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タイヤの「適正空気圧」は、法令にも車検の基準にも数字が書かれていなかった

車のタイヤの接地部を横から見たクローズアップ Car|車
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タイヤの空気圧の適正値を調べると、だいたい230kPa前後という話に行き着きます。上位に出てくる6本を落として機械で数えてみたら、「細目告示」「審査事務規程」「保安基準」がどれも6本とも0件でした。

数字は書いてあるのに、その数字がどの文書から来ているのかは誰も書いていません。それで下から順に開いていきました。保安基準(省令)、細目告示3本、審査事務規程、自動車点検基準、国土交通省の手引、日本自動車タイヤ協会の基準。

そのどれにも、空気圧の数値はありませんでした。 車検の基準に至っては、たった15文字です。

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保安基準の全文に「空気圧」という語が1件も出てこない

道路運送車両の保安基準をe-GovのAPIから全文で落として、附則まで含めて空白を詰めた状態で語を投げました。結果はこうです。

投げた語 件数
空気圧 0件
kPa 0件
タイヤ空気圧監視装置 0件

タイヤの根拠条文である第9条は、こういう書き方をしています。

第九条 自動車の走行装置(空気入ゴムタイヤを除く。)は、堅ろヽうヽで、安全な運行を確保できるものとして、強度等に関し告示で定める基準に適合するものでなければならない。
2 自動車の空気入ゴムタイヤは、堅ろうで、安全な運行を確保できるものとして、強度、滑り止めに係る性能等に関し告示で定める基準に適合するものでなければならない。

道路運送車両の保安基準 第9条(走行装置等)第1項・第2項

第1項から第3項まで、全部「告示で定める基準」に投げています。第4項がタイヤ・チエンの話で、条文はそこで終わりです。4項ぜんぶ合わせても400字に届きません。

溝の1.6mmを調べたときとまったく同じ構造でした。省令のほうを何度読んでも数字は出てきません。

車検の基準は「空気圧が適正であること」の一行だけだった

走行装置の細目告示は3本に分かれています。第11条が型式指定(新型車)、第89条が新規検査など、第167条が使用の過程にある車、つまり車検です。

車検側の第167条は、各ページのヘッダを除いた本文で1,204字しかありません。そこに書いてある空気圧の基準が、これです。

四 空気入ゴムタイヤの空気圧が適正であること。

道路運送車両の保安基準の細目を定める告示 第167条第4項第4号

以上です。読点を含めて22文字、実質的な中身は「適正であること」の7文字。

3本とも「kPa」は0件でした。前の車輪が何kPaで後ろが何kPaという話は、告示のどこにも出てきません。

同じ第4項の並びを見ると、位置関係がはっきりします。

内容
第1号 タイヤに加わる荷重は、そのタイヤの負荷能力以下であること
第2号 滑り止めの溝が1.6mm以上(二輪は0.8mm)
第3号 亀裂、コード層の露出等著しい破損のないこと
第4号 空気圧が適正であること

数字が入っているのは第2号だけです。溝には1.6mmという線が引いてあるのに、空気圧には引いていない。同じ項の、隣り合った号でこの差があります。

車検の章からは、2つ丸ごと落ちている

実際に検査場で何を見るかは、自動車技術総合機構の審査事務規程のほうに書かれています。走行装置は7-11と8-11で、1つのPDFに2段組で並んでいます。左が第7章(新規検査など)、右が第8章(改造等による変更のない使用過程車=いわゆる車検)です。

このPDFは段組なので、そのままテキストを抜くと左右が混ざります。文字の座標を見て、ページの中央で左右に割ってから数えました。

7-11(第7章) 8-11(第8章・車検
字数(ヘッダ・フッタを除く) 12,526字 1,582字
空気圧 36件 1件
タイヤ空気圧監視装置 19件 0件
協定規則 0件
kPa 0件 0件

8-11の1,582字には、ページごとに繰り返される「第8章 新規検査、予備検査、継続検査又は構造等変更検査(改造等による変更のない使用過程車)」という44文字の見出しが8回入っています。それを引くと、実際の中身は1,230字しかありません。

