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タイヤのはみ出し10mmは、告示では「保護帯とリブ」に付いた数字だった|回転部分の突出を原文で確認

旧型マスタングの側面。タイヤとフェンダーの位置関係。はみ出しの判定は前方30度・後方50度の範囲で行う Car|車
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タイヤのはみ出しを調べると、どのページにも「10mm未満なら大丈夫」と書いてあります。上位に出てくる記事は、ほぼ例外なくこの説明です。

ところが、その10mmがどの文書のどこに書かれているかを辿っていくと、話が2つに割れます。検査の現場が使う規程と、その根拠になっている告示とで、10mmが係っている先が違うんです。

先に結論だけ置いておきます。

先に結論

① 審査事務規程の10mmは「最外側がタイヤとなる部分の突出量」。部位を限定していない

② 細目告示の10mmは「サイドウォール部の保護帯及びリブ」に付いている。タイヤ全体の話として書かれていない

③ 新型車側の細目告示第22条には、10mmが1文字も出てこない

④ この緩和は「専ら乗用の用に供する自動車」限定。貨物車は枠の外

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保安基準に書いてあるのは、たった一文だった

出発点は道路運送車両の保安基準の第18条第1項第2号です。

車体の外形その他自動車の形状は、鋭い突起がないこと、回転部分が突出していないこと等他の交通の安全を妨げるおそれがないものとして、告示で定める基準に適合するものであること。

道路運送車両の保安基準 第18条第1項第2号(e-Gov法令検索)

「回転部分が突出していないこと」。それだけです。何ミリまでとも、どこからどこまでの範囲とも書いていない。

ここまでは、この手の条文でよくある形です。数字は下の階層に置かれている。問題は、その下の階層が1本ではなかったことでした。

見られているのは、前方30度と後方50度のあいだ

まず範囲から。検査で実際に使われる独立行政法人自動車技術総合機構の審査事務規程には、こう書いてあります。

自動車が直進姿勢をとった場合において、車軸中心を含む鉛直面と車軸中心を通りそれぞれ前方30°及び後方50°に交わる2平面によりはさまれる走行装置の回転部分(タイヤ、ホイール・ステップ、ホイール・キャップ等)が当該部分の直上の車体(フェンダ等)より車両の外側方向に突出していないもの。

審査事務規程 7-28,8-28 車枠及び車体

タイヤ全周ではありません。車軸の真横を基準にして、前に30度、後ろに50度の扇形だけ。前より後ろが広いのは、走行中に石や水を跳ね上げる向きを考えれば納得がいきます。

そして回転部分にはホイール・キャップやホイール・ステップも含まれます。「タイヤの話」だと思って読むと、ここを落とします。

10mmが出てくるのは、規程のほう

続きにこう書かれています。

この場合において、専ら乗用の用に供する自動車(乗車定員10人以上の自動車、二輪自動車、側車付二輪自動車、三輪自動車及び被牽引自動車を除く。)であって、車軸中心を含む鉛直面と車軸中心を通りそれぞれ前方30°及び後方50°に交わる2平面によりはさまれる範囲の最外側がタイヤとなる部分については、外側方向への突出量が10mm未満の場合には「外側方向に突出していないもの」とみなす。

同上

「最外側がタイヤとなる部分」というのが効いています。一番外に出ているのがタイヤのゴムなら10mm未満まで許される。一番外がホイールのリムなら、この文は使えません。

ここまでは、多くの記事が書いているとおりです。話はここで終わり、のはずでした。

ところが告示を開くと、10mmの居場所が違った

審査事務規程は括弧書きで根拠の条文を示しています。第8章のほうは「細目告示第178条第2項関係」。そこで第178条を開きました。

ロ タイヤの次に掲げる部分以外の部分の直上の車体(フェンダ等)より車両の外側方向に突出していない車枠及び車体
(1) サイドウォール部の文字又は記号がサイドウォール部から突出している部分
(2) サイドウォール部の保護帯及びリブ並びにこれらと構造上一体となってサイドウォール部から突出している部分(突出量が10mm未満である場合に限る。

