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スタッドレスの寿命を「3年」と決めた人は、探しても見つからなかった|50%の出どころを条文まで辿る

冬の夜の街に停めたメルセデスのリア。スタッドレスの寿命と摩耗50%の出どころを扱う記事のアイキャッチ Car|車
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私が泊まりで行くのは群馬・新潟・福島・長野あたりで、そういう場所に泊まれば翌朝はほぼ確実に凍ります。走っているのはほぼ都内なので、冬の装備は年に数回のためだけに用意している、という感覚です。

いつ履き替えるかは、気象庁の平年値を8地点ぶん並べて別の記事で考えました。規制の話は冬用タイヤ規制とチェーン規制の記事、保管は保管の記事、車検で当たる1.6mmは溝の記事で書いています。

なのでここでは、残っている1つだけを扱います。「そのスタッドレス、まだ冬用として使えるのか」という使用限度の話です。

調べはじめて意外だったのは、よく見る「寿命3〜4年」のほうに出どころが見つからなくて、あまり語られていない「50%」のほうに原文が全部あったことでした。

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50%という数字は、誰が書いているのか

日本自動車タイヤ協会(JATMA)の刊行物に『自動車用タイヤの選定、使用、整備基準 2023 PC編』というPDFがあります。乗用車用タイヤの使い方の基準をまとめたもので、協会のサイトで公開されています(2026年10月時点で取得可)。

その第2部第2章「タイヤの使用限度」に「2)冬用タイヤの使用限度」という節があり、こう書かれています。

残り溝が新品時の 50% 未満のタイヤは、冬用タイヤとして使用しないで下さい。
なお、50% 以上摩耗した冬用タイヤは、1.6mm(スリップサイン露出)までは夏用タイヤとして使用できます。

2文です。前半は見たことがある内容だと思います。後半に触れている記事は、あとで数えた上位8本のうち3本でした。しかも、その3本とも出どころを書いていません。

この刊行物のどこに50%が出てくるのかも数えました。全部で5箇所で、並び方のほうに意味があります。

どこ どう書かれているか
第2部 第2章「1. 摩耗による使用限度」(3) 遵守しなければならない基準として、(1)の1.6mmと同じリストに並んでいる
同章の解説「2)冬用タイヤの使用限度」 上に引いた2文(1.6mmまでは夏用として使える)
第2部 第4章「日常点検」の「3. 摩耗の点検」(3) 点検項目として「残り溝が新品時の 50% 以上あること(プラットホームが露出していないこと)」
用語の定義「プラットホーム」 施行細則等によって定められた使用限度、という説明

つまり1.6mmと50%は、別々の文書にある無関係な数字ではありません。 同じ章の同じリストの(1)と(3)です。片方は車検で当たる数字、もう片方は積雪・凍結路を走るときの条件、という書き分けになっています。

同じ刊行物の「用語の定義」には、プラットホームの説明もあります。

日本国内における道路交通法施行細則等によって定められた冬用タイヤとしての使用限度を示すために、接地部の溝に設けられている目印。タイヤがすり減って残り溝が新品時の 50% になると溝が途切れこの目印が現れる。

ここで引っかかりました。「道路交通法施行細則等によって定められた」と書いてあります。 つまりJATMAは、50%を自分たちが決めた推奨値だとは言っていなくて、法令の側に出どころがあるという書き方をしているわけです。

ついでに、この刊行物の全文を機械で数えてみました。「プラットホーム」 が4件で、「プラットフォーム」 は0件。協会の表記は「ホーム」のほうでした。読者が検索するのは「フォーム」が多いので、ここは最初からすれ違っています。

もうひとつ数えて驚いたのが、この刊行物に 「硬度」 が0件、「シーズン」 も0件だということです。年数の記述は「使用開始後 5 年以上経過したタイヤ」の点検と「製造後 10 年(注)経過したタイヤ」の交換の2箇所だけで、どちらも冬用タイヤに限った話ではありません。この2つは保管の記事で扱ったので、そちらに置いておきます。

無料で読めるページには、後ろの1文が入っていない

JATMAのサイトには、刊行物とは別に一般向けの解説ページもあります。冬道の走行とタイヤのページです。こちらは無料で読めます。

該当箇所はこうです。

積雪路及び凍結路走行の場合は、冬用タイヤの残り溝深さが新品時の50%以上あることを確認してください。(接地部にプラットホームが設けられているタイヤの場合は、これが露出しているか否かで判断して下さい。)溝深さが50%未満のタイヤは冬用タイヤとしては使用しないでください。

