「制動力の総和は50%以上、左右差は8%以下」。車検のブレーキ検査を調べると、どこでもこの数字に行き当たります。では50%の「何に対する50%」なのか。
ここでつまずいて原文を探しに行くと、たぶん二度迷います。保安基準の制動装置の条文を開いても数字は出てきません。審査事務規程の「乗用車の制動装置」という、いちばんそれらしい章を開いても出てきません。
乗ってきた車は2台だけです。2019年3月から2023年8月までが AMG C43、そこから先がいまの G400d。保安基準を装置ごとに読んでいく記事はこれで26本目になるのに、制動装置は一度も開いていませんでした。公開中の107本を機械検索しても「駐車ブレーキ」は0件、「制動力」は2本に1件ずつ出てくるだけで、どちらも本題ではありません。以下は検査を受けた体験談ではなく、数字がどこに置いてあるのかを追いかけた記録です。
保安基準第12条に「制動力」という語が無い
制動装置の根っこは道路運送車両の保安基準 第12条です。全文は空白を除いて521文字で、第1項の前半がこうなっています。
自動車には、走行中の自動車が確実かつ安全に減速及び停止を行うことができ、かつ、平坦な舗装路面等で確実に当該自動車を停止状態に保持できるものとして、制動性能に関し告示で定める基準に適合する二系統以上の制動装置を備えなければならない。
道路運送車両の保安基準 第12条第1項
「告示で定める基準に適合する」で終わっていて、それが何%なのかは書いていません。521文字を機械で数えると、「%」が0件、「N/kg」が0件、そして「制動力」という語そのものが0件でした。出てくる数字は最高速度三十五キロメートル毎時、二十五キロメートル毎時、車両総重量七百五十キログラム、そして系統の数だけです。
`保安基準 制動力 左右差` という検索がサジェストに出てくるのですが、この語で保安基準を読みに行くと何も見つかりません。探し先が最初から違っている、という状態になっています。
ちなみに「制動灯」(ブレーキランプ)は第39条で、制動装置とは別建てです。灯火の話と装置の話は条文のレベルで分かれているので、混ぜて検索すると迷います。
28,885文字を数えて、0件だった
検査を実際に行う側の文書が、自動車技術総合機構の審査事務規程です。この規程には装置ごとの章があって、乗用車のブレーキなら「7-16、8-16 乗用車の制動装置」がそれにあたります。第7章が新規検査の側、第8章が使用の過程にある車(=車検)の側で、1つのPDFに左右2段で並んでいます。
このPDFは空白を除いて28,885文字あります。制動力の数字を機械で数えました。
| 探した語 | 7-16/8-16 での件数 |
|---|---|
| 4.90/3.92/0.98/0.78/1.96 | すべて0件 |
| N/kg | 0件 |
| 50%/40%/10%/8%/20% | すべて0件 |
| ブレーキ・テスタ | 1件 |
| 9-3 | 2件 |
28,885文字の装置の章に、制動力の数値が1つもありません。代わりに入っているのがこの一文です。
制動装置は、かじ取性能を損なわないで作用する構造及び性能を有するものであり、ブレーキの片ぎき等による横滑りをおこすものでないこと。なお、ブレーキ・テスタを用いて9-3の基準に適合している制動装置は、この基準に適合するものとする。
審査事務規程 8-16-2(細目告示第171条第3項第1号関係)
要求のほうは「横滑りをおこすものでないこと」という言葉で書かれていて、それを満たしたかどうかの判定は 9-3 に投げられています。数字は9-3の側にしかない、という構造です。条文の表記が「片効き」ではなく「片ぎき」なのも、検索で引っかからない理由のひとつだと思います。
なお、この2段組PDFは素のテキスト抽出だと第7章と第8章の行が混ざります。なので本記事では「7章にあって8章では落ちる項目」という数え方はしていません。上の表のように0件であることだけを見ています。行が混ざっても、書かれている文字列が消えることはないので、0件は壊れません。
数字の置き場所は2か所だけだった
結局どこにあるのか。2か所です。
| 文書 | 該当箇所 | 数字 |
|---|---|---|
| 道路運送車両の保安基準 | 第12条第1項 | なし(告示に委任) |
| 保安基準の細目を定める告示 | 第93条第7項(新規検査等) 第171条第7項(使用の過程) |
あり |
| 審査事務規程 | 第9章 9-3 | あり |
| 審査事務規程 | 7-16/8-16(乗用車の制動装置) | なし(9-3へ) |
