2019年3月に買ったC43(W205型)に、OBDポートから自分でキットを挿してナビの走行中制限を解除していました。作業は数十秒で、そのあと不具合らしい不具合は一度も出ていません。
その話は別記事に書いたので、ここでは繰り返しません。
今回書くのは、入れたあとの話です。「テレビキャンセラーを付けていると車検に通らなくなる」という説明を最近よく見かけるようになりました。いま乗っているG400dもメルセデス・ケアが切れる3年の区切りに来ていて、車検まわりのことを一度きちんと整理しておきたかった、というのが調べ始めた理由です。
調べ方は単純で、国土交通省の告示と通達集を開いただけです。そうしたら、検索上位に出てくる説明のいくつかは、対象がずれていることが分かりました。
先に結論だけ書きます
- OBD検査が読むのは、告示で定められた8つの装置だけ。ナビゲーションもメーターも、その8つに入っていない
- 「対象車の条件」と「検査がいつから始まるか」は別の話。輸入車の開始は2025年10月1日で、国産車より1年遅い
- とはいえ落ちる可能性がゼロというわけでもない。ただし理由はキャンセラーそのものではなく、周辺の作業にあります
以下、それぞれ一次資料を出しながら書いていきます。数字と条文はすべて2026年8月8日時点で実際に取得して確認したものです。
OBD検査が読んでいる装置は、告示に8つ並んでいる
まず、そもそも何を見ている検査なのか。
OBD検査は、車に積まれている自己診断装置(OBD)にスキャンツールをつないで、特定DTCという故障コードが記録されていないかを確認する検査です。2024年10月から本格的に始まりました。
ここで大事なのは「どの装置の故障コードを見るのか」で、これは国土交通省『OBD検査関係法令・通達集』に収録されている道路運送車両の保安基準の細目を定める告示 別添124「継続検査等に用いる車載式故障診断装置の技術基準」の1.適用範囲に、はっきり書いてあります。
対象装置はこの8つ
| # | 対象装置(告示の表現) | 一般的な呼び方 |
|---|---|---|
| 1 | 操縦装置のうちかじ取装置(運行補助機能に係る部分に限る) | レーンキープなどの操舵支援 |
| 2 | 走行中の車輪の回転運動の停止を有効に防止する装置 | ABS |
| 3 | 走行中の旋回における横滑り又は転覆を有効に防止する装置 | 横滑り防止装置(ESP) |
| 4 | 緊急制動時に自動的に制動力を増加させる装置 | ブレーキアシスト |
| 5 | 衝突被害軽減制動制御装置 | 自動ブレーキ |
| 6 | 発散防止装置 | 排出ガス関係 |
| 7 | 警報装置のうち車両接近通報装置 | EV・HVの車両接近通報 |
| 8 | 自動運行装置 | いわゆる自動運転 |
以上です。8つで全部です。
ナビゲーションもディスプレイもメーターも、この8つのどこにも入っていません。 私が調べた範囲では、競合として上位に出てくる記事のひとつが「対象範囲はエンジン制御・先進安全装備・ステアリング・ナビ・メーター・CAN通信系統」と書いていました。ナビとメーターは告示の適用範囲に無いので、ここは合っていません。
「特定DTC以外は不合格にしない」と明記されている
もうひとつ、国土交通省の資料『特定DTCの詳細定義について』に、こう書いてあります。
> 以下の全てに該当するDTCを「特定DTC」とし、それ以外のDTCについては、「特定DTC」とせず、車検不合格としない。
つまり、故障コードが1つでも残っていたら落ちる、という検査ではありません。8つの対象装置について、保安基準を満たさなくなる故障を推断できるコード——それが特定DTCで、そこだけを見ています。
同じ資料には、特定DTCに含まれないものの例も並んでいます。一時的に発生してその後再現されない異常、そのコードだけでは故障かどうか判断できないもの(例として「カメラが前方の映像を検知できない状態」が挙がっています。曇りガラスかもしれないから、という理屈です)。かなり慎重に絞り込まれている印象を受けました。
少し気になったのは、特定DTCを実際に選ぶのは自動車メーカー自身だと定義に書かれている点です。告示が枠を決めて、中身の選定はメーカーに委ねられている。だから「この製品を付けると特定DTCが立つか」は、車種とメーカーによって変わりうるということでもあります。ここは一般論では詰め切れません。
輸入車の開始は2025年10月。国産車と1年ずれています
ここが、いちばん誤解が多いところだと思いました。
自動車技術総合機構(NALTEC)のOBD検査ポータルには、こう書かれています。
