白いのはその結果です。改造していない普通の車に残る審査項目が、「取付け」と「補給」の2つになる。つまりノーマルのディーゼル車が排出ガスまわりで引っかかる余地は、実質この2つに絞られている、という読み方ができます。

なお細目告示のほうも並べておくと、第41条第2項第1号はイ・ロ・ハの3つ、第197条第2項第1号はイ・ロ・ハ・ニの4つでした。文書ごとに粒度が違うので単純比較はできませんが、「取付け」と「還元剤の補給」の2つはどの文書にも残っています

排ガスの数値のほう、CO何%・HC何ppmで判定される部分は別の節(7-58/8-58)の担当です。そちらは上の記事にまとめてあります。尿素SCR車を人が鼻で嗅いで判定する規定の話も、そこに書きました。

「切らすと再始動できない」を求めているのは、新型車の条だけ

ここが今回いちばん引っかかった部分です。

AdBlueが空になると再始動できなくなる、という仕組み自体は、メーカーが勝手に付けているわけではありません。細目告示第41条第2項第1号ハに、こうあります。

ハ 前項第3号、第4号、第7号、第8号、第11号及び第12号に掲げる自動車(還元剤等の補給を必要とする触媒等を備えるものに限る。)であって、協定規則第154号第2改訂版補足改訂版又は協定規則第154号の付録6に定める基準に適合しないもの

(道路運送車両の保安基準の細目を定める告示 第41条第2項第1号ハ)

第7号・第8号は軽油を燃料とする車両総重量3.5t以下の区分です。私のG400dの車両総重量はカタログの諸元表に載っていない(該当欄が「-」になっている)ので計算すると、車両重量2,520kgに乗車定員5名分の55kgずつを足して2,795kg。3.5tには届かないので、ここに入る計算になります。

そして、この「協定規則第154号」という語を4文書で数えるとこうなりました。

文書 協定規則第154号 尿素選択還元型触媒システム
細目告示 第41条(新型車) 2 1
細目告示 第197条(使用過程車) 0 0
審査事務規程 7-59/8-59 0 4
審査事務規程 7-57/8-57 0 2

新型車の条にしか出てきません。使用過程車の条にも、車検の審査事務規程にも0件です。

整理するとこうなります。作って売るときには「切らしたらこうなる仕組みを積んでおけ」という要求があり、いったん路上に出たあとの検査で見られるのは「入っているか」だけ。仕組みの有無ではなく、状態の一点勝負になっているわけです。

ひとつ正直に書いておきます。協定規則第154号 付録6の中身は、私は読めていません。国連欧州経済委員会のサイトにPDFがあるのですが、こちらからアクセスすると403で弾かれます。国土交通省の保安基準のページは協定規則の入手先としてそのサイトを案内しているだけで、第154号の邦訳は置かれていませんでした(第14号・第48号・第51号などは同省のサーバーにあります)。

なので「付録6がAdBlue切れの再始動制限を定めている」と断定はしません。ここで確認できたのは、細目告示がその付録を引いているという事実までです。

純正でなくてもいいのか、という問いへの答え

サジェストに「ベンツ アドブルー 純正以外」という語が出ます。気持ちはよく分かります。ディーラーで入れると高いし、量販店には安いポリタンクが積んであります。

条文で数えてみました。

細目告示41条 細目告示197条 規程7-59/8-59 規程7-57/8-57
純正 0 0 0 0
品質 0 0 0 0
規格 0 0 0 0
JIS 0 0 0 0
ISO 0 0 0 0
銘柄 0 0 0 0
濃度 0 0 0 0

全部0です。車検の側は、銘柄も品質も濃度も一言も書いていません。書いてあるのは「補給がなされているか」だけでした。

ただし、これを「何を入れてもいい」と読むのは早いです。別の場所に品質の話が出てきます。OBD(車載式故障診断装置)の技術基準である別添48に、こうあります。

(b) 還元剤消費量 還元剤が車両上で利用できること及び燃料以外の還元剤が使われる場合には還元剤の適切な消費量の監視-性能監視
(c) 還元剤品質 燃料以外の還元剤が使われる場合、実現可能な範囲で還元剤の品質-性能監視

(細目告示 別添48「自動車のばい煙、悪臭のあるガス、有害なガス等の発散防止装置に係る車載式故障診断装置の技術基準」)

つまり品質を見るのは検査員ではなく、車のOBDそのものという建て付けです。規格外のものを入れて車が異常と判断すれば、警告が出て、結果的にOBDのほうで引っかかる。条文に品質基準が無いことと、何を入れてもいいことは、まったく別の話でした。

OBD検査の制度そのものについては別に書いてあるので、そちらへ。輸入車がいつから対象になったかもまとめてあります。

自分で入れる人が用意しているもの

補充を自分でやる人は一定数いるようで、「アドブルー 補充 自分で」というサジェストにはベンツ・デリカ・ハイエース・プラドと車種名が続きます。

先に断っておくと、私は自分で補充した記録を持っていません。だから使い勝手を語ることはできません。ここでは「こういうものが売られている」という範囲で書きます。

売られているのは主に2種類です。ひとつは10L前後のポリ容器に入った高品位尿素水そのもの。もうひとつは、その容器から給油口へ流し込むためのノズルやホースです。容器を直接傾けて入れるのは、口の位置によってはかなり厳しいらしく、ノズルが別売りになっているのはそういう事情だと思われます。

高品位尿素水(アドブルー相当・10L)

