先に立場を書きます。私はヘッドレストモニターを使っていません。後席に画面を足した記録も、自分の記事のどこにもありません。だからここには、使ってみた感想は出てきません。
ただ、車の中に自分で画面まわりの機器を足す側のことは少し知っています。2019年3月から2023年8月まで乗っていたC43(W205型)では、OBDポートに自分でキットを差し込んで、走行中のナビ操作とテレビの制限を外していました。差すだけで数十秒、そのあと不具合は一度も出ていません。いまはG400dに乗り換えています。
その経験で分かったのは、後付けの機器の話は「法律的にどうなの?」で止まってしまうことが多いということです。ヘッドレストモニターもまさにそれで、商品ページには「車検対応」と書いてあるのに、何の基準に対応しているのかはどこにも書かれていません。
そこで条文を開きました。結果を先に言うと、道路運送車両の保安基準にモニターを規制する条文は1つもありません。車検で見られているのは、モニターではなく、それを取り付けたヘッドレストと座席の背面側の条文でした。
この記事で確認した一次資料
道路運送車両の保安基準(2026年10月20日施行時点の全文を e-Gov のAPIから取得・全195条)/道路運送車両の保安基準の細目を定める告示 第184条【2022.10.7】・第187条【2024.6.14】・第109条【2024.6.14】(国土交通省)/独立行政法人自動車技術総合機構 審査事務規程 7-42・8-42 座席/7-46・8-46 頭部後傾抑止装置等(いずれも最終改正:第74次)/道路交通法 第71条/道路運送車両法 第41条・第44条。すべて2026年10月20日に取得しています。
- 保安基準を全部開いても、モニターという言葉は出てこない
- 義務があるのは前席だけ、という条文
- 「付ける義務」と「付いているなら従う基準」がずれている
- 車検が引いている条文は、第187条の第2項だけだった
- 条文のほうには「後面部分」と書いてある。引かれていないだけ
- 平成24年6月30日以前の車だけ、「脱落しないこと」を見られる
- みなし適合の入口は「同一の構造、同一の位置」
- ヘッドレストに付けるのか、背もたれに付けるのかで条文が変わる
- 「車検対応」という言葉は、条文の側に存在しない
- 落ちたときに起きるのは、思っているより面倒なこと
- 走行中に映ること自体は、車検とは別の条文
- 自分で付けるか、施工に出すか
- よくある質問
保安基準を全部開いても、モニターという言葉は出てこない
まず大元から見ます。車検の基準は道路運送車両の保安基準という省令で、ここに書いていない装置は車検では問われません。
道路運送車両の保安基準(e-Gov法令検索)の全文をAPIから取って、条ごとに分解しました。条の数は195です。そのうえで言葉を数えました。
| 数えた語 | 保安基準 全195条での出現 |
|---|---|
| 画像表示用装置 | 0件 |
| 映像 | 0件 |
| テレビ | 0件 |
| 直接視認 | 0件 |
ゼロです。モニターそのものを「付けてよい/だめ」と決めている条文は、保安基準には存在しません。
近いものとして第21条第2項に「視界内表示投影装置」があります。これは文字や図形を前面ガラスやコンバイナーに投影する装置、つまりヘッドアップディスプレイのことで、しかも対象は運転者席に備えるものです。後席のモニターは関係ありません。
窓ガラスに貼る物の制限は第29条第4項にあって、こちらは検査標章や保険標章など、貼ってよいものを号で数え上げる形になっています。ドライブレコーダーがこの条文で読まれるのは、ガラスに貼るからです。ヘッドレストはガラスではないので、この条文の外に出ます。
少し気になったのは、この時点で「じゃあ何でもいいのか」と読めてしまうことです。そうではありません。モニターの条文が無いというだけで、取り付けた先の部品には条文があります。
義務があるのは前席だけ、という条文
ヘッドレストは、条文では「頭部後傾抑止装置」という名前です。追突されたときに頭が後ろへのけぞるのを抑える装置という扱いで、座り心地の部品ではありません。
根拠は保安基準第22条の4です。第1項の対象座席がはっきりしています。
…の座席(…)のうち運転者席及びこれと並列の座席には、頭部後傾抑止装置を備えなければならない。
運転者席と、その横。つまり前席の2つだけです。後席については、備えなければならないと書いていません。
