新車から3年目の初回車検を、ヤナセで受けたときの請求書は2行しかありませんでした。MB2年点検A 作業費 47,916円と、車検費用 79,750円。合計 127,666円です。その金額の中に、エンジンオイル、オイルフィルター、ワイパー、ダストフィルター、エアクリーナーエレメント、スパークプラグの交換が無料で含まれていました。
つまり私の車検でも、ワイパーは換わっています。なのに請求書の2行のどちらにも、ワイパーという文字はありません。
では検査の側は、ワイパーの何を見ているのか。保安基準から審査事務規程まで7つの文書を開いて全文を数えたら、そこに「ゴム」という語が1件も無いことが分かりました。車は2台しか乗っていません。AMG C43 が2019年3月から2023年8月まで、そのあとが G400d です。保安基準を装置ごとに開いて確かめる記事は、これで28本目になります。
保安基準第45条は、ワイパーだけの話をしていない
出発点は道路運送車両の保安基準です。e-Gov法令検索からXMLを取って、第45条だけを抜き出しました。見出しは「窓ふき器等」。ワイパーという言葉は法令には出てきません。
自動車(二輪自動車、側車付二輪自動車、カタピラ及びそりを有する軽自動車並びに被牽けん引自動車を除く。)の前面ガラスには、前面ガラスの直前の視野を確保できるものとして、視野の確保に係る性能等に関し告示で定める基準に適合する自動式の窓ふき器を備えなければならない。
道路運送車両の保安基準 第45条(窓ふき器等)第1項
第2項はウォッシャーとデフロスタの話で、こちらのほうが長いくらいです。第1項と第2項を合わせて、見出しと条名を含めて全文417文字。数字らしい語は第2項の「最高速度二十キロメートル毎時未満の自動車」だけでした。
数えた結果を並べるとこうなります。
| 語 | 第45条での件数 |
|---|---|
| 前面ガラス | 5 |
| 視野 | 4 |
| 洗浄液 | 1 |
| ゴム | 0 |
| ブレード | 0 |
| 後面 | 0 |
「前面ガラス」が5回出てくるのに、「後面」は1回も出てきません。リアワイパーの話は後でします。
気になる点をひとつ。保安基準は「カタピラ及びそりを有する軽自動車」を除いているのに、後で出てくる審査事務規程 7-109-1 の同じ文では、その除外がありません。二輪と側車付二輪と被牽引自動車の3つだけです。なぜ揃っていないのかは分かりませんでした。乗用車に乗っている人には関係のない差ですが、条文どうしが一字一句同じではないという例として書いておきます。
「ゴム」は、7つの文書のどこにもなかった
保安基準は「告示で定める基準」と投げているので、告示のほうを開きます。国土交通省の条文一覧で保安基準第45条の行を見ると、細目告示は第69条・第147条・第225条の3本、それに適用関係告示第53条と別添84が並んでいました。
細目告示に3本あるのは、章の中に節が3つあるからです。この構造は最低地上高の回で追いかけたものと同じでした。
そこに審査事務規程の 7-109 と 8-109 を加えて、全部の文書で語を数えました。
| 文書 | 位置づけ | 字数 | ゴム | ブレード |
|---|---|---|---|---|
| 保安基準 第45条 | 法令の本体 | 417 | 0 | 0 |
| 細目告示 第69条 | 第1節(型式指定を受けた新車) | 905 | 0 | 0 |
| 細目告示 第147条 | 第2節(新規検査等) | 795 | 0 | 1 |
| 細目告示 第225条 | 第3節(使用の過程=車検) | 795 | 0 | 1 |
| 別添84 | 乗用車の技術基準 | 10,758 | 0 | 8 |
| 審査事務規程 7-109 | 新規検査等 | 5,539 | 0 | 7 |
| 審査事務規程 8-109 | 使用過程車 | 1,294 | 0 | 1 |
合わせて20,503文字。そのすべてを通して、「ゴム」は0件です。
かわりに条文が使っているのは「ブレード」でした。定義は別添84の用語の節にあります。
「ブレード」とは、窓ふき器のうち窓ガラスの外表面に接触し、これを払しょくする部分をいう。
保安基準の細目を定める告示 別添84 2.3.