- 対象車: 国産車は令和3年(2021年)10月1日以降の新型車(フルモデルチェンジ車)、輸入車は令和4年(2022年)10月1日以降の新型車
- 実施時期: 2024年10月以降(輸入車は2025年10月以降)
「2022年10月1日以降」と「2025年10月以降」は、別のことを指しています。前者は対象になる車の条件、後者は検査が実際に始まる日です。競合記事のなかには前者だけを書いて、開始時期も同じであるかのように読める書き方をしているものがありました。
輸入車オーナーの立場で言うと、2025年10月1日以降に受ける車検から現実の話になった、というのが正確なところです。まだ1年経っていません。
対象車でも検査が不要になる場合がある
NALTECの研修教材『OBD検査の概要』には、対象車と記載があっても検査不要と判定される場合が3つ挙がっています。
- 検査日が令和6年9月30日以前(輸入車は令和7年9月30日以前)である
- 検査日が型式指定年月日から2年を経過していない
- 検査日が初度登録年月または初度検査年月の前月の末日から起算して10ヶ月を経過していない
3つめは、新車から3年後の初回車検であれば当然に超えているので、あまり関係ありません。効いてくるのは2つめのほうです。
自分の車が対象かどうかは、2か所で確認できます
一般論はここまでで、実務的にはこの2つを見れば終わります。
1. 車検証の備考欄
研修教材にそのまま書いてあります。
> OBD検査対象車の車検証および電子車検証の備考欄には、「OBD検査対象車」(電子車検証の場合は「OBD検査対象」)などの記載があります。
紙の車検証なら「OBD検査対象車」、電子車検証なら「OBD検査対象」。これが最速です。
2. 型式一覧を開いてみました
NALTECが「OBD検査対象車型式一覧」をPDFとExcelで公開しています。せっかくなので中身を集計してみました。令和8年6月30日時点で1,530型式が載っています。
輸入ブランドだけ抜き出すと、こうなりました。
| ブランド | 掲載型式数 | いちばん早い開始日 |
|---|---|---|
| メルセデス・ベンツ | 82 | 2025-10-01 |
| BMW | 52 | 2025-10-01 |
| ポルシェ | 36 | 2025-10-01 |
| ボルボ | 33 | 2025-10-01 |
| アウディ | 26 | 2026-11-13 |
| MINI | 19 | 2026-02-21 |
| プジョー | 12 | 2025-10-01 |
| フォルクスワーゲン | 8 | 2026-08-07 |
メルセデスは82型式で輸入ブランドでは最多です。うち21型式が2025年10月1日に一斉に開始していて、この記事を書いている2026年8月8日の時点では63型式がすでに開始日を過ぎています。
アウディがいちばん早くて2026年11月13日というのは、正直ちょっと意外でした。ブランドによってかなり差があります。
自分に関係のあるところだけ拾うと、こうでした。
- Gクラスで載っているのは465系の3台だけ(メルセデスAMG G63が2026-07-17、G580が2026-08-21、G450dが2026-09-18)。G400dの記載はありません
- C43はW206型の`4AA-206087CN`が2026-11-06開始。私が乗っていたW205型は載っていません
ただし、これで「私の車は対象外です」と言い切るつもりはありません。車検証の備考欄を確認していないので、正しくはそちらを見るべきです。一覧は定期的に更新されるとも書かれています。実際、私が最初に落としたファイルは1つ前の版(令和8年4月30日時点・1,517型式)で、13型式ぶん古いものでした。同じようなファイル名が複数あるので、配布ページから辿るほうが確実です。
落ちるとしたら、原因はキャンセラーではなく周辺にあります
ここまでで「ナビは対象外」と書いてきましたが、じゃあ何をやっても大丈夫かというと、そうは言えません。落ちうるルートが3つあります。
1. 検査の直前に故障コードを全部消す
これがいちばん誤解されていると思いました。「不安だから消しておこう」は、逆に落ちる側に働きます。
先ほどの『特定DTCの詳細定義について』には、環境関係についてこう書かれています。
> 車検時には、特定DTCがなく、かつ、レディネスコードが存在することをもって、合格とする。
レディネスコードは、自己診断が一通り完了したことを示す記録です。スキャンツールで全部消すと、これも一緒に消えます。通達集のほうにも、監視の全てについてレディネスコードが1つも記録されていないものは不適合と判定される旨が書かれています。
