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Gクラスの真ん中にある3つのボタンは何なのか|デフロックの押す順番と、押してはいけない場所

Gクラスのダッシュボード中央にある3つのデフロックスイッチ Car|車
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2023年8月からG400dに乗っています。走っているのはほぼ都内です。

つまり、ダッシュボードの真ん中に並んでいるあの3つのスイッチが活躍する場所を、私はまず走っていません。 首都高と地下駐車場でデフロックの出番はない。Gクラスに乗っている人の多くが同じだと思います。

にもかかわらず、あれが何なのかを説明できる人は意外と少ない。「4WDを強くするやつ」くらいの理解で通り過ぎている人がほとんどではないでしょうか。調べてみたら、3つのうち1つだけ中身が違ったり、押す順番が決まっていたりして、けっこう面白かったので書いておきます。

先に断っておくと、この記事に「実際に押してみたらこうだった」は出てきません。 都内の舗装路しか走っていないので、そもそも押す場面が来ないからです。出せるのはメルセデスが公表している資料と、そこから導ける話まで。ここは正直に書いておきます。

Gクラスのダッシュボード中央に並ぶ3つのデフロックスイッチ

販売店で撮ったGクラスの運転席まわり。エアコン吹き出し口のあいだにある3つの銀色のスイッチが、この記事の主役です。

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3つとも「デフロック」で、100%ロックする

3つのスイッチはそれぞれ、センターデフ・リアデフ・フロントデフのロックです。

デフ(デファレンシャルギア)は、カーブを曲がるときに内側と外側のタイヤが違う回転数で回れるようにする部品です。これがあるから車は素直に曲がる。ただし裏返すと、片方のタイヤが浮いたり滑ったりすると、力がそっちに逃げてしまう。空転しているタイヤだけが元気に回って、接地しているほうには力が行かない。あれです。

デフロックは、その差動を止めて左右(あるいは前後)を直結させる仕組みです。Gクラスの場合、メルセデスは3つとも「100%」と書いています。

the three 100-percent differential locks

(3つの100パーセント・デファレンシャルロック)

出典: Mercedes-Benz USA 公式プレスリリース「The new Mercedes-Benz G-Class」(2026年8月時点。以下の引用もすべて同じ資料から)

100%というのは「半分だけ効く」がない、という意味です。 押した瞬間に完全直結になる。この数字が後で効いてくるので覚えておいてください。

弱点というか、ここで一つ困ったことを書いておきます。3つのスイッチが左からどの順で並んでいるのか、私は公式の資料で確認できませんでした。 上の写真を7倍まで拡大してみたのですが、それぞれのアイコンに描かれた駆動系の図がつぶれていて判別できない。なので「左がフロント」といった書き方はしません。車に乗ったら、スイッチのアイコンを見て判断してください。 どの部分が太く塗られているかで、前・中央・後ろのどれなのかが分かるようになっています。

センターの1つだけ、中身が違う

ここが個人的にいちばん意外だったところです。3つとも同じ機構だと思っていたのですが、違いました。

When the switch for the center differential lock is operated, the multiplate clutch switches to a 100% fixed locking effect. The locks at the front and rear axle differentials are normal differential locks with a 100% locking effect.

(センターデフロックのスイッチを操作すると、多板クラッチが100%固定のロック状態に切り替わる。前後アクスルのデフのロックは、100%のロック効果を持つ通常のデフロックである)

つまり、

スイッチ 中身 ふだんの状態
センター 多板クラッチ 路面に応じて前後の配分を自動で変えている。スイッチを押すと100%固定になる
リア 通常のデフロック 押すまで何もしない
フロント 通常のデフロック 押すまで何もしない

センターだけは、押していないときも常に仕事をしているわけです。同じ資料には、この多板クラッチが「自動制御式のLSDのように振る舞う」ため、ドライバーが手でデフロックを入れなければならなくなるまでの余裕が大きくなった、と書かれています。

言い換えると、普通に走っているぶんにはセンターの多板クラッチが勝手にやってくれるので、3つのスイッチの出番がない。 都内で3年乗っていて手を出す場面が来ないのは、私が横着だからというより、そういう設計だからでもあるわけです。

作動のしかたも書かれています。

purely electromechanically actuated and fully networked. An LED and the central driver’s display indicate which lock is currently active.