ガラスに触れて拭く部分。それを何と呼ぶかではなく、どういう働きをする部分かで定義しています。だから替えゴムだけ交換しようが、ブレードごと替えようが、条文の側は区別していません。
言葉の使い分けが見えるのは、以前この2つを調べたときでした。Gクラスのメンテナンス項目のリストに並んでいるのは「ワイパーブレード」で、これは条文と同じ語。一方、カーリースのプランで「コミコミ」の中身として挙げられていたのは「ワイパーゴム交換」でした。整備の側は条文の語を使い、売る側は読者の語を使っているという並びになっています。
ちなみに上位に出てくる記事7本をダウンロードして同じ数え方をしたら、「ゴム」は合計203件ありました。1本だけで100件使っている記事もあります。誰も間違ってはいないのですが、条文の語ではない、というだけの話です。
ワイパーブレード(ブレードごと交換するタイプ)
条文が名指ししているのはブレードのほうで、替えゴムという単位は出てきません。ゴムだけ替えると安く済みますが、アームの押し付け力やブレードの骨がへたっている場合は、新しいゴムを入れても拭き残しが残ります。どちらが正解ということはなく、条文が見るのは払しょくの結果だけです。車種ごとに長さと取付形状が違うので、買う前に自分の車の適合を確認してください。
※ 部品を替えたこと自体が合否を決めるわけではありません。拭けているかどうかを見るのは検査を行う側です(2026年9月時点)。
数字は、新車を出すときの試験にしかない
じゃあ「ちゃんと拭けている」の線引きはどこにあるのか。数字を探して細目告示第69条を開くと、こう書いてありました。
乗用車については、別添84「乗用車等の窓ふき器及び洗浄液噴射装置の技術基準」に定める基準とする。丸投げです。第69条は905文字ありますが、「別添」が4回出てくるだけで、自前の数値は持っていません。
その別添84は12ページ・10,758文字あって、ここに初めて数字が出てきます。
| 項目 | 基準 |
|---|---|
| 払しょく面積 | A領域の98%以上、かつB領域の80%以上 |
| 洗浄能力 | A領域の60%以上を洗浄・払しょくできる洗浄液を供給できること |
| 最大払しょく回数 | 45サイクル/分以上 |
| 最小払しょく回数 | 10サイクル/分以上 |
| 最大と最小の差 | 15サイクル/分以上 |
「サイクル」は往復動作1回のこと。試験は止まった車でやるのではなく、80%V、つまり最高速度に0.8を掛けた速さで走っている状態を再現して行います。A領域とB領域は、運転者の目の位置から作図して決める領域です。
ここまで細かく決めておきながら、この98%も45サイクルも、車検の側の条文には1つも出てきません。新車を世に出すときの試験であって、3年後・5年後に検査場でやることではないからです。
なぜ98で、なぜ45なのか。審議の資料までは辿れませんでした。数字の出どころが分からないまま引用するのは避けたいので、ここでは「別添84にそう書いてある」までにとどめます。
車検の条文と新規検査の条文を、差分にかけてみた
次は車検の側です。細目告示の第3節、第225条を開きます。読んでみると、第2節の第147条とそっくりでした。
どちらも795文字。念のためPDFから本文を取り出して、Pythonの差分計算にかけました。違っていたのは2か所だけで、どちらも条番号です。ヘッダーの「第147条」が「第225条」になり、本文冒頭の条名が同じように入れ替わる。それ以外は一字一句同じでした。
制動灯を調べたときも告示のレベルではほとんど差がありませんでしたが、あのときは4か所の差がありました。今回はゼロです。新規検査で見るものと車検で見るものが、告示の文言では完全に一致しています。
その第225条が、落ちる条件を書いている部分がここです。
この場合において、窓ふき器のブレードであって、老化等により著しく機能が低下しているものは、この基準に適合しないものとする。