細目告示は新規検査用の第93条と、使用の過程にある車用の第171条に分かれています。灯火の装置だと、この2つで中身が変わることがあります。制動力はどうか。第7項だけを抜き出して、ページの柱を取り除いて突き合わせました。1,554文字と1,549文字で、違いは参照先の条番号が第94条か第172条かという1か所だけです(あとは全角と半角の差が1文字)。つまり新車の検査でも車検でも、判定に使う数字は同じものです。
もうひとつが審査事務規程 第9章です。この章は「テスタ等による機能維持確認」という表題で、検査場に置いてある機械を使う審査だけを集めた章になっています。9-2 から 9-14 までの13の節があり、9-3 がブレーキ・テスタの節です。空白を除いて3,012文字あります。
隣の 9-2(サイドスリップ)は440文字、灯火の色の 9-9 は272文字でした。9-3 はこの章の中では長いほうです。長い理由は、車の種類ごとに①から⑤まで枝が分かれていて、さらに「N」で測る場合と「kgf」で測る場合が全部二重に書かれているからです。同じ内容が2回ずつ出てくるので、読むと二度手間に感じます。
50%の分母は、車両総重量ではない
いちばん誤解が多いのがここだと思います。乗用車なら 9-3 の①と④が適用されて、①の本文はこうです。
(ア)制動力の総和を審査時車両状態における自動車の重量で除した値が4.90N/kg以上(降雨等の天候条件によりブレーキ・テスタのローラが濡れている場合には3.92N/kg以上)であること。この場合において、ブレーキ・テスタのローラ上で前車軸の全ての車輪がロックし、それ以上の制動力を計測することが困難な場合には、「4.90N/kg以上」とみなす。
(イ)後車輪にかかわる制動力の和を審査時車両状態における当該車軸の軸重で除した値が0.98N/kg以上であること。
(ウ)左右の車輪の制動力の差を審査時車両状態における当該車軸の軸重で除した値が0.78N/kg以下であること。審査事務規程 9-3(1)①ア(「N」を用いる場合)
分母は「審査時車両状態における自動車の重量」です。車両総重量ではありません。審査時車両状態は規程の定義で「空車状態の自動車に運転者1名が乗車した状態」とされていて、乗車定員ぶんの人も積載物も入っていません。
車両総重量が分母になるのは、9-3の②に当たる車だけです。条文の条件は「最高速度が80km/h未満であって車両総重量が車両重量の1.25倍以下の自動車」。この場合は総和が車両総重量の40%以上になります。ふつうの乗用車は①のほうなので、車両総重量で割ると分母が大きくなりすぎて、必要な制動力を過大に見積もることになります。
実数を入れてみます。いまの G400d は車両重量が2,520kg(メーカー公表値ベース。出典は下のリンク先に書いています)。
| 項目 | 計算 | 必要な値 |
|---|---|---|
| 審査時車両状態の重量 | 2,520kg + 運転者1名 | 約2,575kg |
| 主制動装置の総和(晴天) | 2,575 × 4.90N/kg | 12,617.5N 以上 |
| 主制動装置の総和(ローラが濡れている場合) | 2,575 × 3.92N/kg | 10,094.0N 以上 |
| 駐車ブレーキの総和 | 2,575 × 1.96N/kg | 5,047.0N 以上 |
運転者1名を55kgとして足しています。この55kgは私が置いた数字ではなく、規程の定義に出てくる数字です。審査事務規程 第1章の「積車状態」の定義に「乗車定員1人の重量は55kgとし」と書かれていて、9-3 でも次のように使われています。
この場合において、審査時車両状態(定義中、空車状態の自動車に運転者1名が乗車した状態に限る。以下9-3において同じ。)における自動車の各軸重を計測することが困難な場合には、自動車検査証に記載又は記録された前軸重に55kgを加えた値を審査時車両状態における自動車の前軸重、自動車検査証に記載又は記録された後軸重の値を審査時車両状態における自動車の後軸重とみなすものとする。
審査事務規程 9-3(1)
55kgが足されるのは前軸だけで、後軸重は車検証の値そのままです。運転者は前に座っているから、という理屈だと思います。細目告示の側にも同じ内容が(注1)として付いていますが、そちらは「空車状態における前車軸に55kgを加えた値」という書き方で、車検証を持ち出していません。規程のほうが実務寄りです。
弱点をひとつ。ここで使った2,520kgは車両重量であって、軸重ではありません。後輪の0.98N/kgと左右差の0.78N/kgは軸重で割るので、車検証を見ないと必要な絶対値は出せません。上の表で出せたのは、車全体の重量で割る2つだけです。
左右差の8%は、片方のブレーキに対する8%ではない