道路運送車両の保安基準の細目を定める告示 第178条(車枠及び車体)

読み方が変わります。告示のほうは「タイヤが10mmはみ出してよい」とは書いていません。書いてあるのは、タイヤのうち(1)文字・記号と(2)保護帯・リブは、はみ出していても数えない、そしてそのうち保護帯とリブについては10mm未満に限る、という話です。

裏を返すと、告示の文面ではそれ以外の部分(トレッド側、サイドウォールの本体)はフェンダーからはみ出していてはいけないことになります。

念のため、機械的に数えました。

出典 10mm 保護帯 リブ 「最外側がタイヤ」
細目告示 第22条(新型車) 0件 1件 1件 0件
細目告示 第100条 1件 1件 1件 0件
細目告示 第178条(使用過程車) 1件 1件 1件 0件
審査事務規程 7-28/8-28 3件 0件 0件 3件

審査事務規程には「保護帯」も「リブ」も1度も出てきません。逆に、細目告示には「最外側がタイヤ」という言い回しが1度も出てきません。 同じ10mmという数字を扱いながら、文章が完全に別物です。

どちらが実務で優先されるのか、この違いが意図的なものなのかは、資料からは読み取れませんでした。分からないので、両方の原文を並べておきます。検査を受けるのは審査事務規程に従う現場なので、実務上は規程の読み方で運用されているのだと思いますが、それは私の推測です。

新型車側の第22条には、10mmが1文字も無い

もうひとつ気づいたことがあります。新型車の側を定める細目告示第22条には、こう書いてあるだけでした。

……に備えるタイヤであって、協定規則第30号の規則3.(3.2.を除く。)及び6.に適合するもののサイドウォール部の文字、記号並びに保護帯及びリブの突出にあっては、突出していないものとみなす。

細目告示 第22条(車枠及び車体)

数値の上限がありません。 使用過程車の第178条と第100条には「10mm未満である場合に限る」が付いているのに、第22条には付いていない。

同じ条文が新型車用・使用過程車用で並んでいるとき、数字が片方にだけ入っているのは、追いかけていて気持ちの悪い部分でした。

緩和されているのは「専ら乗用の用に供する自動車」だけ

ここが実用面ではいちばん大きいと思います。みなし規定の主語を、もう一度ゆっくり読みます。

専ら乗用の用に供する自動車(乗車定員10人以上の自動車、二輪自動車、側車付二輪自動車、三輪自動車、カタピラ及びそりを有する軽自動車並びに被牽引自動車を除く。)

貨物の運送の用に供する自動車が入っていません。 4ナンバー・1ナンバーで登録されている車は、そもそもこのみなし規定の対象外ということになります。乗車定員10人以上の車も外れます。

区分 10mmのみなし
専ら乗用の用に供する自動車(乗車定員9人以下) 対象
貨物の運送の用に供する自動車(4ナンバー・1ナンバー) 対象外
乗車定員10人以上の自動車 対象外
二輪・側車付二輪・三輪・被牽引 対象外
カタピラ及びそりを有する軽自動車 対象外

サジェストに `タイヤ はみ出し 車検 貨物`、`軽トラ タイヤ はみ出し 車検`、`ハイエース タイヤ はみ出し 車検` が並んでいるのは、たぶんここが引っかかっているからだと思います。同じ車体でも、登録の区分によって扱いが変わる

輸入SUVでも、構造変更で貨物登録にしている個体はあります。自分の車がどちらなのかは、車検証の「用途」欄を見れば分かります。

スペーサーを入れると、告示のみなしは使えない

細目告示の条文には、もうひとつ条件が付いていました。

タイヤ以外の回転部分に係る部品の改造、装置の取付け又は取り外しその他これらに類する行為により構造、装置又は性能に係る変更を行う場合を除き、基準に適合しているものとみなす。

