同じ日にブレーキランプ(制動灯)の条文を読んでいて、4灯化を扱った節の1行目に補助制動灯が出てきました。「自動車の後面に補助制動灯が備えられていないこと」。補助制動灯、つまりハイマウントストップランプが付いている車は、その特則の入口に立てないと書いてある。
それで補助制動灯の側も開くことにしました。「平成18年から義務」はどこにでも書いてあります。ただ条文が変わったのは、義務という言葉ではありませんでした。「備えることができる」が「備えなければならない」になっただけです。
そして貨物のバン型は、乗用車から4年遅れていました。
保安基準第39条の2は、対象の車種を2つ挙げて終わっている
道路運送車両の保安基準の第39条の2(補助制動灯)は、全部で424文字しかありません。第1項がこれです。
次に掲げる自動車(二輪自動車、側車付二輪自動車、三輪自動車、カタピラ及びそりを有する軽自動車並びに被牽引自動車を除く。)の後面には、補助制動灯を備えなければならない。
一 専ら乗用の用に供する自動車であつて乗車定員十人未満のもの
二 貨物の運送の用に供する自動車(バン型の自動車に限る。)であつて車両総重量が三・五トン以下のもの道路運送車両の保安基準 第39条の2第1項
年式は書いてありません。それどころかこの条には数字が一つも無いのも制動灯と同じでした。100も15も60も20も、W も cm も mm も cd も赤も、全部0件です。第2項と第3項は「告示で定める基準」への委任、第4項は緊急制動表示灯として使う場合の話です。
「専ら乗用の用に供する自動車であつて乗車定員十人未満のもの」には、条文の文言のうえでは軽自動車の乗用車も入ります。三輪自動車と被牽引自動車は最初から除かれている。
細目告示は、今回は1文字も違わなかった
告示は3本あります。第57条が型式の指定等、第135条が新規検査等、第213条が使用の過程にある自動車です。
第57条は予想どおり、開いてみると「協定規則」が8件出てくるだけの条でした。明るさは協定規則第148号の規則4.及び5.5.(種別S3及びS4に係るものに限る。)に投げてあります。この協定規則の原文は取得できなかったので、種別の記号までにとどめます。
面白かったのは残りの2本です。第135条と第213条を、条番号と前条参照だけ伏せて突き合わせました。
2,014文字が、1文字も違いませんでした。
制動灯(第134条と第212条)のときは4か所だけ違っていましたが、補助制動灯は完全に同一です。新規検査でも車検でも、告示のレベルでは同じ条文を読むことになります。
もう一つ、第213条を全文で数えて意外だったのが「赤」が0件だったことです。色を定めた号が無い。代わりに第1項第2号がこうなっていました。
二 補助制動灯は、前号に規定するほか、前条第1項第3号及び第4号の基準に準じたものであること。この場合において、同項第4号の基準中「上方15°の平面及び下方15°の平面」とあるのは「上方10°の平面及び下方5°の平面」と、「45°の平面」とあるのは「10°の平面」とする。
細目告示 第213条第1項第2号
前条というのは制動灯の第212条です。色(赤色)と見通せる範囲を、制動灯の条から借りてきている。しかも角度だけ読み替える。制動灯が上方15°・下方15°・内側45°・外側45°なのに対して、補助制動灯は上方10°・下方5°・内側10°・外側10°。ずいぶん狭い。
高い位置に付いていて、後ろの車から見えていればいいランプなので、角度が狭いのは理屈が通ります。ただ条文の書き方としては、色を調べにきた人がここで一度止まるだろうな、とは思いました。
「明るさ」と「大きさ」は、日本語の条文のどこにも無い
サジェストに「ハイマウントストップランプ 車検 明るさ」と「車検 大きさ」が出ています。答えを先に書くと、どちらも数値の規定がありません。
実際に検査をする独立行政法人自動車技術総合機構の審査事務規程で、補助制動灯は 7-89、8-89(最終改正 第64次)です。2段組のPDFをx座標で左右に切って、告示2本と合わせて4つのテキストを数えました。
| 探した語 | 7-89(新規検査等) | 8-89(車検) | 細目告示 第135条 | 細目告示 第213条 |
