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冠水路は何センチまで走れるのか JAFの2つのテストを原文で読み比べた

雨で路面に水がたまった道路。冠水路の走行可否をJAFのテスト原文で確認した記事のアイキャッチ Car|車
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台風が近づくたびに「冠水路は水深30cmまで」という数字を見かけます。ただ、その30cmがどのテストの、どの車の結果なのかまで書いている記事が見当たらなかったので、出どころであるJAFのテストを原文で読みました。

結論から言うと、よく引用されているのは2010年に2台だけ走らせたときの数字で、2024年に3台でやり直したときは同じ水深・同じ速度で結果が変わっています。しかもJAFの結論は、2回とも同じでした。

先に立場を書いておきます。私が走っているのはほぼ都内で、冠水した道に入った経験は、自分の記事のどこにも書いていません。G400dのカタログにある渡河水深という数字は自分の記事に書きましたが、試したことはない。だからこの記事は「私はこうやって切り抜けた」という話ではなく、公表されている実験結果を、書いてあるとおりに読み直した話です。

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よく見る「30cm」は、2010年にマークⅡで出た数字だった

JAFが冠水路走行テストを実施したのは2010年4月8日(木)。集中豪雨などでアンダーパスが冠水した場合を想定し、前後にスロープを設けたコースを造っています。水平部分は30m

使った車は2台だけです。

  • セダンタイプ: トヨタ・マークⅡ(2,000cc)
  • SUVタイプ: 日産・エクストレイル(2,000cc)

結果の表がそのまま公開されています。

水深 車種 速度 走行の可否
30cm セダン 時速10km
30cm SUV 時速10km
30cm セダン 時速30km
30cm SUV 時速30km
60cm セダン 時速10km ×
60cm SUV 時速10km
60cm セダン 時速30km
60cm SUV 時速30km ×

ここで気づいてほしいのは、30cmは4パターンとも「○」だという点です。「30cmでアウト」と書いている記事をよく見ますが、原文はそう言っていません。

止まったのは60cmのほう。セダンは時速10kmで「フロントガラスの下端まで水をかぶった。それでもすぐには止まらず、しばらく走ることはできたが、登りのスロープに差し掛かった31m地点でエンジンが止まった」。SUVは時速10kmなら走り切りましたが、時速30kmでは「エンジン下部からも大量の水が入り込み、わずか10mでエンジンが止まった」。しかも「浸水時の衝撃も大きく、車体が一瞬浮き上がってハンドルが取られた」とあります。

セダンの時速30km・60cmが「-」になっているのは、失敗ではなく未実施です。別ページの注記に「時速10kmの段階ですでにエンジンが停止したため、実施しておりません」と書かれています。

止まった理由も明記されていて、エアインテーク(空気の取り入れ口)を通してエンジン内部に水が入ったためと考えられる、とされています。水没して壊れたのではなく、空気を吸うところから水を吸った、という順番です。

2024年に同じ水深でやり直したら、結果が変わった

同じJAFが、14年後にもう一度やっています。2024年10月28日(月)〜10月30日(水)株式会社ジェイテクト 伊賀試験場(三重県伊賀市)。今度はEV・HV・ガソリン車(軽自動車)の3台で、速度も10km/h・30km/h・40km/hの3段階に増えています(40km/hは水深60cmのみ)。運転はプロのスタントマンです。

水深60cmの結果表がこれです。

水深 速度 車種 結果
60cm 10km/h EV 走り切ることができた
60cm 10km/h HV 走り切ることができた
60cm 10km/h ガソリン車 走り切ることができたが、エアクリーナーの一部が濡れていた
60cm 30km/h EV 走り切ることができたが、複数の警告灯が点灯した
60cm 30km/h HV 走り切ることができたが、エアクリーナーが完全に濡れていた
60cm 30km/h ガソリン車 走り切ることができたが、エアクリーナーが完全に濡れていた/車内に水が大量に侵入した
60cm 40km/h EV 走り切ることができたが、複数の警告灯が点灯した
60cm 40km/h HV 走り切ることができたが、冠水路走行後にエンジンが停止した/複数の警告灯が点灯した
60cm 40km/h ガソリン車 走り切れずに28.5m地点で停止した/車内に水が大量に浸水した

2010年に「セダンは時速10kmでも走り切れなかった」水深60cmを、2024年は3台とも時速10kmで走り切っています。それどころか40km/hでもEVとHVは走り切り、止まったのはガソリン車(軽)だけでした。

だから「水深60cmは走れない」と一言で言い切るのは、原文の読み方としては雑です。2010年のマークⅡが31m地点で止まった、が正確なところ。車が違えば結果は違うし、実際に違いました。

