G400dに乗り換えて3年が過ぎました。ここ数日、車の後ろについている灯火の条文を後ろから順に開いていて、制動灯、補助制動灯と来て、残っていたのが後退灯でした。
サジェストを取ったら「バックランプ 片方」にぶら下がる語が8つもありました。片方だけ、片方 違反、片方 なぜ、片方だけの車、片方 車種。これだけ聞かれているなら答えは条文にあるはずだと思って開いたら、数を決めている号はたった1行でした。
長さ6m以下の車は「1個又は2個」。それだけです。
数を決めているのは、7-90-3(1)①という号ひとつ
検査を実際にやっている独立行政法人自動車技術総合機構の審査事務規程で、後退灯は 7-90、8-90(最終改正 第64次)です。7ページの2段組で、左が第7章(新規検査など)、右が第8章(改造のない使用過程車=いわゆる普通の車検)。
数の号はこうなっています。
① 自動車に備える後退灯の数は、次に掲げるものとする。
ア 長さが6mを超える自動車(専ら乗用の用に供する自動車であって乗車定員10人以上の自動車及び貨物の運送の用に供する自動車に限る。)にあっては、2個、3個又は4個
イ ア以外の自動車にあっては、1個又は2個審査事務規程 7-90-3(1)①(8-90-3(1)①も同文)
イが乗用車です。1個又は2個。片側だけ点くのは、条文の言葉のうえでは何も足りていない状態ではありません。
面白いのはアのほうで、長さ6mを超えるバスとトラックだけ2個・3個・4個から選べます。しかも3個目以降は後面でなくてもいい。②のただし書きに「2個を超えて備えるものについては、自動車の側面に後方に向けて取付けることができる」とあります。大型トラックが後ろに下がるとき、ボディの横が白く光っているのを見たことがある人はいると思いますが、あれは条文にちゃんと居場所があります。
上位に出てくる記事を6本落として機械で数えてみたら、「6m」も「4個」も「側面」も6本とも0件でした。乗用車の1個又は2個までは全部書いてあるのに、その上の段は誰も触っていない。
左右対称の義務は、2個以上あるときにしか出てこない
「片方だけだと非対称になるのでは」という引っかかりは、次の号で解けます。
⑥ 後退灯は、後面に2個以上の後退灯が取付けられている場合において、少なくとも2個が車両中心面に対して対称な位置に取付けられたものであること。
ただし、後面が左右対称でない自動車に備える後退灯にあっては、この限りでない。審査事務規程 7-90-3(1)⑥(第8章では 8-90-3(1)⑤)
条件が「後面に2個以上取付けられている場合において」から始まっています。1個しかない車には、この号がそもそも発動しません。そして2個以上あるときも要求されているのは「少なくとも2個が対称」であって、全部が対称であることではない。4個付けられるトラックの話とつながっています。
もう片方の穴に何が入っているのか、という話はここでは書きません。リアフォグの条文は別で1本にしてあるので、そちらに置いてあります。
ひとつ気をつけたほうがいいのは、もともと2個付いている車で片方が切れている場合は話が別だということです。細目告示 第214条第4項は「指定自動車等に備えられたものと同一の構造を有し、かつ、同一の位置に備えられた後退灯」を適合とみなしていますが、その頭に「その機能を損なう損傷等のないもの」という条件が付いています。球が切れていれば機能を損なっている側です。「1個又は2個」というのは、その車が最初からどちらで作られているかの話であって、2個あるうち1個が消えていてよいという意味ではありません。
車検の章には、100mも15Wも20cm²も無かった
サジェストの「バックランプ 車検 明るさ」「ルーメン」「面積」「爆光」に当たるのがここです。第7章と第8章で性能要件を並べます。
| 7-90-2(1)(新規検査など) | 8-90-2(1)=車検 | |
|---|---|---|
| ① | 昼間にその後方100mの距離から点灯を確認でき、照射光線が他の交通を妨げない。光源15W以上75W以下で照明部20cm²以上あり機能が正常なものは適合とみなす | 「後退灯の照射光線は、他の交通を妨げないものであること」だけ |
| ② | 灯光の色は白色 | 同文 |
| ③ | 灯器が損傷し又はレンズ面が著しく汚損しているものでない | 同文 |
8-90 の全文を数えると「100m」「15W」「75W」「20cm2」がすべて0件です。継続検査で見ているのは、他の交通を妨げないこと、白いこと、割れたり曇ったりしていないこと。この3つしかありません。
数字が消えるのは制動灯のときと同じ形でした。ただ後退灯は上限が75Wで、制動灯の60Wとは違います。同じ後面の灯火でも数字は使い回されていません。
「ルーメン」はどこにも出てきません。7-90にも8-90にも、細目告示にも0件です。何ルーメンまで大丈夫という基準は、少なくとも日本語の条文の側には存在しません。「爆光」が引っかかるとすれば①の「他の交通を妨げない」で、これは数値ではなく視認による判断になります。