|---|---|---|---|---|
| W | 0件 | 0件 | 0件 | 0件 |
| cd(カンデラ) | 0件 | 0件 | 0件 | 0件 |
| ルーメン | 0件 | 0件 | 0件 | 0件 |
| 大きさ / 面積 / cm | すべて0件 | すべて0件 | すべて0件 | すべて0件 |
制動灯には「昼間に後方100m」「光源15W以上60W以下」「照明部20cm²以上」という、みなし適合の数字がありました(第7章の側だけですが)。補助制動灯には、それに当たるものが第7章にも無い。日本語で数値が書かれている場所は、私が開いた範囲には一つもありませんでした。
数値があるとすれば協定規則第148号の種別S3・S4のほうで、そこは開けていません。ここは「日本語の条文には無い」までしか言えません。
変わったのは「備えることができる」が「備えなければならない」になったこと
本題です。年式の振り分けは 7-89-4「適用関係の整理」が持っていて、そこから従前規定に飛びます。
| どの車か | 飛ぶ先 | 装備要件の文言 |
|---|---|---|
| 平成17年12月31日以前に製作された自動車 | 7-89-5(従前規定の適用①) | 「自動車の後面には、補助制動灯を備えることができる。」 |
| 平成21年12月31日以前に製作された貨物の運送の用に供する自動車(バン型に限る。)と、同日以前の特種用途自動車4類型で車両総重量3.5t以下のもの | 7-89-6(従前規定の適用②) | 「…の後面には、補助制動灯を備えることができる。」 |
| それより後に製作されたもの | 7-89-1 / 8-89-1(現行) | 「…の後面には、補助制動灯を備えなければならない。」 |
「備えることができる」という語を全文で数えると、従前規定に3件、現行の装備要件には0件でした。義務化という言葉は条文には出てきません。任意装備の灯火が、必須装備の灯火に切り替わっただけです。
そして貨物のバン型(車両総重量3.5t以下)は、乗用車より4年遅れています。乗用車が平成18年1月1日以降に製作されたものから、貨物のバン型は平成22年1月1日以降に製作されたものから。上位に出てくる記事を5本落として数えましたが、「平成21」「平成22」「特種用途」「3.5t」「適用関係告示」「従前規定」は5本とも0件でした。乗用車の話しか書かれていない。
振り分けの根拠として規程が引いているのは適用関係告示 第43条(第1項・第2項と、第3項)です。適用関係告示そのものは開いていないので、規程が引いている範囲までにしておきます。
古い車なら何でもいい、という話ではなかった
ここは誤読しやすいところなので、条文をそのまま出します。従前規定①(平成17年12月31日以前に製作された自動車)にも、性能要件と取付要件がちゃんとあります。
7-89-5-2(性能要件) ①灯光の色は赤色であること ②上方10°・下方5°・内側10°・外側10°の範囲の全ての位置から見通すことができること
7-89-5-3(取付要件) ①数は1個 ②照明部の中心は車両中心面上(構造上できないものは中心面から150mmまで、又は両側に1個ずつ) ③尾灯と兼用でないこと ④制動灯が点灯する場合のみ点灯する構造であること
つまり「付けなくてもよい。ただし付けるなら、この基準を満たすこと」という作りです。古い車に後付けした場合も、点かなくなった場合も、ここに当たります。
ひとつ気づいたのは、従前規定①の取付要件には高さの号が無いことです。現行の②に当たるもの、つまり下縁850mm以上という規定が入っていません。平成17年以前の車は、高さについては条文が何も言っていないことになります。
現行の高さは、2つの条件のどちらかを満たせばよい
現行の取付要件のうち、いちばん具体的なのが高さです。
② 補助制動灯は、その照明部の下縁の高さが地上850mm以上又は後面ガラスの最下端の取付部(これに相当する部分を含む。)の下方150mmより上方であって、制動灯の照明部の上縁を含む水平面以上となるように取付けられていること。
審査事務規程 8-89-3(1)②(7-89-3(1)②も同文)
読み方が少しややこしいので分解します。
| 条件 | |