審査事務規程 7-46・8-46 頭部後傾抑止装置等(自動車技術総合機構・PDF)の側も同じです。車検(継続検査)で使われる第8章の8-46-1「装備要件」は、保安基準第22条の4第1項をほぼそのまま写していて、対象は「運転者席及びこれと並列の座席」のままでした。
ここは一般の記事でも触れられていて、WEB CARTOPの記事は「後席ヘッドレストは装着されていなくとも車検には通る」と書いています。結論は同じです。ただ条番号も審査要件も書いていないので、そこから先、モニターを付けたらどうなるのかには進めません。
そして「後席は義務が無い」は「後席は何をしてもいい」ではありません。ここがこの記事のいちばんややこしいところで、次の節になります。
「付ける義務」と「付いているなら従う基準」がずれている
第22条の4は2項立てです。第1項が装備義務、第2項が性能要件。この2つで対象座席が違います。
| 何を決めているか | 対象の座席 | |
|---|---|---|
| 第22条の4 第1項 | 備えなければならない(装備義務) | 運転者席及びこれと並列の座席 |
| 第22条の4 第2項 | 備えるものが満たすべき構造・性能 | 座席に備える頭部後傾抑止装置(第22条第3項第1号から第4号までの座席を除く) |
第2項が除いているのは、またがり式の座席、通路など座席用でない床面に設けた折り畳み座席、かじ取ハンドルの回転角度が車輪の7倍未満である三輪自動車の運転者席の側方に設けた1人用の座席、横向きに備えられた座席の4つです。乗用車の後席はどれにも当たりません。
読み替えると、後席のヘッドレストは無くてもいいけれど、付いている以上は基準に従うということになります。メーカーが最初から後席にも付けて出荷している今の乗用車なら、付いている席はすべて第2項の対象になります。
純正でヘッドレストが付いている後席のそれを外してモニター付きに替える、という作業は、だから「義務が無い部品をいじっている」のではありません。第2項が掛かっている装置を別物に替えています。
車検が引いている条文は、第187条の第2項だけだった
では第2項の中身は何か。保安基準は「告示で定める基準に適合するもの」と投げているので、細目告示を開きます。頭部後傾抑止装置は3つの章に同じ名前の条があります。
車検に当たるのは第187条です。この条は第1項に4つの要件を並べ、第2項でみなし規定を置いています。
ここで、審査事務規程の方を見て引っかかりました。車検の審査要件である8-46-2の全文が、たった一文なのです。
頭部後傾抑止装置は、追突等による衝撃を受けた場合における当該座席の乗車人員の頭部の保護等に係る性能に関し、視認等その他適切な方法により審査したときに、その機能、乗車人員の頭部等に傷害を与えるおそれのある損傷のないものでなければならない。(細目告示第187条第2項関係)
引いているのは第187条の第2項です。7-46と8-46のPDF全文を検索しても、第187条への参照はこの1件だけでした(残る3件はいずれも第109条への参照です)。
細目告示 第187条(国土交通省・PDF)の第2項は、こう始まります。「次に掲げる頭部後傾抑止装置であって、その機能、乗車人員の頭部等に傷害を与えるおそれのある損傷のないものは、前項各号に掲げる基準に適合するものとする」。つまりみなし規定です。
一方の新規検査側(7-46-2)は別物でした。協定規則第17号の5.4.から5.10.まで、6.1.5.、6.4.から6.7.までに適合すること、と書面で審査します。乗車定員10人以上なら協定規則第80号の5.6.でもよい、FMVSS 202aやCMVSS 202aに適合するものはこれに準ずる、という条件まで付いています。
| 審査の方法 | 要件の中身 | |
|---|---|---|
| 7-46-2(新規検査等) | 書面等による審査 | 協定規則第17号の指定された項番に適合(10人以上は第80号も可)/FMVSS 202a・CMVSS 202a |
| 8-46-2(車検) | 視認等による審査 | 機能があること、頭部等に傷害を与えるおそれのある損傷がないこと |
車検の現場で見られるのは、要するに壊れていないかどうかです。協定規則の番号も試験値も、第8章には出てきません。
条文のほうには「後面部分」と書いてある。引かれていないだけ
第187条の第1項を読むと、第3号がそのままこの商品の話になっています。