細目告示 第178条

さらに前提として、次の2つが要ります。

  • 協定規則第30号の規則3.(3.2.を除く。)及び6.に適合するタイヤを備えていること
  • 指定自動車等に備えられた車枠及び車体と同一の構造を有し、同一の位置に備えられたものであって、その機能を損なうおそれのある損傷等のないもの

つまり、告示のみなしが想定しているのはフェンダーが純正のままの状態です。ホイールスペーサーは「タイヤ以外の回転部分に係る部品の……装置の取付け」に読めるので、入れた時点でこの一文からは外れることになります。オーバーフェンダーを付けた場合も、車体が指定自動車等と同一の構造ではなくなります。

`ホイールスペーサー 車検` `ホイールスペーサー 3mm 車検` というサジェストに対しては、「何ミリまでなら」という答え方自体が条文の作りと合っていない、というのが正直なところです。厚みの問題ではなく、みなし規定の入口に立てるかどうかの問題になっています。

弱点も書いておくと、この読み方は条文の文言からの整理であって、実際の検査でどう判断されるかは別です。スペーサーの装着を一律に不適合と書いている資料は見つかりませんでした。心配なら受検先に現車を見てもらうのが確実です。

今回は、第7章と第8章に差が無かった

保安基準まわりの記事を書くとき、私はいつも審査事務規程の第7章と第8章を並べて見ています。第7章が新規検査などを含む側、第8章が「改造等による変更のない使用過程車」の側です。

発炎筒のときも、デイライトのときも、マフラーのときも、第8章のほうで項目が減っていました。今回もそうだろうと思って開いたのですが、違いました。

項目 第7章(7-28) 第8章(8-28)
回転部分の突出に関する本文 同一(文言が完全に一致)
前方30°・後方50° あり あり
10mm未満のみなし あり あり
引用している細目告示 第22条第2項・第3項/第100条第2項 第178条第2項

18ページのPDFが2段組なので、テキストをそのまま抜き出すと左右が混ざります。文字の座標を取って左段と右段に分けたうえで比べました。左段(第7章)と右段(第8章)で、違うのは括弧の中の条番号だけでした。

「第8章は毎回緩い」わけではない、というのは自分にとっても収穫でした。装置ごとに事情が違う、というだけの話だったんだと思います。

同じ日に書いたマフラーの記事は、逆に第8章で項目が1つ減っていた例です。

自分で測って白黒つけるのは、たぶん難しい

サジェストで `タイヤ はみ出し 測定`、`測り方`、`測定器 自作` が上位に出てきます。気持ちはよく分かります。ただ、条文を読んだあとの正直な感想は、家で正確に出すのは無理筋でした。

理由は3つあります。

  • 判定範囲が車軸中心から前方30度・後方50度という扇形で、地面に垂直な面を基準にしている
  • 比べる相手が「当該部分の直上の車体(フェンダ等)」で、フェンダーの断面は場所によって出っ張りが違う
  • 規程に測定器具の指定が無い

なので「これで測れば車検の可否が分かる」という道具は、私は紹介しません。代わりに使えるのは、サイドウォールの文字や保護帯がどれくらい出ているかを見ておくくらいだと思います。告示が名指しで除外している部分がどこなのかを、自分の目で確認しておくという意味です。

デジタルノギス(サイドウォールの文字・保護帯の出っ張りを見る用)

フェンダーの真下という「垂直」を目で取るのは意外と難しいので、糸と下げ振りがあると当てになります。これも判定の道具ではなく、目安を掴むためのものです。

下げ振り・水糸(フェンダー直下の垂直を出す用)

そもそもフェンダーの張り出し方は車によってかなり違います。G400dは、素のグレードとAMGラインで全幅が55mm変わります。同じ車名でも仕様で条件が動くので、他人の「このサイズで入った」はあまり当てになりません。

サイズを変えると決めたなら、工賃の話も先に見ておくと判断が早いです。前に乗っていたC43のときは、ディーラー見積もりの16万円を、持ち込み交換で6万円にしました。

