本業は会社員で、そのかたわら時計の売買(古物商の許可を取っています)とこのサイトをやっています。車は2019年3月から2023年8月までAMG C43、2023年8月からG400dです。
「4年落ちの中古車を買うと1年で経費にできる」。中古車を探しているとよく出てくる話です。実際、Googleで「4年落ち 節税」と打つと、最初に出てくる候補が「ベンツ 4年落ち 節税」でした。
ただ、この話がどの条文から来ているのかを書いている記事は見当たりません。そこで減価償却資産の耐用年数等に関する省令と、国税庁が出している法令解釈通達を落として全文を検索してみました。
結果から書きます。省令の全文50,038字を検索して、「4年落ち」も「初度登録」も「中古車」も0件でした。そして、いちばん効く話は年数のほうではありませんでした。
省令に出てくるのは「中古資産」で、車の話ではない
根拠になっているのは、減価償却資産の耐用年数等に関する省令(昭和40年大蔵省令第15号)の第3条です。e-Gov法令検索で読めます。私が取得した版は令和8年財務省令第29号によるものでした。
第3条の見出しは「中古資産の耐用年数等」。本文は1,923字あります。ここに何が書かれていないかを先に数えました。
| 探した語 | 省令 全文(50,038字) | 第3条(1,923字) | 国税庁の通達 第5節(4,113字) |
|---|---|---|---|
| 初度登録 | 0件 | 0件 | 0件 |
| 4年落ち/年落ち | 0件 | 0件 | 0件 |
| 中古車 | 0件 | 0件 | 0件 |
| 新車 | 0件 | 0件 | 0件 |
| 車検 | 0件 | 0件 | 0件 |
| 自動車 | 14件 | 0件 | 0件 |
条文が扱っているのは「中古資産」であって、車は別表第一の一項目として出てくるだけです。中古車の話として書かれた条文は、どこにもありません。
ついでに、車の法定耐用年数がどこにあるかも見ておきます。別表第一「機械及び装置以外の有形減価償却資産の耐用年数表」の「車両及び運搬具」をたどると、こうなっていました。
| 階層 | 区分 | 年数 |
|---|---|---|
| 前掲のもの以外のもの | 自動車(二輪又は三輪自動車を除く。) | — |
| └ 小型車 | 総排気量が〇・六六リットル以下のもの(=軽自動車) | 4年 |
| └ その他のもの | └ 貨物自動車(ダンプ式) | 4年 |
| └ 貨物自動車(その他) | 5年 | |
| └ 報道通信用のもの | 5年 | |
| └ その他のもの | 6年 |
普通乗用車の「6年」は、「その他のもの」を2回たどった先の、いちばん端っこにある数字でした。名指しされているわけではありません。軽の定義も「軽自動車」ではなく「総排気量が〇・六六リットル以下のもの」です。
少し気になったのは、この表の引き方が直感に反することです。乗用車が「その他のもの」の中に埋まっていて、先に名前が出てくるのは消防車や救急車のほうでした。普通の人が自分で引ける表ではないな、というのが正直な感想です。
簡便法は、実は二番目に出てくる方法だった
第3条第1項の柱書は、こう終わります。「前二条の規定にかかわらず、次に掲げる年数によることができる。」
「によることができる」です。義務ではありません。そのうえで、年数の出し方が2つ並んでいます。
第1号が、使用可能期間の年数を見積もる方法。いわゆる見積法です。
第2号が、よく知られている計算式のほうです。ただし第2号には、見落とされがちな限定が付いています。原文はこうです。
二 次に掲げる資産(別表第一、別表第二、別表第五又は別表第六に掲げる減価償却資産であつて、前号の年数を見積もることが困難なものに限る。)の区分に応じそれぞれ次に定める年数(その年数が二年に満たないときは、これを二年とする。)
「前号の年数を見積もることが困難なものに限る」。つまり簡便法は第1号の代わりであって、最初に出てくる原則ではありません。
では「困難」とは何かというと、国税庁の耐用年数の適用等に関する取扱通達 第5節の1-5-4が定義しています。「その見積りのために必要な資料がないため技術者等が積極的に特別の調査をしなければならないこと又は耐用年数の見積りに多額の費用を要すると認められること」。
中古車で、あと何年使えるかを技術者に調査してもらう人はまずいないでしょうから、実務上はここに当てはまることが多いのだと思います。ただ、条文の順番としては第1号が先に来ている、というのは知っておいていい気がします。
それともうひとつ。「その年数が二年に満たないときは、これを二年とする」という括弧書きは、第2号の中にしかありません。第1号には同じ文言がありません。条文がそうなっている、というところまでです。これがどういう意味を持つのかは私には判断できないので、書かないでおきます。