タイヤの部分(8-11-1(2))に並んでいるのは3つだけです。

車検の章(8-11-1(2))に書かれているタイヤの基準

① 滑り止めの溝が1.6mm以上(細目告示第167条第4項第2号関係)

② 亀裂、コード層の露出等著しい破損のないこと(同第3号関係)

③ 空気入ゴムタイヤの空気圧が適正であること(同第4号関係)

そして 8-11-2 と 8-11-3 は「欠番」、8-11-4 は「7-11-4の規定を適用する。」の一文だけ。第8章のタイヤの章は、これで全部です。

第7章の側と並べると、落ちているものが2つあります。

1つめは負荷能力です。第7章の 7-11-1(3) には①と②の2号を使って、積車状態の軸重を輪数で割った値がタイヤの負荷能力以下であること、その負荷能力はタイヤに表示されたロードインデックスから別表4で引くこと、ロードインデックスの表示が無いタイヤは当分の間、日本自動車タイヤ協会の「空気圧-負荷能力対応表」を使ってよいこと、まで書かれています。ア〜オの5つに分かれた、けっこうな分量です。

これが第8章には1文字もありません。細目告示第167条第4項の第1号に負荷能力の規定はあるのに、規程の側が引いていない、という形になっています。

2つめが、次の話です。

空気圧の警告灯は、車検の章に一度も出てこない

「タイヤ空気圧センサー 車検」「空気圧 警告灯 車検」はサジェストにしっかり出てくる語なので、そのつもりで探しました。

結果から言うと、審査事務規程の第8章に「タイヤ空気圧監視装置」という語は0件です。

告示の側には、ちゃんと書かれています。しかも3本で書きぶりが違いました。

位置づけ タイヤ空気圧監視装置についての書き方
第11条第6項 型式指定(新型車) 協定規則第141号の規則5.及び6.に適合するものでなければならない
第89条第5項 新規検査など 協定規則第141号の規則5.及び6.に適合するものであること+みなし規定3号
第167条第5項 使用の過程(車検) 協定規則への参照が消える。警報が適正に作動すること、だけ

車検側の第167条第5項は、こう書かれています。

…に備えるタイヤ空気圧監視装置は、空気入りゴムタイヤの空気圧が適正でない旨を示す警報及び当該装置が正常に作動しないおそれがある旨を示す警報が適正に作動するものであること

道路運送車両の保安基準の細目を定める告示 第167条第5項(抜粋)

警報が2種類あるのが面白いところで、「空気圧が足りない」の警報と「この装置自体が壊れているかもしれない」の警報の両方が求められています。ただしいくつで警報が出るのかは書いていません。そこは協定規則第141号のほうです。この規則の原文は国連欧州経済委員会のサイトにあるのですが、こちらからアクセスすると403が返って読めませんでした。灯火の記事のときも同じ壁に当たっているので、規則番号までしか書きません。

そして第7章の 7-11-1(3)⑥ には、こう添えられています。

なお、視認等によりタイヤ空気圧監視装置が備えられていないと認められるときは、審査を省略すること

審査事務規程 7-11-1(3)⑥(抜粋)

付いていない車は、見ない。つまり日本の条文は「タイヤ空気圧監視装置を付けろ」とは言っていなくて、「付いているなら、その警報がちゃんと働け」と言っています。

ここでよく聞かれる「警告灯が点いていたら車検に落ちるのか」ですが、これは断定しません。第8章に語そのものが無く、規程の側に判断材料がないからです。告示は警報が適正に作動することを求めていて、それを検査の現場でどう扱うかまでは書かれていませんでした。落ちる/落ちないのどちらで書いても、条文を超えます。

気になるなら、通す予定の工場に先に聞くのが確実だと思います。

日常点検の実施方法は「たわみ」で見ろと書いてある

法令の側からもう一段だけ降ります。道路運送車両法の第47条の2が日常点検整備で、自家用の乗用車はここに当たります。

第四十七条の二 自動車の使用者は、自動車の走行距離、運行時の状態等から判断した適切な時期に、国土交通省令で定める技術上の基準により、灯火装置の点灯、制動装置の作動その他の日常的に点検すべき事項について、目視等により自動車を点検しなければならない。