三 頭部後傾抑止装置の後面部分は、衝突等による衝撃を受けた場合における当該後部後傾抑止装置を備える座席の後方の乗車人員に過度の衝撃を与えるおそれの少ない構造であること。
ヘッドレストの後ろの面、そして後ろに座っている人。モニターを取り付ける面と、それを観る人のことです。第4号も関係があります。「振動、衝撃により脱落することのないように備えられたものであること」。
つまり、この商品について心配されていることは、条文の側にはちゃんと言葉として存在します。
ところがこの第1項は、審査事務規程のどちらの章にも引かれていません。7-46と8-46の全文で「後面」を数えると0件です。車検の審査要件が引いているのは第2項(みなし)だけで、第1項の4号は規程の本文に降りてきていません。
これは少し意外でした。保安基準の記事を書いていると、第8章は第7章から審査項目が削られている形がほとんどで、「車検のほうが緩い」という見え方をします。ここもその型ではあるのですが、削られているのが協定規則の試験値ではなく、読んで意味が分かる具体的な4つの要件のほうだったのが違いました。
誤解のないように書くと、だから何を付けてもいいという話ではありません。第2項のみなしに入れなければ、適合の判断は第1項に戻ります。その話を次にします。
平成24年6月30日以前の車だけ、「脱落しないこと」を見られる
もう一つ、年式で分かれる部分がありました。
7-46-8は「従前規定の適用④」で、平成24年6月30日以前に製作された自動車が対象です(適用関係告示第21条第1項関係)。その中の7-46-8-2-1「視認等による審査」には、こう書かれています。
③ 振動、衝撃等により脱落することのないように備えられたものであること。
脱落しないこと。これが視認の審査項目として入っているのは、古い車の側だけです。そして8-46-4が「7-46-4の規定を適用する」としているので、この従前規定は車検(第8章)でも働きます。
7-46と8-46の全文で「脱落」は1件だけで、その1件がこの従前規定の中にありました。
| 製作年月 | 視認で見られること |
|---|---|
| 平成24年6月30日以前 | 頭部の後傾を抑止できる/傷害を与えるおそれのない構造/脱落しないように備えられている |
| 平成24年7月1日以降 | 機能があること/傷害を与えるおそれのある損傷がないこと |
年式が古い車のほうが、取り付けの確実さを見られる余地が広いということになります。順番としては逆のような気がしますが、条文はそうなっています。
みなし適合の入口は「同一の構造、同一の位置」
ここが実務でいちばん効く部分だと思います。
細目告示第187条第2項が挙げるみなしは4つです。
| 号 | 内容 |
|---|---|
| 第1号 | 指定自動車等に備えられた頭部後傾抑止装置と同一の構造を有し、かつ、同一の位置に備えられたもの |
| 第2号 | 法第75条の2第1項に基づき型式の指定を受けた特定共通構造部に備えられているもの |
| 第3号 | 法第75条の3第1項に基づく装置の指定を受けたもの |
| 第4号 | JIS D 4606に適合した頭部後傾抑止装置であって、的確に備えられたもの |
純正のまま使っている車は、第1号でみなしに入ります。指定自動車等(型式指定を受けた車)に付いていたものと同じ構造で、同じ位置にあるからです。
ヘッドレストごとモニター付きの別製品に交換すると、第1号の「同一の構造」から外れます。第2号と第3号は装置としての指定を受けたものなので、後付け品がここに入っていることはまず期待できません。残るのは第4号、JIS D 4606に適合していて的確に備えられていること、です。
ここで取り付け方の違いが意味を持ちます。
| 取り付け方 | 純正ヘッドレストは | 第2項第1号のみなしは |
|---|---|---|
| モニター内蔵のヘッドレストに交換する | 外して別物に替わる | 外れる(同一の構造でなくなる) |
| ヘッドレストのステー(支柱)に挟むアーム式 | そのまま残る | 装置自体は同一のまま |
アーム式なら無条件で安心、とは書けません。アームの固定の仕方によっては8-46-2の「機能」の判断が残りますし、後ろの座席の人との位置関係は座席側の条文(次の節)で読まれます。ただ、条文の入口が1つ減るのは確かです。
後席に画面を足したいだけなら、ヘッドレストを交換しない方法もあります。ステーに挟むタブレット用のアームに手持ちのタブレットを載せる形や、HDMI入力のあるポータブルモニターを後席に置く形です。どちらも私は使っていないので使用感は書けませんが、ヘッドレストそのものを純正のまま残せるという意味では、条文の読み方がシンプルになります。
