解氷スプレーの記事で、泊まりで行くのは群馬・新潟・福島・長野あたりで、そういう場所に泊まれば翌朝はほぼ確実に凍る、と書きました。あのときは缶のほうの話だけをして、液のほうには触れていません。
液のほうは、商品名からして分かりやすい。「解氷 スーパーウォッシャー液(ー60℃)」みたいに、凍らない温度が名前に入っています。
ところが製品ページを開くと、その数字の下に希釈割合の表があって、−60℃はその表の一番上の行でしかありませんでした。
表の一番上の行が、商品名になっている
古河薬品工業(KYK)の「解氷 スーパーウォッシャー液(ー60℃)」の製品ページに、こう書いてあります。
| 希釈割合 | 凍結温度 |
|---|---|
| 原液1に対して、清水0 | −60℃ |
| 原液1に対して、清水1 | −21℃ |
出典: 古河薬品工業「解氷 スーパーウォッシャー液(ー60℃)」(2026年10月時点)
商品名に入っている−60℃は、清水を1滴も入れなかったときの値です。半分だけ水で割ると−21℃になる。
同じページの使用方法には、こう書かれています。
①希釈割合を参考に車の使用地域の気温に合わせて、本品を清水(水道水)で希釈しタンクに注入してください。
薄めるな、とは書いていません。気温に合わせろ、と書いてあります。 つまり看板の−60℃は、メーカーの言うとおりに使うと、使う人のほうから手放すことになる数字です。
製品ページの希釈割合の欄は、この2行で終わりです。清水2の行も、清水3の行もありません。
ついでに言うと、この使用方法は全部で4項目あって、残りの3つもあまり知られていない気がします。タンクに入れるときに塵や埃を入れるとノズルが詰まること。噴射するときは内外気の切り替えを内気循環にすること。そして乾いたガラスに1回目を噴いて白くなっても、続けて噴けば消えること。
2つめは地味に効きます。ウォッシャーを使う前に内気循環、という手順をメーカー自身が書いています。
理由はページに書かれていないので、ここでは推測しません。ただ、後ろで出てくるソフト99の製品は成分にメタノール40%と明記していて、噴いたものが外気導入口のすぐ前を通るというのは、構造としてはそのとおりです。
14製品ぶん数えた。半分に薄めても、半分にはならない
1製品だけだと、たまたまかもしれません。同じメーカーのウインド関連の製品ページを25本取得して、希釈割合が載っている22本を全部拾いました。同じ製品の容量違い・品番違いが混ざっているので、それをまとめると17製品になります。
そのうち、原液と2倍希釈(清水1)の両方を載せているのが14製品です。
| 製品 | 原液 | 2倍(清水1) | 3倍(清水2) | 2倍で残る割合 |
|---|---|---|---|---|
| 解氷 スーパーウォッシャー液 | −60℃ | −21℃ | — | 35.0% |
| 解氷・撥水 ウォッシャー液 | −60℃ | −21℃ | — | 35.0% |
| 強力解氷液 スーパーラッセル | −56℃ | −23℃ | −12℃ | 41.1% |
| プロタイプ 冬期(寒冷地)用 | −50℃ | −18℃ | −10℃ | 36.0% |
| 寒冷地用 油膜取りスーパー | −40℃ | −15℃ | −9℃ | 37.5% |
| 寒冷地用 ウインドウォッシャー液 | −40℃ | −15℃ | — | 37.5% |
| スキット | −40℃ | −15℃ | −9℃ | 37.5% |
| プロタイプ 撥水 | −35℃ | −12℃ | −7℃ | 34.3% |
| オールシーズン | −35℃ | −12℃ | −7℃ | 34.3% |
| 撥水ウォッシャー液 パウチ | −30℃ | −11℃ | — | 36.7% |
| プロタイプ スタンダード | −22℃ | −9℃ | −5℃ | 40.9% |
| 強力油膜取りスーパー | −20℃ | −7℃ | −4℃ | 35.0% |
| 虫取りスーパー | −20℃ | −7℃ | — | 35.0% |
| ウインドウォッシャー液 EX | −6℃ | −2℃ | — | 33.3% |
出典: 古河薬品工業 製品情報(ウインド関連) の各製品ページ記載値(2026年10月時点)。割合はこちらで計算したもの
14製品すべてが33.3%〜41.1%に収まりました。 中央値は35.5%、平均は36.4%です。