球そのものを替えるなら、口金は車ごとに違うので外して確認してからになります。バックランプ用として売られているものではT16(W16W)をよく見ます。条文の側にLEDの可否は書かれていないので、私からは「これなら通る」とは言えません。色が白いこと、後ろの車の運転を妨げないこと、という条文の言葉のほうを持っておくのが安全だと思っています。
口金の形については、告示の側に一行だけ言及がありました。細目告示 第58条(型式の指定等・【2023.1.4】)に「交換式電球の受金形状は、定格電球を使用する場合にあってはJIS規格C7709に定められた形状、定格電球以外の電球を使用する場合にあってはその他の誤組付防止措置が図られた形状であればよいものとする」とあります。装置の型式指定の話なので車検の合否とは別の場面ですが、口金の規格名が条文に出てくるのは少し意外でした。
高さは、上限のほうだけ第8章で消える
取付要件も並べておきます。落ちる項目に色を付けるつもりで見てください。
| 項目 | 7-90-3(1) | 8-90-3(1)=車検 |
|---|---|---|
| 数(6m超のバス・トラックは2〜4個/それ以外は1個又は2個) | ① | ① |
| 後面に後方へ向けて(2個を超える分は側面可) | ② | ② |
| 高さ 上縁1,200mm以下・下縁250mm以上 | ③ | ③ 上縁の規定が無い。下縁250mm以上だけ |
| 変速装置が後退の位置で、原動機の操作装置が始動の位置にあるときにのみ点灯 | ④ | ④ |
| 幾何学的視認性(1個なら上15°下5°内45°外45°/2個以上で対称なら内30°外45°) | ⑤ | 無い |
| 2個以上あるとき、少なくとも2個が対称 | ⑥ | ⑤ |
| 点滅するものでない | ⑦ | ⑥ |
| 直射光・反射光が運転操作を妨げない | ⑧ | ⑦ |
| 緩み・がたがない | ⑨ | ⑧ |
第8章で消えるのは上縁1,200mm以下と幾何学的視認性の2つです。8-90の全文で「1,200mm」と「別添13」はどちらも0件でした。
ここは制動灯や補助制動灯と少し違っていて、数の号(①)は第8章にも残っています。個数は車検でも見る。高さの下限も残る。落ちるのは「高すぎないか」と「斜めからどこまで見えるか」の2つだけ、という切り方でした。
側面のバックランプだけ、前に進んでも点いていていい
④に、読んでいて手が止まった一文があります。
ただし、②ただし書の規定により自動車の側面に備える後退灯にあっては、変速装置を後退の位置から前進の位置等に操作した状態において、自動車の速度が10km/hに達するまでの間点灯し続けるものとすることができる。
この場合において、後退灯は、独立した操作装置によって点灯した後退灯を消灯させることができる構造でなければならない。審査事務規程 7-90-3(1)④
原則は「後退の位置に入れているときにのみ点灯」なのに、側面の3個目以降だけは前進に入れたあとも点いていてよい。トラックが切り返しをする現場を思い浮かべると、後退と前進を何度も行き来するので、そのたびに消えると足元が真っ暗になります。ただし独立したスイッチで消せる構造にしておくこと、という条件が付きます。
ここでひとつ、原文どうしの食い違いを見つけました。
審査事務規程(最終改正 第64次)は「10km/h」、細目告示【2025.6.17】は「15km/h」でした。
4つのテキストを機械で数えた結果です。規程 7-90・8-90 は 10km/h が2件で15km/hが0件。細目告示 第136条と第214条は15km/hが1件で10km/hが0件。さらに第214条の【2006.08.25】版を開くと、こちらは10km/hでした。告示が10から15に変わり、規程がまだ10のままという形に見えます。
どちらが検査の現場で適用されるかは、改正の経緯そのものを開いていないので書きません。両方の原文の数字を並べるところまでにします。影響が出るのは長さ6mを超えるバス・トラックの、側面に付けた3個目以降だけです。
条文を読んでいて数字が合わないと、たいてい自分の読み間違いなので数え直しました。今回は本当に違いました。
装備要件が「なし」だった時代が3段階ある
年式の振り分けは 7-90-4「適用関係の整理」が持っていて、そこから従前規定に飛びます。7段階ありました。灯火の条文をいくつか読んできましたが、これは多いほうです。
| いつ製作された車か | 飛ぶ先 | 特徴 |
|---|---|---|
| 昭和32年3月31日以前 | 7-90-5 | 装備要件 なし。数は2個以下。運転者席で点灯できない構造でも可 |
| 昭和39年4月14日以前 | 7-90-6 | 装備要件 なし |
| 昭和44年3月31日以前で長さ6m未満 | 7-90-7 | 装備要件 なし |