ヘッドレストのステーに挟むタブレットホルダー(アーム式)
※ 検索結果のリンクです。私が使っている製品の紹介ではありません。取り付け後の状態が基準に適合するかは個別の判断になります(2026年10月時点)。
ヘッドレストに付けるのか、背もたれに付けるのかで条文が変わる
同じ「後席用の画面」でも、取り付け場所が座席の背面になると、受ける条文が替わります。
| 付ける場所 | 保安基準 | 細目告示 | 車検の審査 |
|---|---|---|---|
| ヘッドレスト | 第22条の4 | 第187条 | 8-46-2 |
| 座席の背面 | 第22条第4項 | 第184条 | 8-42-1 |
保安基準第22条第4項は、座席の後面部分について「乗車人員を保護するものとして、構造等に関し告示で定める基準に適合するものでなければならない」と定めています。細目告示 第184条(国土交通省・PDF)の第6項第3号がその中身です。
三 座席の後面部分は、当該自動車が衝突等による衝撃を受けた場合において、当該座席の後方の乗車人員の頭部等に過度の衝撃を与えるおそれの少ない構造であること。
そして車検側の8-42-1(審査事務規程 7-42・8-42 座席・PDF)は、これを視認等で審査するとしたうえで、判定の中身を差し替えています。
(3)(1)の自動車の座席及び座席取付装置は、その機能、強度を損なうおそれのある損傷のないもの及び乗車人員の頭部等に傷害を与えるおそれのある損傷のないものでなければならない。(細目告示第184条第7項関係)
ヘッドレスト側とまったく同じ構造です。条文には「過度の衝撃を与えるおそれの少ない構造」と書いてあるのに、車検の審査は「損傷が無いこと」に置き換わっている。そして第184条第7項のみなしの第1号も、やはり「指定自動車等に備えられているものと同一の構造を有し、かつ、同一の位置に備えられた」座席です。
ひとつ注意が要ります。この話を調べていると「手で触って鋭い突起がないこと」という表現に行き当たります。実際にその文言はあります。
座席後部の内部構造物が衝撃を吸収する部材で覆われているものであって、手で触った際に乗車人員が傷害を受ける危険性のある鋭利な突起等がないものであればよく…
ただし、これは審査事務規程の7-42-1-2「書面等による審査」にある文で、協定規則第17号の5.2.4.の読み替えとして置かれたものです。新規検査側の規定で、車検の視認審査の条文ではありません。細目告示第184条で「鋭利」を数えると0件でした。読み物としては分かりやすい表現なので引用したくなりますが、車検の基準として紹介するのは正確ではありません。
「車検対応」という言葉は、条文の側に存在しない
ここまでが条文です。では商品に書かれている「車検対応」は何を指しているのか。
答えは、条文を検索しても出てきません。保安基準、細目告示第184条・第187条、審査事務規程7-42・8-42・7-46・8-46をすべて検索しましたが、「車検対応」という語はどこにもありません。業界の商慣習としての表示で、法令上の定義がある言葉ではないからです。
上位に出てくる記事の側も確かめました。この商品について検索したときに出てくる4本を取得して、本文テキストだけを抜き出して数えました。
| 語 | 4本での出現 |
|---|---|
| 頭部後傾抑止装置 | 0件 |
| 細目告示 | 0件 |
| 審査事務規程 | 0件 |
| 第22条の4 | 0件 |
| 後面部分 | 0件 |
| 同一の構造 | 0件 |
| JIS D4606 | 0件 |
| 継続検査 | 0件 |
商品の紹介が中心の2本は、保安基準そのものが0件と1件でした。「車検対応」という語は使われていても、何に対応しているのかは書かれていません。
もうひとつ、よく見かける説明として「強度検査済みの証明書がないと車検に通らない」というものがあります。これは一次資料に当たれませんでした。審査事務規程の7-46・8-46と7-42・8-42を全文検索しても、使用過程車の審査要件として証明書類の提出を求める記述は見つかりません。見つからなかった、までが今日分かったことです。そこで本文では、この説明を採用していません。