前半は刊行物と同じです。ただ、タグを外して空白を除いた8,281字を機械で数えると、「夏用タイヤとして」 が0件、「1.6」 が0件、「使用限度」 という語も0件でした。

項目 刊行物PDF(2023 PC編) 無料Web版
50%未満は冬用として使うな あり あり
50%以上摩耗したものは1.6mmまで夏用として使える あり なし
プラットホームで判断する あり あり
硬度のしきい値 なし なし

タイヤの保管を調べたときも、無料Web版のほうで遵守事項の1項目が落ちていました。同じ協会の同じ基準が、どこで読むかで違う量になっている。 ここは一度知っておくと、他の項目を調べるときにも役に立ちます。

少し気になるのは、落ちている1文が「まだ使える」側の情報だということです。安全側に寄せた編集なのだとは思いますが、結果として読者は「捨てる以外の選択肢」を知らないまま判断していることになります。

条文を開くと、「スタッドレス」という語が出てこない

では、JATMAが言う「道路交通法施行細則等」には何が書いてあるのか。私が実際に行く県のうち、福島県の原文を取りました。

福島県道路交通規則の第3章、第11条第1号です。

積雪又は凍結している道路において、駆動輪(他の車両に牽けん引される車両にあつては後輪)にタイヤチエーン又は全輪にスノータイヤ(接地面の突出部の摩耗が50パーセント以下のものに限る。)を取りつける等すべり止めの措置を講じないで自動車(小型特殊自動車を除く。)又は原動機付自転車を運転しないこと。

ありました。 カッコの中が、JATMAが言っていた「定められた」の部分です。

ただ、書きぶりが思っていたものと違いました。条文の単位は溝ではなく「接地面の突出部の摩耗」で、しかも「摩耗が50パーセント以下のものに限る」という表現です。残り溝で言う「50%以上」を、減ったほうから書いている。同じことを言っているのですが、条文を検索して探しても、残り溝の話だと気づきにくい言い方になっています。

規則の全文を、タグを外して空白を除いた79,803字で数えました。

語 福島県道路交通規則での件数
スノータイヤ 1件
摩耗 1件(上の1箇所だけ)
スタッドレス 0件
冬用タイヤ 0件
溝 0件
プラットホーム 0件
1.6 0件

読者が使う言葉が、条文には1つも入っていません。「スタッドレス」も「溝」も「プラットホーム」も0件で、出てくるのは「スノータイヤ」と「接地面の突出部」です。表記も「タイヤチエーン」で、現代の書き方ではありません。

この県差が、けっこう効きます。 同じ遠征先でも、群馬県は違いました。群馬県道路交通法施行細則の制定についての例規通達(12,551字)には「前又は後の駆動輪のタイヤに鎖等を施し、又は雪路用タイヤの使用を義務づけた」とあるだけで、「摩耗」 が0件、「突出部」 も0件です。用語も「雪路用タイヤ」で福島と違います。

新潟県も、県警察本部の冬道の資料(11,311字)に「全車輪に、すべり止めの性能を有する雪路用タイヤを取り付けること」とあり、摩耗の数値は出てきません。出てくる 「摩耗」 の1件は「摩耗・劣化すると制動性能は低下します」という注意喚起で、規定ではありませんでした。

つまり、同じ4県に行っていても、摩耗の線が条文に書いてあるのは福島だけです。県ごとの用語の違いは規制の記事で原文を並べているので、そちらもどうぞ。

もうひとつ、メーカー側の書き方で気づいたことがあります。トーヨータイヤの読み物は、50%の説明の注記に鹿児島県道路交通法施行細則(昭和53年11月24日公安委員会規則第16号)第12条(4)を挙げていました。タイヤを作っている側も、根拠として県の細則を指している、ということになります。ただし鹿児島県の条文そのものは私は開いていないので、ここは「メーカーがそう注記している」までにしておきます。

ひとつ正直に書くと、50%を明文化している県が全国で何県あるかは、私は数えていません。 二次情報には「10県」とする記述もありますが、原文を確認したのは福島・群馬・新潟の3県だけなので、ここでは県名を広げないでおきます。

国が50%を持ち出したのは、バスとトラックに対してだった

国の側にも、この数字が出てくる文書があります。2021年(令和3年)1月26日の国土交通省の発表です。

やったことは2つです。整備管理者は、雪道を走行する自動車のタイヤについて、溝の深さがタイヤ製作者の推奨する使用限度よりもすり減っていないことを確認しなければならない。運行管理者は、点呼の際にそれが確認されていることを確認しなければならない。