尿素水の補充用ノズル・注入ホース

保証期間中の車で、しかも高い車なら、正直ディーラーに任せたほうが気は楽だと思います。私自身、点検類は新車保証のあるうちはディーラーに出す派です。ただ、保証が切れたあとまで同じ考え方でいるかというと、それはまた別の判断になりそうです。

この記事で書けなかったこと

ここが弱いところなので、先に全部出しておきます。

ひとつめ。私のG400dのAdBlueタンク容量を書いていません。「gクラス アドブルー」と打つと第1候補が「容量」で、そこは需要のあるところだと分かっています。それでも書かないのは、メーカーの一次情報が取れなかったからです。

メルセデス・ベンツ日本の公式サイトは、この記事を書いている環境からは接続そのものが成立しませんでした。HTTP/2でもHTTP/1.1でも応答が返ってきません。カーセンサーエッジのカタログには型式3DA-463350・総排気量2,924cc・車両重量2,520kg・燃料タンク100Lまでは載っていますが、尿素SCRの記載はありません。

世の中には「Cクラスは約12L、Eクラスは約25L」といった数字が出回っています。ただ出どころがメーカー以外のページしか見つからなかったので、孫引きはやめました。数字を書かないほうが、間違った数字を書くよりましだと思っています。

ふたつめ。私はAdBlueの消費量を記録していません。燃料のほうは満タン89.25Lで12,941円という給油の記録が残っていて(2026年9月時点で私が公開している直近の記録です)、実燃費6〜7.5km/Lという数字も出せます。給油の間隔が1ヶ月半〜2ヶ月に1回ということまで書けます。でもAdBlueについては、いつ何リットル入ったのかを控えていませんでした。

なので「何キロで1リットル」といった目安も、ここでは出しません。出せる立場にないからです。

みっつめ。付録6の中身。上に書いたとおりです。

車検の費用そのものは、前の車のときの実額を別記事に書きました。C43で初回車検が127,666円でした。新車から3年目に、ヤナセで受けたときの実額です。ガソリン車のときの数字なので、AdBlueとは無関係な金額であることは添えておきます。

Gクラスの車検まわりでは、背面タイヤやタイヤサイズにも別の論点があります。どちらも「保安基準に何が書いてあるか」を追いかけた回です。

ディーゼルであることが効いてくる話としては、税金のほうがもっと直接的です。Gクラスのディーゼルは、ガソリン車より2年早く重課に入ります。

よくある質問

AdBlueを補充しないと、車検には通らないのですか

条文上は、補給がなされていない状態は基準に適合しないものとして扱われます(審査事務規程 8-59-1(1)①イ、細目告示第197条第2項第1号ニ)。ただし「何リットル以上入っていること」という数量の基準は書かれていません。実際の判定は検査を受ける工場や運輸支局の運用によるので、心配なら持ち込む前に補充しておくのが確実です。

警告灯が点いたまま車検に出したらどうなりますか

警告灯そのものを直接扱った規定は、今回見た範囲では見つかりませんでした。8-59-1(1)④に「当該装置の機能に支障が生じたときにその旨を運転者席の運転者に警報する装置を備えたものであること」とあり、これは警報装置が正常に働くことを求める規定です。残量の警告が出ている状態と、装置の故障を示す警告が出ている状態は別なので、どちらなのかを先に切り分けるのが現実的だと思います。

純正のAdBlueでないと車検に通りませんか

車検の条文には「純正」「品質」「規格」「JIS」「ISO」「銘柄」「濃度」のいずれも1件も出てきませんでした。一方でOBDの技術基準(別添48)は還元剤の品質を監視対象に挙げています。銘柄を条文が縛っているわけではないけれど、車のほうが異常と判断すれば結果的に問題になる、という構造です。

自分で補充しても問題はありませんか

条文は誰が補充するかを定めていません。補給されているかどうかだけです。ただし給油口の位置や注入方法は車種で違いますし、こぼすと結晶化する液体でもあります。保証期間中の車なら、ディーラーに任せてしまうのも普通の選択だと思います。

ガソリン車にもこの規定は当たりますか

「還元剤等の補給を必要とする触媒等」を備えている車が対象なので、尿素SCRを積んでいない車には当たりません。ただし同じ8-59-1(1)①のアは「触媒等の取付けが確実でないもの又は触媒等に損傷があるもの」で、こちらは燃料を問わず当たります。

尿素SCR車が鼻で嗅がれる検査があると聞きました

審査事務規程 7-57(3)/8-57(2) に、排気管の開口部から30cm程度離れた位置の排出ガスを鼻に向けて手で煽りながら希釈して嗅ぎ、アンモニア臭が認められるものは適合しないとする規定があります。この条文の全文と、排ガスの数値基準については別記事にまとめてあります。

※ 本記事の条文および字数・語数は2026年9月18日に一次資料から取得・機械カウントしたものです。出典は、道路運送車両の保安基準(e-Gov法令検索)、道路運送車両の保安基準の細目を定める告示 第41条(2024.9.20版)・第197条(2024.1.5版)・別添48(2022.10.7版)、独立行政法人自動車技術総合機構 審査事務規程 7-59、8-59 および 7-57、8-57(最終改正 第35次)です。車両のグレード別スペックは、メルセデス・ベンツ日本の公式サイトが取得できなかったためカーセンサーエッジのカタログを出典としています。審査事務規程および細目告示は改正されます。本記事は情報提供を目的としており、特定の商品の勧誘を目的とするものではありません。実際の適合可否・車検の合否、および車両ごとの補充方法については、指定工場・認証工場、正規ディーラーまたは運輸支局にご確認ください。

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