同じ「はみ出し」でも、積載物は別の条文

紛らわしいので分けておきます。ルーフボックスやスキー板が車体から出るぶんは、保安基準ではなく道路交通法施行令の話で、前後は車の長さの10分の1、左右は幅の10分の1までです。回転部分の突出とは根拠がまったく別なので、10mmとは関係ありません。

タイヤ側の車検基準では、幅よりも先に溝を見られます。こちらは1.6mmで、根拠は細目告示第167条でした。

調べていて分からなかったこと

  • 「平成29年6月22日に緩和された」という改正日。多くの記事がこの日付を挙げていますが、国交省の報道発表や改正告示そのものには辿り着けませんでした。なので日付は断定せず、いま現在の条文がどうなっているかだけを書いています
  • 細目告示と審査事務規程で書きぶりが違う理由。事実としては上のとおりですが、意図的な差なのかどうかは資料から読み取れませんでした
  • スペーサーが一律に不適合になるのか。条文の文言からは「みなし規定の外に出る」と読めますが、そう明記した資料は見つかっていません

よくある質問

タイヤが10mm未満なら必ず車検に通りますか

必ずとは言えません。審査事務規程の10mmは「最外側がタイヤとなる部分」についての規定なので、一番外に出ているのがホイールやホイール・キャップならこの文は使えません。また、専ら乗用の用に供する自動車に限られます。

ハイエースや軽トラックも10mmまで大丈夫ですか

用途が「貨物」で登録されている車は、このみなし規定の対象外です。 条文の主語が「専ら乗用の用に供する自動車」だからです。同じ車種でもワゴン登録とバン登録で扱いが変わることになるので、車検証の用途欄を確認してください。

ホイールスペーサーは何ミリまで入れられますか

厚みの上限を定めた条文は見つかりませんでした。細目告示のみなし規定が「タイヤ以外の回転部分に係る部品の改造、装置の取付け又は取り外し」を除いているので、厚みの問題というより、みなし規定を使えるかどうかの問題になります。受検先に現車で相談するのが確実です。

はみ出しているかどうかは、どこで測るのですか

車軸中心を含む鉛直面から、前方30度・後方50度に交わる2平面ではさまれた範囲です。タイヤの一番出ている場所ではなく、この扇形の中で見ます。測定器具の指定は規程にありません。

サイドウォールの文字が出ているのは駄目ですか

細目告示は「サイドウォール部の文字又は記号がサイドウォール部から突出している部分」を、突出量に含めない側として名指ししています。保護帯及びリブについては、第178条・第100条では10mm未満に限る、という条件が付いています。

まとめ

・保安基準第18条は「回転部分が突出していないこと」としか書いておらず、数値は告示に委任されている

・判定範囲は車軸中心から前方30度・後方50度。回転部分にはホイール・キャップ等も含む

・審査事務規程の10mmは「最外側がタイヤとなる部分の突出量」。細目告示の10mmは「保護帯及びリブ」に付いている

・新型車側の細目告示第22条には10mmが1文字も無い

・みなしは「専ら乗用の用に供する自動車」限定。貨物車・定員10人以上は対象外

・告示のみなしは、タイヤ以外の回転部分をいじると使えない。フェンダーが純正であることも条件

「10mm」という数字だけが独り歩きしていて、その数字がどの部品に付いているのかは、あまり書かれていませんでした。条文を並べてみると、緩和というより除外される部位を細かく決めた改正に見えます。少なくとも、ホイールを外に出す方向の話ではなかった、というのが読み終えての印象です。

※本記事は2026年8月時点で公開されている法令・告示および独立行政法人自動車技術総合機構の審査事務規程の原文に基づいて作成しています。情報提供を目的としており、特定の商品の購入を勧誘するものではありません。個別の車両・装着状態が基準に適合するかどうかの判断は、運輸支局または指定工場・認証工場にご確認ください。条文および規程は改正されるため、実際の受検前には最新の一次情報をご確認ください。

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