道路運送車両法 第47条の2第1項

第2項で、事業用や自家用貨物などは「一日一回、その運行の開始前」と別に決められています。自家用の乗用車だけが「適切な時期に」なのは、この2項が分かれているからです。

省令(自動車点検基準)の日常点検基準を見ると、タイヤの項はこうなっています。

2 タイヤ 1 タイヤの空気圧が適当であること。/2 亀き裂及び損傷がないこと。/3 異状な摩耗がないこと。/4 溝の深さが十分であること。

自動車点検基準 別表(日常点検基準)

告示が「適正」で、点検基準は「適当」。言葉は違いますが、どちらも数字は出てきません。

では具体的に何をすればいいのか、が書かれているのが自動車の点検及び整備に関する手引(国土交通省告示第317号)です。全41ページ、49,016字。ここでも「kPa」は0件で、代わりに「規定値」が20回出てきます。

日常点検の実施方法の欄には、こう書いてあります。

○タイヤの接地部のたわみの状態により、空気圧が不足していないかを点検します。(扁平チューブレスタイヤなどのようにたわみの状態により空気圧不足が分かりにくいものや、長距離走行や高速走行を行う場合には、タイヤゲージを用いて点検します。

自動車の点検及び整備に関する手引 日常点検の実施方法(車の周りからの点検)

日常点検は、見た目のたわみでよいことになっています。ゲージが登場するのは、扁平タイヤで見て分からないとき、それと長距離・高速に出る前の2つだけ。法律の条文が「目視等により」と書いていたのと、きれいに揃っています。

タイヤ空気圧監視装置が付いている車は、運転席で表示を目視して「空気圧値が規定値であるか」を点検することでも代えられる、とも書かれていました。

ただし定期点検(1年ごと・6か月ごと)の側は書き方が変わります。

タイヤ・ゲージを用いて、空気圧が規定値であるか点検します。

同 定期点検の実施方法(走行装置・ホイール・タイヤの状態)

ここは目視ではありません。しかも省令の別表のほうを見ると、定期点検の項目名は「タイヤの状態」としか書かれていない。ゲージを使えという指示は告示(手引)にしか無い、という構造でした。

まとめると、公的な文書の側は最後まで数字を出してきません。

文書 空気圧について書いていること 数値
保安基準(省令) 語そのものが無い
細目告示 第167条 適正であること なし
審査事務規程 8-11 適正であること(1行) なし
自動車点検基準 適当であること なし
手引(告示第317号) たわみで点検/定期はゲージで規定値 なし

数字が出てくるのは、ここから先だった

日本自動車タイヤ協会(JATMA)の『自動車用タイヤの選定、使用、整備基準 2023 PC編』まで来て、ようやく数字が出てきます。

第2部第1章の「タイヤの空気圧」は、遵守しなければならない事項として6つ並んでいます。前半3つがこれです。

(1)タイヤの空気圧は、走行前の冷えている時にエアゲージで点検し自動車製作者又はタイヤ製作者の指定空気圧に調整すること。なお、一般走行と高速走行で別に空気圧が指定されている場合はその指示に従うこと。
(2)自然漏洩等により空気圧は低下するので、点検時(最低1ヶ月に1度)に…指定空気圧を基準とし、0〜+20kPaの範囲内で調整すること。
(3)走行によって空気圧が上昇しても空気を抜かないこと

JATMA『自動車用タイヤの選定、使用、整備基準 2023 PC編』第2部第1章1.