|---|---|
| 下限(どちらかを満たす) | 照明部の下縁が地上850mm以上 または 後面ガラスの最下端の取付部の下方150mmより上方 |
| これに加えて必ず | 制動灯の照明部の上縁を含む水平面以上(=ブレーキランプより低い位置には付けられない) |
「ハイマウント」という呼び名のとおり、制動灯より高いことが条件に入っています。車の後ろに背の低いセダンが多かった時代の車でも成立するように、地上高と、リアガラスからの相対位置の2通りが用意されている、という作りに見えます。
第8章では、位置と角度の規定が落ちる
制動灯のときと同じく、第7章(新規検査・構造等変更検査など)と第8章(改造等による変更のない使用過程車=いわゆる普通の車検)を並べました。
| 項目 | 7-89 | 8-89=車検 |
|---|---|---|
| 照射光線が他の交通を妨げない | 2-(1)① | 2-(1)① |
| 灯光の色は赤色 | 2-(1)② | 2-(1)② |
| 幾何学的視認性(上方10°・下方5°・内側10°・外側10°) | 2-(1)③ | 無い |
| 灯器の損傷・レンズ面の著しい汚損 | 2-(1)④ | 2-(1)③ |
| 数は1個 | 3-(1)① | 3-(1)① |
| 高さ(850mm/150mm/制動灯の上縁以上) | 3-(1)② | 3-(1)② |
| 照明部の中心は車両中心面上(150mmまで/両側に1個ずつ)+参考図 | 3-(1)③ | 無い |
| 尾灯と兼用でない | 3-(1)④ | 3-(1)③ |
| 制動灯が点灯する場合のみ点灯する構造 | 3-(1)⑤ | 3-(1)④ |
| 点滅するものでない | 3-(1)⑥ | 3-(1)⑤ |
| 直射光・反射光が運転操作を妨げない | 3-(1)⑦ | 3-(1)⑥ |
| 前方を照射しないように取り付ける | 3-(1)⑧ | 無い |
| 緩み・がたがない | 3-(1)⑨ | 3-(1)⑦ |
数えると、8-89 の全文で「10°」も「5°」も「前方を照射」も0件でした。「車両中心面」は 7-89 の9件に対して 8-89 は2件で、残っているのは①のただし書き(構造上中心に付けられないものは両側に1個ずつ)だけです。中心に付けろ、という号そのものが第8章にはありません。
ただこれを法則にしないほうがいいです。タイヤのはみ出しと窓ガラスの透過率を調べたときは、第7章と第8章の本文が完全に一致していました。装置ごとに違います。
条文に「参考図」が入っている、珍しい号
第8章では落ちる 7-89-3(1)③ ですが、中身が面白かったので残しておきます。「照明部の中心は車両中心面上にあること」という原則のあとに、例外の例が2つ挙げられていて、しかも参考図が付いています。
なお、次に掲げるものは、「自動車の構造上その照明部の中心を車両中心面上に取付けることができないもの」の例とする。
ア バン型構造の扉を固定する金具により、補助制動灯の照明部の中心を車両中心面上に備えることができないもの
イ 扉の上方に補助制動灯の照明部の中心を備えることができる部分が無く、かつ、扉が開くことで車両中心面附近が分割されるもの審査事務規程 7-89-3(1)③
イは観音開きの後ろ扉のことです。真ん中で割れるので中心に付けようがない。だから左右に1個ずつでよい、という話になります。今日開いた 7-88(制動灯)と 7-89(補助制動灯)のうち、条文中に参考図があるのはこの号だけでした。
書けなかったこと
・協定規則第148号(種別S3・S4)の原文は取得できませんでした。unece.org はこれまでのフォグランプ、リアフォグ、スピードメーター、ウインカー、ホーンのときも同じです。明るさの数値はここにあるはずですが、書けません
・別添13・別添71・別添52・別添53は開いていません。表題だけ引いています
・適用関係告示 第43条そのものは開いていません。規程が引いている項までを書いています
・輸入車に特則があるかどうかは、適用関係告示を開いていないので分かりません。書いていません
・サジェストの「スモーク」「ステッカー」については、7-89・8-89 に「スモーク」も「LED」も0件で、条文の側に判断材料がありません。「赤色」「他の交通を妨げないこと」「レンズ面が著しく汚損していないこと」を紹介するところで止めます