そして脚注にこうあります。

国内メーカー等の冬用タイヤでは、使用限度の目安として、溝の深さが新品時の50%まですり減った際にプラットホームが溝部分の表面に現れます。

ここで押さえておきたいことが3つあります。

  • 対象はバス・トラック運送事業者です。 自家用の乗用車に向けた話ではありません
  • 改正されたのは省令ではなく、規則の「解釈及び運用について」=通達のほうです。公布と施行は同じ1月26日
  • 50%は「目安」として脚注に置かれていて、本文の義務は「タイヤ製作者の推奨する使用限度」です

背景も書かれていて、「昨年末以降の大雪により、関越道や北陸道において多くの大型車両が路上に滞留する事案が発生した」ことを踏まえた改正だとあります。あの立ち往生の後に、1ヶ月ほどで出た文書だということになります。

添付のPDFも開きましたが、こちらは報道発表資料そのもので全文650字でした。改正後の通達の本文は載っていません。 原文まで読もうとすると、この発表だけでは足りません。

プラットホームは何ミリなのか

検索するとこの形で聞いている人が多くて、「2mm」「3mm」「何ミリ」が候補に並びます。ただ、50%は比率なので、新品の溝が何ミリだったかが分からないとミリになりません。

メーカー側の公式な説明を並べます。

新品が7〜9ミリなら、その半分は3.5〜4.5ミリ前後です。候補に出てくる「2mm」はもっと減った状態で、そこまで行くと車検で当たる1.6mmのほうが近いことになります。

ただ、銘柄とサイズごとの新品溝深さの一覧は、どのメーカーの公式ページでも見つけられませんでした。 だから「プラットホームは◯mm」という答え方はできません。答えは「ミリで覚えるのではなく、矢印の先の溝を見る」になります。4箇所のうち1箇所でも出ていればおしまい、という線の引き方も、覚え方としては楽なほうだと思います。

溝を自分で測るなら、デプスゲージという道具があります。ここも正直に書いておくと、私は過去の記事で「タイヤをどのタイミングで替えるべきか」を聞かれて、数字では言えないと書きました。自分の溝を測って記録してきたわけではないので、いまも同じです。

タイヤデプスゲージ(溝の深さを測る道具)

「3年で寿命」と言ったのは、いったい誰だったのか

ここが今回いちばん時間をかけた部分です。結論から言うと、使い始めてから3年で寿命、と決めた文書は見つけられませんでした。

近い数字はあります。ダンロップのQ&Aに「購入したタイヤの製造年度が古かったのですが」という質問があって、答えがこうです。

3年間は同等の性能を保つことが タイヤ公正取引協議会で確認されています

読み返してほしいのですが、これは買ったときに製造年が古かった新品タイヤの話です。使い始めてからの寿命ではありません。3年という数字は確かに公式に存在していて、ただしかかっている対象が違うわけです。

そしてブリヂストンのほうには、こう書かれています。

使用年数に関わらず、これらのマークが表示されれば交換時期となります

マークというのは、スリップサインとプラットホームのことです。メーカーは年数ではなくマークで言っている。 これはけっこうはっきりした書き方だと思いました。

比較のために、「スタッドレス 寿命」で上位に出てくる記事8本を取ってきて、タグを外して機械で数えました(平均5,744字)。

語 8本のうち出てくる本数
3年 5本
4年 5本
5年 5本
JATMA / 日本自動車タイヤ協会 0本
施行細則 0本
(JATMAの基準書名) 0本
硬度 2本(しきい値は書かれていない)

年数は並んでいるのに、出どころを書いた記事が1本もありませんでした。だから「3年説は嘘だ」とまでは私は言いません。 言えるのは、年数のほうには辿れる原文が見つからず、50%のほうには刊行物と条文の両方があった、という非対称だけです。

硬度についても同じです。ブリヂストンは「硬度計で確認でき、硬度計のあるタイヤ販売店などで簡単にチェックが可能」と書いていますが、何度を超えたらだめかという数値は書いていません。 JATMAの刊行物に 「硬度」 が0件なのも先に見たとおりです。測る道具は売られているので、数字を自分で持っておきたい人には選択肢になります。手元に使った記録が無いので、使用感は書けません。

タイヤ硬度計(ゴムの硬さを測る道具)

都内中心だと、溝より先に年数の話が来てしまう

ここで自分の使い方に当てはめます。私が走っているのはほぼ都内で、雪のあるところへ行くのは年に数回です。

この使い方だと、冬用タイヤの溝はなかなか減りません。 減らないまま年が過ぎるので、50%に届く前に「何年経ったか」のほうが先に気になってきます。ところが、その年数には上で見たとおり辿れる線がない。いちばん知りたい側に、いちばん根拠が無いという、やりにくい構図になっています。