半分に薄めたら半分、つまり−60℃なら−30℃になるという直感は、40製品ぶんどころか1製品も当たっていません。 落ちるのは半分ではなく、おおよそ3分の1まで。
上がり幅で見ると、いちばん小さいのがEXの4℃、いちばん大きいのが解氷−60℃の39℃です。もとの数字が大きい製品ほど、薄めたときの損も大きい。
ひとつ気になるのは、なぜ3分の1前後に落ち着くのかを、こちらでは説明できないことです。濃度と組成がどこにも公開されていないので、「そうなっている」以上のことが書けません。
3倍まで行くと、8製品が20.0〜22.7%に収まる
清水2(=3倍希釈)まで載せている製品が8つあります。こちらは帯がもっと狭くなりました。
| 製品 | 原液 | 3倍(清水2) | 残る割合 |
|---|---|---|---|
| 強力解氷液 スーパーラッセル | −56℃ | −12℃ | 21.4% |
| プロタイプ 冬期(寒冷地)用 | −50℃ | −10℃ | 20.0% |
| 寒冷地用 油膜取りスーパー | −40℃ | −9℃ | 22.5% |
| スキット | −40℃ | −9℃ | 22.5% |
| プロタイプ 撥水 | −35℃ | −7℃ | 20.0% |
| オールシーズン | −35℃ | −7℃ | 20.0% |
| プロタイプ スタンダード | −22℃ | −5℃ | 22.7% |
| 強力油膜取りスーパー | −20℃ | −4℃ | 20.0% |
8製品すべてが20.0%〜22.7%。 中央値20.7%で、幅は2.7ポイントしかありません。
2倍で3分の1、3倍で5分の1。そう覚えておくと、ボトルの表を見なくても見当がつきます。
ただし、数え直したときに1つだけ帯から外れるものが出ました。「ウインドウォッシャー液 スタンダード」だけ書き方が違っていて、清水0の行がありません。あるのは「通常は原液1に対して清水2(−1℃)」と「汚れのひどい時及び冬期は原液使用(−6℃)」の2行です。
この2つで計算すると16.7%。上の8製品の帯(20.0〜22.7%)から外れます。
もっとも、元の数字が6℃と1℃なので、1℃刻みで丸められているぶんの影響が大きい。外れている、とだけ書いて、理由の説明はしません。
ただしこれはKYKの表から出した数字であって、全メーカーに当てはまるという保証はありません。次の節で1社だけ別を見ます。
メーカーを変えても、帯は動かなかった
ソフト99の「オールシーズンガラコウォッシャー」の公式ショップのページに、同じ形式の記載があります。
| 使い方 | 凍結温度 | 原液に対して残る割合 |
|---|---|---|
| 原液 | −40℃ | — |
| 2倍希釈 | −15℃ | 37.5% |
| 3倍希釈 | −9℃ | 22.5% |
出典: ソフト99公式オンラインショップ「オールシーズンガラコウォッシャー パウチパック2L」(2026年10月時点)
37.5%と22.5%。KYKの14製品が作る帯(33.3〜41.1%)と8製品の帯(20.0〜22.7%)に、そのまま収まります。
このページには成分も書かれていて、「非イオン系界面活性剤、シリコーン、メタノール(40%)、精製水(純水)」。凍らせない役をしているのはメタノールです。
もうひとつ、同じページにこういう記載があります。「水で3倍まで薄めて使用しても撥水効果は低下しません」。
撥水は落ちない。凍結温度は落ちる。 同じ希釈で、落ちるものと落ちないものが分かれているわけです。ここを読み飛ばすと、「3倍まで薄めてOK」とだけ受け取ることになります。
何倍まで薄めてよいかは、製品ごとに7通りに分かれていた
表をもうひとつ別の見方で数えてみました。その製品が載せている、いちばん薄い行です。
| いちばん薄い行 | 製品数 | 例 |
|---|---|---|
| 清水1(2倍まで) | 5 | 解氷 スーパーウォッシャー液、EX、虫取りスーパー |
| 清水2(3倍まで) | 6 | オールシーズン、スキット、プロタイプ撥水 |
| 清水3(4倍まで) | 1 | 強力油膜取りスーパー |
| 清水4(5倍まで) | 2 | プロタイプ 冬期(寒冷地)用、プロタイプ 油膜取り配合 |
| 清水7(8倍まで) | 1 | 強力油膜取り ビューティーアップ |
