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ウォッシャー液の「−60℃」は、タンクの中の数字ではなかった|17製品の希釈表を数えた

夜の都心をフロントガラス越しに見た運転席からの視界。ウォッシャー液は2倍に薄めると原液の33.3〜41.1%しか残らない Car|車
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解氷スプレーの記事で、泊まりで行くのは群馬・新潟・福島・長野あたりで、そういう場所に泊まれば翌朝はほぼ確実に凍る、と書きました。あのときは缶のほうの話だけをして、液のほうには触れていません。

液のほうは、商品名からして分かりやすい。「解氷 スーパーウォッシャー液(ー60℃)」みたいに、凍らない温度が名前に入っています。

ところが製品ページを開くと、その数字の下に希釈割合の表があって、−60℃はその表の一番上の行でしかありませんでした。

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表の一番上の行が、商品名になっている

古河薬品工業(KYK)の「解氷 スーパーウォッシャー液(ー60℃)」の製品ページに、こう書いてあります。

希釈割合 凍結温度
原液1に対して、清水0 −60℃
原液1に対して、清水1 −21℃

出典: 古河薬品工業「解氷 スーパーウォッシャー液(ー60℃)」(2026年10月時点)

商品名に入っている−60℃は、清水を1滴も入れなかったときの値です。半分だけ水で割ると−21℃になる。

同じページの使用方法には、こう書かれています。

①希釈割合を参考に車の使用地域の気温に合わせて、本品を清水(水道水)で希釈しタンクに注入してください。

薄めるな、とは書いていません。気温に合わせろ、と書いてあります。 つまり看板の−60℃は、メーカーの言うとおりに使うと、使う人のほうから手放すことになる数字です。

製品ページの希釈割合の欄は、この2行で終わりです。清水2の行も、清水3の行もありません。

ついでに言うと、この使用方法は全部で4項目あって、残りの3つもあまり知られていない気がします。タンクに入れるときに塵や埃を入れるとノズルが詰まること。噴射するときは内外気の切り替えを内気循環にすること。そして乾いたガラスに1回目を噴いて白くなっても、続けて噴けば消えること。

2つめは地味に効きます。ウォッシャーを使う前に内気循環、という手順をメーカー自身が書いています。

理由はページに書かれていないので、ここでは推測しません。ただ、後ろで出てくるソフト99の製品は成分にメタノール40%と明記していて、噴いたものが外気導入口のすぐ前を通るというのは、構造としてはそのとおりです。

14製品ぶん数えた。半分に薄めても、半分にはならない

1製品だけだと、たまたまかもしれません。同じメーカーのウインド関連の製品ページを25本取得して、希釈割合が載っている22本を全部拾いました。同じ製品の容量違い・品番違いが混ざっているので、それをまとめると17製品になります。

そのうち、原液と2倍希釈(清水1)の両方を載せているのが14製品です。

製品 原液 2倍(清水1) 3倍(清水2) 2倍で残る割合
解氷 スーパーウォッシャー液 −60℃ −21℃ — 35.0%
解氷・撥水 ウォッシャー液 −60℃ −21℃ — 35.0%
強力解氷液 スーパーラッセル −56℃ −23℃ −12℃ 41.1%
プロタイプ 冬期(寒冷地)用 −50℃ −18℃ −10℃ 36.0%
寒冷地用 油膜取りスーパー −40℃ −15℃ −9℃ 37.5%
寒冷地用 ウインドウォッシャー液 −40℃ −15℃ — 37.5%
スキット −40℃ −15℃ −9℃ 37.5%
プロタイプ 撥水 −35℃ −12℃ −7℃ 34.3%
オールシーズン −35℃ −12℃ −7℃ 34.3%
撥水ウォッシャー液 パウチ −30℃ −11℃ — 36.7%
プロタイプ スタンダード −22℃ −9℃ −5℃ 40.9%
強力油膜取りスーパー −20℃ −7℃ −4℃ 35.0%
虫取りスーパー −20℃ −7℃ — 35.0%
ウインドウォッシャー液 EX −6℃ −2℃ — 33.3%