(純粋に電気機械式で作動し、完全にネットワーク化されている。LEDと中央のドライバーディスプレイが、いまどのロックが作動中かを示す)

古いGクラスのデフロックは油圧で動いていて、経年でオイル漏れを起こすという話がよく出てきます。現行世代は電気機械式なので、そこは構造が変わっています。ただし「だから壊れない」とは書かれていません。 ここは推測しないでおきます。

押す順番が決まっている(センター → リア → フロント)

この記事で一番書きたかったのがこれです。

All the locks can be engaged individually while on the move, both in LOW RANGE and in HIGH RANGE, in the sequence center, rear axle and finally front axle differential.

(すべてのロックは走行中に個別に作動させることができる。LOW RANGEでもHIGH RANGEでも可能で、その順序はセンター、リアアクスル、最後にフロントアクスルのデフである)

センター → リア → フロント。 逆順や飛ばしではなく、この順番。

なぜかというと、必要な分だけ段階的に足していく設計だからです。

状況 入れるもの 何が起きるか
前後どちらかが空転しはじめた センターだけ 前後に強制的に均等配分される
それでも足りない センター+リア 後ろの左右も直結。牽引力が一気に増える
まだ出られない 3つとも 四輪が同じ回転数で回る。ただしほぼ曲がれなくなる

フロントを最後にする理由は、前輪を直結すると操舵がほとんど効かなくなるからです。曲がるための車輪を直結してしまうので当然といえば当然で、だから「本当に最後の手段」の位置に置かれている。順番はマナーではなく、効きの強さと引き換えに失うものの大きさの順になっています。

注意点を一つ。 同じプレスリリースの中で、記述が揃っていません。Gクラス全体を説明している節では上のとおり「LOW RANGEでもHIGH RANGEでも」となっているのですが、AMG G63を説明している節では「LOW RANGEで個別に作動させられる」と書かれていて、HIGH RANGEに触れていない。仕様差なのか書き方の違いなのかは、この資料からは判断できませんでした。自分の車がどちらなのかは車載の取扱説明書で確認してください。

舗装路で押してはいけないのは、100%だから

「デフロックは舗装路で使うな」というのは、Gクラスに限らずどこでも言われます。ただ、理由まで書いてある記事は少ない。

理屈は上の「100%」に全部入っています。

カーブを曲がるとき、外側のタイヤは内側のタイヤより長い距離を走ります。左右が別々に回れるからこそ成立している動きです。ここでデフを100%ロックする=左右を同じ回転数に固定すると、外側は「もっと回りたい」、内側は「そんなに回りたくない」という状態になる。行き場のなくなった力は駆動系のねじれとして溜まり、タイヤがグリップの高い舗装路では逃げ場がありません。土や砂利ならタイヤが少し滑って逃がしてくれますが、乾いたアスファルトはそれをさせてくれない。

これは推測ではなく、100%ロックという公表値から出てくる幾何の帰結です。 ただし「何km/h以上で禁止」「どういう場面で警告が出る」といった具体的な制限は、メルセデスの取扱説明書に書かれている内容です。そして、ここが今回いちばん歯がゆかったところなのですが——日本語の取扱説明書がオンラインで読めません。 メルセデス・ベンツ日本のサイトは外部からアクセスできず(接続そのものが通らない)、米国サイトのオンライン取説はページを開いても本文が描画されず、PDFは403で弾かれました。

なので制限値については、必ず自分の車のグローブボックスに入っている取扱説明書を見てください。 ここを検索結果の記事で済ませてはいけない箇所だと思います。

LOW RANGE は、この3つとは別のスイッチ

デフロックとよく混同されるのが LOW RANGE です。別物です。

デフロックが「力の配り方」を変えるものなのに対し、LOW RANGE はトランスファーのギア比そのものを変えるもの。数字が出ています。

項目 内容
入れられる速度 40 km/h(25 mph)以下
入れるときの条件 トランスミッションを N にする
ギア比 HIGH RANGE の 1.002.93
HIGH RANGE に戻せる速度 70 km/h(43 mph)以下
先代のギア比 2.1(現行のほうが低速寄り)