数字だけが独り歩きすると、こういうことになります。元の条件——どの車で、何km/hで、何mのコースだったのか——まで一緒に運ばれることは、まずありません。

「走り切れた」は「無事だった」という意味ではない

ただ、2024年の表を「走り切れたのだからいける」と読むと、たぶん一番大事なところを落とします。結果欄をもう一度見てください。走り切った車が、ほぼ全部どこかを壊しているか、水を入れているか、警告灯を点けているんです。

水深30cm・30km/hのほうはもっと分かりやすくて、原文はこう書いています。

  • EV: 走り切ることができたが、車体下部のアンダーカバーが外れた/ボンネット内部に水が浸入
  • HV: 走り切ることができたが、右後輪のホイールカバーと左前の牽引フックが外れた/ボンネット内部に水が浸入
  • ガソリン車: 走り切ることができたが、車内とボンネット内部に水が浸入

水深30cm。よく「ここまでなら大丈夫」と言われている深さで、時速30kmを出すと牽引フックが外れます。JAFのまとめにも「走り切れたケースでもボンネット内部や車内に水が浸入したケースが多くあった」と書かれています。

自走できたかどうかと、車が無傷かどうかは別の話です。輸入車の場合、ここで止まらずに帰れたとしても、あとから電装系の点検で工賃が積み上がる可能性は普通にあります。私が初回車検で払った金額は別記事に書きましたが、計画していない入庫は、だいたい計画していた金額を超えます

EVは冠水に強い、という話をどう読むか

2024年のテストでEVが40km/hでも走り切ったので、「エンジンが無いぶんEVは冠水に強い」という読み方が出てきます。半分は当たっていて、半分は原文と逆です。

JAFのまとめには、こう書いてあります。

> 電気自動車(EV)について、モーターは止まらなかったが、複数のシステム故障の警告が表示された。「エンジンがないから大丈夫」と安易に冠水路に進入するのは危険。

止まらなかったことは認めたうえで、「だから大丈夫」ではないと名指しで釘を刺している。HVについても「エンジンを搭載しているため、同様のリスクがある」と書かれていて、実際40km/hのHVは冠水路を走り切ったあとにエンジンが停止しています。走っている最中ではなく、走り終わってから。

このあたり、自分の車がどっちなのかで安心しに行きたくなる気持ちはよく分かります。ただ原文が言っているのは「駆動方式の話ではない」ということでした。

それでもJAFの結論は、2回とも同じだった

14年空けて、車もEV・HVに入れ替えて、速度も増やして再テストして、結果は変わりました。それなのに結論だけが2回とも同じです。

2010年:

> 実際の冠水路では水深も水の中の様子もわからないため、冠水路に遭遇したら安易に進入せず、迂回することを考えた方がよい。

2024年:

> 実際の冠水路の場合、濁っていることが多く見た目では水深を判断することが難しい。また、マンホールが開いていることや見えない側溝などさまざまな危険があり、たとえ浅く見えても進入するのは大変危険。

つまりJAFが問題にしているのは、何センチまで走れるかではなくいま何センチなのかが分からないことです。マンホールの蓋が水圧で外れていれば、水深20cmの水面の下に穴があります。側溝との境目も見えない。これは車の性能でどうにかなる話ではないので、走破限界を1cm単位で知っても使い道がない。

「何センチまで走れるか」という問い自体が、答えを持っても使えない問いだった、というのがこの2本を並べて読んだ感想です。

JAFはハザードマップの活用も勧めていて、リンク先として国土交通省のポータルサイトを挙げています。走る前に見るものであって、水面を前にして考えるものではない、という位置づけです。

渡河水深70cmという数字は、この話とは別物です

「渡河水深」で検索すると、ランキングやら読み方やらが並びます。ジムニー、ランクル、ディフェンダー。SUVに乗っていると一度は目に入る数字だと思います。

私のG400dにも公表値があって、渡河水深27.6インチ、最低地上高270mm、車重2,520kg。この3つは以前Gクラスのデフロックの記事を書いたときにメーカー資料から拾ったものです。公表されているのはインチのほうで、見出しの70cmは単位を換算しただけの数字です(27.6インチ=約70.1cm)。

ただ、この数字を冠水路の話に持ってくるのは筋が悪い。渡河水深は各社が自社の条件で公表している数字で、想定しているのは川底が見えていて、深さが分かっていて、障害物が無く、速度も自分でコントロールできる場面です。JAFが「危ない」と言っているのは、そのどれも成立していない場面のほうでした。