ついでに気づいたことを1つ。同じJIS D 4606を、文書によって違う名前で書いています。細目告示(第109条・第187条)は「自動車乗車用ヘッドレストレイント」、審査事務規程の7-46・8-46は本文で「自動車乗員用ヘッドレストレイント」(4件)、従前規定の中では「自動車乗車用」(2件)。乗車用と乗員用が1つの文書の中で混在しています。どちらが正式名称なのかはJISの原典を確認できなかったので、ここでは表記が揺れている事実だけを書いておきます。
落ちたときに起きるのは、思っているより面倒なこと
仮に検査で引っかかった場合、その場で外して再検査という流れになります。金額の話ではなく、時間の話です。
私のC43の初回車検は、ヤナセで127,666円でした。請求書は「MB2年点検A 47,916円」と「車検費用 79,750円」の2行だけでした。この金額はモニターと関係ありませんが、車検というのは1日で終わらせたい用事で、再検査のために後日もう一度持ち込むことになるのが何より面倒です。
だから「通るか通らないか」を検査の日に賭けるのは、いちばん損な進め方だと思います。純正のヘッドレストを外す形の製品を選ぶなら、外した状態の写真を含めて、持ち込む前に整備工場に見てもらうほうが早いです。判断するのは検査を受け付ける側なので、条文を読んだこちらの理解が通るとは限りません。
走行中に映ること自体は、車検とは別の条文
もう一つ、この話で混ざりやすいのが道路交通法です。こちらは車検とはまったく別の建物に入っています。
根拠は道路交通法(e-Gov法令検索)の第71条第5号の5です。
…当該自動車等に取り付けられ若しくは持ち込まれた画像表示用装置(…)に表示された画像を注視しないこと。
禁じられているのは設置ではなく「注視」です。そして「取り付けられ若しくは持ち込まれた」と書いてあるので、後付けのモニターと、持ち込んだタブレットを区別していません。固定したかどうかは関係がない書き方です。
面白いのは括弧の中の除外リストです。条文は「道路運送車両法第41条第1項第16号若しくは第17号又は第44条第11号に規定する装置であるものを除く」としています。番号の先は道路運送車両法(e-Gov法令検索)です。その番号を引くとこうなります。
| 条項 | 装置 |
|---|---|
| 車両法 第41条第1項第16号 | 後写鏡、窓拭き器その他の視野を確保する装置 |
| 車両法 第41条第1項第17号 | 速度計、走行距離計その他の計器 |
| 車両法 第44条第11号 | 原動機付自転車の速度計 |
視野を確保する装置と、計器。バックモニターやデジタルインナーミラー、デジタルメーターはここに入ります。カーナビの地図は、どの号にも当たりません。走行中に地図を注視することも、条文の文面上は除外されていないわけです。
後席のモニターについて言えば、運転者が注視できない位置にあるものを運転者が注視することはできません。問題になるのは、運転席から見える位置に画面を増やした場合です。
自分で付けるか、施工に出すか
C43でキットを差したときの作業は、ポートに挿して抜くだけでした。後席のモニターは話が別で、内装を外して配線を通す作業が入ります。ヘッドレストを交換する製品なら、座席の部品に手を入れることになります。
自分でやるなら、この記事で見てきた2つを押さえておけば判断の筋道は立ちます。純正のヘッドレストを外すかどうか(第187条第2項第1号のみなしに残れるか)、そして取り付けたものが後ろの人に当たる向きになっていないか(第184条第6項第3号の考え方)。
配線や内装の脱着に自信が無い場合は、輸入車のナビまわりを専門に扱う店に出す選択もあります。
ナビ男くん(メルセデス・ベンツのリアモニター/HDMI新設の施工)
純正ナビ(COMANDシステム)向けの施工を扱っている専門店です。同社の商品ページによると、HDMI入力の新設にあわせてBlu-rayやリアモニターの装着にも対応するとされています。出張取付の記載もあるので、座席や内装を自分で外さずに済ませたい場合はこちらが選択肢になります。
※ 対応車種・年式・ナビの世代によって施工の可否と料金が変わります。ご自身の車が対象かは公式サイトで最新の情報をご確認ください(2026年10月時点)。施工後の状態が保安基準に適合するかは、施工内容と車両の状態によります。
私が以前やったOBDキットの話は、製品レビューの記事に分けてあります。
座席まわりの条文をもう少し広く見たい場合は、座席ベルトの側も同じ作りになっています。条文に書いてある語が、車検の章では消えているという型です。