出典: 古河薬品工業 製品情報(ウインド関連) の各製品ページ記載値(2026年10月時点)。割合はこちらで計算したもの

14製品すべてが33.3%〜41.1%に収まりました。 中央値は35.5%、平均は36.4%です。

半分に薄めたら半分、つまり−60℃なら−30℃になるという直感は、40製品ぶんどころか1製品も当たっていません。 落ちるのは半分ではなく、おおよそ3分の1まで。

上がり幅で見ると、いちばん小さいのがEXの4℃、いちばん大きいのが解氷−60℃の39℃です。もとの数字が大きい製品ほど、薄めたときの損も大きい。

ひとつ気になるのは、なぜ3分の1前後に落ち着くのかを、こちらでは説明できないことです。濃度と組成がどこにも公開されていないので、「そうなっている」以上のことが書けません。

3倍まで行くと、8製品が20.0〜22.7%に収まる

清水2(=3倍希釈)まで載せている製品が8つあります。こちらは帯がもっと狭くなりました。

製品 原液 3倍(清水2) 残る割合
強力解氷液 スーパーラッセル −56℃ −12℃ 21.4%
プロタイプ 冬期(寒冷地)用 −50℃ −10℃ 20.0%
寒冷地用 油膜取りスーパー −40℃ −9℃ 22.5%
スキット −40℃ −9℃ 22.5%
プロタイプ 撥水 −35℃ −7℃ 20.0%
オールシーズン −35℃ −7℃ 20.0%
プロタイプ スタンダード −22℃ −5℃ 22.7%
強力油膜取りスーパー −20℃ −4℃ 20.0%

8製品すべてが20.0%〜22.7%。 中央値20.7%で、幅は2.7ポイントしかありません。

2倍で3分の1、3倍で5分の1。そう覚えておくと、ボトルの表を見なくても見当がつきます。

ただし、数え直したときに1つだけ帯から外れるものが出ました。「ウインドウォッシャー液 スタンダード」だけ書き方が違っていて、清水0の行がありません。あるのは「通常は原液1に対して清水2(−1℃)」と「汚れのひどい時及び冬期は原液使用(−6℃)」の2行です。

この2つで計算すると16.7%。上の8製品の帯(20.0〜22.7%)から外れます。

もっとも、元の数字が6℃と1℃なので、1℃刻みで丸められているぶんの影響が大きい。外れている、とだけ書いて、理由の説明はしません。

ただしこれはKYKの表から出した数字であって、全メーカーに当てはまるという保証はありません。次の節で1社だけ別を見ます。

メーカーを変えても、帯は動かなかった

ソフト99の「オールシーズンガラコウォッシャー」の公式ショップのページに、同じ形式の記載があります。

使い方 凍結温度 原液に対して残る割合
原液 −40℃ —
2倍希釈 −15℃ 37.5%
3倍希釈 −9℃ 22.5%

出典: ソフト99公式オンラインショップ「オールシーズンガラコウォッシャー パウチパック2L」(2026年10月時点)

37.5%と22.5%。KYKの14製品が作る帯(33.3〜41.1%)と8製品の帯(20.0〜22.7%)に、そのまま収まります。

このページには成分も書かれていて、「非イオン系界面活性剤、シリコーン、メタノール(40%)、精製水(純水)」。凍らせない役をしているのはメタノールです。

もうひとつ、同じページにこういう記載があります。「水で3倍まで薄めて使用しても撥水効果は低下しません」。

撥水は落ちない。凍結温度は落ちる。 同じ希釈で、落ちるものと落ちないものが分かれているわけです。ここを読み飛ばすと、「3倍まで薄めてOK」とだけ受け取ることになります。

何倍まで薄めてよいかは、製品ごとに7通りに分かれていた

表をもうひとつ別の見方で数えてみました。その製品が載せている、いちばん薄い行です。

いちばん薄い行 製品数 例
清水1(2倍まで) 5 解氷 スーパーウォッシャー液、EX、虫取りスーパー
清水2(3倍まで) 6 オールシーズン、スキット、プロタイプ撥水
清水3(4倍まで) 1 強力油膜取りスーパー
清水4(5倍まで) 2 プロタイプ 冬期(寒冷地)用、プロタイプ 油膜取り配合
清水7(8倍まで) 1 強力油膜取り ビューティーアップ