何年落ちで2年になるのか、全部計算してみた
第2号ロの式は、こうです。
ロ 法定耐用年数の一部を経過した資産 当該資産の法定耐用年数から経過年数を控除した年数に、経過年数の百分の二十に相当する年数を加算した年数
そして第5項が端数の扱いを決めています。「暦に従つて計算し、一年に満たない端数を生じたときは、これを切り捨てる」。
ここで気づいたことがあります。第3条の本文1,923字に「月数」という語は0件でした。実務が月単位で計算するのは、第5項の「暦に従つて計算し」という言葉のほうを根拠にしているわけです。式そのものに月は出てきません。
式を月で実装して、普通乗用車(72ヶ月)と軽自動車(48ヶ月)について境目を全部出しました。
| 法定耐用年数 | 経過期間 | 簡便法で出る年数 |
|---|---|---|
| 普通乗用車 6年 | 1ヶ月以上 | 5年 |
| 1年4ヶ月(16ヶ月)以上 | 4年 | |
| 2年7ヶ月(31ヶ月)以上 | 3年 | |
| 3年10ヶ月(46ヶ月)以上 | 2年 | |
| 軽自動車 4年 | 1ヶ月以上 | 3年 |
| 1年4ヶ月(16ヶ月)以上 | 2年 |
境目は46ヶ月でした。45ヶ月だと計算結果がちょうど36.0ヶ月=3年になって切り捨てが効かず、46ヶ月で35.2ヶ月=2年11.2ヶ月になり、切り捨てて2年になります。1ヶ月違うだけで1年変わります。
「4年落ち」は48ヶ月なので、2ヶ月ぶん余裕を見た言い方ということになります。間違いではなくて、安全側に丸めた表現ですね。この3年10ヶ月という数字自体は、私が調べた範囲でも上位記事のうち4本が書いていました。目新しい話ではありません。
むしろ自分で計算してみて意外だったのは軽自動車のほうで、1年4ヶ月で2年に届きます。法定が4年と短いぶん、簡便法の効き方も早いわけです。
それと、60ヶ月を超えたあとの挙動も計算して初めて腑に落ちました。経過60ヶ月でちょうど24.0ヶ月=2年になり、それ以降は式の答えが2年を下回るので、第2号の「二年に満たないときは、これを二年とする」が効きます。つまり3年10ヶ月を超えたら、5年落ちでも10年落ちでも答えは同じ2年です。
式の解釈が合っているかは、国税庁の設例で検算しました。タックスアンサー No.5404 中古資産の耐用年数に載っている「法定30年・経過10年」の例は22年が答えで、私の実装も22年を返しました。
なお、経過年数を何から数えるのかは条文に書かれていません。通達1-5-5が触れているのは、経過年数が不明なときの話で、「その構造、形式、表示されている製作の時期等を勘案してその経過年数を適正に見積もるものとする」とあるだけです。初度登録という語は省令にも通達にも出てきませんでした。だからといって登録日で数えるのが誤りだとも書かれていないので、ここは断定しません。
いちばん効くのはここ。やり直しが利かない
年数の計算より、こちらのほうがずっと大きい話だと思いました。通達の1-5-1です。
1-5-1 中古資産についての省令第3条第1項第1号に規定する方法(以下1-7-2までにおいて「見積法」という。)又は同項第2号に規定する方法(以下1-5-7までにおいて「簡便法」という。)による耐用年数の算定は、その事業の用に供した事業年度においてすることができるのであるから当該事業年度においてその算定をしなかったときは、その後の事業年度においてはその算定をすることができないことに留意する。
読み下すと、こういうことになります。中古資産を事業に使い始めた、その事業年度。そこで耐用年数を算定しなかったら、翌期以降はもう算定できません。
「去年買った車、やっぱり簡便法にしておけばよかった」が通らない、ということです。買った年に法定耐用年数の6年で償却を始めてしまったら、そのまま6年です。
これは競合の上位7本を実際に落として検索したのですが、1-5-1も「耐通」も「取扱通達」も7本すべてで0件でした。年数の計算式はどこにも載っているのに、一度きりだという話はどこにも出てきません。
「4年落ち」という言い方は、どの車を選ぶかの基準のように聞こえます。ただ通達が期限を切っているのは車選びではなく、買ったあとの最初の決算のほうです。年数の条件を満たした車を買っても、その年度に算定しなければ簡便法は使えません。
「全額落ちる」は法人の話。個人だと前提が変わる
耐用年数が2年になったとして、そこから先は償却方法の話になります。ここで個人と法人が分かれます。
償却方法を自分で選んで届け出なかった場合に適用される方法のことを、法定償却方法といいます。これを決めている条文が、所得税と法人税で別々にあります。