保安基準の細目を定める告示 第225条 第1項
「老化等により著しく機能が低下している」。ひび割れているか、何年使ったか、という書き方ではありません。結果として拭けているかどうかだけを見ています。
なお審査事務規程のほうは、同じ箇所を「老化又は損傷により」と書いています。告示は「老化等により」で、規程だけが「又は損傷」に書き換えている。従前規定に残っている6か所はすべて「老化等により」なので、書き換わったのは現行部分だけです。意味が変わるほどの差ではないと思いますが、片方を読んで片方を読まないと気づけない箇所ではありました。
27本読んできて、初めて第8章が何も落としていなかった
審査事務規程には、新規検査等を扱う第7章と、改造等による変更のない使用過程車を扱う第8章があります。ふつうの車検で当たるのは第8章です。
この連載でやってきたのは、7-xx と 8-xx を並べて「8章で消えている項目」を数える作業でした。制動灯では後方100mも15Wも2,100mmも8章から消え、最低地上高にいたっては 8-3 が「[審査事項なし]」の一語だけでした。
今回も同じ手順で列を分けて数えました。結果はこうです。
| 語 | 7-109(新規検査等) | 8-109(使用過程車) |
|---|---|---|
| 字数 | 5,539 | 1,294 |
| ブレード | 7 | 1 |
| 前面ガラス | 30 | 11 |
| 洗浄液 | 25 | 6 |
| デフロスタ | 12 | 5 |
| 自動式 | 8 | 2 |
| 同時に作動 | 3 | 1 |
| 指定自動車等 | 8 | 0 |
| 従前規定 | 13 | 0 |
| ゴム | 0 | 0 |
字数は4分の1以下になっていますが、これは従前規定6本ぶんが第7章側にしか無いからです。中身を突き合わせると、8-109-1(装備要件)と 8-109-2(性能要件)は、7-109 とほぼ同じ文でした。自動式であること、左右にある場合は同時に作動すること、ブレードが著しく機能低下していないこと、洗浄液が払しょく範囲内に当たること、デフロスタが速やかに曇りを晴らすこと。全部そのまま残っています。
消えているのは、「指定自動車等に備えられているものと同一の構造を有し、かつ、同一の位置に備えられた」という限定のほうでした。7-109-2(2) はこう書きます。
指定自動車等に備えられている窓ふき器と同一の構造を有し、かつ、同一の位置に備えられた窓ふき器であって、その機能を損なうおそれのある損傷のないものは、(1)の基準に適合するものとする。
審査事務規程 7-109-2(2)
対応する 8-109-2(2) は、こうなります。
窓ふき器の機能を損なうおそれのある損傷のないものは、(1)の基準に適合するものとする。
審査事務規程 8-109-2(2)
主語が短くなっただけに見えますが、意味は小さくありません。7章では「純正と同じ構造・同じ位置なら適合とみなす」だったものが、8章では「損傷が無ければ適合とみなす」になっています。純正かどうかを問うていない。社外品のブレードに替えていても、条文の文言はそれを理由に落としません。
落ちているのが基準ではなく、みなし規定の限定のほうだけ。27本読んできて、第8章が審査項目そのものを1つも落としていない節に当たったのは初めてでした。ちなみに 8-109-3 は「欠番」、8-109-4 は「7-109-4 の規定を適用する。」の一文だけです。
タイヤの溝のように第8章にも数値が残る装置もあるので、8章が薄いか厚いかは装置ごとにばらばらだ、というのが28本読んだ時点の実感です。
自家用乗用車の法定点検に、ワイパーは入っていない
ここまでは「検査」の話でした。もうひとつ、整備工場がやる「点検」という別の制度があります。これがワイパーの話をややこしくしている正体でした。