ここでの「指定空気圧」が、みんなが探している数字です。JATMAはその出どころもはっきり書いていて、自動車製作者が JATMA YEAR BOOK を基に設定するものだ、としています。荷重だけでなく、ロードホールディング、最高速度、タイヤ位置、使用条件、車両特性まで考慮して決める、と。

そして置き場所。

指定空気圧は、車両の取扱説明書及び車両のドア付近等に表示されています。

同 第2部第1章1.「2)指定空気圧の表示」

運転席のドアを開けたところに貼ってあるシール、あれです。つまり「適正空気圧」は法令が決めた共通の数値ではなく、その車1台ごとにメーカーが決めた値です。だから条文の側は「適正であること」としか書きようがなかった、という話に見えます。

ちなみに、この表示を義務づけている条文は、今回開いた日本語の6つの文書のどこにも見当たりませんでした。ただし協定規則の原文が読めていないので、「義務が無い」とまでは書きません。

タイヤ側の上限は、はっきり数字で決まっています。

JATMAが数値で決めているもの

・乗用車用ラジアルタイヤの最高使用空気圧は350kPa。これを超えての使用は禁止

・「空気圧-負荷能力対応表」の最小の負荷能力に対応する空気圧より低い空気圧での使用も禁止

・調整の幅は指定空気圧を基準に0〜+20kPa

対応表は、例として195/65R15 91S が載っています。180kPaで520kg、190kPaで535kg、200kPaで555kg、210kPaで570kg、220kPaで585kg、230kPaで600kg、240kPaで615kg。10kPa刻みで15kgずつ増えていくのが数字で見えます。

空気圧を上げるというのは、要するにそのタイヤが支えられる重さを増やしているということでした。乗り心地の調整ではなく、耐えられる荷重の設定です。

整備者向けの第3部でも、点検器具として挙げられているのは2つだけでした。エアゲージ(「適正に表示されるもの」と条件が付いています)と、溝を測るデプスゲージ。充てん空気圧の調整範囲はここでも 0〜+20kPa です。

タイヤゲージ(エアゲージ)

手引が「長距離走行や高速走行を行う場合には」と条件付きで求めているのがこれです。JATMAの基準は器具に「適正に表示されるもの」という条件を付けていて、同じ刊行物の別の箇所には、エアゲージは長期使用で正確性が確保できなくなる場合がある、とも書かれています。

自然漏洩でどのくらい抜けるかは、保管の記事のほうで扱っています。

「高速道路の前は高めに」の出どころを探した

サジェストに「タイヤ 空気圧 高め」「高め どれくらい」「適正値 高速道路」が並ぶので、ここもJATMAの原文で確かめました。

「高速走行の前は高めに入れろ」とは、どこにも書かれていませんでした。書いてあるのは、これです。

なお、一般走行と高速走行で別に空気圧が指定されている場合はその指示に従うこと

JATMA『自動車用タイヤの選定、使用、整備基準 2023 PC編』第2部第1章1.(1)

指定されていれば従え、であって、自分の判断で上げろではありません。取扱説明書に高速走行時の指定がある車ならその値に、無い車は指定空気圧のまま、という読み方になります。

数字で補正しろと書いてあるのは、速度が160km/hを超える領域だけでした。

使用速度の範囲 補正する空気圧
160km/h以下 表のとおり(補正なし)
160km/h超〜180km/h以下 表の空気圧を30kPa増
180km/h超〜210km/h以下 表の空気圧を60kPa増(ただし最低220kPa)

日本の高速道路の制限速度は最高で120km/hなので、この表が効く場面は公道にはありません。「高速道路に乗るから高めに」の根拠として引ける数字ではない、ということになります。

もう1つ、高めが出てくる箇所があります。走行の途中で調整することになった場合です。

なお、走行途中で空気圧調整が必要になった場合は、タイヤは発熱により空気圧が上昇しているため、指定空気圧より20〜30kPa高めに調整して下さい

同 第2部第1章1.「3)空気圧の調整」

これは「高めに入れると良い」という話ではなく、温まって上がっている状態で指定値ぴったりに合わせると、冷えたときに足りなくなるから、という補正です。裏を返すと、走った後のタイヤで測って「入りすぎている」と判断して空気を抜くのが、いちばんまずいやり方になります。JATMAが遵守事項の(3)にわざわざ「走行によって空気圧が上昇しても空気を抜かないこと」と書いているのは、これでしょう。