よくある質問
後席のヘッドレストを外したまま車検に出すと落ちますか
頭部後傾抑止装置の装備要件(保安基準第22条の4第1項、審査事務規程8-46-1)の対象は運転者席とこれと並列の座席だけなので、後席のヘッドレストが無いことそれ自体を理由にする条文は見つかりません。ただし装置の性能要件である第2項は後席にも掛かるので、付いている状態で破損している場合は8-46-2の「損傷のないもの」に当たります。外すことを勧める話ではなく、追突時に頭を支える装置なので、付けておくべきものです。
モニター内蔵のヘッドレストに交換するのと、アーム式で挟むのとでは違いますか
条文の読み方が変わります。交換すると、細目告示第187条第2項第1号の「指定自動車等に備えられた頭部後傾抑止装置と同一の構造を有し、かつ、同一の位置に備えられた」というみなし規定から外れます。アーム式は純正の装置をそのまま残すので、この号には残ります。ただしアームの固定状態や、後ろの座席の人との位置関係は別に見られる余地があります。
「車検対応」と書かれている製品なら確実に通りますか
「車検対応」は法令上の用語ではありません。保安基準、細目告示第184条・第187条、審査事務規程7-42・8-42・7-46・8-46を検索しても出てこない言葉です。表示の意味は販売者ごとに違うので、何に適合しているのかを確認する必要があります。細目告示第187条第2項でみなしの根拠になりうるのは第4号のJIS D 4606への適合なので、そこに触れているかが一つの手がかりになります。
後席のモニターで映画を流すのは道路交通法に触れますか
道路交通法第71条第5号の5が禁じているのは、運転者が走行中に画像を「注視」することです。後席の画面を運転者が注視できない位置にあるなら、この条文の問題にはなりません。運転席から見える位置に画面を増やした場合は別です。なお同条の除外リストに入っているのは、道路運送車両法第41条第1項第16号(視野を確保する装置)・第17号(計器)と第44条第11号だけで、カーナビの地図は含まれていません。
年式によって見られる項目が違うのですか
違います。審査事務規程7-46-8(従前規定の適用④)は平成24年6月30日以前に製作された自動車を対象に、視認等による審査の項目として「振動、衝撃等により脱落することのないように備えられたものであること」を置いています。8-46-4が7-46-4の規定を適用するとしているので、車検でも同じです。平成24年7月1日以降の車には、この文言は掛かりません。
調べてみて思ったこと
この商品について最初に心配されるのは車検です。それなのに、肝心の基準が商品ページにも解説記事にも書かれていません。
条文を開いて分かったのは、理由がはっきりしているということでした。モニターを規制する条文が無いので、「このモニターは基準に適合します」という言い方がそもそも成り立たないのです。基準があるのは、それを取り付けたヘッドレストと座席の背面の側です。
そして車検の審査要件まで降りると、見られるのは機能と損傷の2つに絞られていました。条文の第1項に書いてある「後面部分」や「脱落しないように」は、審査事務規程に引かれていません。ここは正直、拍子抜けする結論だなと思います。
一方で、純正を外した瞬間に「同一の構造、同一の位置」というみなしの入口から外れる、という部分は現実的に効きます。アーム式と交換式で条文の読み方が変わるというのは、商品を選ぶ前に知っておいて損のない話だと思いました。
書けなかったことも残しておきます。検査官が実際にどこまで見るかは規程に書いていないので分かりません。「強度検査済みの証明書」の要否も一次資料に当たれませんでした。車種別に通る・通らないの一覧も、作れる根拠がありません。このあたりは、持ち込む工場に聞くほうが確実です。
この記事について
本記事は2026年10月20日時点の道路運送車両の保安基準、保安基準の細目を定める告示(第184条【2022.10.7】・第187条【2024.6.14】・第109条【2024.6.14】)、独立行政法人自動車技術総合機構 審査事務規程(最終改正:第74次)、道路交通法および道路運送車両法をもとに、条文の記述を確認してまとめたものです。情報提供を目的としており、特定の商品やサービスの勧誘を目的とするものではありません。実際の検査の可否は車両の状態と検査の判断によります。個別の判断については、指定自動車整備事業者・運輸支局などの専門家にご相談ください。