自動車点検基準という省令に、点検項目の表が並んでいます。乗用車に関係するのは次の2つです。
| 表 | 何の基準か | 誰がやるか | 字数 | ワイパー・窓拭き器 |
|---|---|---|---|---|
| 別表第2 | 自家用乗用自動車等の日常点検基準 | 運転者 | 430 | あり |
| 別表第6 | 自家用乗用自動車等の定期点検基準(1年ごと/2年ごと) | 点検を行う者 | 1,714 | なし |
別表第6が、いわゆる12か月点検と24か月点検です。1,714文字を機械で数えて、「ワイパー」「窓拭き器」「洗浄液」「デフロスタ」はいずれも0件でした。ついでに「警音器」も0件です。かじ取り装置から車枠及び車体まで並んでいる中に、窓を拭く装置は入っていません。
ではどこにあるのかというと、別表第2、つまり日常点検のほうでした。
六 ウインド・ウォッシャ及びワイパー
1 ウインド・ウォッシャの液量が適当であり、かつ、噴射状態が不良でないこと。
2 ワイパーの払拭状態が不良でないこと。自動車点検基準 別表第2(自家用乗用自動車等の日常点検基準)
430文字しかない日常点検基準の、7項目のうちの1つ。自家用乗用車のワイパーは、制度としては「運転者が自分で見るもの」に分類されています。
さらに調べると、事業用自動車の別表第3と、自家用貨物自動車の別表第5には、定期点検の項目として「警音器、窓拭き器、洗浄液噴射装置、デフロスタ及び施錠装置」が並んでいました。点検内容は「作用」の一語です。営業車とトラックは法定の定期点検で見るのに、自家用乗用車は見ない。逆のような気もしますが、条文はそうなっています。
整理すると、乗用車のワイパーは3つの層に分かれて置かれています。
| 層 | 根拠 | ワイパーの扱い |
|---|---|---|
| 検査(車検場で見る) | 保安基準第45条 → 細目告示第225条 → 審査事務規程8-109 | 見る。ブレードが著しく機能低下していないか |
| 定期点検(12か月・24か月) | 自動車点検基準 別表第6 | 項目に無い |
| 日常点検(運転者) | 自動車点検基準 別表第2 | ある。払拭状態と、ウォッシャの液量・噴射状態 |
見積書に「ワイパーゴム交換」が並ぶのは、少なくとも自家用乗用車では法定点検の項目だからではないことになります。要るかどうかを相談できる部分ですし、私の初回車検のように、支払った金額の中に含まれて無料で換わることもあります。ヤナセの請求書に「ワイパー」という行が立っていなかったのは、そういうことだったのだろうなと思っています。
なお検査場では、検査担当者の指示でワイパーを動かすことがあります。第4章にこう書いてありました。「検査担当者からの指示により、警音器、方向指示器等灯火器又は窓ふき器等を作動させること。また、指示がある場合以外はこれら装置を作動させないこと。」測定機に載せるわけではなく、目で見て判断する項目です。
リアワイパーの規定は、探しても出てこない
「リアワイパー 車検」で調べる人がとても多いのですが、答えは条文の側にあります。
保安基準第45条は「前面ガラスには」と書いていて、後面ガラスについては何も書いていません。「後面」は0件。審査事務規程 7-109・8-109 でも「後面」「リア」はどちらも0件でした。後ろのワイパーを備えろという規定も、備えたものの性能を決めた規定も、この条には存在しません。
だからリアワイパーのゴムが切れていても、第45条を根拠に落とすことはできない、というのが条文を読んだ限りの結論です。
ただし、ここから先は書きません。リアワイパーを外したときにアームの穴やスイッチをどう扱うか、という話は別の条(外装や突起物)に関わってきますし、最後は現場の判断になります。私が確かめられたのは「第45条には後面の規定が無い」ところまでです。そこを超えて「外しても通る」と言い切ることはできません。