いちばん濃いままで終わるのが清水1、いちばん薄いところまで書いてあるのが清水7。同じ「ウォッシャー液」という棚の中で、想定されている薄め方が8倍も違います。

そして−60℃の2製品は、どちらも清水1で表が終わっています。 3倍の行がない。メーカーが3倍にすることを想定していないのか、単に載せていないだけなのかは、ページからは分かりません。

細かいところでひとつ。プロタイプ 冬期(寒冷地)用だけ、清水3を飛ばして清水4を載せています(清水0・1・2・4)。なぜ3が無いのかは書かれていません。こういう抜けがあるので、表は目で眺めず、行ごとに拾ったほうがいいです。

原液の値を、どこにも載せていない製品が2つある

もっと厄介なのがこれでした。17製品のうち2つは、原液の凍結温度がページのどこにも書かれていません。

  • プロタイプ 油膜取り配合 … 載っているのは「清水4(−2℃)」の1行だけ
  • 強力油膜取り ビューティーアップ … 載っているのは「清水7(−2℃)」の1行だけ

どちらも油膜取り系で、冬用として売られているものではありません。それでも、薄めずに使ったら何℃まで持つのかを知る手段がページ上にない、というのは変な感じがします。

ここから逆算したくなりますが、やめました。上で出した33〜41%や20〜23%は薄めた側の割合であって、逆向きに掛けて原液を当てにいくと、丸めのぶんが増幅されます。書いていないものは、書いていないままにしておきます。

「ウォッシャー液」と書いてあっても、原液で−6℃のものがある

寒冷地用ではない製品も数えました。そうしたら、こういうのが出てきます。

スタンダードのほうは、メーカーが冬の使い方として「原液で使え」と書いていて、それでも−6℃です。

東京の1月の日最低気温は平年値で1.2℃なので、都内で乗るぶんには−1℃でも足りる日が多い。ただし平年値は平均なので、冷え込んだ朝に足りるかは別の話になります。

「ウォッシャー液」という名前は、凍結温度について何も約束していません。約束しているのは、ボトルに書いてある数字のほうです。

気温の側と、1回だけ並べてみる

行き先の気温は、スタッドレスの記事で気象庁の平年値を引いたときに8地点ぶん出しています。日最低気温の平年値(1991〜2020年)でいうと、軽井沢の1月が−8.2℃、日光が−7.9℃、東京が1.2℃。

この−8.2℃に、上の表を当ててみます。

  • 3倍希釈でしのげるのは、3倍の値を載せている8製品のうち4製品。半分は届きません
  • 2倍希釈なら14製品中11製品が下回ります
  • 軽井沢の観測史上最低は−21.0℃(1936年3月1日)。これを2倍希釈でしのげるのは14製品中3製品、3倍希釈では8製品中0製品です

出典: 気象庁「過去の気象データ検索 平年値(年・月ごとの値)」軽井沢(2026年9月時点)

ついでに気づいたことをひとつ。−60℃の製品を半分に薄めた値(−21℃)が、軽井沢の観測史上最低(−21.0℃)とほぼ同じ線です。偶然ですが、覚えやすい。

行き先の気温のほうは、軽油の号数の記事で8地点ぶんの表にしてあります。同じ表がそのまま使えるので、そちらを見てください。

表のどこにも無いのは、「継ぎ足したとき」

ここまで数えてきて、22ページ全部を見ても1行も見つからなかったものがあります。

タンクにすでに入っている液に、別の液を足したときの凍結温度です。

メーカーの表は全部「原液1に対して清水N」という形で、相手は清水(水道水)だと決まっています。相手が夏に入れた液だったときの行は、どこにもありません。

そして現実にやるのは、たいてい継ぎ足しのほうです。減った分を足す。

表に照らして言えるのは、「表の値を当てにするなら、相手は清水でなければならない」というところまでです。継ぎ足したあとが何℃になるかは、こちらでは計算できません。

行き先の気温に対して足りていないと分かったとき、選べるのは濃いものを使うか、原液のまま使うかになります。

寒冷地用ウインドウォッシャー液(原液タイプ)

原液のまま使うなら、ボトルの表の一番上の行がそのまま効きます。量は減りますが、数えた14製品のうち、原液の値だけなら全部が−6℃より下です。

解氷タイプのウォッシャー液(−60℃クラス)