よくある質問
ハイマウントストップランプは何年式の車から義務ですか
審査事務規程 7-89-4 が振り分けています。乗用車(専ら乗用の用に供する乗車定員10人未満のもの)は、平成17年12月31日以前に製作されたものが従前規定①に飛び、そこでは「備えることができる」=任意装備でした。したがって義務になるのは平成18年1月1日以降に製作されたものからです。貨物の運送の用に供する自動車(バン型に限る。車両総重量3.5t以下)は従前規定②で平成21年12月31日以前が任意なので、平成22年1月1日以降に製作されたものからになります。
ハイマウントストップランプを取り外すと車検に通りませんか
装備要件の対象になる車であれば、8-89-1 が「備えなければならない」と定めているので、外した状態は装備要件を満たしません。一方、従前規定①・②に当たる年式の車は装備要件が「備えることができる」なので、そもそも付いていなくても装備要件の側では問われません。ただし付いている場合は、従前規定にも性能要件(赤色・見通せる範囲)と取付要件(1個・車両中心面上・尾灯と兼用でない・制動灯が点灯する場合のみ点灯)があります。
ハイマウントストップランプの明るさに基準はありますか
日本語の条文には数値がありません。審査事務規程 7-89・8-89 と細目告示 第135条・第213条を全文で数えて、「W」「cd」「ルーメン」がすべて0件でした。数値があるとすれば、細目告示第57条が委任している協定規則第148号の規則4.及び5.5.(種別S3及びS4)の側です。この原文は取得できていないため、当記事では数値を書いていません。
ハイマウントストップランプの大きさや個数に決まりはありますか
大きさ・面積の規定は7-89・8-89とも0件でした。個数は「1個であること」と定められています(8-89-3(1)①)。ただし自動車の構造上その照明部の中心を車両中心面上に取り付けることができないものは、車両中心面の両側に1個ずつ取り付けることができます。
軽自動車も対象ですか
保安基準第39条の2第1項が除いているのは二輪自動車、側車付二輪自動車、三輪自動車、カタピラ及びそりを有する軽自動車、被牽引自動車です。軽の乗用車は「専ら乗用の用に供する自動車であつて乗車定員十人未満のもの」の文言に入ります。ただし軽トラックのように貨物の車は第2号の「バン型の自動車に限る」の側で判断が変わるため、車ごとの用途区分と型で見る必要があります。
ハイマウントストップランプはブレーキを踏まなくても光ることがありますか
取付要件に「補助制動灯は、制動灯が点灯する場合のみ点灯する構造であること」(8-89-3(1)④)があります。また「点滅するものでないこと」(同⑤)も定められていて、こちらには「運転者異常時対応システムが当該自動車を制御している場合にあっては、この限りでない」というただし書きが付いています。
参考にした一次ソース
| 資料 | 使ったところ |
|---|---|
| 道路運送車両の保安基準(e-Gov) | 第39条の2(補助制動灯) |
| 細目告示 第57条 | 型式の指定等(【2024.6.14】) |
| 細目告示 第135条 | 新規検査・予備検査等(【2025.6.17】) |
| 細目告示 第213条 | 使用の過程にある自動車(【2025.6.17】) |
| 審査事務規程 7-89、8-89 補助制動灯 | 第7章・第8章の全文と従前規定(最終改正 第64次) |
| 審査事務規程 目次 | 上記PDFのたどり方 |
「平成18年から義務」という一行は正しいのですが、その一行の裏には、任意装備だった時代の基準がまだ生きていて、貨物は4年遅れていて、明るさは日本語では書かれていない、という構造がありました。灯火は装置ごとにこれをやるしかありません。
灯火の条文をまとめて追いたい方はこちらから。
車検でいくらかかったかのほうは、AMG C43の初回車検の請求書の内訳をそのまま残してあります。
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