ウォッシャーとデフロスタが、同じ条文に同居している
第45条第2項は、ワイパーを備えなければならない車には洗浄液噴射装置とデフロスタも備えろと書いています。ウォッシャーが装備要件だというのは、意外と知られていない気がします。
8-109-2(3) が置いている条件は次の3つです。
- 洗浄液噴射装置は、前面ガラスの外側が汚染された場合に、直前の視界を確保するのに十分な洗浄液を噴射すること
- 乗車定員10人以下の乗用車のデフロスタは、水滴等で著しく曇った場合に速やかに視野を確保する性能があること
- 走行中の振動、衝撃等により損傷を生じ、又は作動するものでないこと
そして洗浄液のほうには、みなし規定が付いています。「洗浄液を噴射させた場合に洗浄液が窓ふき器の払しょく範囲内にあたるものは、この基準に適合するものとする。」量ではなく、当たる場所を見ているわけです。ノズルの向きがずれてボンネットや屋根に飛んでいる状態だと、液が満タンでもこの文には当たりません。
汚れと曇りは別物として扱われているのも読み取れます。外側が汚れたらウォッシャー、内側が曇ったらデフロスタ。以前フォグランプの記事で、霧の日は雨と違う細かい水滴が付くのでワイパーが効きにくい、と書きました。あれは外側の話で、デフロスタが受け持つ内側の曇りとはまた別の現象です。
冬に関係するのはウォッシャー液のほうです。別添84は用語の節で「低温用洗浄液」をわざわざ定義していて、メチルアルコール、イソプロピルアルコール又はエチレングリコール等の水溶液のことだと書いています。告示が種類まで名指ししているということは、凍る前提で作られている装置だということです。水を入れていて凍らせると、噴射しない=条文の言う「十分な洗浄液を噴射する」に当たらない状態になります。
ウォッシャー液(低温用・希釈タイプ)
別添84が用語として定義している「低温用洗浄液」がこれにあたります。原液のまま使うか薄めるかで凍結温度が変わるので、ボトルの表示を見て、走る場所の最低気温に合わせて濃さを決めることになります。強く撥水するタイプはブレードとの相性が出ることがあり、ビビリ音の話も付いて回ります。銘柄までは踏み込まず、こういう区分が別に存在する、というところまでの紹介です。
※ 凍結温度は製品と希釈率によって異なります。表示を確認してください(2026年9月時点)。
昭和35年より前の車は、手で動かすワイパーでもよかった
審査事務規程 7-109 の後半は、ほとんどが従前規定です。製造年で6段階に分かれていました。
| 製作された時期 | そのころの基準 |
|---|---|
| 昭和35年3月31日以前 | 「運転者席の直前の視野を確保できる窓ふき器」。自動式が要るのは乗車定員11人以上だけ |
| 昭和46年12月31日以前 | 自動式が全車に。視野は運転者席の直前 |
| 昭和48年11月30日以前 | 洗浄液噴射装置の装備が加わる |
| 昭和50年3月31日以前 | 洗浄液の性能要件が入る。視野はまだ運転者席の直前 |
| 昭和47年1月1日〜昭和50年3月31日の一部バス | 視野が前面ガラスの直前に変わり、左右同時作動とデフロスタが加わる |
| 平成6年3月31日以前 | 上と同じ内容が一般の車にも |
面白いのは基準の中身より、言葉の変わり方のほうでした。古い規定は「運転者席の直前の視野」と書いていて、新しい規定は「前面ガラスの直前の視野」と書いています。運転している人が見えればよかったものが、ガラス全体の手前を確保する話に置き換わっている。左右のワイパーが同時に作動するという条件が入るのも、同じタイミングです。
そして6本の従前規定すべてに、ブレードの老化の一文が入っていました。昭和35年の規定から現行まで、拭けなくなったブレードは適合しないという判定だけは一度も変わっていません。