2.93というのは、同じアクセル開度でタイヤに掛かるトルクがおよそ3倍近くになるということです。極端な登り坂で動き出すためのもので、資料でもそう説明されています。

入れるときは N、戻すときは 70km/h 以下。入れる条件と戻す条件が違うので、ここは覚えておく価値があります。資料には「トランスミッションを N にして」と条件が明記されているので、D のままスイッチを押しても反応がないのは、たぶん故障ではありません。

G-Mode は自分で押すものではない

Gクラスには「G-Mode」というオフロード用のモードがありますが、これを呼び出すボタンはありません。

The G-Class changes to “G-Mode” independently of the chosen driving mode as soon as one of the three differential locks has been activated or the LOW RANGE off-road reduction gear has been engaged.

(Gクラスは、3つのデフロックのいずれかが作動するか、LOW RANGEのオフロード減速ギアが入ると、選択中の走行モードとは無関係に「G-Mode」に切り替わる)

つまり G-Mode は、上で書いた4つのスイッチのどれかを押した結果として勝手に入るものです。入ると、ダンパーとステアリングとアクセルの特性が変わり、不要なシフトチェンジをしなくなる。メーター内に小さく「G」が出ます。

ここは知っておくと安心できる部分だと思っていて、要するに「デフロックを入れたら車のほうも身構えてくれる」ということです。逆に言えば、G-Modeに入った表示が出ているのに心当たりがないなら、どれかのスイッチが入りっぱなしになっている可能性がある、という読み方もできます。

雪道で押すべきか、という話

サジェストに `gクラス 雪 道 デフロック` が出てくるくらいには、みんな気になっているようです。

私の考えは「デフロックは雪道の常用装備ではない」です。理由は3つあります。

1. 上で書いたとおり、100%ロックは曲がることと相性が悪い。 雪道は舗装路よりは逃げますが、圧雪やアイスバーンはグリップが場所ごとにばらつくので、直結のまま普通に走る場面ではありません

2. デフロックを入れるとG-Modeに入る。 通常の走行モードから外れます。街中を流すための状態ではない

3. そもそも雪道で足りないのはトラクションではなく、止まる・曲がる能力であることが多い。デフロックは進む方向にしか効きません

私のG400dは4WDで車両重量2,520kgですが、重い四輪駆動であることは、止まれることの保証には何一つなりません。 ここは以前に別の記事でも書きました。

そして実務的にもっと大事なのは、チェーン規制のかかった区間では、デフロックが付いていようが四輪駆動だろうが関係がないということです。条文には四輪駆動の例外がありません。この話は法令の原文まで追いかけて別記事にまとめてあるので、雪の時期に出かける予定がある方はそちらを見てください。

布製のチェーン(スノーソックス)については、C43に履かせたときの取り付けの様子を記事にしてあります。Gで使ったことはありませんが、作業自体は同じです。

3つ押しても出られなかったとき

デフロックは万能ではありません。四輪とも同じように滑っている状況では、四輪を直結したところで四輪そろって空転するだけです。これはよく忘れられている気がします。

そういう場面で効くのは、電子制御ではなく物理です。タイヤの下に噛ませるものと、引っ張ってもらうためのもの。都内しか走らない私には縁がない道具なので使用感は書けませんが、こういうものがあります。

トラクションボード(スタックラダー)

駆動輪の下に差し込んで足場を作るための樹脂製の板。雪・砂・ぬかるみのいずれでも使えます。2,520kgの車重を支える用途なので、耐荷重の表記は必ず確認してください。

※ 私が使用しているものではありません。2026年8月時点。

牽引ロープ(リカバリーストラップ)

引いてもらう側になったときのため。Gクラスは車両重量が2.5トン近いので、耐荷重が車重に対して十分なものを選ぶ必要があります。牽引フックの位置と取り付け方は取扱説明書に載っています。

※ 私が使用しているものではありません。2026年8月時点。

解除できない・表示が消えないとき

`gクラス デフロック 解除` `gクラス デフロック 故障` がサジェストに出てくるあたり、入れ方より戻し方で困っている人のほうが多いのかもしれません。

まず確認できる事実として、上で引いたとおりどのロックが作動中かはLEDと中央のディスプレイに出ます。 つまり「入っているかどうか」は表示で分かるようになっている。表示が消えないなら、機構側がまだロック状態にあるということです。