並べてみて、ちょっと笑ってしまいました。見出しがまったく同じ「減価償却資産の法定償却方法」で、条文の組み立ても同じ。違うのは「額」か「率」かの一字だけです。
この一字が効きます。償却率は省令の別表に載っています。
| 別表 | 方法 | 耐用年数2年の償却率 |
|---|---|---|
| 別表第八 | 定額法(平成19年4月1日以後取得) | 〇・五〇〇 |
| 別表第十 | 定率法(平成24年4月1日以後取得) | 一・〇〇〇 |
| 別表第九 | 定率法(平成19年4月1日〜平成24年3月31日取得) | 一・〇〇〇 |
定率法の2年は償却率1.000で、改定償却率と保証率の欄は「―――――」になっていました。これが「1年で落ちる」の正体です。定額法だと0.500なので、同じ耐用年数2年でも2年に分かれます。
つまり「4年落ちで全額」という話は、定率法が前提の法人の話ということになります。個人事業主が同じ動きをするには、償却方法の選定という手続きが別に要ります。
この「個人と法人で前提が違う」という点、上位7本のうち5本は「届出」という語自体は使っていました。ただ所得税法施行令第125条も法人税法施行令第53条も、7本すべてで0件でした。別表第十も0件です。1.000という数字だけが、出どころを示されないまま独り歩きしている状態に見えます。
月割で、端数の向きが逆になる
もうひとつ、計算例を作るときに引っかかったところがあります。期の途中で使い始めた場合の月割です。
法人なら法人税法施行令第59条第1項第1号。償却限度額に、事業の用に供した日から事業年度終了の日までの月数を掛けて、事業年度の月数で割ります。個人なら所得税法施行令第132条第1号イで、その年分の償却費を12で割って、業務の用に供した日から12月31日までの月数を掛けます。
ここで端数の扱いを見比べると、向きが逆になっていました。
| どこの端数か | 条文 | 扱い |
|---|---|---|
| 耐用年数(1年未満) | 耐用年数省令 第3条第5項 | 切り捨てる |
| 月割の月数(1月未満) | 法人税法施行令 第59条第2項 | 1月とする(切り上げ) |
法人税法施行令第59条第2項の原文は「前項第一号の月数は、暦に従つて計算し、一月に満たない端数を生じたときは、これを一月とする」です。耐用年数省令第3条第5項の「暦に従つて計算し」までは同じ言い回しなのに、そのあとが逆になります。
実務的には、決算日の直前に納車された車でも1ヶ月ぶんは取れる、ということになります。逆にいえば決算月に買っても12分の1です。耐用年数が2年になったからといって、買った期に全部が落ちるとは限りません。ここは「4年落ちで全額」という言い方から受ける印象といちばんズレるところだと思いました。
直してから使うと、簡便法が消えることがある
中古車を買って、そのまま乗る人ばかりではありません。整備や架装にお金をかけてから使い始める場合、50%という線が2つ出てきます。この2つは別のものです。
ひとつめは省令第3条第1項のただし書です。事業の用に供するために支出した資本的支出の金額が、その資産の取得価額の100分の50を超えるとき。この場合、第2号(簡便法)は使えなくなります。第1号の見積法のほうは残ります。
ふたつめが通達1-5-2です。資本的支出が再取得価額の100分の50を超えるとき。再取得価額というのは、同じものを新品で買ったらいくらか、という金額です。こうなると別表の法定耐用年数によることになります。見積法も使えません。
| 資本的支出の大きさ | 根拠 | どうなるか |
|---|---|---|
| 取得価額の50%以下 | 省令第3条第1項 | 簡便法が使える |
| 取得価額の50%超・再取得価額の50%以下 | 省令第3条第1項ただし書/通達1-5-6 | 簡便法は使えない。ただし1-5-6の算式がある |
| 再取得価額の50%超 | 通達1-5-2 | 法定耐用年数(普通乗用車なら6年) |
中古車は取得価額のほうが再取得価額より小さいのが普通なので、先に引っかかるのは取得価額50%の線のほうです。200万円で買った車に110万円かけたら、そこで簡便法は使えなくなる計算になります。
真ん中の段には逃がしがあります。通達1-5-6が算式を示していて、これだけはGIF画像でしか公開されていません。拡大して読み取ったので、そのまま書き起こしておきます。
当該中古資産の取得価額(資本的支出の額を含む。)÷〔 当該中古資産の取得価額(資本的支出の額を含まない。)÷ 当該中古資産につき省令第3条第1項第2号の規定により算定した耐用年数 + 当該中古資産に係る資本的支出の額 ÷ 当該中古資産に係る法定耐用年数 〕
1年未満の端数は切り捨て、再取得価額の50%超のときは除く、という条件付きです。上位7本を見た限り、この算式を載せている記事はありませんでした。画像でしか出ていないので、テキスト検索では拾えないのだと思います。