| 平成8年1月31日以前 | 7-90-8 | 灯光の色は白色又は淡黄色。光度5,000cd以下 |
| 平成17年12月31日以前 | 7-90-9 | 色は白色。光度5,000cd以下。数は2個以下 |
| 平成22年12月31日以前 | 7-90-10 | 数は2個以下。見通せる角度の規定が現行と別 |
| 平成27年12月31日以前 | 7-90-11 | 装備要件は現行と同文。数は「2個以下」 |
上の3つの「装備要件 なし」は、後退灯が付いていなくてよい、という意味です。昭和44年3月31日以前に作られた長さ6m未満の車には、バックランプを備える義務がありません。旧車を車検に通す人には効いてくる話だと思います。
もうひとつ、平成8年1月31日以前の車は白色でなくてもいいのが意外でした。「白色又は淡黄色」と書いてあります。淡黄色のバックランプという言い方はあまり聞きませんが、条文のうえでは生きています。
そして現行との差でいちばん細かいのが、平成27年12月31日以前の「2個以下」と、現行の「1個又は2個」です。乗用車で考えると結論は変わりません。ただ、側面に付けられる規定と3個・4個という選択肢が入ったのは、平成28年1月1日以降に製作された車からということになります。
振り分けの根拠として規程が引いているのは適用関係告示 第44条(第1項から第8項まで)です。適用関係告示そのものは開いていないので、規程が引いている範囲までにしておきます。
「主として後方を照射するための後退灯」という別枠がある
従前規定を読んでいて出てきた、聞き慣れない区分です。
③ 主として後方を照射するための後退灯の照射光線の主光軸は、下向きであり、かつ、後方75mから先の地面を照射しないこと。
この場合において、次に掲げる後退灯であって、その機能が正常であるものは、この基準に適合するものとする。
ア 光度が300cd以下の後退灯審査事務規程 7-90-9-3(1)③
後ろの車に「下がっています」と知らせるための灯火と、自分が後ろを見るために地面を照らすための灯火を、条文が分けています。後者には主光軸が下向きであること、75mから先の地面を照らさないこと、という縛りが付く。現行の細目告示 第136条第1項第1号のかっこ書きにも「(主として後方を照射するための後退灯にあっては300cd以下)」が残っています(平成17年12月31日以前に製作された自動車について)。
同じ従前規定の中に、もう一つ変わった想定がありました。「白色の前部霧灯(指定装置等)が後退灯として取付けられている場合」という書き方が何度も出てきます。フォグランプを後退灯に流用する形が、条文で正面から想定されている。前部霧灯の側の基準は別記事にまとめてあります。
保安基準第40条の本文と、規程が引いた文が一致していない
細かい話ですが、原文どうしを突き合わせたので書いておきます。道路運送車両の保安基準の第40条第1項はこうです。
自動車には、後退灯を備えなければならない。ただし、二輪自動車、側車付二輪自動車、カタピラ及びそりを有する軽自動車、小型特殊自動車並びに幅〇・八メートル以下の自動車並びにこれらによりけん引される被けん引自動車にあつては、この限りでない。
道路運送車両の保安基準 第40条第1項
これに対して規程 7-90-1 は、末尾に「(保安基準第40条第1項)」と付けたうえで、除外を「二輪自動車、側車付二輪自動車及び幅0.8m以下の自動車並びにこれらにより牽引される被牽引自動車」の3類型だけにしています。太字の2つが入っていません。
規程は検査の現場で使う文書なので、検査の対象にならない車が落ちているのは筋が通ります。ただ「(保安基準第40条第1項)」と書いてあると条文そのままだと思って読むので、ここは差分を知っておいたほうがいいと思いました。条文は第2項が明るさ、第3項が取付けを告示に投げるだけの構成で、全部で219文字しかありません。数字は「〇・八メートル」の1件だけです。
片方だけ点かないとき、球かスイッチか
条文の話からは外れますが、サジェストに「バックランプ 片方だけつかない」と「バックランプスイッチ」が並んで出ているので触れておきます。
もともと2個ある車で片方だけ消えたなら球かソケットの側、両方まとめて点かないならスイッチや配線の側、という切り分けが最初の一歩になります。ギアを後退に入れたときに通電しているかどうかは、テスターを当てれば分かります。私はG400dで自分でバルブを外したことがないので作業感は書けませんが、道具としてはこの手のものです。
車種によってはテールランプやバンパーの脱着に手順と工具が要るので、そこで無理をしないほうが結果的に安く済みます。
書けなかったこと
・協定規則第148号の規則4.・5.8.・6.の原文は取得できませんでした。細目告示第58条が明るさをここに投げているので、光度の数値はこちら側にあるはずですが、規則番号までしか書けません