いちばん濃いままで終わるのが清水1、いちばん薄いところまで書いてあるのが清水7。同じ「ウォッシャー液」という棚の中で、想定されている薄め方が8倍も違います。
そして−60℃の2製品は、どちらも清水1で表が終わっています。 3倍の行がない。メーカーが3倍にすることを想定していないのか、単に載せていないだけなのかは、ページからは分かりません。
細かいところでひとつ。プロタイプ 冬期(寒冷地)用だけ、清水3を飛ばして清水4を載せています(清水0・1・2・4)。なぜ3が無いのかは書かれていません。こういう抜けがあるので、表は目で眺めず、行ごとに拾ったほうがいいです。
原液の値を、どこにも載せていない製品が2つある
もっと厄介なのがこれでした。17製品のうち2つは、原液の凍結温度がページのどこにも書かれていません。
- プロタイプ 油膜取り配合 … 載っているのは「清水4(−2℃)」の1行だけ
- 強力油膜取り ビューティーアップ … 載っているのは「清水7(−2℃)」の1行だけ
どちらも油膜取り系で、冬用として売られているものではありません。それでも、薄めずに使ったら何℃まで持つのかを知る手段がページ上にない、というのは変な感じがします。
ここから逆算したくなりますが、やめました。上で出した33〜41%や20〜23%は薄めた側の割合であって、逆向きに掛けて原液を当てにいくと、丸めのぶんが増幅されます。書いていないものは、書いていないままにしておきます。
「ウォッシャー液」と書いてあっても、原液で−6℃のものがある
寒冷地用ではない製品も数えました。そうしたら、こういうのが出てきます。
- ウインドウォッシャー液 EX … 原液で−6℃、2倍希釈で−2℃
- ウインドウォッシャー液 スタンダード … 「通常は原液1に対して清水2(−1℃)」「汚れのひどい時及び冬期は原液使用(−6℃)」
スタンダードのほうは、メーカーが冬の使い方として「原液で使え」と書いていて、それでも−6℃です。
東京の1月の日最低気温は平年値で1.2℃なので、都内で乗るぶんには−1℃でも足りる日が多い。ただし平年値は平均なので、冷え込んだ朝に足りるかは別の話になります。
「ウォッシャー液」という名前は、凍結温度について何も約束していません。約束しているのは、ボトルに書いてある数字のほうです。
気温の側と、1回だけ並べてみる
行き先の気温は、スタッドレスの記事で気象庁の平年値を引いたときに8地点ぶん出しています。日最低気温の平年値(1991〜2020年)でいうと、軽井沢の1月が−8.2℃、日光が−7.9℃、東京が1.2℃。
この−8.2℃に、上の表を当ててみます。
- 3倍希釈でしのげるのは、3倍の値を載せている8製品のうち4製品。半分は届きません
- 2倍希釈なら14製品中11製品が下回ります
- 軽井沢の観測史上最低は−21.0℃(1936年3月1日)。これを2倍希釈でしのげるのは14製品中3製品、3倍希釈では8製品中0製品です
出典: 気象庁「過去の気象データ検索 平年値(年・月ごとの値)」軽井沢(2026年9月時点)
ついでに気づいたことをひとつ。−60℃の製品を半分に薄めた値(−21℃)が、軽井沢の観測史上最低(−21.0℃)とほぼ同じ線です。偶然ですが、覚えやすい。
行き先の気温のほうは、軽油の号数の記事で8地点ぶんの表にしてあります。同じ表がそのまま使えるので、そちらを見てください。
表のどこにも無いのは、「継ぎ足したとき」
ここまで数えてきて、22ページ全部を見ても1行も見つからなかったものがあります。
タンクにすでに入っている液に、別の液を足したときの凍結温度です。
メーカーの表は全部「原液1に対して清水N」という形で、相手は清水(水道水)だと決まっています。相手が夏に入れた液だったときの行は、どこにもありません。
そして現実にやるのは、たいてい継ぎ足しのほうです。減った分を足す。
表に照らして言えるのは、「表の値を当てにするなら、相手は清水でなければならない」というところまでです。継ぎ足したあとが何℃になるかは、こちらでは計算できません。
行き先の気温に対して足りていないと分かったとき、選べるのは濃いものを使うか、原液のまま使うかになります。
原液のまま使うなら、ボトルの表の一番上の行がそのまま効きます。量は減りますが、数えた14製品のうち、原液の値だけなら全部が−6℃より下です。