左右差でいちばんよく見かける説明が「右が100Nなら左は92N以上」というものです。これは条文と合いません。(ウ)の分母は当該車軸の軸重です。
たとえば前軸重が800kgの車で、左右の差が10Nあったとします。軸重で割ると 10 ÷ 800 = 0.0125N/kg で、上限の0.78N/kgには遠く及びません。もう一方の制動力の何%かではなく、その軸に載っている重さの何%か、という読み方です。同じ「8%」でも、分母が変わると意味がまるごと変わります。
ついでに気づいたことがあります。「N」で書かれた値と「kgf」で書かれた値を割り算すると、換算係数が出てきます。
| 項目 | N表記 | kgf表記 | N ÷ 割合 |
|---|---|---|---|
| 主制動装置の総和 | 4.90N/kg | 50% | 9.8 |
| 同(ローラが濡れている場合) | 3.92N/kg | 40% | 9.8 |
| 後車輪 | 0.98N/kg | 10% | 9.8 |
| 駐車ブレーキ | 1.96N/kg | 20% | 9.8 |
| 左右差 | 0.78N/kg | 8% | 9.75 |
4つは9.8でぴったり揃うのに、左右差だけ9.75です。8%をN/kgに直すと0.784N/kgなので、条文の0.78N/kgとは0.004N/kgずれます。前軸重800kgなら3.2Nぶん。実務で効く差ではないですし、ただの丸め方の違いだとは思いますが、5つのうち1つだけ揃っていないのは気になりました。なぜそうなっているのかは条文からは読み取れません。
雨でローラが濡れていたら、40%に下がる
(ア)の括弧の中がこれです。「降雨等の天候条件によりブレーキ・テスタのローラが濡れている場合には3.92N/kg以上」。50%が40%になります。10ポイントぶん緩みます。
この一文がどこにあるのかを確かめました。
| 文書 | 「降雨」 | 「濡れ」 | 「天候」 |
|---|---|---|---|
| 審査事務規程 9-3 | 4件 | 4件 | 4件 |
| 細目告示 第93条(全8,365文字) | 0件 | 0件 | 0件 |
| 細目告示 第171条(全9,956文字) | 0件 | 0件 | 0件 |
告示の側には、雨のことが1文字も書かれていません。告示は4.90N/kg(50%)だけを定めていて、濡れているときに3.92N/kg(40%)でよいという読み替えは、審査事務規程だけが持っています。告示を読んで基準を確認したつもりになると、この一文に一生たどり着きません。
括弧の中に置かれているので、数字だけを拾って読むと通り過ぎます。本文の数値を並べた表にも入ってきません。
ただし規程は「濡れている場合には」と書いているだけで、誰がどう判断するのか、どのくらい濡れていたら該当するのかは書いていません。当日の運用の話なので、これは条文の側からは答えが出せない部分です。
駐車ブレーキだけ、数字のあとに構造の条件が付く
乗用車に適用されるもうひとつが④で、これが駐車ブレーキ(主制動装置を除く制動装置)です。
制動力の総和を審査時車両状態における自動車の重量で除した値が1.96N/kg以上であり、かつ、当該装置を作動させて自動車を停止状態に保持した後において、液圧、空気圧又は電気的作用を利用していないこと。
審査事務規程 9-3(1)④ア
20%という数字のあとに、数字ではない条件がくっついています。停止状態を保持したあとで、液圧・空気圧・電気的作用を使っていないこと。①から⑤まで読んで、こういう構造の条件が付いているのは④だけでした。
意味としては「保持は機械的に行われていること」だと読めます。ではいまどきの電動パーキングブレーキはどうなるのか。ここは9-3を読んでも分かりません。作動させるのがモーターであることと、保持に電気を使い続けることは別の話ですが、個々の車の機構がどうなっているかは、規程が答える範囲の外です。ここは「条文にこう書いてある」までにとどめます。
また、④には「ローラ上で当該装置を備える車軸の全ての車輪がロックし、それ以上の制動力を計測することが困難な場合には1.96N/kg以上とみなす」というみなし規定があります。ロックしてしまえば、それ以上測らずに合格扱いになるということです。主制動装置の①にも同じ形のみなしがあって、こちらは前車軸の全輪がロックした場合です。
測る前の「状態」に、4つの条件がある
分母が「審査時車両状態における重量」なので、その状態の定義を読まないと計算が始まりません。審査事務規程 第1章の定義がこれです。
①空車状態の自動車に運転者1名が乗車した状態(中略)であること。(中略)なお、燃料については全量を搭載していなくてもよく、寸法及び重量を計測する場合を除き、スペアタイヤ(附属工具を含む。)又はその代替装備は搭載した状態とすることができる。