・別添13・別添52・別添53は開いていません。表題だけ引いています
・適用関係告示 第44条そのものは開いていません。規程が引いている項までを書いています
・告示(15km/h)と規程(10km/h)のどちらが優先するかは書いていません。改正の経緯を確認できていないためです
・LED化の可否は断定していません。「LED」は 7-90・8-90・細目告示第136条・第214条のすべてで0件で、条文の側に判断材料がありません
・何ルーメンまでなら大丈夫かも書けません。ルーメンの規定は条文に存在しません
よくある質問
バックランプが片方しか点かないのは違反ですか
後退灯の数は審査事務規程 7-90-3(1)①イ・8-90-3(1)①イで「1個又は2個」と定められています(長さ6m以下の車の場合)。したがってメーカーが1個で作っている車は、片側だけ光る状態が本来の姿です。ただし、もともと2個備えられている車で片方が点かない場合は別です。細目告示 第214条第4項が「指定自動車等に備えられたものと同一の構造を有し、かつ、同一の位置に備えられた後退灯」を適合とみなす際に「その機能を損なう損傷等のないもの」という条件を置いているため、球切れの状態は同じ扱いになりません。
バックランプの明るさに車検の基準はありますか
第8章(車検)の性能要件は「照射光線が他の交通を妨げないこと」「灯光の色は白色であること」「灯器が損傷し又はレンズ面が著しく汚損しているものでないこと」の3つで、明るさの数値はありません。8-90の全文で「100m」「15W」「75W」「20cm2」がすべて0件でした。第7章(新規検査など)の側には「昼間に後方100mから点灯を確認できる」と、光源15W以上75W以下・照明部20cm²以上ならこれに適合するとみなす規定があります。
バックランプは何個まで付けられますか
長さが6mを超える自動車のうち、乗車定員10人以上の乗用自動車と貨物の運送の用に供する自動車は2個・3個又は4個です。それ以外の自動車は1個又は2個で、3個目を後付けする余地は条文上ありません。なお2個を超えて備える場合に限り、後面ではなく側面に後方へ向けて取り付けることができます。
バックランプの色は白以外でもいいですか
現行は「白色であること」です。ただし平成8年1月31日以前に製作された自動車については従前規定(7-90-8-2②)が適用され、「白色又は淡黄色」となっています。それ以降に製作された車で淡黄色は認められません。
バックランプの取り付け位置に高さの決まりはありますか
第7章では照明部の上縁が地上1,200mm以下、下縁が250mm以上と定められています(7-90-3(1)③)。第8章=車検の側では上縁の規定が無く、下縁250mm以上だけが残ります。8-90の全文で「1,200mm」は0件でした。
古い車にバックランプが付いていないのですが車検に通りますか
審査事務規程 7-90-4 の適用関係の整理により、昭和32年3月31日以前、昭和39年4月14日以前、昭和44年3月31日以前で長さ6m未満の自動車は、それぞれ従前規定に飛び、いずれも装備要件が「なし」となっています。ただし装備している場合の性能要件・取付要件は従前規定の側に定められているため、付いているのに基準を満たしていない状態は別に判断されます。個別の車については、事前に検査を受ける運輸支局または指定整備工場に確認してください。
参考にした一次ソース
| 資料 | 使ったところ |
|---|---|
| 道路運送車両の保安基準(e-Gov) | 第40条(後退灯) |
| 細目告示 第58条 | 型式の指定等(【2023.1.4】)・JIS C7709 の一文 |
| 細目告示 第136条 | 新規検査・予備検査等(【2025.6.17】) |
| 細目告示 第214条 | 使用の過程にある自動車(【2025.6.17】) |
| 細目告示 第214条【2006.08.25】版 | 10km/h と 15km/h の比較 |
| 審査事務規程 7-90、8-90 後退灯 | 第7章・第8章の全文と従前規定7段階(最終改正 第64次) |
| 審査事務規程 目次 | 上記PDFのたどり方 |
ちなみに細目告示の第136条と第214条は、条番号と項番号の全角半角のゆれを除くと2,743文字が1文字も違いませんでした。新規検査でも車検でも、告示のレベルでは同じ文を読むことになります。差が出るのは、その先の審査事務規程です。
灯火の条文をまとめて追いたい方はこちらから。
車検にいくら払ったかのほうは、AMG C43の初回車検の請求書の内訳をそのまま置いてあります。
同じ日に、後面に残っていたもう一つの灯火も読みました。ナンバー灯でよく見る「30ルクス以上」は、細目告示の2003年版に書かれていた数字で、現行版は8ルクスでした。
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