ガソリンスタンドで入れるときはたいてい走った後なので、ここは地味に効く話だと思います。

入れなさすぎと入れすぎで、減り方が逆になる

JATMAは空気圧の過不足で何が起きるかも列挙しています。不足が4つ、過多が3つ。

起きること
空気圧不足 たわみが大きくなり、過度の発熱でセパレーションやコード切れを起こす
タイヤショルダー部の摩耗を早め、走行安定性が悪くなる
ビードの動きが大きくなり、リム擦れを起こす
走行抵抗が増し、燃料消費が多くなる
空気圧過多 トレッドが外傷を受けやすく、ショックバーストやコード切れを起こしやすい
発進時や制動時にスリップしやすく、トレッド中央部が早く摩耗する
ビード部に無理な力がかかり、ビードワイヤー折損やビード部のはく離

減る場所が逆になるのが分かりやすいところです。足りないと両肩から、入れすぎると真ん中から減る。溝を見るときに、深さだけでなくどこが浅いかを見ておくと、空気圧の管理がどうだったかが後から分かる、ということでもあります。

スタンディングウェーブ現象の作例も載っていて、条件が具体的でした。同じ195/65R15で、通常が200kPa・100km/h、低空気圧のほうが150kPa・150km/h。50kPa抜けた状態で150km/h出すとサイドウォールが波打つ、という絵です。

1つ断っておくと、これは刊行物に載っている作例の条件で、走らせて再現した数字ではありません。ただ「50kPa」という抜け方が現実的な数字なのが、引っかかるところではあります。自然漏洩は1ヶ月で5%程度とされているので、230kPaの車なら2ヶ月放置でそのくらい落ちる計算になります。

偏った減り方をしているタイヤは、溝が残っていても寿命としては短くなります。両肩だけ先に減っていれば、真ん中の溝が1.6mmに届く前に交換になる。ここは価格を先に見ておくと判断しやすい部分です。

TIREHOOD(タイヤフッド)

タイヤの購入と、取付店の予約を1つの画面でまとめられるサービスです。私自身は自分でネットショップを探して整備工場に電話する方法で交換しているので、その手間をまとめたい方向けの選択肢として置いておきます。価格を先に見ておくと、偏摩耗が出たときに「あと何ヶ月引っ張るか」の判断がしやすくなります。

※ 2026年9月時点。取付店・在庫・価格は地域により異なります。

私のタイヤの替え方と、この基準の関係

ここまで条文の話ばかりだったので、自分の側の話も書いておきます。

私はMercedes-AMG C43(W205型)に乗っていたとき、純正で付いていたコンチネンタルからミシュラン Pilot Sport 4 に履き替えました。しかも前輪2本だけです。交換が来たのは20,000km手前でした。ディーラーの見積もりが約16万円で、ネットで買って近所の整備工場に持ち込んだら2本6万円でした。

この「前2本だけ」というやり方は、今回読んだ基準と1つだけ接点があります。7-11-1(3)②のエに、前軸と後軸で負荷能力が違うタイヤが設定されている場合は自動車製作者の指定に従うこと、という趣旨の規定がありました。前後で違うタイヤを履くこと自体は、条文が想定していないわけではないようです。

もう1つ。夏タイヤの記事でランフラットに触れましたが、JATMAはランフラットについてこう書いています。

スペアタイヤ代替装備の一種である「ランフラットタイヤ」は、通常タイヤと同様に車両指定空気圧に設定し使用するタイヤです。

同 第2部第1章1.「適正空気圧の設定について」

パンクしても走れる構造だからといって、空気圧の扱いが特別になるわけではない、ということでした。低めでいい、ということにはならないのが要点だと思います。

いま乗っているG400dは4WDで車両重量が2,520kgあります。空気圧が支えられる重さの設定だとすると、車重が重い側の車ほど、対応表の10kPaで15kgという刻みが効いてくる読み方になります。ドアのラベルの数値をここに書かないのは、実物を見て記録していないからです。読者のみなさんも、自分の車の値は必ず自分のドアと取扱説明書で確認してください。他人の車の数字は、そのまま使えません。