審査事務規程 第1章 定義「審査時車両状態」
面白いのはここです。空車状態の定義(保安基準 第1条第6号)は「燃料装置に燃料、潤滑油、冷却水等の全量を搭載し」となっているのに、審査時車両状態では「燃料については全量を搭載していなくてもよく」と明示的に外されています。満タンで行く必要はない、と書いてあるわけです。そのぶん分母が軽くなるので、必要な制動力の絶対値も下がります。
定義には続きがあって、全部で4つの要件になっています。
| # | 要件 |
|---|---|
| ① | 空車状態+運転者1名(燃料は全量でなくてよい) |
| ② | 原動機の作動中に、次のテルテールが継続して点灯・点滅していないこと ― 前方のエアバッグ/側方のエアバッグ/制動装置(BRAKE)/アンチロックブレーキシステム(ABS)/原動機 |
| ③ | 運転者席の運転者に警報するブザー類が継続して吹鳴していないこと |
| ④ | 装着しているタイヤが応急用スペアタイヤでないこと |
②に挙がっているテルテールは5つで、そのうち2つがブレーキ関係です。BRAKE警告灯とABS警告灯が点いたままだと、そもそも審査時車両状態に入りません。制動力が何N出ているかという話の手前で止まる、という順序になっています。エンジン始動時の自己診断で点灯・点滅しているのが明らかなものは「継続して」に当たらない、という但し書きも付いています。
④も地味に重要で、応急用スペアタイヤのままでは測れません。
車検の節に「ブレーキ・テスタ」という語が出てこない
車検の当日に使われる器具の一覧は、第4章 4-7-1-1(3)にあります。11の審査事項と器具が並んでいて、②が「制動装置の性能及び制動能力/ブレーキ・テスタ」です。ただしこの表が置かれているのは新規検査の節で、継続検査の節(4-7-1-2)は前の節を借りてくる書き方になっています。この借り方と、表に付いた但し書きの全文は、排ガスの回で原文ごと並べました。
ブレーキについて、そこに2つだけ足しておきます。ひとつめ。第4章を通して「ブレーキ・テスタ」という語が出てくるのは1回だけで、その1回が新規検査の側の表です。継続検査の節を上から下まで読んでも、この機械の名前は書かれていません。
ふたつめ。但し書きは審査事項を2つの組に分けていて、①②⑩(サイドスリップ・制動装置・速度計)は器具での審査が「困難であるときに限り」走行その他の適切な方法で、③⑥⑧⑨(騒音・黒煙・前照灯・警音器)は「視認等により容易に判定することができるときに限り」視認等で、となっています。制動装置は後者に入っていません。前照灯や警音器のように「見れば(聞けば)分かるなら機器はいらない」という扱いにはならず、機械か走行かの二択です。踏んでみて効いているから大丈夫、という判定の余地はここにありません。
車検の側から数字にたどり着くには、4-7-1-2 から 4-7-1-1、そこから 9-3 と、3回乗り換えることになります。「車検の基準値」を検索しても出典が示されないページばかりなのは、この乗り換えの多さもあると思います。
落ちたときは、2段階に分かれている
制動力が足りなかったらどうなるか。4-7-2 に総合判定の規定があって、「適合」「不適合」「審査中断」の3つです。ただし不適合には、もう1段あります。
当該自動車が次に掲げる事例のように明らかに危険な状態で運行されると認められるときは、(中略)「不適合(使用停止)」と判定するものとする。
①かじ取装置の著しい損傷(例:ロッド及びアーム類の脱落)
②制動能力の著しい不足(例:ブレーキ系統の失陥)
③燃料装置からの著しい燃料漏れ(例:燃料ホース・燃料パイプの切損、燃料タンクの亀裂)審査事務規程 4-7-2(2)
使用停止の例として挙げられているのは3つだけで、そのうち1つがブレーキです。ただし②の例は「ブレーキ系統の失陥」で、数値がわずかに足りないことではありません。基準値を割ったら即使用停止、という話ではないはずです。とはいえ、規程が名指しで挙げた3つに入っている装置だということは、頭に置いておいていい情報だと思います。
お金の話をひとつだけ。C43で受けた新車から3年目の初回車検は、請求が127,666円でした(ヤナセ・当時の実額)。何にいくらかかっていたのかと、いまの法定費用との差は別記事にまとめてあります。
よくある質問
車検の制動力は、結局いくつ以上あればいいのですか