しかも今回、他車種の渡河水深を一次ソースで確認しようとして取れませんでした。メルセデスの日本語サイトは接続段階で落ち、北米のプレスリリースはボット判定で本文が返らず、ランドローバーとスズキのスペックページは200で開くのに「渡河」「渡渉」の文字列が1件もありません(JavaScriptで描画しているようです)。なので他車種の数字はこの記事に書きません。拾ってきた孫引きを並べたところで、条件が分からない数字が増えるだけなので。

ついでに言えば、デフロックについても、都内しか走らないので出番が来ないと自分の記事に書いたままです。カタログに数字が載っていることと、それを試したことは、まったく別です。

アンダーパスは全国に約3,700箇所ある

そもそも冠水しやすい場所は、あらかじめ分かっています。国土交通省の「道路の冠水対策」のページに、こうあります。

> 主に市街地では、前後区間と比べて急激に道路の高さが低くなっている区間が多数あり、この区間を「アンダーパス」と呼んでいて、全国では約3,700箇所(R7.3末時点)が存在します。

そして「特にアンダーパスに設置した排水ポンプの能力を超える大雨となった場合、アンダーパスに水がたまってしまいます」と続きます。排水ポンプは付いている。付いているけれど、能力を超えると溜まる。だから国交省は事前通行規制の実施と道路利用者への情報提供を行っている、という書き方です。

ここが少し引っかかるところで、「情報提供を行っています」とは書かれているものの、どの箇所が今どうなっているかを1つの画面で見る全国共通の仕組みまでは、このページには書かれていません。実際には各地方整備局や自治体が個別に冠水注意箇所のマップや電光掲示板で出している形になります。都内を走っていて電光掲示板の表示に気づけるかというと、雨で視界が悪いときほど気づきにくいだろうな、とは思います。

水に浸かってしまったあと、最初にやってはいけないこと

ここからは、通ってしまったあと・浸かってしまったあとの話です。JAFのページに手順が明記されていて、これは覚えておく価値があります。

まず車内に閉じ込められた場合。原文はこう書いています。

> 運転席にいる限り、クルマの床面以上の水深であっても、ただちには浸水してきません。

だから危険を察知するころには、クルマが浮いて前後に動かなくなり、エンジンの吸気口が水を吸うか、排気管が水圧で塞がれてエンジンが停止して立ち往生する、という順番になります。

脱出の手順は、シートベルトを外す → 窓ガラスが水面より高い位置にあるなら窓を開けて屋根に上る → 窓もドアも開かないなら緊急脱出用ハンマーでガラスを割る。ハンマーも無い場合は、外の水位との差が小さくなるとドアへの水圧も下がって開けやすくなるので、そのタイミングを逃さず押し開ける、とされています。水が入ってくるのを待つ、という直感に反する説明ですが、原文どおりです。

「水深◯cmでドアが開かなくなる」という数字を書いている記事もありますが、その根拠には辿り着けませんでした。JAFの原文にあるのは上のとおり逆向きの記述だけなので、こちらでは数字を出しません。

ハンマーは、シートベルトカッターが付いているタイプがJAFの手順とそのまま噛み合います。私は自分が積んでいるとは書けませんが、原文が名指ししている唯一の道具ではあります。

緊急脱出用ハンマー(シートベルトカッター付き)

水が引いたあと、キーを回す前に

そして、ここが一番知られていないところだと思います。水が引いたあとの車は、放っておくと燃えることがあります。

JAFのページに実例が書かれています。2004年8月、香川県高松市で台風16号による高潮が発生し、その後海水に浸かった自動車が次々と自然発火しました。海水に含まれる塩分が車内の電気配線等をショートさせ、その熱で発火したものだ、と。しかも「海水が引いた後も、その塩分により、配線等の腐食が急速にすすむ」とされています。

理屈も書かれていて、キースイッチが切れた状態でも、バッテリーが接続されていれば常に電流は流れている。だから水が引いていても、次の順で扱うようにと明記されています。

1. いきなりエンジンキーを回さない、エンジンボタン(プッシュボタン)を押さない

2. ボンネットを開け、水に浸っているようであれば、火災防止のためバッテリーのマイナス側のターミナルをはずす

3. はずしたターミナルが、バッテリーと接触しないような絶縁処置をする

4. ハイブリッド車(HV)・電気自動車(EV)は、むやみに触らない

いちばんやりたくなる「とりあえずエンジンがかかるか試す」が、原文では1番目の禁止事項として置かれているのが印象的でした。動くかどうかを確かめたい気持ちが、そのまま火災になる。

2番目の端子外しには工具が要ります。輸入車だと車載工具が最小限のことも多いので、10mmあたりのレンチが1本あるかどうかで、できることが変わります。ただしHV・EVは4番目のとおり触らないのが原則なので、ここは自分の車がどれに当たるかを先に確認してください。