4年5ヶ月で手放した側から見ると、これは別の話に見える
ここまでは買う側の話です。ただ自分の手元にある数字は、逆の立場のものでした。
C43に乗っていたのは2019年3月から2023年8月までです。4年5ヶ月、月数でいうと53ヶ月。そこでG400dに乗り換えました。
上の表に当てはめると、53ヶ月は46ヶ月から60ヶ月のあいだに入っています。つまり私が手放したあの個体は、次に買った人から見れば「簡便法で耐用年数2年」の車だったということになります。
売るときにそんなことは一度も考えませんでした。考えていたのは下取り額と乗り換えのタイミングだけです。でも計算してみると、46ヶ月を超えたあたりから60ヶ月までのあいだは、買う側にとって年数の条件がいちばん良い帯なんですね。私はその帯の真ん中で売っていたことになります。
正直に書くと、これが下取り額に効いていたのかどうかは分かりません。査定の内訳を見せてもらったわけではないし、法人が買ったのか個人が買ったのかも知りません。効いていたはずだ、とは書けないので、ここは「条件としてはその帯に入っていた」というところまでにしておきます。
ひとつ言えるのは、年数の帯は売る側が選べるということです。60ヶ月を1ヶ月でも過ぎると式の答えは2年を下回って、結局2年で頭打ちになります。だから買う側にとっての条件は、46ヶ月以降はずっと同じ。3年10ヶ月を待つ意味はあっても、5年を待つ意味は年数の面ではありません。
税金の制度を自分の資産で考えたことがあるのは、車ではなく不動産のほうです。物件を持って、節税も行ったうえで売却まで終えました。結果はおおむねトントンです。車の減価償却は、私はやっていません。だから以下は制度の読み方の話で、私の申告の話ではありません。
買う以外の選択肢との比べ方
ここまで読んで「そもそも買わない」という選択肢が気になった方もいると思います。リースなら月額がそのまま費用になるので、耐用年数の計算は出てきません。
ただしリースにも按分の論点は残りますし、外車で選べる会社はかなり限られます。そのあたりは別で調べています。
手放す側の手順や、どこに出すかという話はこちらです。
よくある質問
「4年落ち」ちょうどを狙う必要はありますか
省令の式どおりに計算すると、普通乗用車は経過46ヶ月(3年10ヶ月)で耐用年数2年になります。48ヶ月を待たないといけない理由は条文にはありません。ただし経過年数を何月から数えるかは条文に書かれていないので、境目ぎりぎりを狙う場合は数え方そのものを確認しておいたほうがいいと思います。
10年落ちでも2年になりますか
式のうえではそうなります。経過60ヶ月で計算結果がちょうど24.0ヶ月=2年になり、それより古い車は答えが2年を下回るため、省令第3条第1項第2号の「二年に満たないときは、これを二年とする」が効いて2年になります。年数の面では3年10ヶ月以降に差はありません。
買った年に忘れたら、翌年にやり直せますか
通達1-5-1は「その事業の用に供した事業年度においてその算定をしなかったときは、その後の事業年度においてはその算定をすることができない」と書いています。年数の計算そのものより、こちらのほうが取り返しがつかない部分です。
個人事業主でも1年で落とせますか
所得税法施行令第125条により、償却方法を選定しなかった場合の個人の法定償却方法は定額法です。耐用年数2年の定額法の償却率は別表第八で〇・五〇〇なので、2年に分かれます。法人の法定償却方法は法人税法施行令第53条で定率法(別表第十で耐用年数2年は一・〇〇〇)なので、同じ条件でも結果が変わります。
整備費をかけてから使い始める場合は
資本的支出が取得価額の50%を超えると簡便法が使えなくなり(省令第3条第1項ただし書)、再取得価額の50%を超えると法定耐用年数になります(通達1-5-2)。中古車は取得価額のほうが小さいので、先に当たるのは取得価額側の線です。
この記事で確認した一次ソース
・減価償却資産の耐用年数等に関する省令(e-Gov法令検索/令和8年財務省令第29号による版)
・耐用年数の適用等に関する取扱通達 第5節 中古資産の耐用年数(国税庁)
・タックスアンサー No.5404 中古資産の耐用年数(国税庁)
条文・通達の引用はいずれも2026年10月5日時点で取得したものです。
本記事は情報提供を目的としており、特定の商品の勧誘を目的とするものではありません。個別の税務判断を目的とするものでもありません。実際の処理は事業の形態・償却方法の選定状況・取得の時期によって変わります。適用にあたっては税理士や所轄の税務署にご相談ください。
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