どちらも、特定の銘柄を勧めているわけではありません。ボトルの表を見て、行き先の気温と比べるという使い方ができるもの、という括りです。

車検の側で何が要求されているかは、別に書いた

ウォッシャーは「あれば便利な装備」ではなく、保安基準で備えることを求められている装置です。そちらの条文の話は、ワイパーの記事に書きました。

ひとつだけ引いておくと、技術基準の別添84は「低温用洗浄液」という語をわざわざ定義していて、メチルアルコール、イソプロピルアルコール又はエチレングリコール等の水溶液のことだと書いています。つまり条文の側も、冬に別の液があることを知っている。

そして、いつから冬の装備に替えるのかという時期の話は、スタッドレスの記事のほうが本体です。

この記事で確かめていないこと

数えられたのは製品ページに書いてある値だけです。確かめていないものを並べておきます。

1. タンクに残った液に継ぎ足したときの凍結温度。メーカーの表に行が無いので計算していません

2. 凍結防止の添加剤。効果の根拠になる資料を持っていないので、勧めても否定してもいません

3. 「何℃になったら噴射できなくなるか」。表の数字は凍結温度で、ノズル・ホース・タンクのどこが先に詰まるかは別の話です

4. 製品の実測値。書いてあるのはメーカーの公称値です

5. 見たのは2社だけ(KYKとソフト99)。業界全体の話にはできません

6. メタノールの取り扱いや消防法上の区分。成分表記は確認しましたが、区分表示は製品ページで確認できていません

7. 銘柄のおすすめ順位。比較サイトがやっていることを繰り返す意味がないので、やっていません

よくある質問

希釈しないとどうなりますか

凍結温度の面では、ボトルの表の一番上の行がそのまま効きます。数えた14製品では、原液の値は−6℃から−60℃でした。デメリットとして書けるのは、同じ量で作れるウォッシャー液が減ることくらいです。ソフト99は「3倍まで薄めても撥水効果は低下しない」と書いていて、最大6Lとして使えるとしています。つまり薄める理由は、量とコストのほうにあります。

水道水と精製水、どちらで薄めるのですか

KYKの使用方法には「清水(水道水)」と書かれています。精製水を使えという記載は、見た22ページのどこにもありませんでした。

凍ってしまったら、どうすればいいですか

こちらでは答えを持っていません。 2社の製品ページに、凍ったあとの対処の記載を見つけられませんでした。言えるのは、その状態でウォッシャーを操作してもポンプが回るだけだということと、次に入れるときは表の値と行き先の気温を見比べたほうがいい、というところまでです。

夏用と冬用は、入れ替えるのですか

メーカーの希釈表が前提にしているのは「原液+清水」なので、表の値を当てにするなら入れ替えるしかありません。 ただし「入れ替えなければならない」と書いている記載は見つけていません。表の読み方としてそうなる、という話です。

東京で乗るだけなら、何を入れればいいですか

東京の1月の日最低気温は平年値で1.2℃です。氷点下にならない前提なら、数えた製品の希釈後の値でもほぼ足ります。ただし平年値は30年の平均で、実際の朝はこれより下に振れます。遠出をするなら、行き先の数字で見てください。

まとめ

  • ボトルの「−60℃」は原液の値。メーカー自身が「気温に合わせて希釈しろ」と書いている
  • KYKの製品ページ25本(希釈表があるのは22本・17製品)を数えると、原液と2倍希釈の両方を載せているのが14製品。2倍で残るのは原液の33.3〜41.1%(中央値35.5%)
  • 3倍まで載せている8製品は、20.0〜22.7%という狭い帯に全部入る(書式の違う1製品だけ16.7%で外れる)
  • いちばん薄い行は清水1〜清水7まで、製品で7通りに分かれる。原液の値を載せていない製品も2つある
  • ソフト99(別メーカー)も2倍37.5%・3倍22.5%で、同じ帯
  • 「ウォッシャー液」という名前でも、原液で−6℃の製品がある
  • 軽井沢の1月(−8.2℃)を3倍希釈でしのげるのは8製品中4製品。観測史上最低の−21.0℃は、3倍希釈では0製品
  • 継ぎ足したときの表は、22ページのどこにも無い

2倍で3分の1、3倍で5分の1。この2つだけ覚えておけば、ボトルの表を読まなくても、だいたいの見当はつきます。

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