消した直後に検査を受けると、特定DTCが無いのに落ちることがある。これはかなり実務的な落とし穴だと思います。
2. 対象装置に触ってしまう方式
キャンセラーやコーディングの製品は、方式が製品ごとに違います。ナビのECUだけを触るものもあれば、車速の信号の扱いを変えるものもあります。
8つの対象装置には、ABS・横滑り防止・自動ブレーキ・操舵支援が含まれています。車速や舵角の信号は、これらの装置が使っている情報でもあります。ここに影響する方式だと、対象装置側にコードが記録される可能性は理屈のうえで残ります。
正直なところ、私はこの部分を実測で確かめていません。製品ごとに違う話なので、一般論として「大丈夫」とも「危ない」とも書けないというのが実感です。買う前にメーカーへ問い合わせるのが結局いちばん早いと思います。
なお、NALTECの資料には整備作業の例として「バンパー脱着」が挙がっていて、運転支援システムのセンサーを外した場合はエーミング(機能調整)が必要で、それをしていないことを示すコードは特定DTCとすると明記されています。センサーに触る作業は素直に対象なんだな、と読んでいて思いました。
3. OBDポートに機器を挿したままにする
検査はOBDポートにスキャンツールをつないで行います。ポートが別の機器で埋まっていれば、そもそも接続できません。
常時挿しっぱなしにするタイプのレーダー探知機やロガーを使っている場合は、車検に出す前に外しておくだけの話です。ここは特に難しくありません。
自分でコードを見ておきたいなら
対象装置の一覧を眺めていて思ったのですが、車検の直前に慌てるより、普段からコードが残っていないかを自分で見られるようにしておくほうが精神衛生上は楽です。汎用のOBD2診断ツールなら、スマホと繋いでコードの読み出しができます。
ただし注意点があります。整備工場が使う「特定DTC照会アプリ」は事業者向けで、一般ユーザーが同じ判定をできるわけではありません。汎用ツールで見えるのはあくまで生の故障コードで、それが特定DTCかどうかまでは分かりません。目安として使うものという理解が正しいと思います。
輸入車は対応の可否が車種と年式で分かれます。メルセデス用のアダプターは専用品が出ているので、汎用品が反応しない場合はそちらを探すことになります。どの製品がどの世代のナビまで読めるかは、購入前に対応表を確認してください。
自分で挿すか、施工に出すか
私がC43でやったのはOBDポートに挿すだけのキットで、15,000円程度でした。別記事に書いたとおり、ディーラーはこの手の作業をやってくれませんし、車屋さんに頼むと5万円〜10万円という話も聞きます。自分でできるなら費用の差は大きいです。
ただ、いま同じ判断をするなら、考える材料はひとつ増えています。方式によって対象装置に触るかどうかが変わるという点です。内装を外す作業に不安がある場合も含めて、施工に出すという選択肢は前より合理的になったと思います。
ナビ男くん(メルセデス純正ナビの施工)
メルセデスのCOMANDシステム向けの施工を扱っている専門店です。同社の商品ページによると、キャンセラーを使わずにテレビが映る方式で、HDMI入力の新設やリアモニターの取り付けにも対応するとされています。取り付け込みで依頼できるので、自分で作業する自信がない場合の選択肢になります。
※ 対応車種・年式・ナビの世代によって施工可否と料金が変わります。ご自身の車が対象かは公式サイトで最新の情報をご確認ください(2026年8月時点)。本記事は情報提供を目的としており、特定の商品・サービスの勧誘を目的とするものではありません。
車検の費用そのものについては、初回車検の実額を別に出しています。
走行中に見ること自体は、車検とは別の問題です
ここまでは検査の話でした。走行中に運転者が画面を見ることは、まったく別の法律の話になります。
道路交通法の第71条第5号の5に、こう書かれています。
> 自動車、原動機付自転車又は自転車(中略)を運転する場合においては、当該自動車等が停止しているときを除き、携帯電話用装置、自動車電話用装置その他の無線通話装置(中略)を通話(中略)のために使用し、又は当該自動車等に取り付けられ若しくは持ち込まれた画像表示用装置(中略)に表示された画像を注視しないこと。
「取り付けられ」も入っているので、純正ナビの画面も条文の対象です。
罰則の作りは、条文を追うと少し込み入っていました。
| 条文 | 対象 | 罰則 |
|---|---|---|
| 第117条の4第1項第2号 | 71条5号の5に違反し、よって道路における交通の危険を生じさせた者 | 1年以下の拘禁刑又は30万円以下の罰金 |