冷えている状態で測れ、という条件が地味に厳しくて、走ってスタンドに着いた時点でもう条件から外れています。自宅に電源があるなら、朝いちばんに家で入れるほうが基準どおりにはなります。

電動エアコンプレッサー(携帯用の空気入れ)

JATMAの基準が求めている「走行前の冷えている時に調整」を家でやるための道具です。私がこれを使っているという話ではなく、冷間で調整するという条件を満たそうとすると道具はこうなる、という紹介です。

はみ出しの基準を調べたときも思ったのですが、タイヤまわりは数字がある項目と、無い項目がはっきり分かれています。

よくある質問

タイヤの適正空気圧は何kPaですか?

車ごとに違うので、一律の値はありません。今回開いた保安基準・細目告示・審査事務規程・自動車点検基準・国土交通省の手引のどれにも数値は書かれていませんでした。自分の車の値は、運転席のドア付近の表示と取扱説明書で確認してください。JATMAはその値を「指定空気圧」と呼び、自動車製作者が設定するものだとしています。

車検で空気圧は測られますか?

審査事務規程の第8章(車検の章)に書かれているのは「空気入ゴムタイヤの空気圧が適正であること」の1行だけで、測定方法も数値も書かれていません。審査の方法は「視認等その他適切な方法により審査したとき」となっています。どう扱うかまでは規程に書かれていないので、断定は避けます。

空気圧の警告灯が点いていたら車検に通りませんか?

規程からは判断できません。第8章に「タイヤ空気圧監視装置」という語は0件でした。一方で細目告示第167条第5項は、備えている車について警報が適正に作動することを求めています。落ちる/落ちないのどちらで書いても条文を超えるので、受ける工場に事前に確認するのが確実です。

空気圧の点検はどのくらいの頻度でやればいいですか?

JATMAの基準が「最低1ヶ月に1度」としています。法令の側は自家用乗用車について「走行距離、運行時の状態等から判断した適切な時期に」(道路運送車両法第47条の2第1項)で、回数は決めていません。1日1回・運行前が義務なのは事業用や自家用貨物などのほうです。

高速道路に乗る前は空気圧を高めにすべきですか?

JATMAの基準は「一般走行と高速走行で別に空気圧が指定されている場合はその指示に従うこと」としており、自分の判断で上げろとは書いていません。数値での補正が出てくるのは使用速度160km/hを超える場合だけです。ただし手引は、長距離走行や高速走行を行う場合はたわみの目視ではなくタイヤゲージを使うよう求めています。上げるかどうかより、測るかどうかの話と読むのが原文に近いです。

空気圧は上限まで入れてもいいですか?

乗用車用ラジアルタイヤの最高使用空気圧は350kPaで、これを超える使用は禁止されています。ただし調整の幅としてJATMAが認めているのは指定空気圧を基準に0〜+20kPaまでです。350kPaはタイヤ側の限界であって、入れてよい値ではありません。

結局どこを見ればいいのか

条文を下から上まで開いて分かったのは、空気圧について国が決めているのは「適正であること」という状態だけで、その適正が何kPaかは車をつくった側が決めているということでした。

だから探す場所は2つしかありません。運転席のドアを開けたところと、取扱説明書。ここに書いてある値を基準に、冷えているときに測って、0〜+20kPaの範囲に収める。それ以上のことは、どの公的文書にも書かれていませんでした。

数字を探しに行って「数字は無い」という答えが返ってきたわけですが、逆に言えばネットで見かける230kPaという数字を自分の車に当てはめる理由も、どこにも無いということになります。

本記事は情報提供を目的としており、特定の商品の勧誘を目的とするものではありません。条文・基準の解釈や個別の車両が検査に適合するかどうかについては、記載内容が判断を保証するものではありません。実際の判断は、指定整備工場・認証工場などの専門家にご相談ください。記載の内容は2026年9月時点で確認できた原文に基づいています。