バッテリー端子用のレンチ・車載工具

JAFは車載の防災用品についても「クルマのトランクや車内に防災用品を常備すれば安心感が高まります」と書いています。こちらも、そういう推奨がある、というところまでにしておきます。

車載用の防災セット

保険の話は、1点だけ確認しておく

金額や補償割合の話はしません。約款は保険会社ごとに違うので、そこはご自身の証券を見るのが唯一の正解です。ただ1点だけ、多くの人が誤解しているところがあるので、JAFの原文をそのまま置いておきます。

> 地震・噴火・台風・洪水・高潮・津波などによる自然損害には、対人賠償保険・対物賠償保険・無保険車傷害保険が適用されません。ただし、一時金をお支払いする特約を販売している保険会社もあります。

「保険に入っているから大丈夫」の中身が、台風や洪水では変わります。そして特約があるかどうかは、契約している会社と内容次第です。JAF自身も「あらかじめご自身の契約している保険の内容を確認し、災害に備えましょう」という書き方をしていました。

なお、JAFのロードサービスについては「自動車保険では対象外の地震、台風、大雪など自然災害に起因した事故・故障にも対応しています」と書かれています。保険とロードサービスで守備範囲が違う、というのはここで初めて知りました。

本記事は情報提供を目的としており、特定の保険商品・サービスの勧誘を目的とするものではありません。補償内容・適用可否は契約している保険会社と約款によって異なります。実際の判断にあたっては、保険会社の窓口や代理店など専門家にご相談ください。記載内容は2026年8月時点で公表されている情報にもとづきます。

冬の路面と同じで、先に決めておくほうが早い

冬タイヤの記事を3本書いたときに同じことを思ったのですが、路面のコンディションが変わる話は、現場で判断しようとすると必ず遅れます。スタッドレスをいつ履くかも、水に入るかどうかも、その場で見て決めるには材料が足りない。

冠水路については、JAFが2回テストして2回とも「迂回」と書いている以上、判断としてはもう出ています。走れるかどうかを見極める技術ではなく、その道を通らない経路をあらかじめ持っているかのほうが実務的だ、というのが原文2本を読んだ結論でした。

車を止めたまま車内にいる場面のルールは、また別の話になります。エンジンをかけたまま留まってよいのかについては、条例の原文を追いかけた記事が別にあります。

よくある質問

水深30cmなら走っても大丈夫ということですか?

原文は「大丈夫」とは言っていません。2010年のテストでは30cmの4パターンが全て「○」でしたが、2024年のテストでは水深30cm・時速30kmで、EVのアンダーカバーが外れ、HVの右後輪ホイールカバーと左前の牽引フックが外れ、3台ともボンネット内部に水が浸入しています。走り切れることと無傷であることは別です。そして実際の冠水路では、その30cmという数字自体が水面から読めません。

SUVなら大丈夫ですか?

2010年のテストでは、水深60cm・時速10kmでセダンが止まりSUVが走り切っています。ただし同じSUVでも時速30kmでは10mで止まり、車体が一瞬浮いてハンドルを取られたと記録されています。車高よりも速度で結果が変わっている点が、両方のテストに共通していました。

メーカーが公表している渡河水深まではいけますか?

渡河水深は各社が自社の条件で公表している数字で、深さと水中の状況が分かっている前提の値です。JAFが危険としているのは、水深も水の中も見えず、マンホールが開いていたり側溝が見えなかったりする状況のほうなので、同じ土俵の数字ではありません。なお他車種の渡河水深は、メーカー公式で確認が取れなかったため載せていません。

冠水した道を通ったあと、点検に出すべきですか?

JAFは、水に浸った車についてはエンジンキーを回す前にバッテリーのマイナス端子をはずすよう案内しており、HV・EVはむやみに触らないよう明記しています。2004年に海水に浸かった車が自然発火した事例も挙げられています。自走できたとしても、電装系の状態は外からは分かりません。ディーラーや整備工場に状況を伝えて相談するのが確実です。

アンダーパスが冠水しているかは事前に分かりますか?

国土交通省によれば、アンダーパスは全国に約3,700箇所(令和7年3月末時点)あり、排水能力を超える大雨の場合には事前通行規制と道路利用者への情報提供が行われています。ただし現在の状況をまとめて確認する全国共通の仕組みまでは同ページに記載がなく、各地方整備局や自治体が個別に案内している形です。JAFは走る前のハザードマップ確認を勧めています。

出典

同じJAFのユーザーテストでも、夏の車内温度のほうは4本ぶん公開されています。「サンシェードは効果がない」と「効果がある」が両方流通している理由も、原文を並べると分かりました。

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