デフロックが解除されにくくなるのは、駆動系にねじれが残っているときです。ロックの噛み合いに力が掛かったままだと、抜けたくても抜けられない。ステアリングをまっすぐに戻して、負荷が抜ける状況を作ってやる必要があります。

ただし——具体的な解除手順を、私はここに書きません。 取扱説明書の記述を確認できなかったからです(上に書いたとおり、日本語の取説がオンラインで読めない)。表示が消えない状態で走り続けるのは駆動系に負担が掛かるので、取扱説明書の該当ページを見て、それでも消えないならディーラーに連絡するのが正しい順番だと思います。

保証がどこまで面倒を見てくれるかは、新車から何年経っているかで変わります。メルセデス・ケアが切れたあとの選択肢については、Gのディーゼルの実額まで含めて別に書きました。

都内を3年走って、一度も出番が来ていない

最後に、この3つのスイッチが何のためにあるのかを数字で見ておきます。同じプレスリリースに、Gクラスの走破性能が並んでいます。

項目
最低地上高(フロントアクスルギアまで) 270 mm(10.6インチ)
最低地上高(アクスル間) 9.5インチ(先代比 +6 mm)
渡河水深 27.6インチ(先代比 +4インチ)
登坂能力 最大 100%
横転限界の傾斜角 35°(先代比 +7°)
アプローチアングル 31°(先代比 +1°)
デパーチャーアングル 30°(先代比 +1°)
ランプブレークオーバーアングル 26°(先代比 +1°)

登坂能力100%というのは、傾斜45度を登れるという意味です。渡河水深27.6インチは、およそ70cmの水の中を進めるということ。

走っているのはほぼ都内なので、この表のどれ一つとして、私の使い道には入ってきません。 70cmの水の中に入る予定も、傾斜45度を登る予定もない。

じゃあ無駄かというと、そうは思っていないんですよね。この装備があるから車体がラダーフレームで、だから駐車場を選ぶし、だから実燃費が6〜7.5km/Lに落ち着く。全部つながっていて、その根っこにこの3つのスイッチがある。 使わない性能にお金を払っている自覚はありますが、使わないと分かったうえで選んだので納得しています。

押す日は来るのかな、とは思います。それくらいの距離感でちょうどいい気もしています。

よくある質問

デフロックは走行中に入れられますか

メルセデスの資料には「走行中に個別に作動させることができる(can be engaged individually while on the move)」と書かれています。ただし同じ資料の中でも、Gクラス全体の節は「LOW RANGEでもHIGH RANGEでも」、AMG G63の節は「LOW RANGEで」と記述が揃っていません。自分の車の条件は取扱説明書で確認してください。

3つとも入れると何が変わりますか

四輪が同じ回転数で回るようになります。そのぶんほとんど曲がれなくなるので、フロントは順番の最後に置かれています。ぬかるみや雪で完全にスタックしたときの脱出用と考えるのが実態に近いはずです。

LOW RANGE とデフロックは同じものですか

別物です。デフロックは力の配り方を変えるもの、LOW RANGE はトランスファーのギア比を 1.00 から 2.93 に変えるものです。LOW RANGE を入れるときはトランスミッションを N にして、40km/h 以下で操作します。

舗装路でうっかり押してしまったらどうすればいいですか

すぐに解除して、それまでのあいだステアリングを大きく切らないことです。デフロックを入れたまま舗装路で旋回すると駆動系にねじれが溜まります。表示が消えない場合は、取扱説明書の手順を確認したうえでディーラーに相談してください。

G400d と G450d でデフロックの仕様は違いますか

3つのデフロックはどちらにも付いています。両車の違いはエンジン・価格・燃費のほうに出るので、比較は別記事にまとめました。

本記事は情報提供を目的としたもので、特定の運転操作を推奨するものではありません。デフロックおよび LOW RANGE の操作条件・制限は年式や仕様によって異なります。実際の操作にあたっては、必ず車両に付属する取扱説明書の記載に従ってください。判断に迷う場合は正規販売店にご相談ください。数値はいずれも2026年8月時点で確認したものです。

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