| 第118条第1項第4号 | 無線通話装置を通話に使用した者、又は持ち込まれた画像表示用装置を手で保持して注視した者 | 6月以下の拘禁刑又は10万円以下の罰金 |
118条のほうは「持ち込まれた装置を手で保持して」と限定されています。読んだままに受け取ると、取り付け済みのナビを注視した場合は、この号の書きぶりには当たらないということになります。それでも71条の遵守事項に違反していることに変わりはなく、危険を生じさせれば117条の4のほうに乗ります。
ここは条文の解釈にかかわる部分なので、私の読み方を断定として受け取らないでください。書きたかったのは、「ながら運転は一律に反則金いくら」という説明が実際の条文より雑だ、ということだけです。
いずれにせよ、キャンセラーの本来の目的は同乗者が使うことです。運転者が走行中に画面を注視しないという前提は変わりません。
よくある質問
テレビキャンセラーを付けているだけで車検に落ちますか
キャンセラーそのものを検査する項目は、OBD検査にはありません。OBD検査が読むのは告示 別添124に定められた8つの対象装置で、ナビゲーションはそこに含まれていないためです。ただし本文に書いた3つのルート(検査直前の全消去・対象装置に触る方式・ポートを塞いだままにすること)では、落ちる可能性が残ります。最終的な判断は検査を受ける運輸支局や整備工場によりますので、心配な場合は事前にご相談ください。
自分の車がOBD検査の対象かどうかは、どこを見れば分かりますか
車検証(電子車検証を含む)の備考欄です。対象車には「OBD検査対象車」または「OBD検査対象」と記載されます。手元に車検証が無い場合は、NALTECが公開している型式一覧で自分の型式を探すこともできますが、一覧は定期的に更新されるため、配布ページから最新版を辿ってください。
輸入車はいつからOBD検査を受けることになりますか
NALTECの案内では、対象車は令和4年(2022年)10月1日以降の新型車で、検査の実施は2025年10月以降とされています。国産車の2024年10月開始より1年遅い設定です。ただし対象車であっても、型式指定年月日から2年を経過していない場合などは検査不要と判定されます。
車検の前に故障コードを消しておいたほうが安全ですか
環境関係については、特定DTCが無いことに加えて「レディネスコードが存在すること」が合格の要件とされています。スキャンツールで全消去すると、この記録も消えます。監視の全てについてレディネスコードが記録されていない状態は不適合と判定される旨が通達集に書かれているので、消してすぐ検査を受けるのは不利に働きます。整備工場と相談して進めるのが無難です。
調べてみて思ったこと
正直に言うと、書き始める前は「たぶん落ちるんだろうな」と思っていました。検索して出てくる記事がだいたいそう書いているからです。
告示を開いたら、対象装置は8つしか並んでいませんでした。ナビは無い。それを確認するのに、かかった時間は1時間もかかっていません。誰も開いていないだけだったというのが、いちばんの発見でした。
一方で、レディネスコードの話のように、キャンセラーとは関係ないところに実務的な落とし穴があることも分かりました。「対象外だから何をしてもいい」ではなく、「見ている場所が違うので、注意する場所も違う」というのが実際のところだと思います。
—
参考にした一次資料(すべて2026年8月8日に取得・確認)
- 国土交通省 物流・自動車局『OBD検査関係法令・通達集』(細目告示 別添124 を収録)
- 国土交通省 資料3『特定DTCの詳細定義について』
- 国土交通省「OBD検査を実施するにあたって(整備事業者向け)」
- 自動車技術総合機構(NALTEC)「OBD検査について」
- NALTEC「OBD検査対象車型式一覧」掲載のご案内(更新)
- NALTEC 整備事業者向け研修資料『OBD検査の概要』(抜粋・PDF)
- 道路交通法(昭和三十五年法律第百五号)/e-Gov法令検索
免責事項 — 本記事は2026年8月8日時点で公開されている法令・告示・行政資料に基づく情報提供を目的としており、特定の商品・サービスの勧誘や、法令の解釈について確定的な見解を示すことを目的とするものではありません。検査の合否判定は個別の車両・製品・作業内容によって異なります。実際の判断にあたっては、指定整備工場・運輸支局・製品メーカー等の専門家にご相談ください。記事中の型式一覧の集計値は令和8年6月30日時点の公開ファイルを私が集計したもので、一覧は今後更新されます。