もっとも、この表が実際に効く車に乗っている人はほとんどいないはずです。旧車を持っている人以外には関係のない話でした。
よくある質問
ワイパーゴムがひび割れていると車検に通らないのですか
条文には「ひび割れ」という語がありません。判定は「窓ふき器のブレードであって、老化又は損傷により著しく機能が低下しているもの」(審査事務規程 8-109-2(1))で、見ているのは払しょくの結果です。ひび割れていても前面ガラスの直前の視野を確保できていれば、条文の文言では落ちません。逆に見た目がきれいでも拭き残しが出るなら当たります。ただし合否を判断するのは検査を行う側なので、条文がこう書いてある、というところまでの話です(2026年9月時点の版)。
リアワイパーが動かないと車検に通りませんか
保安基準第45条は前面ガラスについてしか書いておらず、「後面」という語は0件です。審査事務規程 7-109・8-109 にも後面ガラスの窓ふき器の規定はありません。第45条を根拠に落とすことはできない、というのが条文を読んだ限りの結論です。取り外したあとの穴やスイッチの扱いは別の話になるので、そこは事前に受ける先へ確認してください。
ウォッシャー液は入っていれば大丈夫ですか
条文が求めているのは量ではなく「前面ガラスの直前の視界を確保するのに十分な洗浄液を噴射する」ことです。みなし規定は「洗浄液が窓ふき器の払しょく範囲内にあたるもの」なので、ノズルの向きがずれて払しょく範囲の外に飛んでいる場合は、液が満タンでもこの文には当たりません。あわせてデフロスタも装備要件に入っています。
12か月点検や24か月点検の項目にワイパーは入っていますか
自家用乗用車の定期点検基準は自動車点検基準の別表第6で、全1,714文字に「ワイパー」「窓拭き器」「洗浄液」「デフロスタ」はいずれもありません。ワイパーが載っているのは別表第2、運転者が行う日常点検の基準のほうです。定期点検の項目として並ぶのは、事業用(別表第3)と自家用貨物(別表第5)になります。
なぜ払しょく面積98%のような数字が車検で出てこないのですか
その数字は別添84「乗用車等の窓ふき器及び洗浄液噴射装置の技術基準」にあるもので、型式指定を受ける新車に当てる第1節(細目告示第69条)が参照しています。車検が当たるのは第3節(第225条)で、こちらは別添を引かず「視認等その他適切な方法により審査」と書いています。数字が新車側にしかないのは、この連載で見てきた装置の多くと同じ構造です。
この記事で参照した原文
- 道路運送車両の保安基準(e-Gov法令検索) … 第45条(窓ふき器等)。全文417文字
- 自動車点検基準(e-Gov法令検索) … 別表第2(日常点検)/別表第3・第5・第6(定期点検)
- 国土交通省 保安基準の細目を定める告示 条文一覧 … 第45条の行が 69/147/225/53/84
- 細目告示 第69条(窓ふき器等) … 第1節。別添84へ丸投げ
- 細目告示 第147条(窓ふき器等) … 第2節(新規検査等)
- 細目告示 第225条(窓ふき器等) … 第3節(使用の過程/継続検査)。第147条と条番号以外は同一
- 細目告示 別添84 乗用車等の窓ふき器及び洗浄液噴射装置の技術基準 … A領域98%/45サイクル毎分/ブレードの定義
- 審査事務規程 7-109、8-109 窓ふき器等 … 第7章と第8章の2段組
- 審査事務規程 第4章 自動車の検査等に係る審査の実施方法 … 受検者が窓ふき器を作動させる場面
※ 条文の引用はいずれも2026年9月13日に取得した版によります。改正で内容が変わることがあるため、実際に受検する際は最新の原文を確認してください。
同じ「見えること」を求めている装置として、後写鏡の条文も開きました。こちらは第8章がごっそり薄くなっていて、窓ふき器とは正反対の結果でした。
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