乗用車の場合、主制動装置は制動力の総和が審査時車両状態における自動車の重量の50%以上(4.90N/kg以上)、後車輪の制動力の和が当該車軸の軸重の10%以上(0.98N/kg以上)、左右の車輪の制動力の差が当該車軸の軸重の8%以下(0.78N/kg以下)です。駐車ブレーキは総和が自動車の重量の20%以上(1.96N/kg以上)。出どころは審査事務規程 9-3(1)①と④、細目告示第93条第7項・第171条第7項です(2026年9月時点の版)。
制動力の計算で割る重さは、車検証のどの数字ですか
条文の分母は「審査時車両状態における自動車の重量」で、空車状態に運転者1名が乗った状態です。車両総重量ではありません。軸重が計測困難なときは、自動車検査証に記載又は記録された前軸重に55kgを加えた値を前軸重、記載又は記録された後軸重をそのまま後軸重とみなす、と9-3(1)に書かれています。55kgは規程の定義で乗車定員1人の重量とされている値です。
左右差の8%は、左右どちらのブレーキに対する8%ですか
どちらでもありません。分母は当該車軸の軸重です。9-3(1)①ア(ウ)は「左右の車輪の制動力の差を審査時車両状態における当該車軸の軸重で除した値が0.78N/kg以下」と書いています。片方の制動力に対する割合として計算すると、実際よりずっと厳しい数字が出ます。
雨の日に車検を受けると、ブレーキの基準は変わりますか
審査事務規程 9-3 には「降雨等の天候条件によりブレーキ・テスタのローラが濡れている場合には3.92N/kg以上(kgf表記では40%以上)」という読み替えがあります。細目告示 第93条・第171条には「降雨」「濡れ」「天候」がいずれも0件で、この読み替えは規程だけが持っています。ただし該当するかどうかの判断基準は条文に書かれていないので、当日の運用によります。
警告灯が点いていると制動力の検査はどうなりますか
制動力を測る前提である「審査時車両状態」の要件②に、制動装置(BRAKE)とアンチロックブレーキシステム(ABS)のテルテールが継続して点灯・点滅していないことが入っています。列挙されている5つのテルテールのうち2つがブレーキ関係です。エンジン始動時の自己診断による点灯・点滅が明らかなものは該当しません。
まとめ
- 保安基準第12条(521文字)に「制動力」という語が0件。数字は告示に委任されている
- 審査事務規程の「乗用車の制動装置」(7-16/8-16・28,885文字)にも数値が0件。9-3へ飛ばしている
- 数字があるのは細目告示第93条/第171条の第7項と審査事務規程 9-3の2か所だけ。第7項どうしの違いは参照条番号1か所のみ
- 50%・20%の分母は審査時車両状態における自動車の重量。車両総重量が分母になるのは最高速度80km/h未満の車だけ
- 左右差8%の分母は当該車軸の軸重。もう一方の制動力ではない
- ローラが濡れているときの40%は、審査事務規程にしか書かれていない(告示は0件)
- 審査時車両状態は燃料が全量でなくてよく、BRAKE/ABSのテルテールが消えていること、応急用スペアタイヤでないことが要件
- 第4章で制動装置は「視認等で代替できる」組に入っていない。継続検査の節に「ブレーキ・テスタ」の記載はなく、新規検査の節を指している
基準値を並べるだけの記事にするつもりが、いちばん書くことが多かったのは分母でした。50%という数え方は割合なので、車が重ければ必要な絶対値も上がります。2,575kgで12,617.5N、軽自動車なら半分以下。同じ「50%以上」でも、車によって要求されている力は全然違う。こう書くと当たり前なのですが、%だけを覚えていると見えなくなる部分だと思います。
最後に一点だけ。開いたのは2026年9月11日に各サイトへ置かれていた版で、告示も規程も改正が入ります。それに、当日に合否を出すのは検査コースの機械と検査官であって、私がここで数えた文字数や引用ではありません。ブレーキに何か手を入れるつもりなら、先に整備工場へ相談してください。
この記事で参照した原文
- 審査事務規程 第9章 テスタ等による機能維持確認 … 9-3 制動装置の性能及び制動能力(ブレーキ・テスタ)
- 審査事務規程 7-16、8-16 乗用車の制動装置 … 数値が0件であることの確認用
- 審査事務規程 第4章 自動車の検査等に係る審査の実施方法 … 4-7-1-1(3)の器具の表/4-7-2 総合判定
- 審査事務規程 第1章 総則 … 「審査時車両状態」「積車状態」の定義
- 保安基準の細目を定める告示 第93条(制動装置) … 第7項(新規検査等)
- 保安基準の細目を定める告示 第171条(制動装置) … 第7項(使用の過程)
- 道路運送車両の保安基準(e-Gov法令検索) … 第12条(制動装置)/第1条第6号(空車状態)
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