もうひとつ白状しておくと、C43で雪のあるところへ行っていたとき、使っていたのは布製チェーンでした。 C43はAWDでしたが、駆動配分から後輪に付けています。年に数回のために4本を用意して、残りの11ヶ月をどこかに置いておくかどうか。ここは雪のある県に年に何度も行く人と、私のように数回の人とで、答えが変わる部分だと思います。

なので「私のスタッドレスは◯年目で」という話は、ここでは書けません。書けるのは、その判断をするときに読んだ数字がどこにあったかまでです。今のG400dは4WDですが、四輪駆動であることは条文の側から見れば何の免除にもなりません。これも規制の記事に書いたとおりです。

替えるかどうかは、最後は金額の話になる

マークが出ていたら交換、という線は分かりやすいです。やりにくいのは、出ていないけれど何年か経っているときで、ここは安全と金額を自分で天秤にかける場面になります。

私の場合、夏タイヤのほうで前輪2本の交換が20,000km手前で来ました。そのときディーラーの見積りが2本で約16万円、ネットで銘柄を指定して買って近所の整備工場に持ち込んだら2本で6万円でした。差額10万円です。段取りは全部こちら持ちで、ショップを探して工場に電話して日程を合わせる手間がかかりました。

価格を先に見ておくと、この天秤が傾きやすくなります。「あと1シーズン引っ張る」の反対側にいくら乗っているのかが分かるからです。

TIREHOOD(タイヤフッド)

矢印の先の溝を見てプラットホームが出ていた、あるいは出ていないけれど何年か経っていて迷っている、というときに価格を確かめる先です。タイヤの購入と取付店の予約が1つの画面でつながっているので、冬用の4本を揃える段取りを一度に進められます。サイズで検索する形なので、手元のタイヤの側面の表記を先に確認してから開くほうが早いです。

※ 2026年10月時点の情報です。価格と在庫は変動します。

この記事で分からなかったこと

出どころを辿る記事なので、辿れなかったところも書いておきます。

  • JATMAの刊行物に載っている「夏用タイヤとスタッドレスタイヤの制動距離指数」の図は、数字(100・121・116・118・115・107・114)は読めたのに、軸のラベルが図形になっていて抽出できませんでした。 条件が特定できないので本文では使っていません
  • 50%を条文に書いている県の総数は数えていません。原文を確認したのは3県だけです
  • 硬度のしきい値は、メーカーも協会も数値を出していませんでした
  • 銘柄ごとの新品溝深さの一覧は見つけられませんでした。だから50%をミリに直す計算は、7〜9ミリという一般的な値を使った概算にとどまります

よくある質問

プラットホームが出たスタッドレスは、捨てるしかないのですか

JATMAの刊行物には「50% 以上摩耗した冬用タイヤは、1.6mm(スリップサイン露出)までは夏用タイヤとして使用できます」と書かれています。冬用としては終わりでも、夏用としては1.6mmまで、という区切りです。ただし同じ刊行物は、冬用タイヤを乾燥路や湿潤路で使う場合は急制動・急旋回を避けるようにとも書いています。溝の話とは別に、そういう特性のタイヤだという前提は残ります。

残り溝が1.6mm以上あれば、雪道を走っても違反にはならないのですか

県によって違います。福島県道路交通規則は、積雪または凍結している道路で、スノータイヤを使うなら「接地面の突出部の摩耗が50パーセント以下のもの」に限る、と第11条第1号に書いています。一方で群馬県の施行細則には摩耗の数値が出てきません。石川県警のページでは、違反は点数なしで普通車6千円の反則金という案内になっています。行き先の規定を先に見るのが確実です。

国の決まりで50%が義務になったと聞きました

2021年1月26日に国土交通省が出したのは、バス・トラック運送事業者に向けた改正です。しかも省令ではなく、規則の「解釈及び運用について」という通達のほうを直したもので、整備管理者が溝の深さを確認し、運行管理者が点呼のときにそれを確認する、という内容です。50%は本文ではなく脚注に「使用限度の目安として」の形で出てきます。

車検の基準とは何が違うのですか

車検で当たるのは残り溝1.6mmで、これは細目告示の数字です。50%のほうは冬用としての使用限度なので、1.6mmを満たしていても冬用としては終わっているという状態がありえます。2つの線が別々に引かれている、と考えると整理しやすいと思います。

本文の数値と条文は、すべて2026年10月時点で各サイトから取得した内容です。規則は改正されることがあるので、出かける前に行き先の規定を確認してください。