どちらも、特定の銘柄を勧めているわけではありません。ボトルの表を見て、行き先の気温と比べるという使い方ができるもの、という括りです。
車検の側で何が要求されているかは、別に書いた
ウォッシャーは「あれば便利な装備」ではなく、保安基準で備えることを求められている装置です。そちらの条文の話は、ワイパーの記事に書きました。
ひとつだけ引いておくと、技術基準の別添84は「低温用洗浄液」という語をわざわざ定義していて、メチルアルコール、イソプロピルアルコール又はエチレングリコール等の水溶液のことだと書いています。つまり条文の側も、冬に別の液があることを知っている。
そして、いつから冬の装備に替えるのかという時期の話は、スタッドレスの記事のほうが本体です。
この記事で確かめていないこと
数えられたのは製品ページに書いてある値だけです。確かめていないものを並べておきます。
1. タンクに残った液に継ぎ足したときの凍結温度。メーカーの表に行が無いので計算していません
2. 凍結防止の添加剤。効果の根拠になる資料を持っていないので、勧めても否定してもいません
3. 「何℃になったら噴射できなくなるか」。表の数字は凍結温度で、ノズル・ホース・タンクのどこが先に詰まるかは別の話です
4. 製品の実測値。書いてあるのはメーカーの公称値です
5. 見たのは2社だけ(KYKとソフト99)。業界全体の話にはできません
6. メタノールの取り扱いや消防法上の区分。成分表記は確認しましたが、区分表示は製品ページで確認できていません
7. 銘柄のおすすめ順位。比較サイトがやっていることを繰り返す意味がないので、やっていません
よくある質問
希釈しないとどうなりますか
凍結温度の面では、ボトルの表の一番上の行がそのまま効きます。数えた14製品では、原液の値は−6℃から−60℃でした。デメリットとして書けるのは、同じ量で作れるウォッシャー液が減ることくらいです。ソフト99は「3倍まで薄めても撥水効果は低下しない」と書いていて、最大6Lとして使えるとしています。つまり薄める理由は、量とコストのほうにあります。
水道水と精製水、どちらで薄めるのですか
KYKの使用方法には「清水(水道水)」と書かれています。精製水を使えという記載は、見た22ページのどこにもありませんでした。
凍ってしまったら、どうすればいいですか
こちらでは答えを持っていません。 2社の製品ページに、凍ったあとの対処の記載を見つけられませんでした。言えるのは、その状態でウォッシャーを操作してもポンプが回るだけだということと、次に入れるときは表の値と行き先の気温を見比べたほうがいい、というところまでです。
夏用と冬用は、入れ替えるのですか
メーカーの希釈表が前提にしているのは「原液+清水」なので、表の値を当てにするなら入れ替えるしかありません。 ただし「入れ替えなければならない」と書いている記載は見つけていません。表の読み方としてそうなる、という話です。
東京で乗るだけなら、何を入れればいいですか
東京の1月の日最低気温は平年値で1.2℃です。氷点下にならない前提なら、数えた製品の希釈後の値でもほぼ足ります。ただし平年値は30年の平均で、実際の朝はこれより下に振れます。遠出をするなら、行き先の数字で見てください。
まとめ
- ボトルの「−60℃」は原液の値。メーカー自身が「気温に合わせて希釈しろ」と書いている
- KYKの製品ページ25本(希釈表があるのは22本・17製品)を数えると、原液と2倍希釈の両方を載せているのが14製品。2倍で残るのは原液の33.3〜41.1%(中央値35.5%)
- 3倍まで載せている8製品は、20.0〜22.7%という狭い帯に全部入る(書式の違う1製品だけ16.7%で外れる)
- いちばん薄い行は清水1〜清水7まで、製品で7通りに分かれる。原液の値を載せていない製品も2つある
- ソフト99(別メーカー)も2倍37.5%・3倍22.5%で、同じ帯
- 「ウォッシャー液」という名前でも、原液で−6℃の製品がある
- 軽井沢の1月(−8.2℃)を3倍希釈でしのげるのは8製品中4製品。観測史上最低の−21.0℃は、3倍希釈では0製品
- 継ぎ足したときの表は、22ページのどこにも無い
2倍で3分の1、3倍で5分の1。この2つだけ覚えておけば、ボトルの表を読まなくても、だいたいの見当はつきます。
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